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「もしも」の時のこと、家族とどれだけ共有できていますか?定期的に"防災家族会議"を開いて確認を!

「災害はいつ起こるかわからない」とは、もう聞き慣れていることだと思います。どの時間に発生するのかも、わかりません。家族それぞれが仕事や学校などに出かけていて、家族が一緒にいられない時に、大きな災害が発生し自宅にいられなくなる、自宅がなくなってしまうような事態になることもありえるのです。地震から火災が発生し、自宅が全焼してしまうことだって、まったくないことではありません。津波のリスクがある地域なら、自宅が津波に流されてしまっているかも知れません。
もしもそうなったら、別々のところにいる家族の無事は、どのように確認しますか?
どこで、どのように家族が再び集まることができるでしょうか?

これは、最悪のケースかも知れません。
このような最悪のことが起こらなくても、災害に対する備えは常にしておく必要がありますし、もしもの時の家族の間での決め事をしておく必要があります。
そして、それを家族で共有しておく必要があるのです。

少なくとも年に2回は家族防災会議を

もしもへの備えを家族と共有する方法に、「家族防災会議」があります。
可能であれば毎月1回、せめて年に数回、季節の変わり目などに行うのがおすすめです。
例えば、防災の日の9月1日と、東日本大震災があった3月11日の2回、毎年行うと決めておくのはいかがでしょうか。
この両日は、震災に関する報道も増える日です。3月11日については様々な意見がありますが、大規模な災害があったことを忘れないためだけでなく、防災・減災に対する意識を再確認するという意味もあります。
また、3月はあたたかくなる季節に向かって、9月は寒くなる季節に向かって、非常用持ち出し袋の衣替えをするのにも適した時期です。

家族防災会議ですることは、大きく分けて3つです。
  1. 話し合うこと
  2. 確認すること
  3. 入れ替えること
1日ですべてを行うことが難しい場合には、「家族防災会議週間」として、1週間ほどの時間をかけて行うのも良いかもしれません。

避難する場所や災害時に連絡を取る方法などを、話し合いましょう

災害時のことを考えて、家族で話し合っておくこと、決めておくことは、たくさんあります。例えば、どこに避難するのか。離れ離れになったら、どう連絡を取り合うのか。連絡が取れなくなった場合にはどこで待ち合わせするのか。避難するときには、家族それぞれが何をしておいたらいいのか、どんなものを持ち出すのかなどの決め事も、災害時にもできるだけ落ち着いて命や財産を守るために必要になります。

避難する場所を“複数”決めておきましょう

災害時にどこへ避難したらいいのか、すぐにわかりますか?自宅や職場などから近いところというのは、イメージできるかも知れません。しかし、実はそんなに単純なことではありません。
避難所と避難場所。大地震の時には、どちらに避難したらよいでしょう?大雨で自宅が浸水し、しばらく帰ることができなくなった場合には、どちらに避難したら良いでしょうか?
避難場所は、多くの地域では大きな公園や河川敷などの広い場所が指定されています。火災や地震などの災害などから身を守るために、一時的に逃げ込む先です。
避難所は、公民館や学校などの屋内に指定されています。災害のために自宅で過ごすことが難しくなった時に、一定の期間、避難生活をする場所です。
また、津波の危険性がある地域では、「津波避難所」や「津波避難ビル」などの、高い場所へ避難することが必要です。
「一時的に逃げ込む」のか、「一定の期間にわたって、避難生活をするのか」によっても、避難場所に行くべきか、避難所に行くべきなのか、違ってきます。どんな災害なのか、どんな状況なのかによって、避難する場所やタイミングも違ってくるのです。

感染症拡大防止のために、避難所によっては収容人数に制限を設けているところも少なくありません。地域に大きな被害をもたらすような大規模な災害が発生した時には、たくさんの人が避難所や避難場所につめかけて、入れなくなることも考えられます。

どんな災害の時には、どこに避難するのか、複数の候補を決めておきましょう。家族揃って、避難先の候補まで散歩して、安全なルートや危険箇所などを確認しておくのも良いでしょう。

また、知人や親戚のところへ避難するのも選択肢の一つです。そうした、家族との縁があるところを避難先の候補にあげた場合には、普段からいざという時のお願いをしておくことが必要です。

どのように避難するのかを話し合っておきましょう

どのように避難するのかも、話し合っておく必要があることの一つです。
自宅などで家族が揃っている時には、一緒に避難するはずです。豪雨災害などの場合には、道路が冠水していることも考えられ、側溝やマンホールなどに転落しそうになった時には一緒に避難することで助けられることもあります。
家族揃って助け合いながら避難することは、決して間違いではありません。

しかし、津波の場合は、別です。
これまで、幾度となく津波の被害にあってきた東北の三陸地方では「津波てんでんこ」という言い伝えがあります。津波教育の基本ともされている考え方です。「津波が起きたら、家族が一緒にいなくても気にせずに、それぞれに、とにかく一刻も早く高台に逃げて、自分の命は自分で守りましょう」ということです。
これは、おとなも子どもも同じです。
災害時に両親とはぐれると、子どもは不安に思うかもしれません。おとなも、子どもとはぐれると心配になるでしょう。それでも、それぞれに「自分の命は自分で守る」ために、ばらばらにでも逃げきる必要があるのが、津波という災害です。
だからこそ、家族みんなで避難する先(津波避難ビル・津波避難所)を決めておき、「避難した先で会いましょう」と、日頃から約束しておくことが大切なのです。

災害時に連絡を取る方法をいくつか決めておきましょう

普段は使えている電話やインターネットが、災害時には使えなくなる可能性もあります。東日本大震災の時には、被災地への電話が集中し、連絡を取ることが難しくなりました。アクセスが被災地に集中する、「輻輳」という状態です。
そうした中でも、SNSなどのインターネットによる連絡は、比較的つながりやすいと言われています。LINEなどのアプリや、FACEBOOK、TwitterなどのSNSでも災害時には手軽に安否報告(確認)できる仕組みが立ち上がります。どのような方法があるのか、どんな優先順位で使っていくか、家族で確認しておきましょう。祖父母や両親など、スマートフォンに苦手意識のあるご高齢の方も、離れていてもいざという時に使えるように、日頃からLINEアプリなどで連絡を取り合うのも良いでしょう。

また、スマートフォンの電池が切れてしまったり、破損や紛失することも考えられます。近隣の公衆電話の場所を確認するとともに、災害時にNTTが開設する、災害時伝言ダイヤルの使い方も、確認しておきましょう。毎月1日と15日、8月30日〜9月5日の防災週間など、体験利用できる日もいくつかあります。

災害用伝言ダイヤル171の使い方などは、こちらの記事も参考にしてください


こうしたいくつかの方法でも連絡が取れなくなるという、最悪の可能性も考えて、多くの場合に避難所で設置される伝言板の利用や、待ち合わせ場所と時間(「落ち着いたら○時と○時に自宅の前に集まろう」など)を決めるなども、話し合って起きましょう。防犯上の問題もありますが、最終手段として油性ペンでガムテープなどに避難先を書いて玄関などに貼っておくという方法もあります。

避難のタイミングや方法と、家族の役割分担も話し合っておきましょう

どんな災害に対してどれくらいのリスクがあるのかを、家族みんなが知っておくことは、大切なことです。それが、避難行動を起こすためのスイッチにもなるためです。防災家族会議では、家族みんなでハザードマップの確認をしておきましょう。自宅のリスクを知った上で、家族の中で避難するときに配慮の必要な人(高齢者、乳幼児、不自由のある方など)が避難先までどれくらいの時間がかかるかなどを考えて、気象災害であればどの情報が出された段階で避難を開始したらいいのかなどの目安を決めておく必要があります。避難の方法や服装、経路なども家族で共有しておきましょう。


また、避難するときには、不在中の通電火災を防ぐために電気のブレーカーを落としたりガスの元栓を閉めるなど、やっておかなくてはいけないことがいくつかあります。介助が必要な人が家族の中にいる場合には誰がどう介助して避難するのか、ペットがいる場合には、誰がペットを連れて逃げるのか、ペットの非常用持ち出し袋は誰が持って行くのかなども考えておかなくてはいけません。
家族が揃っている時に災害が発生した時には誰が何をするのか、家族が揃っていない時に災害が発生した場合には自宅にいる人は何を優先して行うべきかなど、家族の役割分担とやることの優先順位も決めておきましょう。

平時にも、家族の居場所や予定を把握できるように

災害はいつ起こるかわからないからこそ、何気ない毎日の中で、家族それぞれがどこにいるのかをお互いに把握しておくことは安心にもつながります。「△△時〜友だちと○○で遊ぶ」や、「××にお買い物」「仕事で□□に出張」など、どこにいるのかをおおよそ把握できていることは、離れ離れで被災して連絡がつかない時には、貴重な情報となります。スマートフォンのカレンダーアプリで共有したり、カレンダーやホワイトボードに予定を書いておくなど、日常的に居場所や予定を共有する方法も考えておきましょう。
災害という非日常は、何気ない日常の中で突然発生するものです。

食品備蓄や住宅用火災警報器の音などを確認しておきましょう

災害時の食品備蓄に関しては、日常で食べるものを少し多めに買って、食べた分を補充しながら非常食として活用する「ローリングストック」の考え方が、少しずつ広まってきています。賞味期限が長く、調理も簡単なレトルト食品や缶詰などをローリングストックしているご家庭も多いのではないでしょうか。
日常的に食べているからこそ、備蓄量が少なくなっていることもあるかも知れません。食品や飲料水の備蓄量が足りるか、確認しておきましょう。また、賞味期限も確認し、期限の短いものから使っていくようにしましょう。

ローリングストックではなく、災害用の非常食として日常使いとは別に備えているご家庭も、賞味期限は確認しておくようにしましょう。
次の防災家族会議まで賞味期限がもたないようなものは、防災家族会議の中で試食をしてみるものおすすめです。そのまま食べても美味しく食べられるものなのか、なにか一手間かける必要があるのかなど、家族でアイデアを出し合うのも良いかも知れません。

災害時には、食べることが命をつなぐだけでなく、心の健康を保つために大切なことにもなります。だからこそ、非常食の味を普段から知っておくことは必要なのです。

また、毎年確認する必要はありませんが、住宅用火災警報器が電池切れを起こしていないかなども、10年ごとを目安に確認する必要があります。住宅用火災警報器がどのような音で火災を知らせてくれるかも、家族全員が知っておいたほうがいいことの一つです。
火災警報器の動作確認をし、家族みんなで、その音を聴いておくようにしましょう。

他に、住宅用消火器の使用期限や使い方も、家族みんなで確認しておきましょう。住宅用消火器の使用期限は、おおむね5年です。
懐中電灯などの、電池の寿命も確認しておきましょう。

夏に向かって、冬に向かって。非常用持ち出し袋の入れ替えを

非常用持ち出し袋は、ひとりに一つ、必ず必要です。災害時に必要なものは、一人一人違いますし、避難先で家族が一緒にいられるとは限りません。非常用持ち出し袋に入れておくものは、ほとんどの人に共通して必要なものや、季節を問わずに必要なものもありますが、冬であれば暖をとるためのものや、夏であれば熱中症を予防するためのものなど、季節に応じて入れ替えをする必要があります。
日常生活の中でも衣替えをしますが、非常用持ち出し袋に入れておく衣類も、衣替えが必要です。
非常用持ち出し袋の入れ替えは、ひとりでも行えますが、忘れないように防災家族会議を開いたときに、一緒に行ってしまいましょう。
家族みんなで行うことで、自分では気づかなかった必要なものがわかるかもしれません。


災害時に自分と身近な大切な人の命を守る、自助が重要です。防災家族会議は、自分と家族を守るための、基礎となること。家族みんなが同じように防災意識を持っていなくても、防災家族会議を定期的に開くことで、家族のうちの誰かひとりの防災意識を家族みんなに伝えることにもつながります。
家族みんなの生きる力を高めていきましょう。

この記事を書いた人

瀬尾 さちこ

防災士。住宅建築コーディネーター。整理収納コンサルタント。

愛知県東海市のコミュニティエフエム、メディアスエフエムにて防災特別番組「くらしと防災チャンネル(不定期)」、「ほっと一息おひるまメディアス(毎週水曜日12時〜)」を担当。
以前の担当番組:みんなで学ぶ地域防災(2021年~2021年)、防災豆知識(2019年~2021年)
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