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防災テッパン授業② ~ 水害時の早期避難 & 非常持ち出し袋を作ろう

日本は水害大国

7月に入って、九州南部をはじめ、各地で豪雨災害が続いています。この10年に限っても表のように、毎年のように多くの死者を出す水害が発生しています。

2011年 平成23年台風第12号
9月2日~3日、西日本各地で大雨。奈良県南部・和歌山県で被害が甚大。死者・不明者92人

2013年 平成25年台風第26号
伊豆大島で記録的な大雨による土石流。死者行方不明者39人。

2014年8月 平成26年8月豪雨による広島市の土砂災害
8月20日、広島市北部の安佐北区・安佐南区で大規模な土砂災害。土石流などで死者74人。

2015年 平成27年9月関東・東北豪雨
9月9日から11日、関東、東北で発生。死者20人。

2016年 台風7号、11号、9号、10号、前線による大雨・暴風
8月16日~8月31日、台風とび北海道地方に停滞した前線による大雨で死者25名。農作物への甚大な被害。

2017年 平成29年7月九州北部豪雨
7月5日~6日、福岡県と大分県で集中豪雨。死者行方不明者42人。

2018年 平成30年7月豪雨
「西日本豪雨」。7月上旬に発生。広島県、岡山県、愛媛県などに甚大な被害。死者は237人、行方不明者8人。

2019年8月 令和元年8月の前線に伴う大雨
「九州北部豪雨」。長崎県、佐賀県、福岡県の広範囲で、長時間にわたる線状降水帯による集中豪雨。死者4人。

2019年9月 台風15号 令和元年房総半島台風
関東上陸時の勢力では過去最強クラス。死者3人。

2019年9月 台風19号 令和元年東日本台風
10月に発生。関東地方や甲信地方、東北地方などで記録的な大雨。死者90人、行方不明3人。

2020年7月 令和2年7月豪雨
7月3日から続く、九州と本州を縦断する梅雨前線による大雨。九州では死者57人、心肺停止2人、行方不明者17人(7月8日午前10時)。

※気象庁、内閣府などのHPを参考に作成

早期避難しかない

これだけ水害が多発すると、堤防のかさ上げなど徹底的な治水対策を実施しないと市民の安全は保障できないのではないかと思ってしまいます。しかし、日本中の河川を巨大堤防で囲み込んだり、すべての住民を堤防よりも高い土地に移住させたりすることは不可能です。やはり、危険な状態になる前にできるだけ早く避難するしかないのです。

では早期避難を可能にする要素は何でしょうか。
まず、ハザード(災害を引き起こすかもしれない自然現象、水害なら大雨)を知ることです。天気予報や天気アプリを活用して、これから雨がどんな降り方をするかを確認しましょう。

次に、備えです。と言っても、ハードの対策にはお金も時間もかかります。やはり、早期避難が大切です。
つまり、天気予報をしっかりと聞いて、天気アプリで雨雲の動向や今後の予想雨量を確認して、もちろん自分の住む地域の脆弱性は事前にチェックしておいて、「危ないかな?」と思ったら、避難の情報が発表される前にさっさと避難してしまうのです。

空振りでもいいじゃない

避難の情報が出されても被害が発生しなかった時に、「空振り」という表現がやや批判的に使われます。
でも「空振り」っていいと思いませんか。野球をやっている人は「空振り三振はOK」とよく言います。でも「見逃し三振はだめだ」と。見逃し三振はいつまでたってもバットとボールが当たることはありません。何かが起こる可能性はゼロです。
しかし、空振り三振はいつかバットとボールが衝突してヒットになる可能性があります。だから、災害時の避難も「空振りでOK」と考えるようにしたいものです。いつか当たるかもしれません。

イソップ童話では、羊飼いの少年が村人をからかおうと、「オオカミが来たぞ」と大声で叫びます。オオカミが羊を襲いに来たと嘘をつくわけです。村人は騙されて狼退治に行きますが、オオカミはいません。何度かそんなことが繰り返され、村人は羊飼いの少年を信じなくなりました。
何日か経って本当にオオカミがやってきて、少年は村人に「オオカミが出た」と訴えましたが、信じてもらえません。羊飼いの羊は全部、オオカミに食べられてしまいました。「嘘をついてはいけない」という教訓ですね。

でも、もし村人が嘘だと思っても狼退治に駆けつけていたとしたら、羊は助かったはずです。
「嘘をついてはいけない」という道徳的な教訓だけではなく、「嘘だと思っても信じよう」という教訓も感じ取れるのは私だけでしょうか。
避難の情報は「嘘かも知れないから無視する」ではなく「嘘でもいいから信じよう」でいいのではないでしょうか。

避難のための準備時間も

さて、ではどうすれば素早く避難できるでしょうか。気象庁は、避難時間には、避難を開始してからの時間だけではなく、避難のための準備時間も入れなければならないと指摘しています。
準備時間には、持ち出したい物品の選択と避難時の服装、装備などの準備が含まれるでしょう。あの服が必要だ、食料と水が必要だとなると、それらを集めて袋に詰めるだけでも時間がかかります。そんなことで時間を浪費して、水害に巻き込まれたくはありませんね。
だから、大雨の時の非常持ち出し品は、持ち運びしやすい袋にあらかじめ詰めておく必要があるのです。

非常持ち出し袋の授業・研修

学校で、非常持ち出し袋の研修や授業をするときはどんな方法がいいのでしょうか。基本から発展までいろいろなパターンが考えられます。
  1. 非常持ち出し袋に入れておくべきものを図や表を用いて説明する。
    この場合は、避難所での生活に必要なものは何かを説明するとよいでしょう。
    ただ、こどもたちから見ると、知識を教えられる受動的な授業になります。基本だけれども少し退屈かもしれません。

  2. 自分の家の非常持ち出し袋を考える
    非常持ち出し袋にはぜひ入れておきたい物品があります。それにプラスして、家庭状況によって必要なものが違ってきます。赤ん坊がいれば紙おむつ、持病を持つ高齢者がいれば、薬あるいはお薬手帳が必要になります。
    そうやって自分の家を念頭に置いて考えることで、災害をより身近なものに感じるはずです。

  3. グループで非常持ち出し袋に入れるものを考える
    ほかの人の意見を聞くことで、多様な考え方に触れることができます。家庭環境によって持って行きたいものが違うことに気づきます。

  4. 小学校なら算数の授業と非常持ち出し袋に入れるアイテムを考える授業
    グループに分かれたこどもたちに非常持ち出し袋に入れるアイテムが描かれたカードを渡します。カードにはその物品の値段も書かれています。
    5,000円とか10,000円といった一定額を示し、その額内で非常持ち出し袋に必要な物品を買うように指示します。

    こどもたちは必要なアイテムを考えながら、そのアイテムが何個必要かも考えます。
    足し算や掛け算の勉強になります。いったんは必要だと思ったけれども、話し合いで不必要だとなったものを除外するときは引き算の練習にもなります。先生が割引券を渡せば、割り算の練習にもなります。

  5. 国語の表現活動と非常持ち出し袋
    非常持ち出し袋に入れるアイテムが描かれたカードを一人に1枚、渡します。そして、自分がなぜ非常持ち出し袋に入れてほしいかを発表させます。
    クラスメートをいかに説得するか、こどもたちは一生懸命表現方法を工夫します。表現活動と言えるでしょう。
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この記事を書いた人

諏訪 清二

全国初の防災専門学科 兵庫県立舞子高校環境防災科の開設時より科長を務め、東日本大震災をはじめとする国内外の被災地でも生徒とともにボランティアや被災者との交流に従事。
防災教育の第一人者として文部科学省「東日本大震災を受けた防災教育・防災管理等に関する有識者会議」など、防災教育関連の委員を務める。

2017年4月から防災学習アドバイザー・コラボラレーターとして活動開始。
学校での防災学習の支援活動を中心に、防災学習、災害、ボランティア、語り継ぎなどのテーマで講演活動も。
中国四川省、ネパール、スリランカ、モンゴル、エルサルバドルをはじめ、海外各地でも防災教育のプロジェクトに関わってきた。

2017年度~
神戸学院大学現代社会学部 非常勤講師
兵庫県立大学 特任教授
(大学院減災復興政策研究科)

2018年度~
関西国際大学セーフティマネジメント研究科 客員研究員

【著書】
防災教育のテッパン――本気で防災教育を始めよう

防災教育の不思議な力――子ども・学校・地域を変える

高校生、災害と向き合う――舞子高等学校環境防災科の10年
※こちらの書籍は、現在電子書籍での販売となります。

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