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防災キャンプをデザインしよう② ~ ワークショップ編

話し合いや活動をたくさん取り入れる

防災キャンプでは、食事、生活のルールなどを困難にすればするほど、どんどんハードルが上がってチャレンジングで面白くなります。でも、やはり大切なのは活動の内容と実際の災害との関連性です。せっかく食事や生活そのものを楽しい(「困難な」でもいい)内容にしているのに、学びの部分が、例えば、ビデオを観るだけ、人の話を聞くだけではわざわざ一緒に寝泊まりする意味はありません。成果も期待できません。
そこで、防災キャンプでは2時間から3時間くらいのユニットを作って、みんなで相談しながら課題を解決していくワークショップや物を作るワークショップをたくさん取り入れましょう

非常持ち出し袋の学びもこんなにたくさん

防災の学習には、知識の獲得、技能の習得、ものづくり、課題解決に向けた話し合いなど、様々な方法があります。それぞれ、「非常持ち出し袋」を例にあげて説明しましょう。

知識の獲得

非常持ち出し袋に入れるものを、講師が図や表、言葉を使って説明します。

技能の習得

実際の非常持ち出し袋を作ってみましょう。たくさんのアイテムを用意しておいて、参加者にリュックサックを渡します。必要なアイテムをリュックの中に詰めてもらうのです。

ものづくり

非常持ち出し袋を使って作ってみましょう。ミシンを使って縫い上げる本格的な作業から、アップリケをつけるなどのちょっとした加工など、いろいろな方法があります。

課題解決に向けた話し合い

非常出し袋に入れるアイテムを話し合います。様々な制限を設けると話し合いが深まります。いくつか例を示しましょう。
  • 持ち出し品を値段で決める
    1枚のカードに1つのアイテムの絵が描かれ、値段がつけられています。使える金額は、例えば1万円とします。グループでどのアイテムを何個選ぶかを話し合います。このワークショップは算数の勉強にもなります。必要なものを1つ入れると足し算、複数個入れると掛け算の勉強もできます。いったん必要だと思ったけど、話し合いの結果不必要になったものは持ち出し袋から出します。これは引き算ですね。途中で2割引券を配れば割り算の勉強にもなります。

  • 持ち出し品を重さで決める
    カードにアイテムの絵が描かれています。ただし、値段ではなく重さが書かれています。袋の総重量は、大人なら20kg、こどもなら5kgとか10kgと決めます。グループでどのアイテムをどれだけ入れるかを話し合いましょう。もちろん、実物を使うと重量を体験できます。

  • 家族の条件を変えて考える
    非常持ち出し袋を作る家族の条件を変えます。高齢者がいる、赤ん坊がいる、病人がいるなどの条件を付けて、話し合いを進めてもらいます。

  • 自分がアイテムになって自己主張する
    話し合いに使ったカードを、一人に1枚だけ渡します。もらったカードのアイテムになり切ってもらい、自分が非常持ち出し袋に入れて欲しい理由を発表してもらいます。説得力があれば採用されます。

既存のゲームや表現活動、話し合いも

もちろん、6コマ全部をこういった話し合いにするのも大変です。いくつかは、既存のプログラムを行いましょう。クロスロードやHUGといったゲームは定番ですね。最近では様々なゲームが開発されています。主催者が頑張って探してみましょう。
足湯や氷水湯(夏の防災キャンプに最適です。熱中症防止にもなります)などのリラックス系、牛乳パックを使った耐震工作、家の中の危ない所探しなど、このmoshimoストックのコラムで紹介したワークショップも取り入れてみてください。

被災体験者の話には心を動かされます。体験談の後に感想文を書かせるのが一般的ですが、防災キャンプではもう少し頑張ってみましょう。話を聞いて心に浮かんだ風景を絵で表現させてみましょう。
地域の防災力向上につながるアイデアをグループに分かれて話し合わせます。提言は壁新聞にまとめてもらいましょう。最後に自分たちの考えを発表してもらいます。
子どもたちのワークショップなら、地域の自主防災会の皆さんや防災士を招いてコメントをしてもらいましょう。おそらく、ほめてくれるでしょう。ほめた以上は、実践して欲しいですね。

ブースを回っての学習やちょっとしたエクササイズも

防災を学ぶ中学生や高校生、大学生が参加して、体験型のブースをいくつか用意します。子どもたちがそのブースを回って防災を学び、体験するスタイルも楽しいものです。若者が一生懸命に子どもたちを教える姿はほのぼのしていいですよ。しかも教える側にもプレッシャーがかかって、準備・予習にも力が入ります。子どもたちに質問されて、「わかりません」では格好悪いですからね。
身体を動かす活動も大切です。朝起きた時、昼食の後など、あえてワークショップのコマに入れなくても、簡単なエクササイズをやりましょう。エコノミークラス症候群の話をして普通にストレッチや体操をするだけで、立派な防災教育です。

プログラムをデザインしよう

以下、2泊3日の小学生か中学生向けの防災キャンプのプログラムを例示します。もちろん、高校生や大学生、大人と家族でも同じような内容で実施すればいいでしょう。

日程 活動内容 留意点
1日目 会場となる学校、公民館、キャンプ場などに集合 学校なら、自宅にいる時に地震などの災害が発生し、学校に避難するという想定で、避難訓練を兼ねて集合させます。
午後 【講義】
被災者の体験談
・体験を聞いて、絵を描く、課題を見つけて解決策を話し合う、などのワークショップを行います。
夕食 パン、非常食などの簡易夕食 ・避難の初日には十分な食料がない場合がほとんどです。非常食中心の夕食にしましょう。自宅から非常持ち出し袋に入れて持ってきてもらってはどうでしょうか。
・非常食が届いたと仮定して、例えば、5人グループにアルファ米4袋などを配布し、話し合って分け合ってもらうのもいいですね。
【発表会】 ・被災体験を聞いて描いた絵や描いた感想文、話し合った課題を発表してもらいます。
2日目 運動 ・散歩やストレッチ、ラジオ体操などを行ってください。
朝食 パン、スティック菓子、バナナなど ・被災翌日、果物などが届きだしたと仮定します。
午前 【ワークショップ】
非常持ち出し袋を作ろう
・津波や洪水、土砂災害を念頭に、非常持ち出し袋を作ります。
・本文で紹介した方法で実施しましょう。
昼食 おにぎりを作ろう ・白米とのりやゴマ、塩、缶詰、梅干しなどの具材を用意し、自分でおにぎりを握ってもらいます。できればみそ球も欲しいですね。
午後 【ワークショップ】
ブースに分かれて防災を学ぼう
・工作、絵画、ものづくり、ゲーム、課題解決の提案などいろいろなコーナーを準備し、時間を決めて回ってもらいます。
・防災を学ぶ高校生や大学生にブースを運営してもらいましょう。防災士や消防士が参加すると活動の幅が広がります。
夕食 バーベキュー大会 ・災害時でも日が経てば豪華な具材が手に入ることもあります。おいしいものを食べて元気を出しましょう。
【ワークショップ】
災害に強いまちづくり
・グループに分かれて、地域の防災活動を活性化する案をまとめてもらいましょう。
・模造紙の壁新聞、パソコンの提示ソフトなどを使って発表用の資料を作ってもらいます。
3日目 運動 ・エコノミークラス症候群について学び、予防のための運動を行いましょう。
朝食 非常食の食べ比べ ・アルファ米、乾パン、スティック菓子、缶詰、果物などを食べます。
・ハラール、ビーガン、アレルギーなどの特殊な非常食、離乳食なども用意します。
・食べ比べて「おいしさコンテスト」を行っても楽しめるでしょう。
午前 災害に強いまちづくり ・グループで話し合ったアイデアの発表会です。
・小学生や中学生が発表する場合は、地域の自主防災組織や防災士、役所の危機管理課の方をコメンテーターに招いて評価してもらいましょう。
昼食 余った食料の分配 ・余った非常食や具材を持ち帰ってもらいましょう。

防災キャンプをデザインしよう 前回の記事

この記事を書いた人

諏訪 清二

全国初の防災専門学科 兵庫県立舞子高校環境防災科の開設時より科長を務め、東日本大震災をはじめとする国内外の被災地でも生徒とともにボランティアや被災者との交流に従事。
防災教育の第一人者として文部科学省「東日本大震災を受けた防災教育・防災管理等に関する有識者会議」など、防災教育関連の委員を務める。

2017年4月から防災学習アドバイザー・コラボラレーターとして活動開始。
学校での防災学習の支援活動を中心に、防災学習、災害、ボランティア、語り継ぎなどのテーマで講演活動も。
中国四川省、ネパール、スリランカ、モンゴル、エルサルバドルをはじめ、海外各地でも防災教育のプロジェクトに関わってきた。

2017年度~
神戸学院大学現代社会学部 非常勤講師
兵庫県立大学 特任教授
(大学院減災復興政策研究科)

2018年度~
関西国際大学セーフティマネジメント研究科 客員研究員

【著書】
防災教育のテッパン――本気で防災教育を始めよう

防災教育の不思議な力――子ども・学校・地域を変える

高校生、災害と向き合う――舞子高等学校環境防災科の10年
※こちらの書籍は、現在電子書籍での販売となります。

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