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夏の楽しいレジャーで...BBQの着火剤やカセットコンロ、炎天下の車内などでの火災に注意を!

火災といえば、暖房器具を使う冬から春先に発生するイメージがあるかもしれません。令和4年(2022年)の消防統計を見ると、一番火災発生件数の多いのは3月で、4,111件。2月、1月、4月、12月、5月には、それぞれ3,000件以上の火災が発生しています。
しかし、8月、7月、6月の暑い季節にも、それぞれ2,000件以上の火災が発生しています。
出火の原因は年間を通して放火によるものがあるほか、夏には古くなった扇風機やエアコンなどの部品の故障や電源コードの不適切な接続などによる事故が、毎年多く発生しています。
さらに、バーベキューや花火遊びなどのレジャーの中での事故や、炎天下で車の中に残されたものが爆発するなどして起こる火災もあります。
こうした事故、火災は危険性などを知って対策していけば防ぐことができます。夏の楽しい時間を悲しい思い出にしないためにも、しっかりと知って、注意するようにしましょう。

バーベキューやキャンプで。間違った着火剤の取り扱いが爆発事故に

夏の代表的なレジャーの一つでもある、キャンプやバーベキュー。コロナ禍以降、こうしたアウトドアレジャーの人気が高まっています。自然の中で家族や友人と過ごす時間は、コミュニケーションも深まります。しかし、調理などでカセットコンロやバーベキューコンロを使用する際に使うカセットボンベ(ガス缶)や着火剤などの誤った使い方による事故も、あとをたちません。

今年(2023年)5月にも、福岡県の美容専門学校が開いたバーベキューで、炭に消毒用アルコールを混ぜて使用し、また火が弱まったところにアルコールを追加したために爆発的に燃え広がり、4人が死傷した事故が発生しました。この事故では、着火剤の代わりとして消毒用アルコールを使ったとみられていますが、そもそも着火剤を継ぎ足すこともしてはいけません。
着火剤の正しい使い方を知っていれば、防げた事故かもしれません。

着火剤の正しい使い方

バーベキューやキャンプの際のたき火の火起こしなどに使う、着火剤。その主な成分は、メチルアルコール(メタノール)です。学校の理科の実験などでよく使われているアルコールランプの燃料などに使われる成分です。発火性が強いことや揮発性が高いことが特徴ですが、人のからだに入ると、中枢神経をおかし、めまいを引き起こしたり、大量に吸い込んでしまった場合には失明に至るケースもあります。消防法では「危険物」に指定されています。気軽に使ってしまいますが、実は大変危険なものです。

ゼリー状の着火剤の主成分はメチルアルコールとなっていますが、メチルアルコールの特徴として、火をつけたときに炎が見えにくいことがあります。特に、太陽の下では火がついていないように見えることや、火力の小さくなった炭を手軽に再び燃やそうと着火剤を注ぎ足してしまうことが、事故につながります。毎年、多発する事故の一つです。炎の上にゼリー状の着火剤を継ぎ足すと、着火剤を伝って容器の中まで炎が入ってきます。容器が爆発し、火のついた着火剤が散らばって服に燃え移るなどして、火災や死傷につながります。
着火剤の成分のメチルアルコールは、揮発性が高く、蒸発することも特徴です。メチルアルコールは蒸発すると、広く拡がって、爆発性の混合ガスを作り出し、火をつけた途端に爆発することもあります。

ゼリータイプの着火剤は火のつけ始めだけ使い、一度火をつけたら絶対に継ぎ足しはしていません。たとえ、目には見えなくても火がついていて引火することもありますので、どんな場合にも継ぎ足しは厳禁です。
時間が経つとメチルアルコールが揮発して空気中に広がりますので、容器から着火剤を絞り出したらすぐにフタを閉め、速やかに点火するようにしましょう。
また、点火後は火が安定するまで、あまり近づかないようにしましょう。着火剤が燃え尽きないうちは、着火剤が跳ねたりして火傷を負う危険性もあります。使用中は、バケツにたっぷりの水を用意したり、濡れタオルなども用意して、万が一の事故に備えておくことも大切です。火の近くに着火剤を置かないように常に注意が必要です。

ゼリータイプの着火剤は火力が強く火が付きやすいものの、取り扱いに注意が必要になります。火起こしに慣れていな人は固形タイプの着火剤を選ぶのも一つの方法です。
固形タイプの着火剤は継ぎ足しができるもの多くありますが、固形タイプは製品により原料が大きく異なりますので、必ず説明書を読んでから使用するようにしましょう。

大人数での調理にカセットコンロを使用する際に、通常ではない使い方が事故に

バーベキューコンロよりも馴染みのある、カセットコンロ。冬の鍋料理などに使うのはもちろん、アウトドアでの調理にも気軽に使うことができます。お祭りや、災害時の炊き出しなどにも使用することがあるでしょう。
しかし、日常とは違った環境で、普段とは違う使い方をすることで、事故につながることもあります。

こうした事故は、過去にもありました。
2011年に、東京消防庁管轄内の高校の文化祭で、校庭の中庭でカセットコンロを使用して調理をしており、カセットコンロの火が消えたために生徒がカセットボンベを取り外したところ手元でカセットボンベが破裂して負傷したというもの。この時は、カセットコンロの五徳(受け皿)を裏返した状態でフライパンを置いて調理していたために、カセットボンベが加熱されて内圧が上昇して破裂した可能性があるとみられています。

また、2008年、東京都内の高校の文化祭では、校舎そばの駐輪場に設けた模擬店で、カセットコンロを使って調理している中で、カセットボンベの破裂が起き、2名が重症、4名が中等症、9名が軽症を負う事故が発生しています。この時は、カセットコンロを2台並べて1枚の鉄板を乗せて調理をしていて、鉄板の熱によりカセットボンベが加熱されて内圧が上がったために破裂したとみられています。

高校の文化祭での事故事例ですが、こうした誤ったカセットコンロの使い方は、友人知人で集まってバーベキューなどのアウトドアレジャーで調理をするときなどにも、考えられる事故です。
カセットコンロ・カセットボンベの安全な使い方を、普段から調理に慣れている人もふりかえっておきましょう。

カセットコンロ・カセットボンベを安全に使うために、やってはいけないこと

  1. カセットコンロとカセットボンベは同じメーカーで

    カセットコンロを安全に使うためには、まずはカセットコンロに合ったカセットボンベを選ぶことが大切です。カセットボンベやカセットコンロは、JIS規格(日本工業規格)によって仕様が定められていて、違うメーカーのカセットボンベでも互換性があり、使用することはできます。しかし、メーカーなどが実施する安全試験は、原則として自社製品同士でテストが行われています。つまり、異なるメーカーのものを使うことの安全性は保証されていないのです。JIS規格で許容されているわずかなサイズの違いなどが、ガス漏れや火災の原因になることもあります。

  2. 大きな調理器具を使用してはいけません

    カセットコンロでは、大きな鍋やフライパン、鉄板など、大きな調理器具を使って調理することは避けましょう。コンロを覆うような大きな調理器具を使うと、熱がこもりやすくなり、カセットボンベが限界を超えて熱くなり、爆発することがあります。調理器具はカセットボンベにかからない大きさまでとしましょう。

  3. 五徳(受け皿)が裏返しのまま使ってはいけません

    カセットコンロをダンボール箱に入れて収納するときには、五徳(受け皿)を裏返しておくことがあります。できるだけ小さなダンボール箱にするために、購入時にも五徳を裏返して入れられています。カセットコンロを使用するときには、五徳が裏返したままになっていないか、確認しましょう。五徳を裏返したまま調理にカセットコンロを使っていると、大きな調理器具を使っている場合と同じように、熱が篭りやすくなり、カセットボンベが過熱されて破裂することがあります。

  4. カセットコンロを2台以上並べて使ってはいけません

    カセットコンロを2台以上並べて使うことでも、熱がこもりやすくなり、カセットボンベが過熱、爆発することがあります。カセットコンロを複数台使いたいときには、十分な間隔をとって使うようにしましょう。

  5. 火のそばや炎天下の車内・野外にカセットボンベを置いてはいけません

    長時間にわたってカセットコンロで調理をするときには、予備のカセットボンベを用意しているかもしれません。その置き場所は、火から離れた、できるだけ涼しいところにしましょう。炎天下の野外や、屋外に駐車した車の中にも置いてはいけません。気温約20度の時でも、直射日光の影響で車内温度は約46度、ダッシュボードは約79度にまで上昇するという実験結果もあります。
    こうした、高温になる環境におかれた場合にも、カセットボンベは過熱されて爆発炎上することがあります。カセットボンベの保管は、「火気や直射日光を避け、40度以下の湿気の少ない場所にキャップをして保管すること」とされています。
    また、炎天下の車内には、カセットボンベの他にライターやモバイルバッテリー、冷却スプレーや制汗スプレーなどのスプレー缶なども爆発し炎上することがあります。夏に車で外出するときには、車内にこうした爆発しやすいものが残っていないか、車を降りるときには確認する習慣をつけましょう。

  6. カセットコンロで炭をおこしや、セラミックを使用した魚・肉焼き器、石板、陶板は使用してはいけません

    燃えおこった炭は高温となり輻射熱も大きいため、周りに伝わる熱も大きくなります。また、セラミックを使用した魚・肉焼き器、石板、陶板も輻射熱が大きくなることから、カセットボンベが加熱され爆発の原因となりますので、使用しないよう気をつけましょう。

キャンプ場で。テントやタープの火災や一酸化炭素中毒にも注意しましょう

バーベキューコンロは、キャンプで使用する機会が多いはずです。しかし、テント内でバーベキューコンロを使ってはいけないことはもちろん、テントの入り口に設置したタープの下でバーベキューをするときにも注意が必要です。
火災や一酸化炭素中毒を起こすことがあるためです。

2017年、タープ付きの2ルームタイプのテントでキャンプをし、テント入口のタープの下のスペース付近でバーベキューをし、後片付けをして寝室スペースに入ったところ6歳と8歳の兄妹が一酸化炭素中毒で昏睡状態になるという事故がありました。
バーベキュー終了後には、屋外につながるリビングスペースの入り口を地面から30センチほど換気のために開け、リビングスペースと寝室スペースをつなぐ入り口は開放していたにもかかわらず、バーベキューコンロを使って調理した2時間後に一酸化炭素中毒の症状があらわれています。

テントの入り口や通気口を多少開けるだけでは、一酸化炭素中毒の予防には不十分です。
経済産業省所轄の独立行政法人、製品評価技術基盤機構(nite)などでは、「キャンプ用コンロ、暖房、ランタン、炭を使用するグリルなどをテントやキャンピングカー内で絶対に使用しないこと」と注意喚起しています。また、テントメーカーも「オープンタープ、リビングシェルター内では、いかなる場合にも炭火の使用を禁止」と記載しています。

もちろん、一酸化炭素中毒だけでなく、火災の危険性もあります。キャンプなどで雨が降ってきた時には、タープの下で焚火をしたくなるかもしれませんが、タープの下で焚火をするとタープが溶けたり火災の原因になります。タープを購入する際には、メーカーが許可している難燃性の素材かどうかも確認しましょう。

また、焚火は大規模な山火事につながることもあります。
焚火は許可された場所のみで行うようにしましょう。枯草などがある場所では焚火はしない、風の強い日は控える、焚火を始めたら目を離さない、直火が禁止されているキャンプ場では焚き火台を使う、火の始末はしっかりするなど、基本的なことをしっかりと守るようにしましょう。

安全に、夏のレジャーを楽しみましょう!

バーベキューやキャンプなどでの事故は、基本的なことを怠らずにやっていれば防げる事ばかりです。普段、カセットコンロやバーベキューコンロなどを使用する機会の少ない方は、その基本的な使い方を確認してから使用するようにしましょう。慣れている方も、油断が事故につながることもあります。基本を忘れずに、安全に夏のレジャーを楽しみましょう。

<参考資料>

総務省消防庁防災情報室 消防統計(火災統計)令和4年(1月~12月)における火災の概要(概数)について

政府広報オンライン 扇風機やエアコンで火災発生!安全に使うための注意点とは?

政府広報オンライン バーベキューや花火などでは「火」に注意!

産業保安ポータルサイト アウトドアでのレジャーと事故

東京消防庁 カセットボンベ破裂による事故を防止しよう

富士山南東消防本部 カセットボンベ・スプレー缶の爆発事故に注意しましょう

IWATANI よくある質問 カセットボンベ

厚生労働省 安全データシート メタノール

日本機械工業株式会社 着火剤の思わぬキケン

高槻市消防本部 ゼリー状(ジェル状)着火剤の使用方法は要注意!

独立行政法人 製品評価技術基盤機構 着火剤「1.つぎ足しでやけど」

産経新聞 アルコール消毒液「夏場は常温でも引火」で注意呼びかけ

日本小児科学会雑誌 第123巻 第11号 No. 83 2 ルームテント内での一酸化炭素による中毒

岡山市 南消防署からのお知らせ 再確認!たき火のときは消火の準備!

上越地域消防事務組合 スプレー缶、破裂温度と威力の実証

消費者庁 独立行政法人国民生活センター ライターは安全に正しく使いましょう!

withnews ダメ!猛暑の車内にモバ入りバッテリー、30分後の衝撃・・・真っ黒焦げ

この記事を書いた人

瀬尾 さちこ

防災士。住宅建築コーディネーター。整理収納コンサルタント。

愛知県東海市のコミュニティエフエム、メディアスエフエムにて防災特別番組「くらしと防災チャンネル(不定期)」、「ほっと一息おひるまメディアス(毎週水曜日12時〜)」を担当。
以前の担当番組:みんなで学ぶ地域防災(2021年~2021年)、防災豆知識(2019年~2021年)
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