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日本を守る地震予測。緊急地震速報や地震がおこる確率はどのように調べている?

みなさんもスマートフォンから緊急地震速報のアラームが鳴った数秒~十数秒後に、大きなゆれがおきたという経験があるかと思います。
震度6強といった大きなゆれの中では立っていることはできず、地面をはって移動することも難しくなります。そのため、緊急地震速報から地震までのわずかな間でテーブルの下に隠れる、硬いもので頸椎(首)や頭を守る、火から離れるといった、とっさの行動が身の安全を大きく左右します。
また、地震がおきてから今いる場所くるゆれの以外にも、首都直下地震や南海トラフ地震といった大地震の確率や各地でおこるゆれの大きさも予測されており、事前の対策に役立てられています。

このような、地震の予測はどのような根拠をもとにされているのでしょうか?私たちの日本を守る地震の予測について学んでみましょう。

地震の予測・研究をおこなう地震調査研究推進本部

日本の地震予測は文部科学省の地震調査研究推進本部という組織を中心として研究がされています。この地震調査研究推進本部は1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに、政府が地震に関する研究や調査をとりまとめ、防災を担当する機関や国民に伝えることで地震防災対策を推進させるために設立されました。

地震調査研究推進本部によって立案された施策や計画をもとに、文部科学省、国土地理院、気象庁、海上保安庁、防災科学技術研究所、海洋研究開発機構、産業技術総合研究所、情報通信研究機構、消防庁消防研究センター、大学が研究や観測を行っています。
こうした連携する機関で行われた研究や調査データをもとに、将来的に地震がおこる可能性を予測する「長期評価」、地震がおきた場合どれくらいの強さのゆれがおこるかを予測する「強震動評価」、どれくらいの高さの津波がどれくらいの確率でおこるかを予測する「津波評価」などが行われており、この研究成果は国や自治体、民間での対策に役立てられています。
首都直下地震のおこる確率は30年の間に70%、南海トラフは30年の間に70~80%の確率でおこるといった予測を目にしたことがあるかもしれませんが、こういった予測も地震調査研究推進本部での研究成果が元となっているのです。

どれくらいの大きさでゆれがおこるかを伝える緊急地震速報

緊急地震速報は遠くの震源地でおこった地震のゆれが、現在いる場所にどれくらいの大きさで届くかを予測し、伝える仕組みです。
日本には防災科学技術研究所、気象庁、地方自治体により4,500の地震計が設置されています。この地震計は陸地にまんべんなく設置され、常にその状況が気象庁に送られています。
地震がおこるとP波とS波という2つのゆれがおきます。P波=Primary wave(1番目の波)は早く伝わりますがゆれは小さく、S波=Secondary wave(2番目の波)はP波よりも遅く伝わりますがゆれが大きくなります。P波のゆれを検知した地震計から送られたデータをコンピューターで処理することで、震源や地震の大きさ(マグニチュード)を推定して日本各地でおこるゆれの大きさを計算し、大きなゆれのS波が来る前に通知することができるのです。

「緊急地震速報(予報)」と「緊急地震速報(警報)」

現在はコンピューターの性能と予測の手法が向上し、たった1つの観測点のP波のデータから震源やマグニチュードを推定することができるようになり、解析のスピードも上がっています。
しかし、観測点が少ない場合には誤報になることがあり、小さい震度の通知が頻繁にされると不便を生じることから、高度利用者向けの「緊急地震速報(予報)」と一般利用者向けの「緊急地震速報(警報)」に分けられています。
「緊急地震速報(予報)」は観測点が1か所以上で計測され、マグニチュード3.5以上または最大震度3以上となることが予測された場合の速報で、地震発生から2~3秒後には関係機関にむけてデータが送られます。
「緊急地震速報(警報)」は観測点が2か所以上で計測され、最大震度が5弱以上と予想された場合の速報で、地震発生から5~10秒後には関係機関にむけてデータが送られ、報道機関や携帯電話会社を通じてテレビやスマートフォンなどに届けられます。
また、緊急地震速報(予報)・(警報)ともに、時間の経過によって内容に変化があった場合には、続報として精度の高いデータが送られます。

このように、地震計から送られたデータを瞬時に解析し気象庁から関係機関に送ることで、事前に大きなゆれが来ることを知ることができるのです。

緊急地震速報だけに頼らず、日ごろから備えよう

陸の下が震源となるなど今いる場所と震源が近い場合には、ゆれの予測とデータの送信が間にあわず、大きなゆれが来る前に緊急地震速報が届かないことがあります。
また、マグニチュードが大きな場合には地震の原因となる断層破壊がおこる時間が長くなり、マグニチュード6では10秒、マグニチュード8では100秒と長時間が続きます。断層破壊の途中で予測を行うこととなるため予測精度には限界があり、緊急地震速報の内容と実際の震度が違う場合もあります。

緊急地震速報の予測精度は高くなりスピードも速く進化していますが、おこる地震の条件によっては通知が間に合わなかったり、誤差が生じたりすることもあります。
とっさに身を守る時間が無くても、家具の固定や物が飛んでこないようにしておくこと。また、大きなゆれで固定した家具が倒れるなどの可能性を考え、小さなゆれや緊急地震速報がきたら、テーブルの下に隠れる、硬いもので頸椎(首)や頭を守る、火から離れるなどをして身を守ること。この両方を行うことで、大けがを避けられる可能性が格段にあがります。

今後おこる地震の確率を予測する長期評価

地震調査研究推進本部では、首都直下地震は30年の間に70%、南海トラフは30年の間に70~80%の確率でおこると予測をしていますが、このような今後おこる地震の確率「長期評価」はどのように予測されているのでしょうか?

地震は大きく海溝型地震と内陸型地震(直下型地震)のタイプに分けられるのですが、長期評価もこの2つのタイプで予測されています。
日本の陸地の下には「ユーラシアプレート」「北米プレート」と、海の下には「太平洋プレート」「フィリピン海プレート」と呼ばれる4つの地盤があります。この陸側のプレートと海側のプレートの境目が太平洋にあるのですが、プレートの境目や海側のプレートが割れてずれると海溝型地震がおこります。
対する内陸型地震は陸側のプレート表面が割れてずれることによって、陸地の下や陸地の近くの海でおこる地震です。


いずれのタイプの地震も、同じ場所・同じ大きさ・一定の周期で繰り返しおこることが多いため、過去におきた地震の時期と大きさを調べることによって、次の地震がおこる確率を推定することができるのです。

海溝型地震の予測

海溝型地震の場合、同じ場所で地震がおこる周期は100~150年となることが多く、近年の観測や古文書に残された記録をみることで、地震のおこる周期をおおよそ推定することができます。
ただし、東日本大震災をおこした東北地方太平洋沖地震のようなマグニチュード9近くとなる巨大地震の場合は、周期が数百年~1000年に1度と非常に長くなるため、歴史に記録されていないこともあります。そのため、津波が残した堆積物を調べることで、記録にない海溝型地震がおきた時期の調査も進められています。
また、地震は同じ場所・同じ大きさ・一定の周期でおこる地震が多いとされるものの、過去の地震をみると全く同じ場所が震源とはなっていないことから、最新の予測では震源となる地域の見直しなどもされています。

断層でおこる地震の予測

断層と呼ばれる過去の地震でできたプレートの割れ目の中でも、将来も活動すると考えられるものは「活断層」に指定され、日本では2000以上の活断層が見つかっています。
活断層では同じ場所で繰り返し地震がおこります。その周期は1000~1万年と非常に長くなりますが、日本には活断層の数が非常に多くあるためその分地震のおこる確率も高くなります。
日本にある2000の活断層のうち、大きな地震がおこりやすい長いもの、一つ一つは短くても広い範囲で重なって続いているもの。また、地震がおきた時の社会への影響度が高いとされるもの、このような断層を主要活断層帯として114選び調査をしています。

それぞれの断層で地震がおこる周期はおおよそ決まっているため、過去に複数の地震がおきた時期がわかる断層ではその間隔を参考に、地震がおきた時期が1つまたはわからない断層は長期間でどれくらい断層がずれたかをみることで、地震のおこる周期を推定することができます。
この断層ごとの周期から、今後〇〇年間に地震がおこる確率を求めることができるのです。

こうして予測された地震の評価は地震調査研究推進本部のWEBサイトで、日本地図上にわかりやすくまとめられていますので参考にしてみてください。
地震本部 - 地震に関する評価 主な評価結果

ただし、発見されている2000の活断層のほかにも、地中に埋まって見つかっていない活断層も多くあります。また、阪神・淡路大震災をおこした兵庫県南部地震では、30年におこる地震の確率が0.8~4%であったとされています。このように、小さな確率でも実際に地震がおこることがありますので、日本ではどのような場所でも地震があると考え、油断せず日ごろからの備えをしておきましょう。

進化する地震予測

日本は地震大国であることから、世界でもトップクラスの調査と研究がされており、地震予測には新しい知見や手法が取り込まれ進化をしています。
まだ研究段階ではありますが、海底のプレートの境目のどの場所にひずみがたまっているかを観測して予測に生かす研究や、海底にも地震計を設置して緊急地震速報をよりよくする研究がおこなわれ、将来の地震予測の精度を上げる取り組みもされています。

最後に一つ注意点として、現在の科学では「時間・場所・地震大きさ」の3つの要素がそろった地震の予知することはできません。「〇日以内に、首都圏で、震度〇の地震がおこる」といった話を聞いた場合には、デマだと考えられますので、むやみに広めたり、信じたりしないようにしましょう。

地震予測は100%の精度を誇るものではありませんが、地震の危険から身を守るのにとても役に立つ情報です。地震予測の活用と備えの両方をおこない、しっかりと身を守れるようにしておきましょう。

参考資料

地震調査研究推進本部
海溝型地震の長期評価
日本海溝沿いの地震活動の長期評価 概要資料

地震調査研究推進本部
長期的な地震発生確率の 評価手法について
報告書「長期的な地震発生確率の評価手法について」
長期的な地震発生確率の 評価手法について - 付録 長期的な地震発生確率についての解説

気象庁
緊急地震速報(警報)及び(予報)について

気象庁
緊急地震速報の特性や限界、利用上の注意

国土地理院
活断層とは何か?

文部科学省
地震予知のための新たな観測研究計画(第2次)の実施状況等のレビューについて(報告)【要旨】

防災科研
観測網の整備計画

この記事を書いた人

moshimo ストック 編集部

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