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救命率を上げる心肺蘇生(心臓マッサージ・人工呼吸)とADEの手順

大規模な災害時では、同時にたくさんのけが人がでるため、すぐに救急車が来てくれるかはわかりません。できる限り周りにいる人たちで助け合うことを求められます。

呼吸と心臓が止まってしまった人に対しては、胸骨圧迫(心臓マッサージ)と人工呼吸を組み合わせた心肺蘇生や、AEDを使用した救命処置を行うことで、その後の救命率を大幅に上げ、後遺症も軽減することができます。
しかし、胸骨圧迫や人工呼吸は的確に行わないと効果は発揮できません。消防署などで行われている救命講習で、一般の人も心肺蘇生などの救命処置を身につけることができます。ここでは、講習の内容とともに、心肺蘇生や AED の使用方法をご紹介します。

また、2020年は新型コロナウイルス感染症の恐れがありますので、日本救急医療財団 心肺蘇生法委員会の指針を元に、新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた方法も合わせてお伝えします。

救命講習とは

けが人や急病人が出た場合、その場に居合わせた人が応急手当を速やかに行うことで、救命率を上げ、その後の治療の経過を良くすることができます。応急手当の必要な緊急事態に立ち会ったときに適切に対応できるよう、日ごろから知識を身につけておくために、消防局・消防本部が指導を行っている講習です。
講習では「気道確保」「心肺蘇生」などの救命処置と、「止血の方法」などの悪化防止、苦痛の軽減についての知識を身につけることができます。受講すると認定証が交付されますが、認定証の有効期限は各都道府県により異なります。

救命講習は大きく「普通救命講習」「上級救命講習」に分けられ、学ぶ内容は下のとおりとなっています。

普通救命講習

心肺蘇生やAED、気道異物除去、止血法などを学ぶコース(3時間)

上級救命講習

普通救命講習の内容に加えて、AEDの知識確認と実技の評価、小児・乳児の心肺蘇生、傷病者管理、外傷の応急手当、搬送法など学ぶコース(8時間)

上の消防局・消防本部による救命講習の他に、日本赤十字社でも同様の講習を行っており、「救急法 基礎講習」は普通救命講習、「救急法 救急員養成講習」は上級救命講習の内容に相当する内容となっています。
受講に興味のあるかたは、お近くの消防署や日本赤十字社に問い合せをしてみてください。

応急手当の必要性

救急車が要請を受けてから、現場に到着するまでの平均時間は東京都内で7~8分となっています。
心臓や呼吸が止まってから10分間を過ぎると命が助かる可能性は急激に少なくなっていきます。救急車がくるまでの7~8分の間、何もしなかった場合は命が助かる確率は10%程度となりますが、救命処置をした場合には2倍の20%程度となります。
このように、命が助かる確率を大幅に上げ、後遺症を軽減することが出来るため、その場に居合わせた人による応急処置が重要になるのです。

救命処置とは

救命処置は「心肺蘇生」「AEDを用いた除細動」「気道異物除去」の3つの処置のことをいいます。
その他、心肺停止や気道異物以外のけがや病気に対し悪化防止を目的として、一般市民が行う最低限の手当を「その他の応急手当(ファーストエイド)」といいます。

心肺蘇生とは

呼吸と心臓がとまったとき、もしくは近い状態となったときに、呼吸と心臓の機能を補助するために「胸骨圧迫」と「人口呼吸」を行うことをいいます。

AED(自動体外式除細動器)を用いた除細動とは

不整脈によって心臓が停止したり、正常に動いていないときに、AEDを使用して心臓に電気ショックをあたえ、心臓を正常に動かす方法のことをいいます。

心肺蘇生の方法

命を優先するため、心肺蘇生の訓練の経験が無い場合にも、胸骨圧迫を行うことできますが、正しく処置をしないと効果がありませんので、緊急事態にそなえてぜひ救命講習を受けてみてください。

※訓練用の人形の代わりに実際の人で試すなどの行為は負傷につながりますので、絶対に行わないでください。
  1. 意識を確認
    倒れている人を見つけたときは周囲の安全を確認してから近づき、軽く両肩をたたき「わかりますか!」と呼びかけましょう。(声をだんだん大きく3回位呼びかける。)反応の有無で意識を確認します。意識がある人には、手足が動くか、痛みがないか、を確認します。

  2. 周囲の協力を求める
    呼びかけても反応がなかった場合は、心臓と呼吸が止まっているかもしれません。まずは、大声で「誰か来てください!人が倒れています!」と近くの人に協力を求めます。 集まった人に、119番通報とAED(自動体外式細動器)を持って来てくれるようお願いします。

  3. 呼吸を確認する
    倒れている人の胸とお腹の動きで呼吸を見極めます。動いているか、乱れがないか、10秒以内で素早く確認しましょう。 もし、胸とお腹の動きがなければ、「普段どおりの呼吸なし」と判断。すぐに胸骨圧迫を行います。

    ※普段どおりの呼吸とは、胸とお腹の動きを見て、明らかに呼吸があるとわかることをいいます。それ以外は「普段どおりの呼吸」がないと判断します。
    正常な呼吸か迷った時や、しゃくりあげるような途切れ途切れの呼吸の場合には、迷って手遅れにならないよう、心肺蘇生を開始します。

  4. 胸骨を圧迫する
    胸骨の中央に両手を重ねて置き、手の根元で圧迫します。成人の場合は、胸が約5cm沈むくらいの強さで圧迫してください。圧迫後に力を抜き、押した胸が元の位置まで戻ってから、再度圧迫を繰り返します。
    テンポは1分間に100回から120回が目安です。


  5. 人工呼吸をする
    意識が無い場合には、筋肉がゆるみ、舌が落ちて気道をふさぎます。気道を確保するために、あごを少し上げます。
    額に手を当て、親指と人差指で鼻をつまみます。空気がもれないよう完全に口を覆い、1回1秒ほどで2回息を吹きこみます。胸が持ち上がっていれば、空気が通っているサインです。

    感染症予防のために、人工呼吸用マウスピースを使用することが推奨されています。(感染予防器具などがない場合は省略しても大丈夫です。)

    胸骨圧迫を30回行った後、人工呼吸を2回の組み合わせを繰り返し行います。
    人工呼吸は訓練を積み技術がある場合に行います。技術がない場合には、人工呼吸は行わずに胸骨圧迫を連続して行います。

  6. AEDを利用する
    AEDが届いたら、電源ボタンを押します。カバーを開けると電源が自動的に入るものもあります。電源が入ると手順を案内する音声が流れますので音声ガイドに従って動作してください。
倒れている人の呼吸が戻らなければ、胸骨圧迫・人工呼吸・AEDの使用を繰り返し続けます。
呼吸が戻った場合には気道が詰まらないよう横向きに寝かせます。再度心臓が止まることもありますのでAEDを張りつけたまま救急車の到着を待ちます。
もし、また呼吸が止まることがあれば胸骨圧迫・人工呼吸・AEDの使用を再開してください。

AED使用の手順

  1. 電源ボタンを押します。カバーを開けると電源が自動的に入るものもあります。電源が入ると手順を案内する音声が流れますので音声ガイドに従って動作してください。
  2. 電極パッドを左胸(肩の下付近)と脇腹に対角線に貼ります。
  3. 倒れている人に触れないようにして解析(電気ショックの必要性の有無)を待ちます。
  4. 電気ショックの必要性の有無が音声で流れます。
  5. 電気ショックの必要があるとの音声が流れた場合は、体から離れ、他の人が傷病者に触れていないことを確認してショックボタンを押します。
患者の服を脱がせている間や、電極パッドを張っている間もできる限り心肺蘇生を続けて行います。解析と電気ショックを与える時は、患者の体には触れてはいけませんので離れてください。
電気ショックの必要が無いとの音声が流れた場合や、電気ショックが完了した後にも呼吸が戻らなければ心肺蘇生を再開します。

AEDは2分間隔で繰り返し電気ショックが必要か解析をします。再度、解析開始の音声が流れた場合には「3.」の手順に戻ります。
呼吸が回復しても、また心臓が止まることもありますのでAEDを張りつけたまま救急車の到着を待ちます。

新型コロナウイルス感染症の流行をふまえた心肺蘇生

胸骨圧迫のみの場合を含め、心肺蘇生を行うとエアロゾル(ウイルスなどを含む微粒子が浮遊した空気)を発生させる可能性があります。
新型コロナウイルス感染症が流行している状況においては、全ての人に感染の疑いがあるものとして対応します。

  • 反応、呼吸の確認をするとき
    確認や観察の際に、顔をあまり近づけすぎないようにします。

  • 胸部圧迫をするとき
    エアロゾルの拡散を防ぐため、胸骨圧迫を開始する前に、ハンカチやタオルなどがあれば鼻と口にかぶせるようにします。マスクや衣服などでも代用できます。

  • 人工呼吸をするとき
    成人の心肺停止については、人工呼吸を行わずに胸骨圧迫とAEDの使用のみを行います。

    子供の心肺停止に対しては、講習を受けて人工呼吸の技術を身につけ、人工呼吸を行う意思がある場合のみ人工呼吸を行います。その際、手元に人工呼吸用マウスピースがあれば使用してください。
    ※子供の心肺停止は、窒息や溺水などの呼吸障害を原因とすることが多く、人工呼吸の必要性が比較的高いため。

  • 心肺蘇生の実施の後
    救急隊員に引き継いだ後は、鼻と口にかぶせたハンカチやタオルなどには直接触れず、医療用破棄物として破棄してもらいます。また、速やかに石鹸で顔と手を洗います。
※新型ウイルス感染症時の対応は、新たな知見や感染の広がりの状況などによって変更される場合があります。


その他、救命講習では、気道異物除去や止血の方法などの知識を身につけることが出来ます。

応急手当の方法を知っておくと、万一の事態が起きた時に家族の命を救えるかもしれません。講習費用も1000円台と安く、普通救命講習であれば半日の講習となりますので、ぜひ受講を考えてみてください。

そのほか、止血、骨折、捻挫の応急処置や、のどに物がつまって呼吸できないときの気道異物除去の方法はこちらで紹介をしていますので参考にしてみてください。


この記事を書いた人

moshimo ストック 編集部

防災をしたいけど情報がたくさんあって、何から始めればいいの…?
私たち moshimo ストックも始めは知ることが幅広くて、防災ってちょっと難しいな…と思いました。
そんな "元初心者" の編集部が、初めての方にもわかりやすいよう防災・備蓄・災害についての情報をお届けいたします。
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