B!

洪水による床上浸水。命にかかわる被害や、予想以上の経済的な損害も。

毎年5月から7月まで続く梅雨。また7月から10月までは台風も多くなります。
温暖化の影響もあり、1976~1985年と2012~2021年の降水量を比べると、1時間当たり50mmを超える雨は1.44倍となり、台風や大雨による水害も増えています。
台風や大雨によっておきる被害として、すぐに思いつくのは建物の浸水ではないでしょうか?

浸水には大きく分けて、床下に水や泥が入りこむ床下浸水と、床上まで水があがる床上浸水があります。


床下浸水といっても決して馬鹿にできず、木の柱を腐らせる、配管を錆びさせる、汚泥や腐った水、カビによって臭いがおきるなど被害は大きいのですが、今回は命にかかわり、経済的にも大きな被害をおこす「床上浸水」の被害と、損害を補償する保険について確認をしておきましょう。

床上浸水による人的被害

気をつけて欲しいのが、近くに川が無いからと言って水害がおきないわけではありません。洪水には川の水があふれたり、堤防が決壊したりして水が流れ込む外水氾濫のほかに、雨水を流しきれなくなった結果、下水や水路から水があふれ出す内水氾濫があります。特に都市部の地面はコンクリートに覆われ、雨水が地面に吸収されないため内水氾濫がおきやすくなっています。
まずはハザードマップで自宅や職場の近くに洪水の危険が無いかを確認しておきましょう。

床上浸水といっても、すぐに逃げれば人的被害はたいしたことないと思う人もいるかもしれません。
しかし、東京理科大学による実験(下記リンク先の動画参照)をみると、浸水によってタンスなどの重い家具が浮き上がり、行く手をはばんで部屋から出られなくなる様子がわかります。
また、膝くらいの水位でも移動することは困難になります。実験は水流のない状態で行っていますが、実際の洪水では水流により足をとられ流されてしまうこともあります。そのため、避難前に洪水によって水位が高くなってしまった時には移動せず、建物の高い階に逃げる垂直避難が現実的となります。

Youtube 朝日新聞デジタル
浮き上がる畳、倒れる冷蔵庫・・・実験で見えた浸水の恐ろしさ


Youtube朝日新聞デジタル
ひざ丈の深さでも歩けない 東京理科大で高校生が洪水体験


もし、自宅の2階などに避難をする場合でも、水没によって停電がおき、下水が止まり水道も使えない状況となれば生活するのは困難です。洋服が濡れており、着替えもない状況であれば、低体温症になる危険もあります。
よく、テレビのニュースで、屋根に上っている人をヘリコプターで救助する映像が流れていることがありますが、救助できる数に限りがある状況では、命に危険のある人から優先的に救助されることになります。運よく消防に電話がつながったとしても、すぐに命を落とす状況でないと判断されれば救助の優先度は下げられ、その場にとどまることになるのが現実となります。

浸水が始まる前の避難が大切

台風や大雨が迫っているときは早めの対策が大切です。
まずは、道路にある雨水を流す「雨水ます」がふさがっていないかを確認。台風の場合には、物干し竿や植木鉢など風で飛ばされそうなものを家の中にしまいます。
そして、土のうや水のうなどを用意して、水の流れをふさぐようにしましょう。


そして、気象庁や自治体から避難情報が発表された時には、いち早い避難を行います。ハザードマップを確認し、自宅の近くに水害や土砂災害の危険がある人は避難をしましょう。
高齢者など移動が難しい人がいれば「高齢者等避難」、そうでなければ「避難指示」の発表で避難場所に移動します。また、寝ている間に洪水がおきることや、暗くなっての移動は危険がともなうことがあるため、避難指示がでていなくても明るいうちに避難することを心がけましょう。
なお、ハザードマップの想定を超えて被害がおきることもありますので、水害がおきる地域が近くにある場合には避難をする方がよいでしょう。

床上浸水による経済的被害

床上浸水での被害は、濡れた家具・電化製品などの家財が使えなくなるほか、エアコンの室外機や給湯器が故障することがあります。濡れた壁の中にカビが生えることもありますので、場合によっては壁の張替えも必要となります。また、床下浸水と同じように床下に入った水や泥のかき出し、消毒、乾燥、断熱材の入れ替えなどの費用もかかります。

もし持ち家が床上浸水にあい、家財の買い替えのほか壁の張替えまで必要となると、数百万円の費用がかかることもあります。これを全額支払うとなると相当負担が大きくなりますので、保険の加入も考えておきましょう。

火災保険の水災補償

台風や大雨による水の被害は、火災保険の「水災補償」によって保証を受けることができます。火災保険には水災補償がついていない契約もあります。保険は「建物」を保証するものと「家財」を保証するものに分けられ、選べるようになっていますのであわせて確認しておきましょう。
また、保険の契約内容によっては、損害額の70%までしか保険金が受けられないものもあります。契約時期が古い場合や、最近の保険でも加入者が支払う保険料を下げるために、水災時の保険金に上限を設けていることがありますので、こちらも確認が必要です。

水災補償で受けられる被害内容についても確認をしておきましょう。
一般的な保険では「床上浸水」または「地盤面から45cmを超える浸水」の場合にのみ補償されます。そのため、「床下」浸水の場合には補償が受けられません。また、被害額が建物や家財の保険価額(保険対象の評価額)の30%を超えない場合も補償が受けられません。
その他の注意点として、地震による津波の被害は水災補償の対象とはならず、地震保険への加入が必要となります。また、同じ土砂災害でも、大雨によるものは火災保険の水災補償、地震によるものは地震保険によって補償されるため注意が必要です。

保険の他にも、国や自治体によって被災者を支える制度があります。
「被災者生活再建支援制度」は建物が受けた被害の程度によって支援金が支給される制度です。
「応急修理制度」は日常生活を送るのに不可欠な最小限の修理をするために、自治体が修理業者を派遣する制度です。しかし、修理を受けられるのは「自ら修理する資力のない世帯を対象」とされていますので、多くの人が利用できる制度とはなっていません。
国や自治体からの支援は金額や修理を受けられる内容も限られていますので、やはり保険に加入しておくことが生活再建への助けとなります。

保険金を受けとる場合にも、国や自治体から支援を受ける場合にも、「どんな被害がおきたのか」を「わかりやすく」写真に残しておくことが大切です。
建物の4方向から写真を撮ること、浸水した位置が分かるよう記録すること、建物の破損箇所や家財の様子をアップで記録するなど、撮影時のポイントを下の記事で紹介していますので参考にしてみてください。


水害は地震とくらべると、天気予報やハザードマップによっておこる時期や被害が予測しやすい災害になります。
いざという時にあわてないよう、日頃から準備をしておきましょう。


〇参考資料
国土交通省 水害レポート
水害レポート 2021

国民生活センター 水害で被災したときの公的支援と 保険請求時の注意点

内閣府 防災情報
被災者生活再建支援制度の概要

内閣府 防災情報のページ 被災者の住まいの確保
3-1.災害救助法に基づく応急修理制度(被災した住宅の応急修理)の概要と実績

この記事を書いた人

moshimo ストック 編集部

防災をしたいけど情報がたくさんあって、何から始めればいいの…?
私たち moshimo ストックも始めは知ることが幅広くて、防災ってちょっと難しいな…と思いました。
そんな "元初心者" の編集部が、初めての方にもわかりやすいよう防災・備蓄・災害についての情報をお届けいたします。
moshimo ストック 編集部の記事一覧

公式SNSアカウントをフォローして、最新記事をチェックしよう

twitter
facebook

この記事をシェア

B!

詳しく見る