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怖いのは「床上浸水」だけでない。「床下浸水」の被害を知っていますか?

台風や集中豪雨などの大雨、高潮、津波などは、時として大きな災害をもたらします。
山間部などでは、土砂災害なども引き起こすことがありますが、大雨による災害といえば、一番に思い浮かぶのが、浸水被害なのではないでしょうか。

被害の大きくなる床上浸水

住宅で浸水した場合、浸水深が50センチ以上になると、床上浸水する可能性が高くなります。床上浸水すると、フローリングや畳、柱や壁や断熱材などの住宅の構造に、目に見えたダメージを与えるだけでなく、家具や家電製品などの家財道具も汚水や汚泥に浸かり、使い続けることができなくなります。さらに、浸水が進むと、固定していない家具や家電製品は水に浮いて、部屋の中を移動したり転倒します。
避難のタイミングが遅れると、水に流されて移動した家具が部屋の出入り口を塞いでしまい、逃げられなくなってしまうということにも繋がります。
家具や家電が浸水によって浮き上がり移動や転倒することを防ぐためには、地震対策と同じように、日頃から固定しておくことが大切です。

被災した場合には、被害額も大きくなります。大雨による浸水被害は火災保険で補償されますので、建物のほか家財の補償もつけて加入しておきましょう。

早めの避難行動を

家具や家電製品などが浸水によって浮き上がらないように固定していたとしても、命を守るという観点では、やはり早めの避難行動は必要です。
住宅が浸水しているかどうかに関わらず、道路の浸水深50センチほど(大人の膝くらいの深さ)になると、歩行が難しくなります。遅くとも、浸水深20センチ(足首くらいの深さ)になるまでには避難しましょう。

雨の中、避難する時は、両手が自由になるように持ち物はリュックサックにまとめて、紐付き運動靴で、レインウェアを着て避難することが基本です。
道路を流れる水が茶色く濁り始めている時は、すでに氾濫が始まっています。側溝やマンホールの蓋が浮き上がってきたり、水路と道路の境目が見えなくなります。やむを得ず、氾濫が始まっている中で避難する場合には、棒などで足元を確認しながら移動しましょう。
ただし、夜間、暗い中で避難先まで向かうのは危険です。しかし、寝ている間に浸水することもあり、避難しないこともまた危険です。日頃からハザードマップを確認し、自宅のリスクを理解した上で、明るいうちに早めの判断を心がけましょう。ハザードマップで200センチ以上の浸水の予測がされているエリアは、特に建物の2階まで浸水する可能性があるので、早めに安全な場所に避難しておくことが大切です。

「被害が少なくてよかった」と思ってはいけない、床下浸水

室内の浸水にまでは至らず、床下の基礎部分だけ浸水している状態を床下浸水と言います。床上浸水のように、被害程度が明らかに見えるわけではないので、「被害が少なくてよかった」と安心してしまいがちですが、あなどれないのが床下浸水の被害です。
住宅の周りでは水が引いていったとしても、床下に入り込んだ汚水や汚泥は残り、何も対処をしなければ、床を支えている木材が腐敗し、鋼製の金物なども錆が発生してしまいます。さらに、床下の断熱材にも吸水してしまい、断熱効果を無くしてしまう可能性もあります。また、床下に電気配線や設備配管がある場合は、浸水したままにしておくことで火災や破裂などの危険性もあり、建物の強度や安全性に大きな影響が出ます。
建物への直接の影響以外にも、湿気からカビや細菌が繁殖して、強烈な悪臭を放つようになり、感染症の原因にも繋がります。シロアリなどの害虫も発生しやすくなります。たとえ床下浸水であっても、住み続けるためには、早めにしっかりと対処しておくことが必要なのです。

床下浸水の対処法は「排水」「乾燥」「消毒」

床下浸水した場合に行わなければいけないのは、「排水」と「乾燥」そして「消毒」の3つのことです。
土がむき出しになっている布基礎なら、数日後に水が土に吸収される(ただし汚泥は残り続けます)こともありますが、建物の底面全体をコンクリートで覆ったベタ基礎は、排水作業を行わない限り、ずっと汚水が残り続けます。

排水作業は、畳や床板を外して、床下が見える状態にして室内側から行います。浸水した水が少ない場合には、バケツを使って水を汲み出します。量の多い場合には、排水ポンプを使って行うと、効率的に排水できます。底に残った汚泥は、スコップなどを使って掻き出し、さらに水道水できれいに洗った後は、水分を残さないようにしっかりと拭き取っておきましょう。
排水してきれいに洗って、拭き取ったとしても、わずかでも水分が残っていれば、カビの原因になります。排水後は、しっかりと乾燥させましょう。数日間は、床板を外したままにして、自然乾燥させます。扇風機や送風機などを床下換気口に設置して風を送り込むことで、早く乾燥させることができます。
この時に、1つ、注意すべきことがあります。温風は使わずに、送風で乾かすということです。温風で一気に乾かすと、木材の伸縮や反りが出て、歪みが発生したり、床下に設置されている電気配管に熱風を当てると、配管が熱くなって火災の危険性が出てきます。

最後は、消毒です。大雨などによる浸水は、雨水だけでなく汚水や汚泥が混ざっています。浸水した床下は、排水、洗浄、乾燥を行なっても、雑菌は残っています。そのままにしておくと繁殖し、カビや害虫の発生や感染症の原因にもなります。そうしたことを避けるために、排水と乾燥後は、消毒作業を行うことが大切です。
床下への消毒には、消石灰を使用します。消石灰は石灰岩を粉砕して焼成した生石灰に、さらに加水して熟成させて作られた、白い粉末状の薬剤です。以前は学校のグラウンドに白線を引く資材としても使用されていたほか、園芸でも土壌改良のために使用されています。ただし、目や鼻から体内に入ると体に害を与える可能性があるため、取り扱いには注意が必要です。消石灰を使って消毒作業を行う際には、防塵マスクやゴーグル、手袋などを必ず着用するようにしましょう。
散布する量の目安は、1平方メートルあたり、1kg。数ミリ程度の厚さで、全体に行き渡るように散布します。

ご自身で作業を行う前に

床下浸水した場合、できるだけ早く、排水、乾燥、消毒の作業を行うことが必要ですが、ただでさえ被災して心身ともに疲労している中で、こうした作業を家族だけで行うのは大変です。専門業者に依頼するのも、一つの方法です。費用の目安は、面積や被害程度によって変わります。数社から見積もりを取るようにしましょう。
また、床下浸水の場合は公的支援を受けるのは難しいですが、火災保険の申請に罹災証明が必要です。ご自身で作業を行う場合も、専門業者に依頼する場合も、作業開始前に必ず被害状況の写真を撮っておくことが必要です。
賃貸住宅にお住いの方は、大家さん(管理会社)が対応してくださることもあるので、できるだけ早く報告、相談するようにしましょう。

床下浸水を防ぐには

住宅に大きなダメージを与え、早めの対処を怠ると、住宅火災などの二次被害や、暮らす人への健康被害も引き起こす可能性のある床下浸水。洪水の発生を止めることはできなくても、床下浸水のリスクを下げる方法は、いくつかあります。
一般的な住宅には、基礎部分に換気口がいくつか設けられています。そこから氾濫した水が基礎に侵入し、床下浸水が起こります。この換気口などの外部からの水の進入路を塞ぐことが、床下浸水を防ぐことにつながります。防水テープなどでふさいだり、止水板を設置する方法もありますが、最も一般的な方法は、土のう袋を設置することです。

麻やポリエチレン製の袋に土を入れて作った土のう袋は、工事現場などで使用されているのを目にすることが多いですが、災害時にも役立ちます。一刻を争う発災時には、土のう袋を作っている余裕はないかも知れません。保管場所があれば、日頃から土を詰めて備えておきましょう。最近では、吸水ポリマーがポリエチレン製の袋に入った、吸水させるだけで使える土のう袋なども市販されています。(参照: 吸水どのう袋 すべり止め付 10枚 )女性には、こうしたものが扱いやすいかも知れません。
さらに、簡易的な方法として「水のう」があります。水のうは、45リットルのゴミ袋を二重にし、水を入れて、口を硬く縛って作ります。水のうをダンボール箱などに入れれば、扱いやすくなると同時に強度も高められます。
吸水性の土のう、水のうは比重が水とほぼ同じため、水位が土のう・水のうより高くなると浮き上がってしまいます。
浸水が予想される水位よりも十分高くなるように積むようにしましょう。

ハザードマップを確認してお住いの地域のリスクを知っておきましょう

お住いの地域の浸水のリスクは、ハザードマップで確認することができます。浸水深が0.5mのエリアは床下浸水の可能性が、1mでは床上浸水の可能性が、2mでは1階の軒下まで、5mでは2階の軒下まで浸水の可能性のある地域です。もちろん、浸水想定がされていない地域でも、浸水の可能性が全くないわけではありません。
しかし、お住いの地域のリスクを知っておくことで、備えるための一つの目安にはなるはずです。
日頃から、ハザードマップを確認しておきましょう。

その他、土のうや水のうで浸水被害を防ぐ方法、下水の逆流対策について、こちらのページで紹介していますので参考してみてください



この記事を書いた人

瀬尾 さちこ

防災士。住宅建築コーディネーター。整理収納コンサルタント。
愛知県東海市のコミュニティエフエム、メディアスエフエムにて「みんなで学ぶ地域防災」「防災豆知識」の2つの防災番組を担当。
メディアスエフエム「みんなで学ぶ地域防災」は、毎週土曜日、午前9時~10時、生放送。
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