早ければ発災当日に。災害発生後48時間以内に避難所にベッドと仮設トイレ、食堂を準備して提供することが定められているという、イタリア。各州と災害ボランティア団体が公的備蓄倉庫を持っており、トイレコンテナ(仮設トイレ)やベッド、テント、キッチンカーなどを備蓄しています。日本の仮設トイレとは様子が異なり、コンテナに数個のトイレと洗面台が組み込まれているのです。屋根のついているコンテナの中にトイレと洗面台が入っていることで、「雨の降る中で、屋外でトイレを待つ行列に並ぶこと」を避けられるようになっています。
イタリアに限らず、欧米の多くで、被災した人たちの心身のケアを重視した避難所運営が行われているのには、基準とされているものがあります。
1997年に、複数の人道支援を行うNGOと国際赤十字・赤新月運動が開始したスフィアプロジェクトにおいて、人道支援の質と説明責任の向上を目的に策定された、通称「スフィア基準」と呼ばれるものです。正式名称は「人道憲章と人道対応に関する最低基準」。アフリカ・ルワンダの難民キャンプで多くの人が亡くなったことを受けて作られました。
日本語に翻訳されたものが、「
スフィアハンドブック」としてインターネット上でも、誰でも読むことができるようになっています。
スフィアハンドブックでは、最初に被災者と支援者に対する、2つの基本理念が書かれています。
- 被災者は、尊厳ある生活を営む権利があり、支援を受ける権利がある
- 災害による苦痛を減らすために、実行可能なあらゆる手段を取らなければならない
「スフィアとは」「人道憲章」「権利保護の原則」「人道支援の必須基準」の4つからなる「基本的なことが書かれた4章」とともに、主な支援分野の最低基準について言及した「技術的なことが書かれた4章」から構成されているスフィアハンドブックには、命を守るための4つの分野として「給水、衛生および衛生促進」「食料安全保障および栄養」「避難所および避難先の居住地」「保健医療」が挙げられています。
避難所でも尊厳ある生活を送るために、十分な食料と水や衣服、避難所などでも健康に過ごせるための衛生環境を整えることの支援は不可欠だということです。
この中で、避難所の共用トイレについての基本指標も書かれています。
共用トイレの割合は、災害が発生した直後(発災から48時間以内)でも50人に最低1基、中期段階では20人につき最低1基。住居と共用トイレの間の距離は、最大50メートル(住居から50メートル以内に設置)。女性用と男性用の割合は、3対1となるように。内側から施錠ができて適切な照明がついているか、女性や少女によって安心できるか、月経や失禁などについての衛生管理、使用や清潔を維持することが容易であるかどうかなども配慮が必要なこととされています。
また、避難所内で日常的な活動を営むための居住スペースについても、1人あたり最低3.5㎡が適切としており、同じ世帯であっても性別などに応じてプライバシーや距離間隔を確保する必要があるため、壁やドア、窓が必要としています。