B!

意外に知らない?台風の予想進路の見方、上陸・接近・通過などの用語について知ろう

台風は、年間平均で25個ほど発生しています。このうち、日本に上陸するのは平均して3個ほど。上陸はしなくても、およそ11個ほどの台風が、日本から300キロ以内に接近しています。台風は1年中発生しますが、日本に接近してくるのは、7月から10月に集中しています。 夏から秋にかけては、台風シーズンが続きます。気象予報などで台風に関する情報に触れる機会も増えてきます。台風情報として伝えられることの意味を理解して、早めの備えや避難行動に繋げましょう。

台風の卵「熱帯低気圧」と台風の実況と予報

26.5度以上の海水温の高い熱帯または亜熱帯地方の海で発生する低気圧、熱帯低気圧。「台風の卵」と言われることもあります。この、台風の卵、「熱帯低気圧」が発達して、中心付近の最大風速が17m/s(1秒に空気が17m移動する速さ)以上になると、「台風」と呼ばれるようになります。風に向かって歩けなくなり、転倒する人が出たり、傘を無理やり使用しても壊れてしまうくらいの速い風が中心付近で吹くようになると、熱帯低気圧が台風に変わるということです。台風は、文字通り、風の速さが目安となっており、雨量については考えられていません。

2020年9月から、台風に加えて、24時間以内に台風に発達すると予想される熱帯低気圧(以下、発達する熱帯低気圧とする)についても、5日先までの予想進路や強度を、台風情報として気象庁から発表されるようになりました。
気象庁では、こうした台風と発達する熱帯低気圧の「実況」を、3時間ごとに発表しています。
実況の内容は、台風と発達する熱帯低気圧の「中心位置、進行方向と速度、中心気圧、最大風速(10分間平均)、最大瞬間風速、暴風域、強風域」です。その時、台風と発達する熱帯低気圧はどこにあって、どのような状況なのかを伝えてくれるのが、「実況」です。

もちろん、実況に加えて「予報」も発表されます。予報の出され方は2つのパターンがあり、一つは24時間(1日)先までの12時間刻みの予報が、3時間ごとに発表されます。
さらに、5日(120時間)先までの24時間刻みの予報が6時間ごとに発表されます。
予報の内容は、実況と同様に、予報時刻の台風と発達する熱帯低気圧の「中心の位置(予報円の中心と半径)、進行方向と速度、中心気圧、最大風速、最大瞬間風速、暴風警戒域」です。
また、予想雨量などの防災に関わる情報や災害に関しての注意点などは、随時発表されます。

こうした、台風と発達する熱帯低気圧に関する実況や予報は、日本の南海上で発生して北上し、日本に「接近」すると予想されるときに、気象庁から発表されます。

台風の「上陸」「接近」「通過」

台風の「上陸」「接近」「通過」は、台風シーズンになるとよく耳にしますが、なんとなくイメージはできていても、実際にはどんな状況のことを言うのか、イメージとは少し違うかも知れません。
「台風の上陸」は、台風の中心が九州や四国、本州、北海道の沿岸線を横切った時とされています。
同じように沿岸線を台風が横切っていても、島や岬などは上陸とは言わず、「通過」と言います。気象情報で台風が発生した時には「潮岬を通過して」などと聞いたことがある方もいらっしゃると思いますが、これは「潮岬まで台風が来ていますよ」という意味。
台風の中心が同じように沿岸線を横切っていても、九州や四国、本州、北海道の沿岸線なら「上陸」、島や岬などでは「通過」と表現されるというわけです。

また、「台風の接近」は、地方予報区など(北日本、東日本、西日本など)の広がりを持った地域で考えるケースと、ある地点への台風の接近という、二つの考え方があります。
北日本や東日本といった広がりを持った地域で「台風の接近」を言う時には、その地域に含まれる気象官署 ※1 などから300km ※2 に台風の中心が入っている状態を言います。
「ある地点」への台風の接近という時には、その地点から300km以内に台風の中心が入っていることを言います。

※1 気象庁や気象台など、気象観測や天気予報の業務を行う公的機関
※2 300km = 東京から名古屋の手前くらいまでの距離

台風の進路予報

台風や、台風に発達すると予想される熱帯低気圧が発生して、日本に接近すると予測された時には、気象庁から台風の予想進路図が発表されます。
台風の予想進路図では、台風の現在地を×印で示されて、×印を中心に赤い実線の○で囲みます。この赤い丸が、暴風域です。このエリアでは、平均風速25m/s以上、屋根瓦が飛ばされたり、樹木が折れるくらいの風が吹いています。赤丸のさらに外側は、黄色の円で囲まれます。この黄色の円が、強風域。黄色の円のエリアでは、平均風速15〜24m/s、取り付けの悪い看板が飛ぶこともあるくらいの風が吹いています。

さらに、今後台風が進むと思われる範囲を、白い実線と点線で囲んでいます。日時と一緒に示される点線の円は、その時に台風の中心が入る確率が70%と予想されるエリアです。台風は必ずしも円の中心を進んでいくわけではなく、円の端にお住いの地域がかかっていたら、台風に直撃される可能性もあるということです。
時間を追っていくと、この予報円は大きくなっていくことがありますが、これは台風の大きさや強さとは関係ありません。それだけ台風の進路が読みづらくなっているということです。

また、進路予想図では、白い点線の丸を結ぶ白い直線の周りを赤い実線で結んで示されますが、これは台風の中心が予報円の中を進んだ場合に、暴風域に入る可能性のある範囲です。「暴風警戒域」と呼ばれています。台風の中心が予報円内に進んだ場合に、5日(120時間)先までに、暴風域に入る可能性のある範囲を示しています。
暴風警戒域や暴風域、強風域は、最大風速が小さい場合には、表示されないこともあります。

台風の大きさと強さ

こうした、台風中心や進路の予測、強風域、暴風域、暴風警戒域などと合わせて、台風の大きさと強さを伝えられます。
台風の大きさは、「大型の(大きい)台風」や「超大型の(非常に大きい)台風」といった言葉で表現されます。
「大型(大きい)」台風は、強風域の半径が500km以上から800km未満。東京から大阪まで高速道路に乗った時の距離が500kmなので、「大型(大きい)台風」は半径が東京から大阪くらいまでと考えると、その大きさをイメージしやすいかも知れません。
「超大型(非常に大きい)」台風になると、強風域の半径は800km以上。東京から大分が約790km、東京から北海道・札幌が約830kmなので、日本の本州ほぼ全域が強風域に入ってしまうほどの大きさということになります。

台風の強さは、「強い」「非常に強い」「猛烈な」という言葉で表現されます。これは、風の強さです。
「強い」台風では、最大風速が33m/s以上、44m/s未満。何かにつかまっていないと立っていられないくらいの風です。自転車やバイク、家屋などの屋根が飛ばされたり、列車の客車が倒されることがあるくらいの風が最大で吹く可能性があるということです。
「非常に強い」台風では、最大風速は44m/s以上、54m未満。小石が飛び、子どもや高齢者は飛ばされることがあるくらいの風です。ブロック塀で倒壊するものも出てきます。
「猛烈な」台風は、最大風速が54m/s以上。電柱や木造家屋が倒れたり、鉄塔が曲がるほどの風が最大で吹きます。窓ガラスは割れ、樹木は根から倒されるほどの風です。

風はもちろん、雨にも注意を

台風の強さや大きさ、進路予想図などでは、風に関しての情報が中心となります。しかし、台風の中心付近には積乱雲が渦巻いていて、風を伴った強い雨を降らせます。台風そのものの雨雲だけではなく、台風の周りの湿った気流が、台風本体に接近することで台風が接近するよりも早く雨を降らせたり、集中豪雨をもたらすことがあります。日本列島に前線が停滞していると、同じ地域で長時間にわたって豪雨になる可能性もあります。

台風や、台風に発達すると予想される熱帯低気圧が発生したら、最新の情報に注目しながら、風と雨の両方に警戒し、早めの備えや避難行動に繋げることが大切です。
こうした情報は、気象庁のホームページの「大雨・台風」のページから誰でも確認することができます。

<参考資料>
気象庁 台風の上陸数

気象庁 台風情報の種類と表現方法

気象庁 気圧配置 台風に関する用語

気象庁 台風の大きさと強さ

気象庁 風と雨

Tenki.jp台風の予想進路の見方

この記事を書いた人

瀬尾 さちこ

防災士。住宅建築コーディネーター。整理収納コンサルタント。

愛知県東海市のコミュニティエフエム、メディアスエフエムにて防災特別番組「くらしと防災チャンネル(不定期)」、「ほっと一息おひるまメディアス(毎週水曜日12時〜)」を担当。
以前の担当番組:みんなで学ぶ地域防災(2021年~2021年)、防災豆知識(2019年~2021年)
瀬尾 さちこの記事一覧

公式SNSアカウントをフォローして、最新記事をチェックしよう

twitter
facebook

この記事をシェア

B!

詳しく見る