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森林の課題解決と災害時の助けとなる薪の備え「備蓄木プロジェクト」<後編>

三重県いなべ市を中心に活動する、「一般社団法人日本森の十字社」。森林の抱える様々な課題の解決と南海トラフ地震や首都直下地震などの大規模災害時に発生すると予測される長期間の停電などの備えにもつながる、備蓄木(びちくぼく)プロジェクトに取り組んでいます。

この、一般社団法人日本森の十字社の代表理事を務める河村ももこさんに、前編では、手入れの行き届いていない暗い森が抱える問題や、それが土砂災害などの山地の災害リスクを高めてしまうだけでなく、都市部の洪水のリスクや獣害などにも影響を与えてしまうなど、主に森林の抱えている課題について伺いました。
課題の解決策として。まずは、森林の立木を適正に間伐して、搬出し、使うようにしなければいけないということでした。

後編では、団体の取り組んでいる「備蓄木プロジェクト」などについて伺います。

般社団法人日本森の十字社 代表理事 河村ももこさん
東京都出身。大学時代にサスティナブル(持続可能)な社会を学んだことや、東京で東日本大震災を経験したことなどをきっかけに、地方への移住を考え始める。結婚を機に、三重県いなべ市に移住し、森林の課題について知る。たまたまラジオで聴いた東日本大震災で被災した子どもの体験談をきっかけに、森林の課題と災害時の備えについての考えが繋がり、2019年に一般社団法人日本森の十字社を設立。

適切に間伐された木材をわかりやすく

—一般社団法人日本森の十字社では、どんな取り組みをしていらっしゃるのでしょうか。

(一般社団法人日本森の十字社 代表理事 河村ももこさん:以下、河村さん)
大きく分けて2つの取り組みを行っています。
放置状態の人工林を専門家の指導のもとで適正に間伐して整備し、自然環境に配慮した搬出方法で山林から木を搬出して、その間伐材を、災害時などの非常時に屋外で暖をとるための備蓄燃料、薪にして、普及させています。この備蓄燃料に「備蓄木(びちくぼく)」という名前をつけて、備蓄木プロジェクトとして活動しています。
もう一つが、適切に間伐された備蓄木にフェニックス(命が絶えても蘇ることで永遠の時を活くると言われる伝説上の鳥。不死鳥。火の鳥)をモデルとしたマークをつけるということです。「備蓄木」という言葉も、そしてフェニックスマークのロゴもうちで考えて作成し、商標登録を取っています。

—マークをつけることですか。それはなぜですか?

(河村さん)
なぜ、備蓄木にマークをつけるかというと、実際に現場に入ってみて、最も感じたことが、間伐材がタダ同然の価値がついてしまっていることが課題がと思ったからでした。
間伐材の需要がないと、森がきれいになっていかないのです。ということは、森林を明るくきれいな環境にするためには、間伐材の価値を高めていかなくてはと考えました。一般社団法人日本森の十字社として間伐材にフェニックスマークをつけることで、ブランディングしていくことに繋がるのではないかと思いました。そういった中で、もしかしたら間伐材の中でも、薪という燃料としてよりも、もっと質が高いものはまた違う使い方をしていくって言うこともブランディングしながら考えています。

—フェニックスブランドの備蓄木ということですね。

(河村さん)
私たちは、自分たちが森林に入って現場で何かをやるということにはこだわっていません。それよりは、適切に間伐してくださっている方の木材の価値を、いかにしてきちんと伝えていくのかという、普及活動ですね。その一つとして、備蓄木という災害時の燃料になるものをかたちにしています。

—河村さんと同じように、日本の森林の課題などを踏まえて間伐をされている方の薪を備蓄木としてフェニックスマークをつけることで、間伐を行なっている方の気持ちの部分からわかりやすく見えるようにするということですね。

(河村さん)
そうですね。管理がされていない森林は、森林が土砂を捨てる場所になってしまっていたり、伐採して太陽光パネルを設置する場所になってしまっていたりというような、そんな使われ方をされてしまっているところもあります。森林が不適切な使われ方をされていたり、乱暴な伐採をされているケースもあるということですね。森林を不用意に削ってしまうようなことを防いで行きたいのです。

ただ、そんな風に伐採された木も、適切に間伐されて出されて来た木も、見た目には同じなんですよ。最後に薪の状態にしてしまうと、まったく分からないのです。
適切な間伐によって森林からでてきたものかどうか、一般社団法人日本森の十字社が責任を持って確認した木ですよということを伝えられるように、フェニックスマークをつけていくということをやっています。

例えば、スーパーなどで買い物をするときに、パッケージに「オーガニックですよ」とか「自然に配慮していますよ」とかってパッケージなどに書いてあるものを購入するように心がけている方もいらっしゃると思うんですが、そういったことと同じイメージですね。見た目には同じ薪を使うとしても、それが適切に間伐されて森林を守り育てることにつながるものかどうか、手に届いた時に確認してもらう要素としては、マークしかないのかなと思いました。私たちに対する信頼というか、日本森の十字社のフェニックスマークを信頼してもらえるようにやっていくという意味で。ですから、このフェニックスマークのロゴがすごく重要な部分になります。

—「木材を使っていきましょう」というざっくりとした感じではなく、フェニックスマークをつけることで「森林を守り育てるために間伐された、間伐材を使いましょう」ということが視覚化されてきますね。

(河村さん)
山林を所有している方の中には、森林組合に加入して管理をされている方もいらっしゃるのですが、規模や採算性などを考えて森林組合に加入せずにやっていらっしゃるところもあります。自伐林業と言ったりするのですが、小規模で営まれているようなところですね。私たちがお付き合いしているところは、森林組合に加入していらっしゃるような大きな規模のところだけでなく、こうした自伐林業としてやっていらっしゃる、小さな規模のところからも備蓄木を提供して頂いています。そうした方たちの間伐材に私たちがわかりやすく価値をつけることで、森林組合のような大きなところに乗れなくても、森から木を出して、使っていければ良いと思うんですよね。小規模で行なっているところは、森林に林道がないところから木を出してくるので、効率は悪くなるのですが、ただ、そこに価値をつければ、もう少しなんとかできるのかもしれないと、現状はそういう取り組みを行っているところです。

東日本大震災のエピソードをきっかけに

—森林の課題という背景がありながら、間伐材の利用を促進するために薪にして普及させるというのはよくわかったのですが、薪を街に備蓄する「備蓄木プロジェクト」という取り組みになっていったのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか。

(河村さん)
間伐材の活用に関しては、災害時にいかにして暖をとるのかということを考えました。
そういう考えに至ったのは、数年前にたまたまラジオで聞いた、東日本大震災で被災した小学生の男の子の、被災体験を振り返ったお話でした。
その男の子は、東日本大震災の時に津波で流されてしまって、たまたまある山の中に打ち上げられたということでした。山の中なので、木はたくさんある。それで、大人たちと一緒に、細い枝などの木をかき集めて、たまたまタイターを持っていた人がいたので、集めた木に火をつけて、焚き火をすることができたそうなのです。津波に一度飲まれてしまっているので、身体は濡れてしまっていますし、雪も降ってきて、もしもその時に暖を取れていなければ多分、命を落としていたと思うというお話でした。

東日本大震災で被災した男の子はたまたま山だったので木を集めて焚き火をできたわけですが、街だったらどうだったのかなって思ったのです。間伐材が森林にはあるわけですし、焚き火をして暖を取れるということが偶然ではなく必然にできるように、間伐材を日頃から災害時に備えとして普及できないかと考えたことが、「備蓄木プロジェクト」の取り組みをしようというきっかけになりました。

—こうした、被災された方の声と、林業の課題。この2つのことに河村さんが触れたことで、それがあわさって「備蓄木プロジェクト」を始めるに至ったわけですね。

(河村さん)
森林の課題については前回もお話ししましたが、森の状況が私にとっては想像以上にひどいと感じたのです。山があって、土があって、川があってという環境であれば、水や農作物に困ることもないし、持続可能な暮らしができるはずだと思って、東京から意気込んで三重県いなべ市に移住してきたのですが、実際には森林は管理もされていなくて暗く荒れた状況なのだと知ってしまうと・・・。

私は子どもの頃からずっと毎週末にはキャンプに行っていました。キャンプ場は囲われて出来上がった空間なので、森の魅力的なところだけが見えていたのです。そういう意味では、移住してくるまではちゃんと山に入ったことがなく、課題も知らずにいたということですね。森林の抱える課題を知った時に、これまで「自然が好き」と簡単に言っていたことが、全然違っていたということに気づいて、ショックを受けたのとともに、それがどれだけ災害と関わっていくのかというようなことを真剣に考えました。森林が手入れされていないことによって起こる、獣害に関してもですね。

地域の方にお話を伺いながら、そういった意味でも、もっと森林に人が入ったり、手を入れたりなど、していかなくてはいけない要素もわかってきたり、林業も防災も農業も、木材自給率を上げることについても、いろいろな方面から備蓄木プロジェクトの必要性があると考えました。

—防災と、森林の課題解決のための間伐、さらに木材の活用というのは、すべてつながっていることなのですね。

(河村さん)
気象災害についても被害が甚大化するようなものが頻発していますし、木材活用の促進は国の方針でもあります。少しでも木材時給を上げていくと同時に、主に防災と林業に対して貢献していけるのではないかと考えています。社会の需要とも合っているのではないかと。それが事業化の理由です。

「備蓄木ステーション」を安全な場所としての目印に

—備蓄木プロジェクトについて、具体的に教えてください。

(河村さん)
森林から比較的搬出しやすい、長さ60センチの間伐材の薪です。薪というと、普通は広葉樹が使われることが多いのですが、針葉樹の人工林から間伐されて出されてきたものなので、薪の樹種は、杉やヒノキです。
ヒノキは「火の木」というくらい、油分を含んでいて火付きが良いので、災害時に屋外で暖をとるのに向いています。そういった実用性も踏まえつつ、3立方メートルほどのスペースで30人ほどの人がぐるっと火を囲んで暖をとることのできる「備蓄木ステーション」と、個人や少人数の事務所などでも備えることのできる「ペール缶の備蓄木セット(BICHIKU-BOKU S-Kit)」を用意しています。

—現状では、備蓄木ステーションは、どういうところまで進んでいますか

(河村さん)
備蓄木ステーションの設置をとにかく増やすっていうことから始めました。実は、一番最初は、ボランティアで置いて頂いていたのですが、ただ資金的なところで、難しい状況になりました。また、置いていただくところにも、「置いてあげているでしょ」という感じになってしまうと、場所の選定が難しくなるという課題に直面しました。これまで、モデルケースとして置いていただいたのは、建設業と飲食業、そして自治会の敷地内という、三重県いなべ市で3か所です。

今後は、ボランティアというかたちではなく、企業や行政に必要なものとして買って頂いて、企業の敷地内や、避難所・避難場所などに置いて頂けるようにシフトチェンジを図っています。BCPに取り入れて頂いたり、公助・共助の一環として、備蓄木ステーションを購入して設置していただきたいと考えています。

—今後の目標として、どのエリアにいくつまでとか、街の中でどれくらいの間隔で設置していくといった、具体的なものはありますか

(河村さん)
やはり、多くの避難所や避難場所に置いて頂きたいと考えています。

日本森の十字社を始めるきっかけになった、東日本大震災で被災された方のお話は、たまたま逃げてたどり着いた高台の山の中で、偶然、暖をとることができて助かったということでしたが、こういったことを必然にしたいのです。屋外の公園や駐車場など、屋外の避難場所か、避難所の外に設置してもらえるようにしたいんです。
設置の間隔ということで言えば、各避難場所・避難所に置いていただきたいですね。

さらに、避難場所・避難所だけでなく、企業に協力していただきたいと思っています。特に、工場や大型のショッピングモールに置いて頂きたいと考えています。それから、できればコンビニにも。コンビニは、災害時帰宅支援ステーション(災害時に、水道水やトイレ、テレビおよびラジオからの災害情報を行うことで、徒歩による帰宅者を支援する場所)でもあるので。

他にも、道の駅やサービスエリア、パーキングエリアなどにも設置して頂きたいです。
以前、寒波が来た時に、高速道路で雪の中でたくさんの車が立ち往生してしまったことがありましたよね。ああいう時にでも、焚き火ができると車から外に出て少し温まったりもできるので。
そういう、雪で閉鎖されてしまうようなエリアもですが、最悪の時に避難するのは高速道路上ということも考えられます。高速道路って高いところにあるので、津波などが来た時にも一時避難場所のような扱いをされていると思うので。
そういうことも踏まえて、高速道路のパーキングエリアやサービスエリアには、備蓄木ステーションをぜひ設置していただきたいですね。

—日本森の十字社の本部は三重県いなべ市ですが、備蓄木ステーションなどの設置に関して、全国エリアで対応していけるということでしょうか
(河村)
もちろんです。ご希望いただければ、全国どこでも対応できます。

理想としては、ハザードマップで安全な場所とされているところには、備蓄木ステーションをおいて頂きたいと考えています。そういった場所に置いて頂くことで、ハザードマップの可視化もできるのではと考えています。
例えば、津波が来るような地域であれば、いざ津波が来るとなった時に、どこへ向かって逃げていけば安全なのだろうという目印って、普段は意識っている人ってあまり多くないと思います。

でも、備蓄木ステーションの棚のようなわかりやすいものが安全な場所に設置されていて、「備蓄木がある場所に逃げればいいんだ」ってことを、普段、生活している中で、なんとなく「そういえば、あそこに備蓄木ステーションの棚があったな」って記憶をしておいてもらえれば、備蓄木ステーションの設置してあるところに感覚的に、迅速に避難する行動につなげてもらえるのではということも考えています。
「備蓄木ステーションの設置してある場所が安全な場所」と認知してもらえるようになることで、ハザードマップを見ていないようなお子さんや、日本語のわからない外国人など、普段は防災に関してあまり意識しない方や、情報を取得するのが難しい方でも、親などの周りの人から「あれ(備蓄木ステーション)があるところに逃げなさい」って言われていれば、なんとなく安全な場所に行き着けるはずなんです。

平常時から街に備蓄木ステーションのようなものが点在していれば、無意識に災害時を意識すると思いますし、いざという時にちゃんと逃げることができるはずです。

安全な場所としての目印と、実際に備蓄木ステーションのある場所に行って備蓄木を使っていただくということと、2つの役割を果たせるように、ハザードマップで安全とされている場所に、ハザードマップが可視化できるように、安全に避難できる場所を備蓄木ステーションでつなぐ「備蓄木ライン」のようなことができるようにしたいと考えています。

必要に応じてカスタマイズできる備蓄木ステーション

—備蓄木ステーションには薪の他にどのようなものがセットされているのでしょうか

(河村さん)
フルセットだと焚き火台と保管棚と備蓄木ですが、これまでボランティアで置いていただいたところでも、焚き火台はドラム缶などで代用されているところもあります。
保管棚については、木材の活用という意味でこれも杉・ヒノキで作っていて、この保管棚と備蓄木についてはこれまで設置していただいたところでもすべて採用して頂いています。備蓄木ステーションの最小限のセットは、保管棚と備蓄木と考えて頂けると良いですね。

—必要に応じてカスタマイズできるということですね。

(河村さん)
また、備蓄木ステーションを1か所設けていただくと、だいたい30人がぐるっと火を囲んで、36時間。夜の間だけ焚き火を炊くのであれば3晩ほど、日中も炊くのであれば1日半ほどの暖をとれる計算の薪の量がセットになっています。
備蓄木ステーションを設けるために必要なスペースは、3立方メートルが目安です。1立法メートルで約12時間の計算ですね。
キンドリングクラッカーというハンマーで薪を割ることのできる器具があるのですが、こうした薪割り機とハンマーを一緒に備蓄木ステーションに備えて頂くことができると、備蓄木ステーションから個人単位でペール缶などに入れて薪を持っていくこともできて、例えば避難場所であれば、大きなかがり火だけでなく、テントや車中泊などで避難している時にはそうした単位でも焚き火をすることができるので、感染症の拡大が心配でたくさんの人数で火を囲むことに抵抗がある時期でも、火を分けることで安心につながるはずです。
それぞれで火を焚いていただきつつ、薪の大きな備蓄として備蓄木ステーションを設置して頂いて、避難していらっしゃった方各自で薪棚から薪を割って持って行って、補充するイメージですね。
備蓄木ステーションは、今は3立法メートルでご提案していますが、もっと大きな薪棚で備えて頂いても良いかもしれません。

あらかじめ薪を割って備えてしまうと、大きなかがり火として炊く場合には頻繁に補充が必要となったりして使い難くなるので、割りながら使っていただくのが良いですね。基本的には、大きな火は丸太の方が向いています。

垂直避難に備える「ペール缶タイプの備蓄木セット(BICHIKU-BOKU S-Kit)」

—ペール缶タイプの備蓄木セットについても教えてください

(河村さん)
ペール缶の備蓄木セット(BICHIKU-BOKU S-Kit)の方は、垂直避難に役立ててもらえたらと考えています。
最近、屋上活用も広がってきていますよね。屋上にキャンプ場を設けるマンションも出てきています。そういうところでは、屋上に普段から椅子としておいて置いていただいてもいいですし、普段は室内で管理しておいていざという時に屋上に持って行って頂いてもいいと思います。

津波が発生するような地震が発生した場合、「津波避難場所や津波タワーまでは遠くて間に合わない。逃げるには周りに高い建物がここのマンションしかない」という地域も結構あると思うんです。そういった地域など、垂直避難の方が向いているって地域が絶対にあるので、そういう場所は垂直避難を前提に、置いておいて頂きたいですね。

—ペール缶タイプの備蓄木セットはどのようなセット内容になっていますか

(河村さん)
ペール缶の備蓄木セットを備えたいという方は、すぐに始められるようにペール缶ひと缶で、備蓄木スタートキット(S-Kit)というのを作っています。これには、かんな屑と木の皮と、焚き付け用の割木が入っていて、初心者の方でも、誰でもそのセットがあれば小さな火種から火をつけていける。火をつけたら、あとは薪を入れていけば大丈夫です。
薪での焚き火は、最初の火を起こすというのが、結構大変なんです。その火を付けるためのスタートキットをまずはひと缶用意して頂いて、あとはもう、一缶ずつ薪が入っているので、それをいくつ用意していただくのかという感じです。だいたい、暖を取ろうと思うと季節によって変わりますが、冬の中でもそこまで寒くない時期でほどほどに炊くのであれば、だいたいひと缶で一晩くらいは大丈夫です。

ですから、最低3缶くらいでしょうか。スタートセットと、薪を3缶くらい備えておければ、3〜4人ほどであれば、三晩弱くらいはいけると思います。値段は、備蓄木焚き火スタートキットで1セット3万円から。ストック用の薪で1セット2万円からです。ペール缶でストックしておくのか、段ボール箱でストックしておくのかによっても、金額が変わってきます。

備蓄木ステーションとペール缶タイプ、それぞれ単体というだけでなく、災害時にどんな行動が生まれるのかというのをイメージして、セットで考えていただくというのも良いのではと思います。

在宅避難でライフラインがストップするのに備えるというのであれば、例えば薪棚だけを準備しておくとか、ダンボールに入れてあるタイプの備蓄木も日本森の十字社でご用意するので、そういった薪を外の倉庫などに積んでいれておいて頂いたりして、在宅避難に備えると言うこともできると思うので、ペール缶だけですべてを完結させようというのではなく、備蓄木ステーションと併用したり、ダンボールで詰めるものを併用したりできると良いのではと思います。
ご家庭などでは、ペール缶タイプのものをいくつも備えておくというのも、大変になってきますしね。

もちろん、災害時の避難として車中泊やテント泊などを考えていらっしゃる方は、個人でペール缶タイプを備えていただくと良いと思います。
避難場所などでも、備蓄木ステーションと合わせてペール缶タイプを備えておいて頂くと、避難してきた方たちへの配布がしやすいかも知れませんね。


—備蓄木を購入したいという方は、どのような方法がありますか?

(河村さん)
一般社団法人日本森の十字社のホームページ( https://bichiku-boku.jp/#allinone-set )からお申し込みいただけます。クレジット決済にも対応しています。
ホームページからお問い合わせいただければ、ご請求書をお出ししたり、銀行やゆうちょでのお振込にも対応しています。
備蓄木ステーションにご興味を持って頂けた法人などの方も、ホームページからお問い合わせ頂いたり、お電話をいただければご相談させて頂きます。
まずは、日本森の十字社のホームページをご確認いただければ幸いです。

焚き火の持つ5つの効果

—ここまでお話を伺ってきて、災害時の備蓄木は暖をとることが大きな効果だと感じましたが、夏場はいかがでしょうか

(河村さん)
備蓄木による焚き火は、冬の寒い時期に暖をとるということはもちろんですが、夏の暑い時期にも役立ちます。
寒い冬には、焚き火をして暖をとり、低体温症を防ぐという効果がありますし、火を起こして温かい食べ物を取るというのは、どの季節でも必要なことです。
暑い夏には、汗をかきますが、災害時にライフラインが止まった時にはお風呂に入ることが難しくなります。
そんな時に、温かいお湯でタオルを絞って体を拭くことは、気持ちよさと衛生面を確保することができます。熱中症対策にも役立ちますね。

暖をとる(低体温症を防ぐ)こと、温かいものを食べることに加えて、お風呂がわりにお湯を沸かして温かいタオルで体を拭くことで熱中症を防ぐなど衛生面を確保する。
この3つが備蓄木を使って頂くことで得られるということですね。

さらに、防災関連の方たちの間でよく言われることが、精神的な安らぎを得るために焚き火が役立つということです。
焚き火の炎の揺れには、1/f揺らぎという、人間が心地よく感じるリズムパターンがあって、炎を眺めることで本能的に落ち着いて、脳波にはリラックス状態を占めるアルファ波が増えるという効果があるということも科学的に確認されています。
焚き火の炎を眺めることで、災害時の緊張やストレスを和らげ、心理的な安らぎを得られるということですね。

また、東日本大震災の時には暖をとるために焚き火をした避難所もあり、避難している人たちが集まって焚き火の炎を囲むことで、コミュニティができてきたんだそうです。焚き火の炎を囲むことで安心もするし、それだけじゃなく、人と人との繋がりも生まれる。さらに新しいコミュニティが生まれる場所になっていくということもあるということを、被災された方から伺いました。
これは、焚き火の大きな効果で、備蓄木の持つ可能性なのではないかとも思います。
1)低体温症の防止
2)温かい食事
3)熱中症対策
4)精神的な安定
5)新しいコミュニティを形成することができる

この5つの利点が、備蓄木ステーションにもペール缶タイプの備蓄木キットにもあるということですね。

また、この備蓄木ステーションなどを使用してもらう場面しては、首都直下型地震や南海トラフ地震などの巨大地震、大きな災害を想定していて、そうした災害時には長期間のインフラ停止が起こった場合に対して、備えていくということを想定しています。

——森林の課題から繋がる里や都市部のリスクの軽減にもつながる、間伐。その間伐材を薪にして災害時に備えておくことで、大きな効果が期待できます。災害時にも焚き火をすることで火災を招かないような配慮をすることはもちろん必要ですが、家庭などでも常備しておくことで大きな安心につながるかも知れません。

この記事を書いた人

瀬尾 さちこ

防災士。住宅建築コーディネーター。整理収納コンサルタント。

愛知県東海市のコミュニティエフエム、メディアスエフエムにて防災特別番組「くらしと防災チャンネル(不定期)」、「ほっと一息おひるまメディアス(毎週水曜日12時〜)」を担当。
以前の担当番組:みんなで学ぶ地域防災(2021年~2021年)、防災豆知識(2019年~2021年)
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