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こどもが未来の防災を考える

先生は防災教育の「担い手」であり「つなぎ手」でもある ※

防災と言えば、災害と防災の知識を持つ大人がこどもたちを指導するのが一般的です。学校の授業の一環で消防施設や防災センターに行って実習したり、学校に講師を招いて勉強したりします。この場合、先生方の役割は専門家や専門施設とこどもたちを出あわせる「つなぎ手」です。こどもたちと地域を歩いてマップを作る時も、こどもたちを地域の人々につなぎます。
「つなぎ手」には2種類あると思います。一つは、先生が主として防災の授業を担当するけれども、時にはこどもたちに防災体験をさせたり専門家の講義を聞かせたりする方法です。いわゆる数時間から(時には数十時間から)なる「単元」を作り、先生が主導しながらも、先生の授業を補完し、あるいはアクセントを与えるために、時には先生以外の人の授業の機会を作るのです。授業をしている先生は防災教育の「担い手」ですが、時として「つなぎ手」になるのですね。
もう一つは、全部専門家に任せる方法です。いわゆる「丸投げ」です。こうなると、学校に防災教育が育たない、というのが私の主張です。やはり、「担い手」は先生方です。専門家と協働しながら、一緒に一連の授業(単元ですね)を作っていけば良いのです。

※文部科学省 防災教育支援に関する懇談会 中間とりまとめ
「−「生きる力」を育む防災教育を支援する−」 平成19年8月27日

避難の時に気を付けたい。小学生が気づいたポイント

そんな「担い手」が頑張っている小学校に呼ばれました。年間を通して防災を学んでいるこどもたちが、「避難」をテーマに実際に地域を歩いて考えたことを発表してくれました。こどもたちは、高齢者、障害者、妊婦、外国人など、災害時に支援を必要とする人の立場で地域内のある場所から学校(避難所)まで歩き、その時の発見を発表してくれました。 
「高齢者は足腰が弱いので、急な坂や階段を避けて歩きやすい道を選ぼう。」
「妊婦は長い距離を歩くのが大変だ。途中で少し休憩する場所が欲しい。」
「全盲の人は地震で道路に段差ができたり、通り慣れた道が倒壊家屋やブロック塀に塞がれると、転んだり道が分からなくなったりする。2人以上で一緒に歩いて、足元の情報を伝え続けたい。」
「外国人は日本語ができないこともある。ジェスチャーで話したり、優しい日本語を使ったりしたい。」
「車椅子の人は、段差などで苦労する。一緒に歩きながら、足元と周りの情報をしっかりと伝えたい。」
小学校4年生が、自分が要援護者の立場になって避難経路を歩いた結果、発見したことです。いい視点だと思いませんか。日頃からこんな防災教育を継続していきたいものです。

100年後の防災を考えるミュージアム

高校生と、どんな災害ミュージアムを作ればこどもたちが訪れてくれるかを話し合う機会がありました。ある生徒は、「博物館は過去のことだけを展示している。もっと明るい未来の展示ができないか」と指摘してくれました。なるほど、災害ミュージアムには災害時の写真と動画、作文、語り、遺物など、過去に起こった災害が展示されています(震災から10年が経過した東日本大震災の各地にあるミュージアムの展示を「過去」と言い切るのは躊躇しますが)。
もちろん、将来、災害にあったらどう身を守るかといった、ちょっとは未来に振った展示もあります。でもそれはどちらかというと、災害時のノウハウコーナーであって、希望のある未来の展示ではありません。「こうしろ!」といった教えです。未来の災害予測を示す展示もあります。「気を付けよう」「我が事にしよう」といった呼びかけと受け取れますが、考えようによっては「脅しの展示」です。なるほど、高校生が感じているように、災害ミュージアムが展示する未来はちょっと怖いですね。

そしてその高校生はこんなアイデアをぽつりと語ってくれました。災害時に人々を「たすけてくれるツール(助・援・救)」を考えてもらうワークショップを開催します。こどもたちはおそらく自由な発想を駆使して、ドラえもんの道具のような奇抜な防災ツールを考えるでしょう。でも、それは絵空事ではありません。ドラえもんの登場よりもう少し前、鉄腕アトムを描いた手塚治虫さんが色々な作品の中で紹介していた「未来」はこどもたちを虜にしました。同時に、実現不可能な憧れとして受け止められていました。しかし、そんなツールの中には、すでに現実となっているものがたくさもあります。こどもたちが考える「未来」も未来の災害に役立つのではないでしょうか。ドラえもんの道具もそうです。私はドローンを見るとタケコプターを思い出します。

100年後の防災を考えるコーナーをミュージアムに作りましょう。こどもたちが考える未来の防災道具を展示しましょう。もしかしたら、100年後に、その道具が人々を助けているかもしれません。

この記事を書いた人

諏訪 清二

全国初の防災専門学科 兵庫県立舞子高校環境防災科の開設時より科長を務め、東日本大震災をはじめとする国内外の被災地でも生徒とともにボランティアや被災者との交流に従事。
防災教育の第一人者として文部科学省「東日本大震災を受けた防災教育・防災管理等に関する有識者会議」など、防災教育関連の委員を務める。

2017年4月から防災学習アドバイザー・コラボラレーターとして活動開始。
学校での防災学習の支援活動を中心に、防災学習、災害、ボランティア、語り継ぎなどのテーマで講演活動も。
中国四川省、ネパール、スリランカ、モンゴル、エルサルバドルをはじめ、海外各地でも防災教育のプロジェクトに関わってきた。

2017年度~ 神戸学院大学現代社会学部 非常勤講師 / 兵庫県立大学 特任教授(大学院減災復興政策研究科)
2018年度~ 関西国際大学セーフティマネジメント研究科 客員研究員
2020年度~ 大阪国際大学短期大学部 非常勤講師
2021年度~ 神戸女子大学 非常勤講師 / 桃山学院教育大学 非常勤講師

【著書】
図解でわかる 14歳からの自然災害と防災 (著者:社会応援ネットワーク 監修:諏訪清二)
防災教育のテッパン――本気で防災教育を始めよう
防災教育の不思議な力――子ども・学校・地域を変える
高校生、災害と向き合う――舞子高等学校環境防災科の10年
※こちらの書籍は、現在電子書籍での販売となります。

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