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地震も風水害でも。災害時の停電したらやるべきこと

大きな地震が発生した場合や、風水害・大雪などでも、数分から数時間、長ければ数日にわたって停電が発生します。

災害時に、電柱や電線、分電盤などで異常が発生した時には、電力会社の保護システムや監視システムが異常を検知し、電力会社ではその電力設備を電気系統から自動で切り離す制御を行うためです。
電柱や電線などの電力設備異常による停電の場合は、ある地域のまとまった戸数で停電が発生しますが、1か所だけの電力設備の異常であればその設備を電気系統から引き離して、被害のない健全な電力設備から送電することで、比較的短い時間に停電が解消されます。しかし、避難が必要になるような大規模な災害が発生し、建物が倒壊したり火災が発生したりした影響や、広い範囲にわたっての土砂災害や津波の影響などで、電柱が倒壊したり電線が断線したりといった被害を受けた場合には、数日から長い場合には数ヶ月にわたって停電することがあります。

こうした停電は、被災地から離れているところでも発生することがありますし、台風の季節や地震だけでなく、大雪が降った時にも発生することがあります。

たいていの停電は、数分から1〜2日ほどで解消されますが、やはり、日頃から停電に対する備えは必要です。
また、停電が解消された際に引き起こされる可能性のある被害や、停電から起こる他のライフラインに関しての問題などもあります。

停電からどんな問題が引き起こされるのかを知って、「もしも」の時にどのように行動すれば被害を広げずにすむのか考えておきましょう。

停電からの火災を防ぐために

ドライヤーやアイロン、電気ケトルや電気ストーブなど、熱を帯びる家電製品が家の中にはたくさんあります。こうした、多くの家電製品は、停電してもスイッチが自動で切れるわけではありません。停電が復旧し、再び電気が流れ出した時には再び熱を発します。平時に、住宅内で安全ブレーカーを落としてみて、再びブレーカーを入れてみると、停電が復旧した時にどのような状態になるのか、よくわかるのではないでしょうか。

大地震などで家具が転倒したり住宅が倒壊したりして、電気コードなどの配線が傷つけば、再通電した時には発熱発火します。転倒したヒーターにカーテンや洗濯物、絨毯などの可燃物が接触すれば火災になりますし、転倒時に電源がオフになる暖房器具であっても、転倒せず可燃物が暖房器具にかかっていれば火災につながります。また、再通電した時に家電製品から発生した火花が、ガスに引火すれば、爆発につながります。

風水害では、浸水や雨漏りで電化製品の基盤などが損傷し、再通電したときにはショートして発火したり、コンセントが濡れればプラグに付着した埃などが湿気を帯びてスパークするというトラッキング現象が起こって、発火します。

いわゆる、通電火災です。

通電火災を防ぐために、停電したらやるべきことが、いくつかあります。
停電になった時には、まずは落ち着いて、使用中の電化製品のスイッチを切りましょう。地震が発生した場合は、暖房器具に触れればやけどをしてしまいますし、まずは身の安全を確保するのが最優先ですので、揺れがおさまり安全が確保できてからでも構いません。電源プラグもコンセントから抜くようにしましょう。

災害により避難が必要になった場合など、停電中に自宅をでなければいけなくなった時は、忘れずにブレーカーを落としましょう。

停電が解消され、再び通電したら、電源プラグをコンセントにさしたり、スイッチを入れる前に、電化製品が破損していないか、配線やコードに損傷がないか、まずは確認しましょう。
電化製品に再びスイッチを入れるときには、近くに燃えやすいものがないか確認して、安全な場所で運転しましょう。見た目ではなんともなくても、電化製品の中の見えない部分で損傷がある場合もあります。使用し始めて数時間後に、電化製品から出火するということもあります。停電が解消されて再び電化製品を使い始めてからしばらくは、「変なにおいがしないか、煙が出ていないか」など、注意深く様子を見ましょう。もしも煙が出ていたら、使用を中止し、ブレーカーを落としてから、消防署に連絡するようにします。

長期におよぶ停電は、断水を引き起こすことがあります

長期におよぶ停電では、断水してしまうことがあります。特にマンションやビルなどの高層の建物では、増圧直結給水方式や貯水槽水道方式と言われる電力でポンプを動かして各階のそれぞれのお部屋に水を供給しています。停電すると、このポンプが止まってしまうために、断水するのです。

戸建て住宅は、高層マンションなどに比べて、停電による断水のリスクは低いと言われています。戸建て住宅は、多くの場合、ポンプなどの電力を使わずに、水圧をそのまま利用して家庭内に水を引き込む、直結直圧方式で水が届けられているためです。

しかし、上水道施設には浄水場やポンプ場があり、ここで電力を使用しています。大規模停電などで上水道施設が機能しなくなれば、戸建て住宅でも停電から断水してしまう可能性はあります。
もちろん、断水の原因は、停電だけに限らず、洪水などの水害が発生し上水道施設の排水ポンプが水没した時や、大きな地震で配水管などが破損するようなことが起こっても断水します。

大規模な災害が発生し、停電が長期化しそうな場合には、飲料水や生活用水などをできるだけ早い段階で確保しましょう。飲料水と調理用の水は、日頃からペットボトルの水をローリングストックしておくのが理想です。備蓄しておきたい水の量の目安は、一人1日3リットルを3日〜1週間分ほどです。ペットボトルの水の備蓄がない場合は、できるだけたくさんのお鍋やヤカンなどに水を溜めておきましょう。
このとき、浄水器を通すと水の消毒をするためのカルキが抜けてしまいます。断水時には浄水器を通さない方が保存できる期間が長くなりおすすめです。

手を洗ったり、歯を磨いたり、身体を拭いたりなどするための、生活用水の確保も必要です。家の中で一番たくさんの水を貯められるのは、やはりお風呂の浴槽です。入浴後の残り湯ではなく、断水が見込まれる場合には、清潔な水を貯めるようにしましょう。

ホームセンターなどで売られている防災用ウォータータンク(給水タンク)などに水道水を貯めておけば、食器洗いなどにも使えます。

長期にわたる停電が発生したら、通電火災を防止することに加えて、断水に備えることも停電が発生したらやるべきことです。

外出先で停電したら

もしも外出先で停電に遭ってしまったら、何よりも大切なのは、「冷静になること」「助け合うこと」です。
ないよりも怖いのは、集団でパニックになって非常口に一気に人が押し寄せることです。集団でパニックになり、多くの人が一気に狭い非常口に押し寄せれば、群衆雪崩(人が密集した時に、一人が倒れることで周りが雪崩のように転倒してしまうこと)などが発生し、二次被害を引き起こすことにつながります。
外出先で停電に遭ったら、とにかく落ち着きましょう。

ショッピングセンターや劇場などでは、ほとんどの場合、しばらくすると非常用電源設備に切り替わります。慌てずに、館内放送や係員の指示に従いましょう。

エレベーターに乗っているときに停電してしまったら、まずは全部の階のボタンを押して、エレベーターの動作確認をします。エレベーターが停止し、扉が開いたら、その階で降りましょう。ただし、必ずしもどこかのフロアに到着するとは限りません。無理に扉をこじ開けて降りようとすると、転落事故にあってしまう可能性があります。冷静に状況の判断をすることが大切です。
エレベーターに閉じ込められてしまった場合には、電話マークの描かれている非常ボタンを押して、外部と連絡を取ります。ホテルやデパートなどのエレベーターの中には、荷物置き場や椅子の中に緊急装備品が備えられているところもあります。備えられている緊急装備品などを利用し、同乗者と励まし合いながら、救助を待ちましょう。

車の運転中に、停電で信号が消えてしまったら、まずは徐行運転します。警察官が交通整理に来ている場合には、指示に従いましょう。交通整理などが行われていない場合には、譲り合って慎重に運転を。道路交通法では、交差点で中央線(センターライン)が貫通して引かれている方の道路が優先道路とされています。中央線が引かれていなくても、道路幅が明らかに違う場合は、広い方が優先道路となります。優先道路の判断が難しい場合は、基本的に左側から来る車が優先となります。一旦停止の標識がなくても、交差点では一旦停止して安全を確認し、譲り合って安全に走行することが大切です。

外出先で停電にあった場合には、とにかく冷静になりましょう。もちろん、大地震などの災害が発生した時も、同様です。

日頃から停電に備えておきましょう

大規模な災害が発生した時には、停電も長期にわたって発生する可能性があります。大地震や風水害だけでなく、大雪の際にも停電は発生することがあります。災害への備えは、停電が発生することも考慮しておこなっておく必要があります。
照明はもちろん、冬には暖をとるために、夏には涼をとるために、オール電化にされているご家庭なら調理やお風呂を沸かすことにも。私たちは、普段の暮らしの中で、多くの電力を使っています。

もしも、長期にわたって停電したら・・・。
想像してみましょう。

懐中電灯やランタンの備えは必須です。非常持ち出し袋の中に入れてしまうのではなく、寝室やリビングなど、夜の時間帯に過ごすことの多い部屋の、手に取りやすいところに備えておくのが良いでしょう。懐中電灯は一人に一つ、あった方が安心です。ランタンは、各部屋に備えておきたいところです。懐中電灯を光源を上にしてグラスなどに入れて、その上にスポーツドリンクなどの中身の入ったペットボトルを置けば、ランタンのように少し広い範囲を明るくすることができることも、ぜひ覚えておいてください。

災害時には、正しい情報を手に入れることも重要です。携帯電話の予備バッテリーを備えておくことはもちろん、電池や太陽光で聴けるラジオも備えておきましょう。

冬に電力がなくても暖をとることができる石油ストーブなどを備えておくと良いかもしれません。夏には、電池で動くパーソナル扇風機や、保冷剤なども熱中症のリスクを少しでも減らすために、必要です。
車のガソリンを常に満タンにしておけば、停電になっても車ではエアコンがかけられます。

オール電化のご家庭では、電子レンジやトースターはもちろん、コンロも使えなくなるため、カセットコンロやアウトドアレジャーに使うバーベキューグリルも、きっと長期にわたる停電では役に立つはずです。

お住いのエリアの電力会社のアプリ(東京電力ホールディングス TEPCO速報中部電力パワーグリッド 停電情報お知らせサービス)をスマートフォンに入れておけば、停電の発生や復旧もいち早く確認することができます。

大規模な災害が発生すれば、停電も発生するリスクがあります。
その時に、どのように行動すれば良いのか、なにを備えておいたらいいのか、日頃から考えて、備えておきましょう。


参考資料

下関市防災協会 「通電火災に注意しましょう!」

大阪市水道局工務部給水課 「停電によるビル・マンション等の断水に備えましょう」

東京水道局 くらしと水道

この記事を書いた人

瀬尾 さちこ

防災士。住宅建築コーディネーター。整理収納コンサルタント。

愛知県東海市のコミュニティエフエム、メディアスエフエムにて防災特別番組「くらしと防災チャンネル(不定期)」、「ほっと一息おひるまメディアス(毎週水曜日12時〜)」を担当。
以前の担当番組:みんなで学ぶ地域防災(2021年~2021年)、防災豆知識(2019年~2021年)
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