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8月は年間で一番台風の発生が多い時期。そもそも、台風とは?

激しい風と雨をともなって、時に大きな災害をも足らず、台風。8月〜9月を中心に、年間で平均25.6個(2011年〜2022年までの平均)もの台風が毎年発生し、11.5個の台風が日本に接近しています。台風がどんなものなのか、経験的にイメージできている人がほとんどなのではないでしょうか。
「台風とは」どう定義されていて、どのような仕組みで発生しているのかは、いかがでしょうか?
台風とはなんなのか、どのように発生するのかを知っておくことは、災害に備えて早めの行動をすることにつながり、台風による被害を最小限に抑える手掛かりになるはずです。

台風は、最大風速17m/s以上の熱帯低気圧

「熱帯低気圧から変わる台風が、○日から△日にかけて、沖縄地方に接近する可能性があります。沖縄地方では、△日は非常に強い風が吹き、大しけとなる見込みです。」
熱帯低気圧が発生すると、気象庁からこのような情報が出されることがあります。「発達する熱帯低気圧に関する情報」です。24時間以内に台風に発達する見込みの熱帯低気圧について、5日先までの予報を、気象庁では提供しています。

台風は、発達した熱帯低気圧なのです。

熱帯低気圧が、最大風速が17.2メートル毎秒以上になると、「台風」になります。

また、熱帯低気圧が発達して最大風速17.2m/sを超えたときにどこに存在していたのかも、「台風」と呼ばれることの条件です。
赤道より北で東経180度よりも西の領域または南シナ海に存在している、最大風速17.2m/sの熱帯低気圧だけが、台風と呼ばれます。例えば、フィリピンやタイ、ベトナムやインドネシア、マレーシア、マーシャル諸島あたりの領域、日本の南海上です。

台風は、日本独自の基準で決められています。

ちなみに、熱帯低気圧が発達したものでも、ベンガル湾やアラビア海などの北インド洋で最大風速が秒速17メートル以上のものは「サイクロン」。北大西洋やカリブ海、メキシコ湾、西経180度よりも東の北東太平洋で発生した熱帯低気圧のうち、1分間平均の最大風速が秒速33メートル以上のものは「ハリケーン」。国際的な取り決めでは、最大風速が秒速33メートル以上の熱帯低気圧を「タイフーン」と呼んでいます。

熱帯低気圧は、どのようにできる?どのように台風に発達する?

日本の南海上は、熱帯の海上です。この領域は、1年を通して太陽が照りつけ、その熱で海水が蒸発し、たくさんの水蒸気が作られます。海水の温度も高いので、雲ができやすい環境です。

熱帯低気圧は、積乱雲がまとまることで発生します。

太陽の熱で海水が温められて蒸発し、水蒸気になります。水蒸気は周りの空気よりも軽く、空の上の方にのぼっていき、上昇気流がおきます。すると、今度は上空の冷たい空気に冷やされて、水滴になり、雲ができます。そこに、周りから湿った空気が次々に流れ込み、雲は積乱雲へと成長し、やがてたくさんの積乱雲がまとまります。
水蒸気が水滴、雲になるときには、「潜熱(せんねつ)」と言われる、とてもたくさんの熱を大気中に放出します。この熱がさらに周りの空気を温めることで空気が軽くなって上昇気流が強まると、地上の気圧が下がります。そうして低気圧(※)になると、熱帯低気圧と呼ばれるようになります。
※気象用語では「周囲よりも気圧が低く、閉じた等圧線で囲まれたところ」と定義されています。

この時、気圧の高いところから低い方へ流れる空気の性質や、地球の自転の影響から、低気圧の中心に向かって反時計回り(左回り)に渦を巻いています。

中心の気圧が下がっていくのと同時に、渦の回転が速くなり、風も強くなって、最大風速が17.2メートル毎秒以上の風が吹いて、熱帯低気圧は「台風」と呼ばれるようになります。

熱帯低気圧の風が強くなったものが「台風」ですが、熱帯低気圧は積乱雲がまとまってできているということを忘れてはいけません。
積乱雲は、風だけでなく、大雨を降らせたり、雷をもたらす雲です。

台風のかたち

台風は、熱帯低気圧の最大風速が17.2メートル毎秒以上になったもの。
そのかたち、構造は、どうなっているでしょう。
中心には雲のない“台風の眼”があって、その周りには雲がぐるりと反時計回りに渦を巻いている気象衛星からの写真を見たことのある方は、多いでしょう。

台風は、断面にして見てみると、4つの層になっています。
真ん中は、皆さんご存知の台風の眼。その直径は、約20〜200kmに及びます。台風の眼では、下降気流がみられていて、雲がなく、風と雨も弱くなります。台風の眼が小さく、はっきりするほど、台風の勢力は強くなります。

台風の眼の周りには、「アイウォール」といわれる、猛烈な暴風雨をもたらす、とても発達した積乱雲の壁のような層があります。台風や発達した低気圧の周辺で平均風速が25m/s以上の風が吹いている、または吹く可能性のある領域を「暴風域」といいます。こうして見ると、暴風域に入っている地域の上空はアイウォールなのではないかと想像できるのではないでしょうか。

アイウォールのすぐ外側には、「スパイラルバンド(内側降水帯)」といわれる、激しい雨を連続的に降らせる層があります。スパイラルバンドでは、積乱雲や雄大積雲がらせん状に並んでいます。

スパイラルバンドのさらに外側、台風の中心(台風の眼)から200〜600km付近には、断続的に激しいにわか雨や雷雨、時には竜巻をもたらす「アウターバンド(外側降雨帯)」といわれる層になっています。

4つの構造になっている台風。進行方向の右側にあたるエリアでは、強風が吹くなどの危険性がさらに高くなります。

台風の一生

積乱雲がまとまって渦をかたちづくるようになり、さらに発達して熱帯低気圧になり、渦の中心付近の気圧が下がって、最大風速が17.2メートル毎秒以上になって発生する、「台風」。

台風は回転しながら始め東風に流されて西へ進み、その後、太平洋高気圧のふちを吹く風にそって北上し、偏西風(へんせいふう)に流されて北東へ進みながら発達し、最盛期を迎え、やがて衰弱して温帯低気圧や熱帯低気圧に変わっていくという、一生をおくります。

台風となってから、中心気圧が下がり、勢力が最も強くなるまでの期間が、台風の発達期です。台風が発達するためのエネルギー源は、熱帯の暖かい海面から供給される水蒸気です。
水蒸気が雲になるときに、たくさんの熱を大気中に放出して、さらに周りの空気を温めることで空気が軽くなり、上昇気流が強まると、中心気圧はぐんぐん下がり、中心付近の風速も急激に速くなります。

そして、中心気圧が最も下がり、最大風速が最も強い期間に入り、最盛期を迎えます。

台風が日本付近に近づいてくると、海からの水蒸気の供給が減少し、台風は熱帯低気圧や温帯低気圧に変わって、一生を終えます。日本は、海面の水温が、熱帯よりも低いためです。

南北の温度差があるところで発達し、前線を伴っていることが特徴の、温帯低気圧。
台風が北に進むにつれて、周辺の空気との間に温度差が生まれ、暖かい空気と冷たい空気が混ざり始めると同時に前線ができ始めて、台風としての性質が徐々に失われていきます。そうして、温帯低気圧に変わっていきます。
この時、多くの場合は低気圧の中心付近の風速はピークを過ぎて徐々に弱まりますが、逆に強い風の範囲は広くなっていく傾向にあります。台風が温帯低気圧になっても、風の範囲は広がって、低気圧の中心から離れたところで大きな災害が起こる場合もあります。

また、台風が熱帯低気圧に変わっても、最大風速が17m/s未満になったというだけです。
大雨が降ることもあるので、台風から変わった温帯低気圧や熱帯低気圧が消滅するまでは、油断せずに、災害への備えや早めの行動を心がけることを続けなければいけません。

台風と呼ばれる基準は風によるもの。しかし、雨にも注意!

積乱雲からできた熱帯低気圧が発達してできる台風。その後、多くの場合は発達期を迎え、衰退期へ至ります。その基準は、“風”ですが、台風の間はもちろん、衰退して熱帯低気圧や温帯低気圧になってからも、大雨や突風などの可能性があります。油断せずに、日頃からしっかりと備蓄や対策をしたり、最新の気象情報などもチェックするようにしましょう。


参考資料

「すごすぎる天気の図鑑 雲の超図鑑」荒木健太郎著 KADOKAWA

気象庁 台風の発生数

気象庁 台風について

tenki.jp 知る防災 台風

nikkei4946.com ビジュアル・ニュース解説 台風発生の仕組みや防災対策を知る

この記事を書いた人

moshimo ストック 編集部

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