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トイレやお風呂場での災害!身を守る方法&被災生活で正しく使う方法

大地震などの大規模な災害は、いつどこにいるときにやってくるかわかりません。あなたがトイレで用を足している時や、夜にお風呂に入っている時でも、スマホから緊急地震速報が流れるとほぼ同時に、突然、大きな揺れに見舞われる可能性はあるのです。 その時あなたは、どう行動しますか? その時のために、どんな備えをしていますか?

「トイレは家の中で一番安全な場所」というのは本当?

「地震が起こった時には、家の中でトイレが一番安全」というのは、昔からよく言われてきました。小さな空間の四方を壁で囲まれていて、多くの住宅では窓があっても小さいことから、割れたガラスでケガをしたりする可能性が低いことや、転倒するような家具も置かれていないこと、柱と壁で空間を支えていて空間が地震の揺れで潰れさる可能性が低いと考えられたことから、そう言われるようになりました。
1981に改正された建築基準法の耐震基準で建てられた住宅では、「震度5強程度の中規模地震ではごくわずかなひび割れ程度に留める。震度6〜7程度の大規模地震でも、倒壊を免れるように設計・建築する」とされているので、家具などのないトイレが安全な場所になるということは、考えられます。
しかし、トイレは大規模な地震の際に、大きなリスクを抱えている場所でもあります。
それは「閉じ込められる」というリスク。
大きな窓がないからこそ、地震の揺れなどでドアが変形して開かなくなった時には、閉じ込められるリスクが高くなります。また、照明器具につり下げ式のものを使用している場合には、照明が落下してくることも考えられます。トイレ内の収納に吊り戸棚を設置しているケースでは、吊り戸棚に収納してあるものが飛び出して落下してくるリスクもあります。

トイレに入っているときに地震が来たら

トイレに入っている最中に地震が来たら、まず取るべき行動は、ドアを開けて避難口の確保をすることです。また、トイレの中に吊り戸棚などの収納を設けている場合には、大きな揺れで扉が開いて中のものが滑り出してくることがあります。頭を守って、姿勢を低くしましょう。

地震の揺れが大きい時には、慎重にならなければいけないことが他にもあります。
それは、トイレの水を流すこと。
トイレの水を流したばかりに、住宅に二次被害が起こってしまう可能性があるのです。

震度6弱以上のような、立っていることが困難になるような揺れでは、壁のタイルや窓ガラスが損傷することがあります。こうした大きな揺れの時には、排水管や下水管(下水道)も破損している可能性があります。もしも断水したとしても、タンクの中に水が溜まっているので、1回は流すことができるかも知れません。しかし、排水管や下水管が破損している状態で水を流してしまうと、トイレが詰まってしまったり、汚物が外れた排水管から漏れ出てしまうことがあるのです。特にマンションなどでは、上の階の汚水が下の階のトイレで溢れ出てしまうケースも考えられます。
建物の敷地内の排水管や、公共の下水管の損傷がないことが確認できるまで、水を流すことは控えましょう。排水管が破損していないかどうかは、専門業者以外では目視などで判断することはできないので、大規模な地震が発生した際には、専門業者に連絡し、安全を確認してから水を流すようにしましょう。下水道の破損についても、素人では判断が難しいかもしれませんが、自宅周辺で亀裂した道路から水があふれていたり、マンホールが飛び出していたら、下水管(下水道)に損傷が出ている可能性が高いと考えられます。

大地震が発生したら、水洗トイレを使うことをすぐにやめて、携帯トイレや簡易トイレなどの災害用トイレに切り替えることが、被害を大きくしないことにもつながります。

豪雨災害でも逆流の可能性が

トイレの水を流すことに慎重になった方がいいのは、大地震の時だけではありません。豪雨などで浸水しているときにも、注意が必要です。排水管や下水管が破損していなくても、下水が逆流して、水が噴き出ることがあるのです。トイレだけでなく、お風呂場や洗濯機の排水口なども同様です。床下収納の蓋が開いて、水が部屋の中に入ってくる場合もあります。

こうした時に役立つのが、「簡易水のう」です。簡易水のうは、ゴミ袋を2枚重ねにして、袋の半分くらいまで水を入れ、空気を抜いて口を固く縛って作ります。トイレの便器の中や排水口などに置くことで、逆流を防ぐことができます。

水回りの災害への備えを考えるときには、「もしも水が止まったら」というところに意識が向かいがちですが、住宅への被害を大きくしないために、「もしも水が流せなくなったら」ということも意識して、汚水対策を考えておくことも大切なことです。

大規模災害に備えて、災害用トイレの備蓄を

大規模な災害が発生した時に、住宅への被害を拡大させないためにも、いち早く災害用トイレに切り替えることはとても大切なことです。また、水洗トイレが使えなくなって排泄を我慢したり、水分を摂るのを控えると、健康を害して、エコノミークラス症候群などを発症したり、最悪の場合には命を落とすことにつながります。
災害用トイレを備蓄しておくことは、災害備蓄の中でも特に重要なことなのです。
災害用トイレにも様々なタイプのものがありますが、ご家庭で備えておくのに適しているのは、「簡易トイレ」もしくは「携帯トイレ」でしょう。
「簡易トイレ」というのは、便器がわりになる組み立て式のトイレと排泄物を溜めておく袋、防臭剤や凝固剤などがセットになっているもの。一般家庭用には、ダンボールを組み立てて便器がわりにするものなどが販売されています。
「携帯トイレ」は、排泄物を溜めておく袋と防臭剤や凝固剤などだけがセットになっているものです。住宅の便器にセットして使用します。下袋として便器に袋をかけ、その上にさらに排泄袋をかぶせ、用を足した後は凝固剤などを振りかけて、用をたすごとに排泄袋を取替えていきます。
簡易トイレも携帯トイレも、共通しているのは「排泄物を吸わせたり固めたりして、袋に溜めて処分する」ということです。もしも災害時に備蓄している災害用トイレの備蓄が足りなくなってしまったら、ゴミ袋にペットシーツやオムツ、新聞紙などを入れることで代用できます。
排泄物の処理については、燃えるゴミとして出せるところも多いですが、自治体によって処分方法が異なる場合があります。お住まい地域の役所などに確認しましょう。

もしも入浴中に地震が来たら

トイレの中にいる時以上に無防備なのがお風呂の中。裸でいる場所なので、入浴中に大きな地震に襲われたら、パニックに陥りやすいかもしれません。揺れを感じても、慌てないことがなによりも大切です。
浴槽に浸かっている時に大きな揺れを感じたら、溺れないように掴まれるところにつかまって、揺れが収まるのを待ちます。シャンプーボトルなどが飛んでくることもありますので、できるだけ洗面器などで頭を守るようにしましょう。揺れが小さいうちなら、ドアを開けて避難経路を確保しましょう。
洗い場にいる場合には、ドアを開けて避難経路を確保し、頭を守りながらしゃがんで揺れが収まるのを待ちます。慌てて外に飛び出す方が危険です。揺れが収まってから、落ち着いて、追いだき機能などのスイッチを切って出るようにしましょう。

「災害時に備えて浴槽にお湯をためておく」は正解であり不正解でも

災害時に断水になったことに備えて、お風呂の浴槽にお湯をためておくことは、広く伝わり、今では多くのご家庭でされているのではないでしょうか。
地震だけでなく、台風などの風水害や洪水でも、停電などから断水する可能性はあります。飲料水の他に、生活用水は必ず必要です。もしも火災が発生したら、お風呂に貯めておいたお湯は、火災の初期消火にも使えます。浴槽にお湯をためておくことは、大切な災害への備えの一つではあります。しかし、排水管や下水管が破損している状態で水を流せば住宅への被害を広げる可能性がありますし、大きな災害によって長期間下水が使えなくなった際には、貯めた水は腐敗することになります。それを「どのタイミングで、どんな用途で使って、どうやって流すのか」は、住宅の被害を広げないためにも、私たちはよく考えて、慎重にならなければいけません。

この記事を書いた人

瀬尾 さちこ

防災士。住宅建築コーディネーター。整理収納コンサルタント。

愛知県東海市のコミュニティエフエム、メディアスエフエムにて防災特別番組「くらしと防災チャンネル(不定期)」、「ほっと一息おひるまメディアス(毎週水曜日12時〜)」を担当。
以前の担当番組:みんなで学ぶ地域防災(2021年~2021年)、防災豆知識(2019年~2021年)
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