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防災キャンプをデザインしよう➀ ~ 食事編

アウトドアのノウハウが災害時に生きる

最近、ソロキャンプが流行っているようですね。インターネットの記事でよく特集を見かけます。自然にすっぽりと包まれて好きな料理を作って食べ(おいしい缶詰を開けるだけでも最高です)、好きなお酒を飲み(飲まなくてもいいけど)、森や山を眺める。夜になるとランプを灯し、星空を見上げて思索にふける(何も考えずにボーっとするのもいいですね)。
もちろん、家族や友だちとのキャンプも楽しいものです。こんな時にアウトドアライフの経験がゆたかな人がいると快適で楽しいキャンプ生活になります。
そして実は、アウトドアの達人は災害時にも力を発揮するのです。
阪神・淡路大震災の時、山男たちが千人鍋を作ったという話があります。味が薄ければ調味料をパッと投げ込み、濃くなると水で薄める。そのアバウトさがいいんですね。もちろん、火を扱う技術があれば、冬の避難所のグラウンドで火を起こし、人が集う場所を作れます。トイレがなくても穴を掘って済ませることができます。そういえば、熊本地震を体験したおばあさんの講演を聞いたことがあります。トイレは困らなかった、庭に穴を掘って済ませたと笑っておられました。
台所ではない場所で料理し、火を起こし、寝る場所を確保し、トイレも大丈夫といった、アウトドアライフのいろんな局面で使う技術だけではなく、そこで培っていく判断力や行動力も災害時には役立ちます。
キャンプというちょっとした非日常を体験すると、困難な状況を切り抜けるノウハウが身についていくし、その困難な状況に慌てず、情報を集め、考え、決断し、実行する体験にもなります。技術も判断力も行動力も鍛えられるのですね。

避難所体験から始めよう

そこで、キャンプと防災を組み合わせて、防災キャンプを体験してみましょう。何もキャンプ場に出かける必要はありません。学校の体育館や公民館、自然の家などの宿泊施設で寝泊まりすればいいのです。避難所体験だと考えましょう。そこにアウトドアのノウハウも取り入れるのです。

使用施設 実施者
学校の体育館 学校行事で行う。
地域主催で施設を借りて行う
地域の公民館 地域や数家族単位で行う。
自然の家などの合宿・キャンプ施設 施設が主催して参加者を公募する。
学校や地域が企画して施設を使って行う。

防災キャンプと聞くと、どうしても災害にちなんだ企画をいっぱい用意しなければならないと考えがちです。でも、そんな必要はありません。防災の要素をどれだけ取り入れるかは、その防災キャンプの難易度によって違います。初心者は防災の要素を少なくして、慣れてくればハードルを上げていけばいいのです。まずは、いつもと違う場所での生活にチャレンジしてみてください。ちょっとした非日常を楽しめばいいのです。何度か体験しながら、少しずつチャレンジを取り入れていきましょう。

防災キャンプを効果的に行うには、「食事」と「活動」、「避難所ルール」の3つに留意してください。今回から3回シリーズで解説します。まずは「食事編」です。

食事には相談する場面を取り入れて

高校生対象に防災合宿を何度か開催したことがあります。その時、食事のメニューを決めず、食事の回数分の食材を持ってくるようにとだけ伝えました。もちろん自炊です。参加者は数人のグループに分かれ、持ってきた食材をテーブルの上に並べます。手に入る食材でメニューを考え、調理に取り掛かるのです。
行政の主催する防災訓練を見るとほとんどの場合、アルファ米の試食や豚汁の炊き出しが振舞われます。厳しく言えば、災害時には誰かが食事を用意してくれるという期待(甘え)を参加者に刷り込んでいるのです。
防災キャンプでは、困難な状況でも手に入るものを使って切り抜けていく姿勢の大切さに気付いて下さい。また、相談して決めていくプロセスも大切です。この、他の人の考えを聞き自分の意見を伝え、合意を作っていく作業は、災害時に一番必要な力といっていいでしょう。
とはいえ、子どもたちと初めての防災キャンプを行うときは、少しハードルを下げてもいいでしょう。以下は2泊3日の食事の例です。初心者向けです。ただし、相談する場面は取り入れています。

内容 工夫・留意点
1日目 主催者がパンと飲み物を準備 パンの数は人数と同じではありません。例えば、5人のグループに4つや6つといった割り切れない数のパンを用意します。グループで相談して配分します。
各グループで調理 持ち寄った食材で何を作るかを相談して決め、調理します。初心者やこども向けの場合、コンロ、なべ、食器などは主催者が準備してください。紙食器づくりのワークショップと組み合わせてもいいでしょう。
2日目 カンパン、ビスケット、クラッカーなどの保存食 いろんな種類のお菓子の保存食を準備し、食べ比べてみましょう。そんなお菓子がいつも家に備蓄されていれば、災害時にも役立ちます。毎日口にするお菓子が非常食にもなるのです。いわゆる、ローリングストックの一つですね。
アルファ米 定番のアルファ米を使います。午前中にアルファ米の勉強会と調理の時間を取り入れるといいでしょう。いろんな種類を用意し、コンテストを開催すると楽しくなります。みそ玉、ドライスープなどの工夫も取り入れておいしくいただきましょう。
おにぎりを作ってもいいでしょう。ラップにご飯を載せて、各自で握ってもらいます。
バーベキュー、鍋など 災害時にもおいしいものを食べたいと思いませんか。でないと力が出ません。調理が簡単でみんなで楽しく食べられる料理を楽しみましょう。
3日目 非常食 離乳食、アレルギー対応食、ハラール、ビーガンなどを食べ比べて、多様な非常食を学びます。避難所は支援や特別な配慮が必要な人々もいます。そんな学習会も取り入れましょう。

防災キャンプをデザインしよう 次回の記事

この記事を書いた人

諏訪 清二

全国初の防災専門学科 兵庫県立舞子高校環境防災科の開設時より科長を務め、東日本大震災をはじめとする国内外の被災地でも生徒とともにボランティアや被災者との交流に従事。
防災教育の第一人者として文部科学省「東日本大震災を受けた防災教育・防災管理等に関する有識者会議」など、防災教育関連の委員を務める。

2017年4月から防災学習アドバイザー・コラボラレーターとして活動開始。
学校での防災学習の支援活動を中心に、防災学習、災害、ボランティア、語り継ぎなどのテーマで講演活動も。
中国四川省、ネパール、スリランカ、モンゴル、エルサルバドルをはじめ、海外各地でも防災教育のプロジェクトに関わってきた。

2017年度~ 神戸学院大学現代社会学部 非常勤講師 / 兵庫県立大学 特任教授(大学院減災復興政策研究科)
2018年度~ 関西国際大学セーフティマネジメント研究科 客員研究員
2020年度~ 大阪国際大学短期大学部 非常勤講師
2021年度~ 神戸女子大学 非常勤講師 / 桃山学院教育大学 非常勤講師

【著書】
図解でわかる 14歳からの自然災害と防災 (著者:社会応援ネットワーク 監修:諏訪清二)
防災教育のテッパン――本気で防災教育を始めよう
防災教育の不思議な力――子ども・学校・地域を変える
高校生、災害と向き合う――舞子高等学校環境防災科の10年
※こちらの書籍は、現在電子書籍での販売となります。

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