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避難所に行かない方がいいのは、どういうとき?家にとどまる在宅避難の判断ポイントとは?

災害にあった場合、まずは避難所に行くことを想像する人も多いのではないでしょうか?しかし、実際に自分が災害にあってみると、避難所にいくか、家にとどまった方がいいか、判断に迷うかもしれません。
避難所は不特定多数の人が1つの空間で過ごすため、プライバシーが完全に守られるわけではなく、ホテルや旅館のように誰かが作ってくれたおいしい食事が、自動的に配られるわけでもありません。
そのため、安全に過ごせるならば、「在宅避難」と呼ばれる家にとどまる避難方法がすすめられています。しかし、何を基準に家が安全か危険かを判断したらいいのでしょうか?

まずは避難所がどんなところか。そして、家が危険かを判断する基準、在宅避難をするための準備を紹介します。

避難所ってどんなところ?

災害がおきた直後の避難所は、とても快適な場所とは言えません。
倉庫が別の場所があるため備蓄品がしばらく届かないことや、集まった被災者に対して備蓄品が足りないことがあります。災害がおきた当日、長ければ2-3日は食料だけでなく飲料水もないかもしれません。

住環境は暖房も完全ではなく、毛布などの寝具も人数分の用意がなく支給されないことがあります。底冷えのする冬の体育館で、あるだけの洋服を着てやり過ごすとなると、体調を崩してしまうかもしれません。
避難所に想定以上の避難者がつめかければ、人が廊下まであふれかえることになりますし、避難所に入ること自体を断られるかもしれません。また、被災をして強いストレスを感じている人々が1つの空間で過ごすため、トラブルがおきることもあります。

もちろん、十分に備蓄品が行き届き、上のようなことがおきない場合もありますが、備蓄されている食料は乾パンや、お湯や水を入れるとご飯になるアルファ米くらいです。
厳しい話となってしまいますが、災害直後の避難所は「屋根と壁がある避難できる場所」と考えておいた方がよいでしょう。

このような環境とはいえ、家が倒壊したり、浸水したりした人たちにとって、避難所は命を守るための大切な場所です。
また、避難所に行かなくてもよい人は在宅避難をすることで避難所に余裕が生まれ、本当に必要な人たちが快適に過ごせることにつながります。

避難所の様子については、こちらのページで詳しく紹介をしていますので、参考にしてみてください。

家が危険か安全か、判断する基準は?

避難所は厳しい環境かもしれませんが、負傷する危険を避けることが最優先となります。もし、家に危険がある場合には迷わず避難所に向かいましょう。
また、自治体の配布するハザードマップを事前にチェックしておき、家の近くに危険が無いかや、避難先をしっかり確認しておきましょう。

地震の場合

地震がおきてすぐの緊急避難

ハザードマップで津波、土石流、がけ崩れ、地すべりの危険がある地域では地震がおきたらすぐに、危険を避けるための場所に移動することが大切です。
体育館のような被災後に一時的に生活を行う“避難所”とは別に、高台や開けた公園などが危険を避けるための“避難場所”に指定されていますので、まずは一番近い避難場所に移動します。
東日本大震災は想定外の巨大地震であったため、ハザードマップで危険と示されていない地域でも津波の被害がおきています。近くに危険な地域があれば、すぐに避難を開始することが大切です。

大きな地震がおきた後には、ハザードマップの危険地域に住んでいる人は避難所に行くようにします。危険地域外の人は自宅の被害状況を見て、自宅にとどまるか避難所で過ごすかを考えましょう。
一時的に生活を行う“避難所”は、危険を避ける“避難場所”も兼ねることもありますが、川の近くにある避難所は水害時には使えないといったこともありますので、予め確認しておくことが大切です。

家と避難所どちらで生活を行うか

大きな地震がおきた後には同じ規模の地震がおきる可能性が高くなり、はじめの地震で傷んだ建物が、それ以降の地震で倒壊することもありますので注意が必要です。
“壁にひびが入った”など目に見える異常がある場合には、避難所に向かいましょう。

また、見た目は変わらなくても
  • 木造の2000年7月以前に建築が始まった建物
  • 鉄筋や鉄骨構造でも1981年5月以前に建築が始まった建物
の場合、現在の耐震基準を満たしていないため、“耐震補強をしていない建物”は大きな地震により倒壊する可能性が高くなります。

地震で甚大な被害がおきた地域では、市区町村から応急危険度判定士が派遣され、被災した地域で建物の危険度が調べられます。建物の入り口に「緑:調査済」「黄色:要注意」「赤:危険」といった札が設置されますので、避難所から家に戻るかの基準とするとよいでしょう。
また、自宅以外でも黄色や赤の札がある建物には近づかないようにしましょう。

マンションの割れ目

マンションなどの大きな建物でできる割れ目には、大きなゆれから建物へのダメージ軽減するための「エキスパンションジョイント」という仕組みによってできるものもあります。
エキスパンションジョイントは一見つながっているように見える2つの建物(構造)の間にあり、大きなゆれがきたときに一番初めに壊れることで、2つの建物が分離され別々にゆれることとなります。その結果、建物全体を大きな被害から守るための仕組みです。
エキスパンションジョイントによる割れ目は建物全体の安全性には問題がないのですが、素人が見ただけでは判断がつかないものです。そのため、マンション住民による管理組合で、建物のどの部分にエキスパンションジョイントにあるかを予め調べておくことをおすすめします。

大規模火災にも注意

もうひとつ注意をして欲しいのが地震による火災です。木造住宅が密集する地域では火災が広がりやすくなります。また、地震後しばらく時間がたって停電が解消したときに、暖房器具が自動的についたり、故障した電化製品や配線がショートしたりしておきる「通電火災」があります。
木造住宅が密集する地域では、停電が解消してしばらくたったタイミングで自宅に戻るほうがよいでしょう。

水害の場合

ハザードマップで自宅が浸水するエリアかを調べるとともに、土石流、がけ崩れ、地すべりの危険についても確認しておきます。
ハザードマップの危険地域は実際の被害と重なることが多く精度も高いのですが、示されている水害の多くは100年に一度おこる災害を想定としています。
しかし、災害は想定外のことがおきるもの、「ハザードマップでは自宅には危険がないから」「過去に災害がなかったから」といった考えにとらわれず、ニュースで「数十年に一度の大雨」などと予想されており、ハザードマップの危険地域が自宅の近くにある場合には、避難所へいくことも検討しましょう。

ハザードマップの見方や、避難のタイミングは下の記事で詳しく紹介をしていますので、参考にしてみてください。

家にとどまる在宅避難の準備

避難所に行かず家にとどまるために、日ごろからの備えを見直しておきましょう。

安全対策


負傷をしてしまえば自宅では過ごせなくなってしまいますので、まずは家具や家電の転倒防止対策をしておきましょう。


転倒防止のほかにも、ガラスには飛散防止フィルムを張っておきます。割れたガラスによって負傷するリスクを防ぐほかに、ガラスにひびが入ってもフィルムが破けなければ、吹き込む風を防ぐことができます。また、災害時に多くなる盗難のリスクも減らすこともできます。
寒い季節に窓が大きく割れていれば、その部屋では過ごせなくなってしまいますので、手間を惜しまずに対策しておきましょう。なお、フィルムも割れてしまったときには、ブルーシートとガムテープで窓をふさぐと応急処置をすることができます。

ローリングストックで備蓄しよう


電気や水道、ガス、食料の輸送が止まっても過ごせるよう備蓄をしておきましょう。備蓄品は水や食料の他に、生活をするための日用品も必要になります。
必要となるものは人それぞれ。一般的に必要とされるものの他に、赤ちゃんや高齢者のためのもの、持病などによって必要となるものをリストアップして備えておきましょう。
もし、命にかかわる薬がある場合には、1週間程度の予備を用意しておくことをおすすめします。


備蓄しておく量を何日分にするか迷うかもしれませんが、目安は最低3日分。
ただし、静岡県から宮崎県までの広い範囲で被害がおこる南海トラフ地震や、人口の多い場所でおきる首都直下地震では、支援物資が多くの人に届くまでに時間がかかります。内閣府が想定しているこの2つの地震では、1週間分の備蓄が推奨されていますので、できれば1週間分を目指しましょう。

しかし、1週間分の食料をすべて、乾パンやアルファ米などの非常食で用意するのは大変です。
そのため、いつも食べる缶詰やレトルト食品を多めに買っておいて賞味期限の近いものから食べる、ローリングストックという方法を使うと、特別な非常食を用意しないでも備蓄をすることができます。
また、カセットコンロを用意しておき、お米やパスタ、冷蔵庫のものもうまく使うようにしましょう。


なお、1人が1日に最低限必要とする水の量は、調理や飲み物に2リットルと、食器や体をふくなど衛生のために1リットル、合計3リットルとされています。
3日であれば9リットル、7日分だと21リットルとなりますので、備蓄の目安にしてください。

台風や大雨のときにも断水がすることがありますが、被害が大きくなるとの予報がでたときには、鍋や空いたペットボトルなどに水をためておくとよいでしょう。ゴミ袋を2重にしてダンボールに入れ、水をためて口をしばっておくのもよい方法です。
水の汲み置きをするときには浄水器を通さないように。消毒のためのカルキが浄水器によって濾過されてしまうため、保存できる日数が短くなってしまいます。浄水器を通さない水道水は、密封して日光を避ければ3日ほど使用できます。

見落としがちなトイレの備蓄


下水施設が故障すれば、トイレを流すことができなくなります。2019年の台風19号によって、首都圏のマンションの高層階で流した下水が、低層階に逆流したニュースを覚えている人も多いかもしれません。
台風や大雨に限らず、地震のときにも下水施設が故障することがあります。たとえ断水していなくても、しばらくは水を流さないようにしましょう。

しかし、人は必ず排泄をしなければなりません。
過去におきた災害では、トイレを控えるために飲食の量を減らした人が体調を崩して、災害関連死につながったこともありますので、健康を保つためには排泄はとても重要なことなのです。
水を流さないでトイレを使うために、非常用トイレ、携帯トイレといった名前の商品があります。1人が1日に使うトイレは平均5回とされていますので、家族の人数分の備蓄をしておきましょう。



避難所は家にいられなくなった人が、命を守るための施設です。
ホテルや旅館のようにお世話をしてくれる人がいるわけではなく、集まった人が協力をしながら運営を行います。もし、家に問題が無ければ、避難所に行かない方が快適なことは間違いありません。
本当に避難所を必要とする人のためにも、しっかりと備えをして家で過ごせるようにしておきましょう。このような一人一人の備えが、災害による地域の被害を軽減し、結果として他の人を助けることにもつながるのです。

この記事を書いた人

moshimo ストック 編集部

防災をしたいけど情報がたくさんあって、何から始めればいいの…?
私たち moshimo ストックも始めは知ることが幅広くて、防災ってちょっと難しいな…と思いました。
そんな "元初心者" の編集部が、初めての方にもわかりやすいよう防災・備蓄・災害についての情報をお届けいたします。
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