台風には、番号のほかに、もう一つ名前がつけられます。
冒頭に書いた、「台風6号(カーヌン)」「台風7号(ラン)」「台風8号(ドーラ)」「台風9号(サオラー)」「台風10号(ダムレイ)」この、(カーヌン)(ラン)(ドーラ)(サオラー)が、それぞれの台風のアジア名です。
台風にアジア名がつけられるようになった歴史は、まだそれほど古くなく、23年前の2000年から。
それ以前の1947年から1999年までは、アメリカ軍の合同台風警報センターによる英語名が、台風の国際的な名称として使われていました。英語名では、「アリス」や「ナンシー」、「アン」や「トム」などの人名が付けられていました。1978年までは女性の名前のみが使われていたようで、一説によると、アメリカ空軍や海軍の気象学者たちが、ガーフルフレンドや妻の名前を愛称として使っていたのだそうです。しかし、男女同権に反するのではと問題視され、1979年以降は男性と女性の名前が交互に用いられるようになっていました。
このように、52年にわたって英語名が使われてきましたが、北西太平洋または南シナ海で発生する台風防災に関する、各国の政府間組織「台風委員会」は、2000年1月から、北西太平洋または南シナ海の海域で発生した台風には、共通のアジア名をつけることにしました。
アジア名をつけることにしたのには、2つの目的があります。
一つ目は、国際社会の情報に台風委員会が決めた名前をつけてそれを利用してもらうことで、アジア各国や地域の文化を尊重しながら連帯を強めて、お互いの理解をすすめること。そして、2つ目は、アジアの人たちに馴染みのある呼び名をつけることで、防災意識を高めてもらうことです。
台風委員会は、日本、フィリピン、韓国、タイ、香港、ラオス、中国、カンボジア、マレーシア、ベトナム、シンガポール、北朝鮮、アメリカの14か国などが加盟しています。アジア名は、それぞれの国が、10個ずつ用意していて、合計140個の名前を順番につけています。番号の名前とは違って、1年ごとにはリセットせずに、140個のアジア名をひとまわりしたら、また1つ目に戻るという具合です。
台風は、年間で平均25.6個発生しているので、おおよそ5年から6年で一巡することになります。
アジア名のリストは、
気象庁のホームページでも公開されています。
ちなみに、リストの一番最初は、カンボジアのつけた名前で、「象」を意味する「ダムレイ」。
お気づきになった方もいらっしゃるかもしれませんが、今年(2023年)8月に発生した、台風10号に付けられている名前です。
140個のアジア名のリストは、ちょうど5周目に入ったところです。アジア名が付けられた台風は、700個にのぼっています。