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南海トラフ地震臨時情報が発表されたらどうなる?巨大地震注意・警戒のレベルに合わせた行動をしよう

南海トラフ地震は今後30年の間に約80%の高い確率でおき、静岡県から宮崎県までの非常に広い地域で大きな被害をおこすと予測されています。この地震がおきる可能性が高まったときに発表されるのが、南海トラフ地震臨時情報で2019年5月から運用が開始されました。

初めて南海トラフ地震臨時情報の発表があった2024年8月には、海水浴場が閉鎖されたほか、一部の電車は速度を落として運転されました。また、地震に不安を感じて旅行に行くことをやめる人も多く話題となったため、記憶に残っている方も多いかもしれません。
この時は、初めての発表だったこともあり、企業や自治体、一般の人々に戸惑いが多くありましたが、今後発表があった時にあわてないよう、どれくらい確率が高まるのか、具体的にどう行動したらよいかを知っておきましょう。

南海トラフ地震臨時情報とは?

静岡県の駿河湾から宮崎県の日向灘までのユーラシアプレートとフィリピン海プレートの境界を南海トラフといい、ここでおきる地震が南海トラフ地震と呼ばれます。
「南海トラフ地震臨時情報」が発表されるのは、南海トラフ地震の監視領域内でマグニチュード6.8以上の地震が発生した場合や、気象庁の設置しているひずみ計などに変化があり、専門家によって地震がおきる可能性が高まっていると判断された場合です。

なお、南海トラフ地震臨時情報で知ることができるのは「地震がおきる可能性が高まっている」という情報です。
現在の科学技術では、「いつ」「どこで」「どれくらいの」地震がおきるといった予知をすることがはできません。逆に「いつ」「どこで」「どれくらいの」といったことが含まれている情報はデマであると言えますので、不正確な情報に振り回されず、広めないようにしましょう。

巨大地震注意、巨大地震警戒とは?どれくらいの確率で地震がおきる?

南海トラフ地震臨時情報は「調査中」「巨大地震注意」「巨大地震警戒」「調査終了」といったキーワードとともに発表されることとなりますので、それぞれのキーワードについて知っておきましょう。

調査中

下記のような地震や地盤の変化があった場合、専門家による「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」が開かれ、「南海トラフ地震臨時情報 調査中」が発表されます。
  • 監視領域内でマグニチュード6.8以上の地震がおきた場合
  • 気象庁の設置するひずみ計で、南海トラフのプレート境界がずれる「ゆっくりすべり(スロースリップ)」が通常と異なる形で観測された場合
  • その他、南海トラフのプレート境界の固着の変化など、南海トラフ地震と関連がありそうな観測がされた場合
この時点では、まだ巨大地震の可能性がどの程度高まっているかは、まだ分かりません。調査中が発表されてから最短2時間で巨大地震注意や巨大地震警戒、調査終了といった発表がされますので、その後の情報に注意するようにしましょう。
なお、調査中の状態でも南海トラフで大きい地震があった場合、津波の被害が予測されている地域では高台など安全な避難場所に移動し、津波警報の解除を待つようにしてください。

巨大地震注意

「南海トラフ地震臨時情報 巨大地震注意」は次のような場合に発表されます。
  • 監視領域内でモーメントマグニチュード7以上の地震が発生した場合
  • 通常とは異なるゆっくりすべりが観測され、専門家によって巨大地震の可能性が高くなったと判断された場合
マグニチュード7クラスの地震がおきた後に、続いて巨大地震がおきる確率ですが、「平時に比べて数倍高い程度」「巨大地震注意となったとき数百回に1回おきる程度」と考えられています。

巨大地震警戒

「南海トラフ地震臨時情報 巨大地震警戒」は、南海トラフ地震の震源域のプレートの境目でモーメントマグニチュード8以上の地震が発生した場合に発表されます。
マグニチュード8クラスの地震がおきた後に、続いて巨大地震がおきる確率ですが、「平時に比べて100倍高い程度」「巨大地震警戒となったとき数十回に1回おきる程度」と考えられています。

調査終了

専門家による調査の結果、巨大地震注意と巨大地震警戒のどちらにも当てはまらない場合には、「南海トラフ地震臨時情報 調査終了」が発表されます。

モーメントマグニチュードと気象庁マグニチュード

モーメントマグニチュード(Mw)は聞きなれない言葉かもしれませんが、地層のずれの規模をもとにして計算する地震の大きさの単位で、地震の大きさを正確に表せますが、求めるまでに若干時間がかかります。それに対して、気象庁マグニチュード(Mj)は地震のゆれ幅と震源地からの距離で求められる地震の大きさの単位で、求めるのにそれほど時間はかかりません。
そのため、地震がおきてからすぐに発表をする「調査中」の段階では誤差を見こんだ気象庁マグニチュード6.8を基準とし、「巨大地震注意」を発表するときにはより正確なモーメントマグニチュード7を基準とすることになっています。

巨大地震注意や巨大地震警戒が発表されたら、どうすればいい?

巨大地震注意が発表されたら

巨大地震注意が出された場合、続いて巨大地震がおきる確率は「平時に比べて数倍高い程度」「巨大地震注意となったとき数百回に1回おきる程度」と考えられますので、それほど高い確率で巨大地震がおきるわけではありません。

まずは、日頃から行っている
  • ハザードマップの確認
  • 避難場所や避難経路の確認
  • 家族や身近な人との連絡手段の確認
  • 家具や家電の転倒対策
  • 水や食料の備蓄
の再確認を行いましょう。





さらに、巨大地震注意がでている間は
・寝るときにすぐに逃げられるよう、非常用持ち出し袋やヘルメットを取り出しやすいところにおき、靴などを飛ばされないようにして枕元においておく
・外出時に地震がおきてもいいよう、身分証明書、常備薬、小銭、LEDライト、ホイッスル、モバイルバッテリーなどの避難グッズを持ち歩く
・外出をする予定があるようならば、外出先から避難場所と避難経路を確認しておく
といったこともできれば万全です。


きちんと準備ができていれば、過度な心配はせずにいつも通りの生活をしてもかまいません。外出や旅行をしてもかまいませんが、避難場所と避難経路のチェックは忘れないようにしましょう。

なお、巨大地震注意が発表されてから、1週間が経過しても大きな地震がおきなかった場合には、巨大地震注意が解除されます。(ゆっくりすべりによる場合は、すべりの変化が収まってから、変化していた期間と概ね同程度の期間がたった後に解除されます。)
「地震はいつおきるかはわからない」ということを忘れずに、いつもの生活に戻りましょう。

巨大地震警戒が発表されたら

巨大地震警戒が出された場合、続いて巨大地震がおきる確率は「平時に比べて100倍高い程度」「巨大地震警戒となったとき数十回に1回おきる程度」と考えられます。大きな地震がおきる確率が格段にあがりますので、特に注意が必要です。

まずは、巨大地震注意と同じように、寝ているときや外出先で避難をするための準備を行いましょう。
津波などの被害が予想され、地震発生後では避難が間にあわない地域とされる事前避難対象地域にいる方は、避難所や知人の家などに事前避難をしましょう。
また、お年寄りや障害がある方、妊婦、幼児などがいるため避難に時間がかかり、避難が間にあわなそうな場合にも事前避難を行うようにします。

なお、巨大地震警戒が発表されてから、1週間が経過しても大きな地震がおきなかった場合には、巨大地震警戒は解除されますが、引き続き、寝ているときや外出先で避難ができるようにしておきましょう。
巨大地震警戒が発表されてから、2週間が経過しても大きな地震がおきなければ、南海トラフ地震臨時情報は全て解除となります。「地震はいつおきるかはわからない」ということを忘れずに、いつもの生活に戻りましょう。


南海トラフ地震臨時情報は、地震がおきる確率が高まったということを伝えるための大切な情報で、巨大地震注意や巨大地震警戒といったレベルにあわせた行動が必要となりますが、内容を正しく理解して準備をすれば過度に恐れることはありません。
南海トラフ地震臨時情報が発表されても、あわてないよう日頃から備えをしておきましょう。


参考資料

気象庁 「南海トラフ地震に関連する情報」について

気象庁 地震情報等に用いるマグニチュードについて

「南海トラフ地震臨時情報」が発表されたときの防災対応

内閣府 防災情報のページ 南海トラフ地震防災対策
内閣府 南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)発表を受けての防災対応に関する検証と改善方策

この記事を書いた人

moshimo ストック 編集部

防災をしたいけど情報がたくさんあって、何から始めればいいの…?
私たち moshimo ストックも始めは知ることが幅広くて、防災ってちょっと難しいな…と思いました。
そんな "元初心者" の編集部が、初めての方にもわかりやすいよう防災・備蓄・災害についての情報をお届けいたします。
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