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黄砂のピークは3~4月。どんな被害がおきる?PM2.5や花粉症との関係は?

春になると中国大陸から風に乗ってやってくる黄砂(こうさ)。日本では2月から飛び始め、ピークは3~4月となり、5月まで続きます。車や洗濯物を汚すだけでなく、健康被害をおこすことも近年の研究で分かっています。
黄砂は昔からある自然現象ですが、農地の過剰な耕作や開拓、過剰な放牧、森林伐採による、土地の荒廃や砂漠化によって、今後より被害が大きくなる可能性があります。黄砂ははるか遠い場所から運ばれてくるため、日本国内の取り組みだけで解決をすることは難しい面もありますが、予報があった時には十分に対策をするようにしましょう。

黄砂はどこからくる?

黄砂の主な発生源は、中国の西側にある新疆ウイグル自治区の「タクラマカン砂漠」、モンゴル南部と中国北部にまたがる「ゴビ砂漠」、その東南に位置する「黄土高原」となります。この地域の砂が砂嵐によって巻き上げられ高度500m~2,000mの高さまで上昇した後、偏西風に乗り中国や韓国を経由しながら3~4日かけて日本まで運ばれます。
春になると黄砂の発生する砂漠や黄土地帯が雪解けし、まだ植物が生えていない状態で乾燥します。そして、この時期は砂嵐がおきやすいため黄砂が舞い上がることに加え、偏西風も強く吹くことから、3月から5月にかけて多くの黄砂が日本に運ばれてくるのです。
黄砂が多く飛来する地域をみると、特に九州が多く、中国地方、四国と続きます。全国的には西日本や日本海側が多い傾向となります。

ちなみに、黄砂と同じ原理でおこる「紅砂」と呼ばれるものもあります。こちらはアフリカの「サハラ砂漠」の砂がアフリカ西部海岸から大西洋に出て北上し、ヨーロッパへ運ばれます。その後は風向きによりアメリカ大陸にもどる場合、イタリア・ギリシャへむかう場合、サウジアラビアへむかう場合もあり、黄砂・紅砂ともに地球規模で循環しています。なお、紅砂という名前は黄砂と比べて、サハラ砂漠の砂は赤みが強いことから名付けられました。

黄砂はどんな物質?

黄砂は石英や長石、雲母、カオリナイト、緑泥石などの鉱物が主となる細かい粒です。大きな粒は運ばれる間に地面に落ちていくため地域によって大きさは異なるのですが、日本に運ばれてくる黄砂の大きさは4μm(1000分の4mm)のものが多くなります。日本人の平均的な髪の毛の太さは0.08mm(1000分の80mm)となりますので、比較すると髪の毛の20分の1の大きさになり、とても細かい粒であることが分かると思います。
また、黄砂に病原菌が付着していたり、運ばれる間に大気汚染物質が付着したりすることがあり、国を超えてこのような物質が持ち込まれることで、さまざまな被害につながることがあります。

黄砂による被害

黄砂は車や洗濯物を汚すほかにも、眼のかゆみや結膜炎、くしゃみや鼻水、皮膚のかゆみといったアレルギー反応や、喘息などの呼吸器への健康被害をおこします。また、花粉症を持っている人は、黄砂がたくさん飛んでいるときほど花粉症の症状が悪化する可能性があるため注意が必要です。
また、心臓や血管といった循環器に関する病気が増える可能性があるという報告もあります。循環器の中でも急性心筋梗塞を対象に調査をしたところ、黄砂が飛んできた翌日に急性心筋梗塞が増え、特に慢性腎臓病を持っている人は関連性が高くなることが分かっています。この調査では急性心筋梗塞のみが調査されていますが、循環器に関する病気や慢性腎臓病を持っている方は、黄砂をなるべく避けたほうがよいでしょう。

その他、遠方が見えなくなることによる航空機の欠航、ビニールハウスに黄砂が積もり日照不足をおこすことでの農業への被害、半導体などを作る精密工場では不良品の増加や、フィルターが目詰まりをおこすことがあります。また、科学的な検証は出来ていませんが、口蹄疫、豚コレラ、麦サビ病といった病原菌が黄砂に付着して日本に持ち込まれ、家畜や農作物に広がる可能性も指摘されています。

黄砂とよく似たPM2.5

黄砂と同じように空気中を漂い健康被害をおこすものとしてPM2.5(微小粒子状物質)があります。PM2.5は空気中に漂う2.5μm以下の粒子のことを言います。そのため、黄砂も2.5μm以下の大きさであればPM2.5として扱われます。
PM2.5も黄砂と同じようにアレルギー反応、呼吸器、循環器への健康被害がおきるほか、肺がんのリスクも高まることが分かっています。PM2.5も黄砂と同じように対策をすることができますので、一緒に気をつけるポイントを確認してきましょう。

黄砂の対策

黄砂やPM2.5がいつ飛来するかはニュースなどでの予報のほか、気象庁の黄砂情報ページSPRINTARSのPM2.5予測・黄砂予測で確認することができます。

黄砂やPM2.5が飛来することが予想される場合、外出時には花粉症と同じようにマスクをして黄砂を吸い込むのを防ぐことが有効ですが、花粉の粒子が約30μmなのに対し、黄砂は約4μm、PM2.5は2.5μmとかなり粒子が小さくなるためマスクを選ぶ必要があります。マスクのパッケージにPFE(微粒子ろ過効率)99%と明記されているものを選ぶようにしましょう。
ただし、全国マスク工業会が行うPFE試験では、0.1μmの粒子を99%カットできるかを検査されているのですが、この検査は口をおおう部分のフィルター素材に対して行われます。そのため、マスクと顔の隙間からの侵入は考えられていませんので、顔にあったサイズや形のマスクを選び、なるべく鼻の両脇やあご、頬に隙間ができないように着用しましょう。このように気をつけて着用したとしても、ある程度の隙間はできてしまうため、完全に防ぐものではなく吸い込む量を少なくするものと覚えておきましょう。

また、室内では換気は最小限にとどめましょう。空気清浄機を使うことも有効で、多くの空気清浄機に使われているHEPAフィルターは0.3μmの粒子をカットすることができます。
掃除をするのもよい方法ですが、掃除機を使う場合には注意が必要です。1つ目は掃除機のフィルターによっては、吸い込んだ粒子がすり抜けてしまうこと、2つ目は掃除機の排気口が床にあると粒子が舞い上がってしまうことです。掃除をするときにマスクし、フローリングワイパーなどで水拭きをするのがおすすめです。


このように、たくさんの問題をおこす黄砂ですが、時にはよい影響をおこすこともあります。黄砂は運ばれる間に海にもたくさん落ちているのですが、黄砂に含まれる鉄分が海中のプランクトンの栄養となり、プランクトンが多く発生することで多くの魚が育ち、海が豊かになることが分かっています。

農地の過剰な耕作や開拓、過剰な放牧、森林伐採により、今後黄砂の量が増えることが予測され、実際の被害も大きくなっていることから、日中韓での共同研究を始めとした国際協力がされるようになっています。
自然を守りながら、はるか昔からある黄砂とうまくつきあっていくことの重要性が、国際的にも理解され始めているのです。


参考資料

日本学術会議 農学委員会 風送大気物質問題分科会
報告 黄砂・越境大気汚染物質の地球規模循環の解明とその影響対策

環境省 黄砂とその健康影響について
資料1:黄砂とその健康影響について
資料2:黄砂の健康影響の解明に向けた環境省関連の研究成果

環境省 黄砂ってなに?

環境省 過去の黄砂飛来状況(主な黄砂現象の紹介)

環境省 微小粒子状物質(PM2.5)に関するよくある質問(Q & A)

環境省 黄砂問題検討会報告書(平成17年9月)
2.4.黄砂の記録・被害

気象庁 黄砂観測日数の経年変化

国立環境研究所 コラム「黄砂の話」

国立環境研究所 黄砂飛来の翌日に急性心筋梗塞が増える可能性

全国マスク工業会 マスクの種類と使用時の注意

広島大学 【研究成果】黄砂が海の生態系を育むって本当? ~海水中の石英粒子から海洋への黄砂沈着フラックスを推定~

この記事を書いた人

moshimo ストック 編集部

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