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避難前にすること&避難中の注意点をチェックしよう

前回は地震がおきたときに、とっさに身を守る方法を紹介しました。今回は避難前にすることと、避難場所などへ移動するときの注意点を紹介します。


災害によって危険がせまっているときや、自宅ですごせなくなってしまった場合、避難場所(広い公園など一時的に危険を避ける場所)や避難所(体育館や公民館などしばらく滞在する場所)へ避難をします。
自宅を離れるときには、避難所での滞在中に火災がおきないようにする対策など、避難前にやっておいた方がよいことがあります。また、避難場所や避難所に安全にたどり着けるように気をつけるポイントも知っておきましょう。

避難をするタイミングや、避難が必要な時はどんなとき?

地震がおきた後でも自宅に損傷がなく、津波や土砂災害、火災などの危険がない場合には、避難所に行かずに家にとどまる在宅避難をおこなった方が快適にすごせます。
自宅のおかれた状況を判断して、可能であれば自宅にとどまることをお勧めします。


ただし、台風や大雨など前もってくることがわかる災害のときに、まだ大丈夫だろうと過信することは禁物です。暗くなって避難しにくくなる、気づいた時には道路に水があふれてしまう、寝ている間に自宅が浸水してしまうなど、逃げ遅れにつながることもあります。

避難前に必要なこと

避難中の火災防止や避難先の共有など、避難前にしておくことを紹介します。
ただし、すぐに津波がくる海岸近くの地域や、火災などが迫っているときには、避難前の行動はせず、すぐに避難場所にむかうようにしてください。

ブレーカーを落とす

地震や台風などの風水害で見落としがちなのは、電気のブレーカーを落とすこと。
実は大規模な地震での出火原因として、一番多いのは電気による火災です。阪神・淡路大震災、東日本大震災ともに、出火原因が明らかなもののうち電気による出火が6割を超えています。

電気による火災は「通電火災」と呼ばれさまざまな原因があります。
地震では暖房器具が倒れたり、燃えるものがかぶさったりして出火する場合、破損した電化製品や、配線やコードが損傷してショートする場合、水害では水に浸かったコンセントや電化製品がショートする場合があります。
災害がおきた当初は停電していて火災がおきなくても、停電が解消したタイミングで電化製品のスイッチが入り、避難中に火災をおこすことがあるのです。
避難所に避難をせず、自宅で過ごしていても、停電が解消したタイミングで火災がおきる可能性があります。そのため、停電中や避難前には必ずブレーカーを落とすようにしましょう。

そして、停電が解消したタイミングで、家の中の電化製品のコンセントをすべて抜いてからブレーカーを上げます。
地震の場合は一つずつ電化製品をつないで様子を見ましょう。浸水にあった場合は濡れた電化製品は使用しないようにしましょう。

また、地震がおきたときに自動でブレーカーを落としてくれる感震ブレーカーという製品もあります。
新しいブレーカーには地震の時に電気を止める機能がついている場合もありますが、機能がない場合には後からつけるタイプの製品もありますので設置を考えてみてください。


ガスを止める

自宅に設置されているガスメーターは震度5以上になると自動でガスが止まるようになっています。
しかし、地震のゆれによってガスの配管やホースが破損していることもあります。ガス会社が災害のあった地域でガスの供給を停止し、後に復旧したときには、破損した配管やホースからガス漏れがおきることがあります。
電気のブレーカーと同じく、ガスが止まったときや避難をする前には、部屋のガスの元栓だけでなく、ガスメーターやプロパンガス容器の栓をしめておき、ガスが復旧したタイミングで開いて、ガス漏れがないか慎重に確かめるようにしましょう。

家族と連絡が取れない場合は、玄関に避難先を貼っておく

地震などの災害直後は電話がこみ合ったり、インターネットが止まったりして、連絡が取れないことがあります。そのような場合は、ガムテープに油性ペンで避難先を書いて、玄関のドアに貼っておくとよいでしょう。このとき、個人情報は書かずになるべく最低限の情報にします。
家族以外で安否確認をしにきた人に対しても、避難が完了していることがわかるのでおすすめです。

なお、避難所は地震のときに使えるところと、水害のときに使えるところがわかれていることがあります。また、最寄りの避難所に人が多く集まり入れず、遠くの避難所までいかないといけないこともあります。
前もって家族と相談をして、第2、第3の候補まで決めて共有しておくと、連絡が取れないときも落ち合いやすいでしょう。

近所の人の安否確認を

閉じ込められたり、負傷したりして逃げ遅れている人がいないか、近所の家に声かけをおこないましょう。地震などの災害がおきて自分が負傷をしてしまったときには、近所の人に助けてもらう可能性もあります。
大きな地震がおきたときには、負傷者が一度にたくさん出るため、救急や消防だけではすべての人を助けることはできません。阪神・淡路大震災では、倒壊した建物から救出された人の35%が自力で脱出、32%が家族により救出、友人や隣人に救出が28%され、救助隊による救出はわずか1.7%だったとの調査があります。
日ごろから近所の人と親しくしておき、災害があったときの安否確認のしかたなどを決めておくと、自分の命を救うことになるかもしれません。

いざというときの、公衆電話と災害版伝言ダイヤル

災害がおきるとたくさんの人が一斉に連絡を取り合うため、電話がつながらなくなります。
家や会社の電話、スマートフォンが使えないときには、公衆電話を使ってみましょう。実は、公衆電話は災害時に優先的につながるようになっています。公衆電話を使うために10円玉や100円玉を財布の中に残しておくとよいでしょう。

また、相手の電話に繋がらなければ災害版伝言ダイヤルを使って伝言を残します。ただし、伝言を残す人と伝言を聞く人の両方が、災害版伝言ダイヤルの存在を知らないと利用できませんので、事前に使いかたを予習しておきましょう。

避難を開始!気をつけるポイントは?

エレベーターが途中で止まって閉じ込められてしまうことがあるため、避難のときにはエレベーターを使わないこと。もし、エレベーターの中で地震にあったときには、全ての階のボタンを押して最寄りの階で降りるようにしましょう。もし閉じ込められてしまったら、インターホンで連絡をして救助を待ちます。

避難所までの道では、標識や信号機、エアコンの室外機が外れて落ちてくることがあるので頭上にも気を付けましょう。また、電線が切れてたれていることがあるので近づかないようにします。
繁華街などでは、建物からガラスや看板が落ちてくることがあります。住宅街ではブロック塀や石垣に注意が必要です。
新しい自動販売機は震度6弱まで倒れない ように対策されています。しかし、古いものや、ゆれの大きさによっては倒れることがあるかもしれませんので、念のため離れましょう。

また、災害のときには渋滞が発生しやすいほか、大雨の時には車が水に浸かり止まってしまうことがあるため徒歩で避難をします。自分で歩くことのできない要支援者などがいなければ、車での避難は行わず徒歩での避難が推奨されています。

津波からの避難

津波の可能性がある地域は、地震がおきたらできる限りすぐに避難をすることが必要です。
昼間なら5分後、深夜でも10分後をめどに早期避難をおこなうことで、死亡者数を大幅に減らすことができると、内閣府の試算で示されています。※
また、忘れ物をとりに戻ったために、津波にさらわれてしまった例もありますので、一度避難を始めたら家に戻らないようにしてください。
※昼間5分後に全員避難で77%減、深夜10分後に全員避難で56%減と試算されている。

すばやく避難をおこなうには、非常用持ち出し袋(防災リュック)をすぐ持ち出せるところにおくこと。また、通帳、印鑑、健康保険証、お薬手帳、常備薬などをポーチなどにまとめておき、非常用持ち出し袋といっしょに持っていけるようにしましょう。

津波から逃げるときには、「津波が来るので、早く逃げて!」と声を出しながら避難をするようにします。
まだ、避難をしなくても大丈夫。と思っている人も、周りが避難していることに気づくと避難を始めます。声かけを行うことで津波の被害者を減らすことができた事例が多くありますので、避難をしながら津波が来ることを伝えるようにしましょう。


避難のときには原則として自動車を使わないようにすること。
災害時は渋滞がおきることが多く、逃げ遅れにつながることがあります。海と自宅、避難場所の距離や、歩くことができない人などの要支援者の有無にもよりますが、自分は徒歩の避難ができるかをしっかりと考えておき、可能な限り徒歩で避難するようにしましょう。

また、海だけでなく川にも津波が押し寄せるので注意が必要です。なるべく川から離れた避難経路をきめておきましょう。

台風・大雨

台風や大雨の場合はできる限り洪水がはじまる前に避難をすることが大切です。既に自宅の周りが浸水していることに気づいた場合に避難ができるのは、水位が足のくるぶしの高さまでと考えましょう。
雨の中の避難の注意点はこちらのページで詳しく紹介をしています。

外出先

外出先で地震にあったときには、交通機関なども止まることが考えられます。
事前の備えとして、会社に歩きやすい靴を用意しておき、防災ポーチをつくって常にもち歩くようにしましょう。


まずはパニックになることを避ける

外出先ではパニックにならないよう気をつけましょう。狭い場所に一気に人が押し寄せると、人が詰まって避難が遅れるばかりか、将棋だおしがおきて人が押しつぶされ、死亡につながることがあります。

・差し迫った危険が存在 するという認識が人々の間にあるとき(単に思い込むだけでも)
・脱出の可能性があるとき
・脱出路(口)に制約があり、全員は避難できそうにないとき
・正常なコミュニケーションがかけているとき

この「すべての条件」が「ほぼ同時」に満たされたときにパニックがおこります。順番に通り抜けたほうが逃げやすくなることを伝えるなど、みんなが冷静になるよう呼びかけながら行動することが大切です。

また、地下もパニックをおこしやすい場所です。停電をしてしまい非常灯くらいしか明かりがない場合には、あわてず壁伝いに避難を行いましょう。

外出先では避難者が殺到する

大きな都市で大地震がおきると、交通機関が不通になり多くの帰宅困難者が発生します。
内閣府の中央防災会議では、今後首都圏で震度6強〜7の大地震がおきれば約800万人が帰宅困難者になると想定しています。 また、静岡県から宮崎県にかけての広い地域のどこかで震度6弱〜7の大きな地震が発生すると懸念されている、南海トラフ巨大地震では中京圏で最大120万人、近畿圏で最大300万人もの帰宅困難者が出ると想定されています。

このような状況で、全員が一斉に徒歩や自動車で自宅への帰宅を開始すると、道路は渋滞をおこしたり、人で埋め尽くされたりして、消防や救急などの救援活動ができなくなってしまいます。とくに災害がおきてからの72時間は人命救助のタイムリミットをなりますので、救援を優先する必要があります。また、1か所に人が殺到すれば将棋だおしがおきる可能性もありますので注意が必要です。
そのためできる限り、周りが落ち着くまでその地域にとどまることが必要です。食料や水の用意があれば会社や学校に滞在します。近くに市区町村が帰宅困難者を受け入れる「一時滞在施設」や、民間の受け入れ施設があれば滞在して混乱を避けるようにしましょう。


大きな災害にあうと、あわててしまい冷静な判断ができないかもしれません。
だからこそ事前の準備をしっかりして、安全に避難できるようにしておきましょう。


参考資料

大規模地震時の電気火災の発生抑制の方向性について(平成30年3月)

内閣府 防災情報のページ 平成26年版 防災白書|特集 第2章 1 大規模広域災害時の自助・共助の例

首都直下地震対策検討ワーキンググループ
【別添資料2】 ~施設等の被害の様相~

南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ
南海トラフ巨大地震の被害想定について(再計算)~施設等の被害【定量的な被害量】

南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ 南海トラフ巨大地震の被害想定(第二次報告)について
南海トラフ巨大地震の被害想定について(再計算)~建物被害・人的被害~

この記事を書いた人

moshimo ストック 編集部

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