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幼稚園で防災教育② ~ 絵を使って想像力を刺激

モジュール学習

子どもたちは絵が好きです。毎日絵本を読み、絵を描き、絵を眺めています。そんな子どもたちの大好きな絵と防災・安全を結びつけてみましょう。
防災の勉強というと、とかく構えてしまいがちです。一定の時間を確保して、きちんとした授業案を作らないとだめだと思うと少し憂鬱になりますね。
今回の提案はもっと簡単に毎日続けられる「モジュール学習」です。文部科学省はモジュール学習を、「ICT等も活用しながら10~15分程度の短い時間を単位として繰り返し教科指導を行う短時間学習」と定義しています(※1)。算数の計算ドリルとか漢字の書き取りとか英単語の発音練習とかを毎日10分だけ行うような学習方法ですね。短い時間なので集中力を維持できます。
テーマは教科に限定する必要はありません。幼稚園だと、そもそも教科なんてありませんから、子どもたちに学ばせたい内容を設定すればいいのです。そこで今回は「防災・安全」をテーマとしてモジュール学習にとりくんでみましょう。

※1 中央教育審議会「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」(答申)2016年(平成28年)12月21日 中央教育審議会

地震なら

用意するのはいろんな部屋や車の往来のある道路、公園、スーパーマーケットなど、子どもたちが多くの時間を過ごす場所を描いたイラストや写真です。要は普段生活している場所を取り上げればいいのです。そんな材料はインターネットで探すといっぱい見つかります。自分で描いたり撮影したりしてもいいでしょう。
準備ができたら子どもたちに絵を見せて、「どこが危ないでしょう」と問いかけます。おそらくいろんな答えが出てくるでしょう。ただし、危険の種類によって質問の仕方が違ってきます。
地震なら、「もし今大きな揺れが起こったら、どこが危ないかわかりますか?」というように、地震が起こるという仮定の下で考えさせます。つまり、地震とは何かを事前に教えておかなければなりません。実際の地震の映像や家具などが散乱した部屋の写真を見せる方法がありますが、あまり強烈な動画はこどもたちを必要以上に怖がらせる危険があります。特にこどもたちが実際に強い地震を体験した地域では、映像を見せるのは避けてください。
子どもたちが一番長い時間を過ごすのは家の中です。台所や居間、階段、廊下、寝室などいろいろな部屋のイラストや写真を見せて、地震の時に危険な場所を探させてください。できれば、その一つひとつの指摘、発言にコメントをしてあげてください。

「備え」と「対応」も一緒に考える

「危険だ」で終わりにせず、どうすればその危険を回避できるかを一緒に考えましょう。方法は2通りあります。「備え」と「対応」です。
家の中なら、家族と話をして家具の固定を行って危険度を下げることができます。つまり、「備え」を行うのです。でも、例えばスーパーマーケットで勝手に陳列棚を固定したりはできません。ビンや缶が並べられて強い揺れが発生すると落ちてきて危険な場所もあります。そんな時は、どこに逃げるかを考えさせましょう。つまり、より適切な「対応」を考えさせるのです。

大雨なら

大雨ならどうでしょうか。警報が出ている中で子どもが一人で避難所に避難することはまず考えらえられません。避難が必要であれば家族と一緒に行動するはずです。家族全員が自分の家のリスクを事前に把握しておき、もし洪水や土砂災害の危険がある地域に住んでいるのであれば、気象情報に注意してできるだけ早く避難すればいいのです。避難について、家族でしっかりと話し合っておきましょう。
では、雨が降っているときに子どもたちが自分の判断で危険を回避する状況は、どんな時でしょうか。例えば、川岸で遊んでいるとします。さっきまで晴れていたのに急なゲリラ豪雨で水量が急激に増える時があります。そんな時にどうすればいいかを考えさせる必要があります。神戸市の都賀川で発生した水難事故(※2)は、都市の河川の恐ろしさを見せつけました。

※2 都賀川水難事故 2008年7月28日に発生した。神戸市の都賀川上流で集中豪雨があり、水位が急激に上昇し、河川敷にいた16人が流された。小学生2人、保育園児1人など、合計5人が死亡した。その後、水位の急激な上昇を知らせる警報機が設置され、近くの小学校の子どもたちが防災教育の一環で見学に訪れたりしている。

いろんな危険を想定して

道路でも危険はあります。水たまりだと思って泥水に足を踏み入れたら、実は深くて転んだとか、側溝の速い流れに興味を持ってのぞき込んでいたら落ちてしまったとか、そんな経験を持つ人も少なくないはずです。
親はみんな、子どもたちの交通事故の心配をします。信号、横断歩道、車、自転車、歩行者…いろんなシーンを見ながら、どこに注意したらいいかを子どもたちに考えさせましょう。クイズのように危険を発見してもいいでしょう。
大雪の町にも危険があります。
遠くで雷が鳴っていたらどうしたらいいでしょう。
イラストや絵、写真を使った危険さがしを毎日行いましょう。たった1枚の絵、たった5分のやり取りでいいのです。それを継続することで、子どもたちに「危険に注意しよう」という意識を持たせ続けましょう。

幼稚園で防災教育 前回の記事

この記事を書いた人

諏訪 清二

全国初の防災専門学科 兵庫県立舞子高校環境防災科の開設時より科長を務め、東日本大震災をはじめとする国内外の被災地でも生徒とともにボランティアや被災者との交流に従事。
防災教育の第一人者として文部科学省「東日本大震災を受けた防災教育・防災管理等に関する有識者会議」など、防災教育関連の委員を務める。

2017年4月から防災学習アドバイザー・コラボラレーターとして活動開始。
学校での防災学習の支援活動を中心に、防災学習、災害、ボランティア、語り継ぎなどのテーマで講演活動も。
中国四川省、ネパール、スリランカ、モンゴル、エルサルバドルをはじめ、海外各地でも防災教育のプロジェクトに関わってきた。

2017年度~
神戸学院大学現代社会学部 非常勤講師
兵庫県立大学 特任教授
(大学院減災復興政策研究科)

2018年度~
関西国際大学セーフティマネジメント研究科 客員研究員

【著書】
防災教育のテッパン――本気で防災教育を始めよう

防災教育の不思議な力――子ども・学校・地域を変える

高校生、災害と向き合う――舞子高等学校環境防災科の10年
※こちらの書籍は、現在電子書籍での販売となります。

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