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熱中症のリスクがわかる、熱中症警戒アラートと暑さ指数(WBGT)とは?

近年、最高気温が35℃以上となる猛暑日が増加しており、平均年間日数を比べると1910~1939年は0.8日、1993~2022年は2.7日となり約3.5倍となっています。
また、アスファルトやコンクリートの舗装や、都市の排熱によって気温が高くなるヒートアイランド現象などの要因もあり、高齢者を中心に熱中症での死亡者数が増え、厚生労働省の統計では、熱中症による死亡数は1993年以前では年平均67人ですが、1994年以降は年平均663人と急増しています。

このように近年、大きな問題となった熱中症対策として、2021年の4月下旬から全国を対象に熱中症警戒アラートが発表されるようになりました。
熱中症警戒アラートの内容とともに、発表の指標となる「暑さ指数」について知って、熱中症への対策を考えていきましょう。

熱中症警戒アラートとは

熱中症警戒アラートは環境省と気象庁が熱中症の予防を呼びかけるための予報です。
暑さ指数が33を超えると予想されたとき、前日17 時頃と当日朝5 時頃に発表されます。この発表は市区町村の防災無線のほか、テレビやラジオのニュース、スマートフォンの防災アプリ、メール配信など、さまざまなライフスタイルに合わせた手段で伝えられます。
スマートフォンアプリはYahoo!防災速報NHK ニュース・防災アプリなどが対応していますので、熱中症予防のためにいれておきましょう。

このアラートは日本全国を58の地域にわけ、本州、四国は都道府県ごと、北海道は宗谷/上川・留萌/網走・北見・紋別/石狩・空知・後志/胆振・日高/渡島・檜山/十勝/釧路・根室の8つ、九州は7県と奄美、沖縄県は沖縄本島/八重山/宮古島/大東島の4つの区域で発表されます。

また、環境省のWEBサイトでは、さらに細かい区域で暑さ指数を確認することもできます。
環境省 熱中症予防情報サイト 全国の暑さ指数

暑さ指数(WBGT)とは?

熱中症警戒アラート発表の基準となる、暑さ指数とはどんな指標でしょうか?
熱中症を予防するためにアメリカで提案されたWBGT(湿球黒球温度 Wet Bulb Globe Temperature)という指標があり、このWBGTをわかりやすく暑さ指数と呼んでいます。

WBGTは
  • 気温を表す、乾球温度
  • 湿度の影響を取り入れた、湿球温度
  • 周囲の熱環境の影響を取り入れた、黒球温度
の3つを使って計算され、気温、湿度、 日射・輻射熱などを加味して求められる数値となり、下記の計算式で求められます。

WBGTの算出式

屋外の場合

WBGT(℃) =0.7 × 湿球温度 + 0.2 × 黒球温度 + 0.1 × 乾球温度

屋内の場合

WBGT(℃) =0.7 × 湿球温度 + 0.3 × 黒球温度

※環境省で発表されているWBGTでは、観測地点により上記と異なる方法で求める場合があります。

このように、湿度による放熱や、日射・輻射熱による体温の上昇が加味された指標となります。そのため、同じ気温でも暑さ指数は異なり、熱中症のリスクが変わってくるのです。

暑さ指数による熱中症への影響

熱中症警戒アラートは暑さ指数が33を超える場合に発表されますが、この数値は特別危険な状況となります。28を超えた時点で熱中症患者数が急激に増加しますので、熱中症警戒アラートの発表が無くても、暑さを感じれば予防を気にかけましょう。

暑さ指数はその数値によって、危険、厳重警戒、警戒、注意の4段階に分けられ、下記の行動指針が示されていますので、熱中症予防の参考にしてみてください。

日常生活に関する指針

危険(31以上)

すべての生活活動でおこる危険性。
高齢者においては安静状態でも発生する危険性が大きい。
外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する。

厳重警戒(28以上~31未満)

すべての生活活動でおこる危険性。
外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意する。

警戒(25以上~28未満)

中等度以上の生活活動でおこる危険性。
運動や激しい作業をする際は定期的に充分に休息を取り入れる。

注意(25未満)

強い生活活動でおこる危険性。
一般に危険性は少ないが激しい運動や重労働時には発生する危険性がある。

日本生気象学会 日常生活における熱中症予防指針Ver.4 より

運動に関する指針

運動は原則中止(31以上)

特別の場合以外は運動を中止する。特に子どもの場合には中止すべき。

厳重警戒(28以上~31未満)

激しい運動は中止。
熱中症の危険性が高いので、激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避ける。
10~20分おきに休憩をとり水分・塩分を補給する。
暑さに弱い人(※)は運動を軽減または中止。

※体力の低い人、肥満の人や暑さに慣れていない人など

警戒(25以上~28未満)

積極的に休憩。
熱中症の危険が増すので、積極的に休憩をとり適宜、水分・塩分を補給する。激しい運動では、30分おきくらいに休憩をとる。

注意(21以上~25未満)

積極的に水分補給。
熱中症による死亡事故が発生する可能性がある。熱中症の兆候に注意するとともに、運動の合間に積極的に水分・塩分を補給する。

ほぼ安全(21未満)

適宜水分補給。
通常は熱中症の危険は小さいが、適宜水分・塩分の補給は必要である。市民マラソンなどではこの条件でも熱中症が発生するので注意。

日本スポーツ協会 スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック より

暑さ指数以外のさまざまな原因

梅雨明けは特に注意

暑さ指数が同じ場合でも、8月後半よりも梅雨明けや、他の地域よりも北海道の方が患者数が多くなる傾向があります。これは、暑さが続いたことで身体が順応し、汗をかきやすくなることや、汗とともに排出される塩分が少なくなることが影響しています。
このため、梅雨明けなど急に気温が上がったときには、特に気をつけましょう。また、暑さが続く期間が長ければ熱中症のリスクが高まる場合があります。

年齢や体質での違い

年齢による傾向や体質、生活や労働環境などにも様々な要因があります。
高齢者は汗をかきづらく、暑さも感じにくくなるため、知らないうちに熱中症になっていることあり注意が必要です。のどが渇いていなくても、こまめに水分をとりましょう。

身体が小さい子供は体温が上がりやすく、汗線をはじめとする体温調節機能が発達していないためリスクが高くなります。また、幼児は大人と比べて地面と近い場所にいるため、地面からの熱の影響を受けやすくなります。暑さ指数が高い時には、長時間外にでかけないように気をつけましょう。
また、子供を車内に残したことを忘れて長時間買い物をしてしまい、熱中症にかかってしまうこともあります。「まさか、自分がおこすはずがない」と思っている親が、思い違いをして長時間閉じ込めてしまうケースが相次いでいるほか、高い気温で車がオーバーヒートしてエンジンが止まり、エアコンも止まってしまうこともありますので、できる限り子供はつれていくことが理想です。

管理者の気配りも大切

炎天下でのスポーツや仕事も、当然注意が必要です。自分自身が気を付けることはもちろん、スポーツの指導者、会社や上司なども熱中症対策に気を配るようにしましょう。


日ごろからの予防

このように熱中症には様々な要因が関係しますので、熱中症警戒アラートの発表にかかわらず、水分や必要に応じて塩分をこまめにとる、つばの広い帽子や日傘を使う、運動を避ける、日陰や屋内で過ごすようにします。また、本格的に暑くなる前に早足でウォーキングをして汗をかきやすい身体を作るなど、日頃からの予防に気をつけましょう。

熱中症の症状や詳しい予防方法はこちらのページで紹介していますので、参考にしてみてください。


参考資料

環境省熱中症予防情報サイト

気象庁 大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化
全国(13地点平均)の猛暑日の年間日数

環境省 熱中症環境保健マニュアル 2022

青森地方気象台
あおぞら彩時記 2021年第3号 熱中症警戒アラート
あおぞら彩時記 2022年第3号 暑さ指数(WBGT)

日本生気象学会 「日常生活における熱中症予防指針」Ver.4

日本スポーツ協会 スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック

この記事を書いた人

moshimo ストック 編集部

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