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ピクトグラムから知る、災害時の注意

2021年の東京オリンピックの開会式で話題を呼んだピクトグラム。
ピクトグラムとは、注意や指示、案内といった情報が一目で伝わるように、シンプルに表した絵記号や絵言葉のことです。意味するものの形を使ってデザインされています。JIS規格(日本産業規格)によって標準化されていて、年代や国籍などを問わず、ほとんどの人がすぐに理解できるように作られていることが特徴です。
駐車場の車椅子マークや、トイレの男女別の表示なども、ピクトグラムの一つです。

普段の暮らしの中でも少し意識して見てみると、防災に関してのピクトグラムも街のあちこちに見つけられるはずです。

実は2種類!?非常口

防災に関してのピクトグラムで、一番馴染みのあるのは、非常口なのではないでしょうか。ビルや商業施設、駅やトンネルの中にもあります。この、非常口のピクトグラムは、実は背景が緑のものと白のものの、2種類あります。
背景が緑の非常口マークの正式名称は「避難口誘導灯」。このマークは、非常口がある場所または非常口そのものを示しています。非常出口や避難階段口の扉の上部、もしくは非常口の傍に設置されています。
背景が白の非常口マークの正式名称は「通路誘導灯」。多くの場合、矢印とセットで避難口にたどり着くまでの経路となる通路などに設置されています。この表示の矢印に従って進んでいくと、非常口にたどり着けます。
通路誘導灯の背景が白いのは、停電時に照明としての役割も担っているから。建物の中などにいるときに、大規模な地震や火災などに遭ったら、まずはこうした表示を探しましょう。
ただし、非常口を目指す時にはパニックを起こさないこと!パニックを起こして、我先にと多くの人が非常口を目指すことで、群衆雪崩が発生したり、非常口付近に人が密集することで脱出しにくくなり、逆に避難が遅れることもあります。災害時には冷静かつ速やかに行動することが重要です。
もしもの時に備えて、外出先では非常口の表示を確認する習慣をつけることが、非常時の冷静な行動にもつながります。

建物の中に入っていく、避難所

非常口のピクトグラムは、扉から外へ出ていく様を表していますが、逆に建物の中に入っていく様を表したピクトグラムもあります。
これは、避難所を示したもの。学校や公民館、体育館などで見つけられるはずです。
災害のために自宅で過ごすことが困難になった場合に避難する場所で、一時的に滞在することができる施設を市町村長によって指定されています。普段は施錠されていることもありますが、災害時(災害が発生しそうな時)には管理者などが解錠し、避難所として開設されます。
「ある程度の期間、避難生活をすることが必要になりそう」な時や、「屋根のあるところに避難する必要があるとき」には、このピクトグラムが表示されている場所を目指して避難しましょう。しかし、災害による危険が切迫し、命を守るために緊急に避難しなければいけない時には、避難所ではなく、次に紹介するピクトグラムの「避難場所」を目指します。

丸いところに駆け込んで行く、避難場所

緑色の丸に駆け込んで行くピクトグラムは、避難場所の表示です。避難所と避難場所は言葉にすると紛らわしいですが、避難所が学校や体育館・公民館などの建物なのに対して、避難場所は公園や広場、グラウンドや駐車場など、多くは屋外に指定されています。学校など、避難場所と避難所を兼ねて指定されている場合もあります。
避難場所は、自宅にとどまると命を守れない場合など、災害による被害が発生する危険性があるときなどに、まずは逃げるための場所です。
日常生活の中では見落としがちですが、秋に紅葉を見に行った場所や、春にお花見に行くような場所も避難場所に指定されているところがあります。
災害が発生した時(発生しそうな時)に、まずは命を守るために避難できる場所を示す「避難場所」のピクトグラムがある場所を、ぜひ覚えておいてください。
また、指定緊急避難場所は、地震や津波、洪水、津波、土砂災害などの災害の種類別に指定されています。避難場所のピクトグラムと一緒に、こうした災害の種類を表すピクトグラムと合わせて設置されているはずです。

避難所・避難場所のピクトグラムとともに表示される、四角い黒枠の災害種別

洪水や土砂災害、大規模な火災など、災害にも様々な種類があります。避難場所や避難所も、すべての災害に対応していないところもあります。どのような災害に対応している避難所や避難場所なのかは、四角い黒枠の災害種別を表したピクトグラムで表示されています。

洪水・内水氾濫

集中豪雨や台風など、大雨で洪水や内水氾濫(市街地に降った雨が都市の雨水処理能力を超えるなどして起こる氾濫)が起こる可能性のある時に避難する場所です。ハザードマップを確認し、ご自宅などが浸水想定区域に入っている場合には、このピクトグラムが表示されているお近くの避難所や避難場所を確認しておきましょう。

崖崩れ・地滑り、土石流

斜面から大きな石が落ちてくる様子を表現しているピクトグラムが、崖崩れ・地滑り。山間の川に大きな石が流れてくる様子を表現しているピクトグラムが、土石流。
土砂災害警戒区域など、こうした土砂災害の危険性があるところにお住いの方は、この表示のある避難所や避難場所を確認しておきましょう。

大規模な火事

大きな地震が発生した時などは、特に木造住宅が密集しているようなところでは、ひとたび火災が発生すると大規模な火災になる可能性があります。火災が発生した時には、風向きに対して直角の方向に逃げた方が安全性が高いとされています。実際に大規模な火災が発生した時には、どこに危険があり、どこが安全なのか判断するのはとても難しいところではありますが、このピクトグラムが設置されている避難場所や避難所は、大規模な火災に対応しているということは、意識しておきましょう。

津波に対しての安全な場所は3つのパターン

四角い黒枠に、大きな波を表現したピクトグラムは、津波や高潮を表現しています。避難所や避難場所の表示と合わせて、このピクトグラムが設置されていたら、津波や高潮にも対応できる避難場所や避難所ということです。こうした表示が設置されている避難所や避難場所は、他の災害にも対応していることが多く、他の種類の災害のピクトグラムを一緒に表示されています。
津波から命を守ることに特化した場所もあります。「津波避難場所」と「津波避難ビル」です。避難所や避難場所の表示と同じように、緑色と白色の2色で表されています。
大きな波から高台に向かって逃げる様子を表現されているピクトグラムが、津波避難場所。
大きな波からビルに向かって逃げる様子を表現されているピクトグラムが、津波避難ビルです。
津波は地震発生から数分で到達し、襲われることがあります。海外などの遠地で発生した地震が津波を引き起こすこともあります。海にいるときには、津波フラッグなどで危険を知らせてくれます。また、海や川の近くなど、津波による被害が予想される地域では、いち早くこうした表示のあるところへ避難するようにしましょう。また、一度水が引いてから、再度、大きな波に襲われることもあります。避難しても、安全が確認されるまでは油断せずに、避難した場所に止まるようにしましょう。

注意を促すピクトグラム

黒い四角い枠で、モノトーンで表現されているピクトグラムは、災害の種類を表現されていますが、同じ図柄で災害の種別を表していても、三角の表示で黒と黄色の2色使いになると、注意を促す表示になります。
こうした注意を促す表示には、地震が起きた場合に津波に襲われる危険のある地域を示す「津波注意」のほか、土石流の発生が予測される危険地域を示す「土石流注意」、がけ崩れや地すべりの発生が予測される危険地域を示す「崖崩れ・地滑り注意」などがあります。
「土石流注意」や「崖崩れ・地滑り注意」のピクトグラムが設置されている場所は、大雨が降った時など土砂災害の危険性が高まっている時には、できる限り近づかずに迂回するなどしましょう。


子どもから大人まで、わかりやすく防災に関する情報などを伝えるピクトグラム。少し意識して街を見回してみると、きっとあちこちに見つけられるはずです。
「これは、どんなことを表現されているのか」
お子さんと一緒に、クイズ感覚で探してみることで、楽しみながら防災意識を高められ、きっと、いざという時には命を守ることにつながるはずです。

この記事を書いた人

瀬尾 さちこ

防災士。住宅建築コーディネーター。整理収納コンサルタント。

愛知県東海市のコミュニティエフエム、メディアスエフエムにて防災特別番組「くらしと防災チャンネル(不定期)」、「ほっと一息おひるまメディアス(毎週水曜日12時〜)」を担当。
以前の担当番組:みんなで学ぶ地域防災(2021年~2021年)、防災豆知識(2019年~2021年)
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