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「集中豪雨」と「ゲリラ豪雨」なにが違うか理解しよう

青空にもくもくと積乱雲(入道雲)がわきたつ様子は、夏の季節らしい風景。そんな空を眺めていると、なんだかワクワクするような気分になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
積乱雲は、素敵な空の風景を見せてくれる反面、時に災害をもたらす、豪雨と雷を発生させます。
夏になると、「集中豪雨」や「ゲリラ豪雨」が各地で発生し、ニュースや気象情報などでもたびたび耳にするようになります。同じ「豪雨」でも、集中豪雨とゲリラ豪雨は少し違います。
また、「豪雨」と「大雨」にも違いがあります。どのような違いがあるのかを知ることで、豪雨災害から身を守るヒントになるはずです。

そもそも「豪雨」とは?「大雨」との違いは?

そもそも、「豪雨」とはどのような雨でしょうか。「まとまって、激しく降る雨」ということは、なんとなくイメージできるかも知れません。「大雨」とは、どのように違うのでしょうか。

天気予報などで「大雨」や「豪雨」という言葉を使われるときには、気象庁による定義に基づきます。その大きな違いは、まだ災害が発生していないか、すでに災害が発生しているかどうかです。

「大雨」は、災害が発生するおそれのある雨。「1時間に○○mm以上」という明確な定義はありませんが、気象庁のホームページの過去の気象データ検索の天気概況では、ある期間に30mm以上の雨の場合に「大雨」と記述されています。

「豪雨」は、激甚災害や命名された大雨災害のような著しい災害が発生した、顕著な大雨現象。「○○豪雨に匹敵する大雨」といったように、過去の大雨災害を引用する形で使われ、「豪雨」という単独の言葉では気象情報などでは使われません。

つまり、気象情報などでは、現在降っている雨や、これから降る雨を予報するときなどは「大雨」という言葉を使い、「大雨が降る見込みです」などと聞いた時には、災害が起こるかもしれないような雨が降っている(降る可能性がある)ということです。
また、「○○豪雨に匹敵する大雨」と気象予報などで発表された場合には、過去に発生した豪雨災害と同じくらいの雨ということになります。

100mmから数百mmの雨量をもたらす「集中豪雨」

集中豪雨は、一般的には、ある特定の地域で短時間に多量の雨が降ることを意味しますが、気象庁では雨量など、もう少し具体的に定義されています。
気象庁の定義では、「集中豪雨」は、積乱雲が同じ場所で次々と発生・発達を繰り返すことによって、同じような場所で激しい雨が数時間にわたって降り続き、狭い地域に100mmから数百mmの雨量をもたらす雨です。線状降水帯は、集中豪雨を引き起こす原因の一つです。

前線や低気圧などの影響や、雨を降らせやすい地形の効果で積乱雲が同じ場所で次々に発生・発達を繰り返して、激しい雨が数時間にわたって狭い地域で降り続くことによって発生する、集中豪雨。

例えば、2020年に発生した令和2年7月豪雨では、5日間に渡って梅雨前線が東シナ海から九州付近を通って、東日本にのびてほとんど停滞したことによって、西日本や東日本で大雨となり、特に九州や岐阜県では記録的大雨となりました。この豪雨で、熊本県の球磨川や筑後川、岐阜県の飛騨川、島根県および広島県を流れる江の川、山形県の最上川といった大河川の氾濫が相次ぎ、土砂災害や低地の浸水などが発生し、多くの人的被害や物的被害を出しました。

集中豪雨は、必ずしも特定の狭い地域に短い時間でおきるとは限らず、日本のあちこちで数日にわたって発生し、川の氾濫や土砂災害などを引き起こし、家屋などの財産や人の命をも奪っていった大雨なのです。
集中豪雨は、7月から10月を中心に、毎年各地で発生しています。

「ゲリラ豪雨」こと「局所的大雨(局所的な大雨)」

局地的に限られた地域に、短時間で激しく降る突然の雨のことを、「ゲリラ豪雨」と表現します。
ゲリラ豪雨は、範囲も狭く、突発的に起こるため、事前に予測することが難しいことから、軍事での小部隊で奇襲をかけて変則的な戦闘を主に行う「ゲリラ」に例えられ、マスメディアを中心に使われるようになった表現です。
2008年には新語・流行語対象のトップ10にも選出されていますが、ニュースや気象情報などで使われる正式な気象用語ではありません。

気象庁による天気予報などで用いる用語では、ゲリラ豪雨ではなく「局地的大雨(局地的な大雨)」という言葉が使われ、雨量などが具体的に定義されています。
「局地的大雨(局地的な大雨)」は、急に強く降り、数十分の短い時間に狭い範囲に数十mm程度の雨量をもたらす雨です。
集中豪雨が、積乱雲が同じ場所で次々と発生・発達を繰り返すことによって、同じような場所で激しい雨が数時間にわたって降り続くのに対して、局地的大雨は、単独の積乱雲が発達することによって発生します。大雨や洪水の注意報・警報が発表される気象状態でなくても、急な強い雨のために河川や水路が短時間に増水したり、急激な状況変化によって重大な事故などを引き起こすことがある雨です。

局地的大雨は、近年の都市型気象災害としてあげられることが多く、都市部のヒートアイランド現象が局地的大雨を発生しやすくしていることも指摘されています。夏場になると、住宅地やオフィス街など、人の活動するところでは、エアコンや自動車のエンジン、ビルのコンクリートやアスファルト舗装が取り込んだ太陽の熱など、多くの排熱が発生します。この排熱で、周りの地域よりも気温が3度〜4度高くなり、そのために強い上昇気流が生まれて、積乱雲を発達させやすくするとも言われています。

「集中豪雨」は過去の災害との比較に。「ゲリラ豪雨」は今またはこれから発生する大雨。

「集中豪雨」と「ゲリラ豪雨」は、どちらも「豪雨」という言葉を使われていますが、集中豪雨は「○○豪雨に匹敵する大雨」のように過去に発生した災害との比較で使われることがほとんどです。気象情報やニュースなどでは、「大雨」やより具体的な「線状降水帯」などの情報が伝えられ、補足として用いられることの多い言葉です。

「ゲリラ豪雨」は、マスメディアなどでは今でも使われることがありますが、同じ「豪雨」という言葉を使っていても、「局地的大雨(局地的な大雨)」のことで、今まさに降っている大雨の一種なのだと認識しておくのが良いでしょう。

ゲリラ豪雨こと「局地的大雨」は、狭い範囲で発生するものの、短時間で多くの雨を降らせ、みるみる間に河川などは増水し、川の氾濫やアンダーパス(※) の冠水、土砂災害などの災害をもたらすことがあります。
また、河川の上流部などで局地的大雨が発生すれば、下流や支流にあたるところではその時には雨が降っていなくても、増水した上流部の水があっという間に下流や支流に流れ、中州に取り残されたり、氾濫が起こる可能性もあります。
※交差する道路などで周囲の地面より低くなる場所

局地的大雨は予測が難しいとされていますが、前兆はあります。
例えば、真っ黒な雲が近づいてきて、辺りが急に暗くなった時。冷たい風が吹き出したり、大粒の雨や雹(ひょう)が振り出すこともあります。雷の音が聞こえたり、雷光が見えた時も、局地的大雨の予兆です。
気象情報での「大気の状態が不安定」というキーワードも、急な雨や雷の可能性がある時です。
気象庁のホームページのキキクル(危険度分布)などを確認し、身を守る行動をしましょう。

気象情報などで使われている言葉の意味を知ることで、どのような危険が迫っているかを私たちはより知ることができます。


<参考資料>
気象庁 台風や豪雨から身を守るために

気象庁 天気予報等で用いる用語 雨に関する用語

国土交通省 集中豪雨、局地的な大雨、台風による大雨について

気象庁 集中豪雨への備え

首相官邸 大雨・台風では、どのような災害が起こるのか

tenki.jpゲリラ豪雨のしくみ

この記事を書いた人

瀬尾 さちこ

防災士。住宅建築コーディネーター。整理収納コンサルタント。

愛知県東海市のコミュニティエフエム、メディアスエフエムにて防災特別番組「くらしと防災チャンネル(不定期)」、「ほっと一息おひるまメディアス(毎週水曜日12時〜)」を担当。
以前の担当番組:みんなで学ぶ地域防災(2021年~2021年)、防災豆知識(2019年~2021年)
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