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夏の楽しみ、花火。処理の仕方まで気をつけて安全に。

ご自宅のお庭で、旅先で、キャンプで。花火は夏の楽しみの一つです。ご家族や友人と楽しむ方も多いのではないでしょうか。線香花火や手持ち花火、ロケット花火や打ち上げ花火などの家庭用花火は、「おもちゃ花火」や「玩具花火」とも言われていて、手軽に買うことができます。子どもの頃から慣れ親しんでいるこうした花火を楽しむときには、あまり意識することはないかもしれませんが、火を使う玩具。ヤケドや火災などの事故も、毎年発生しています。花火がきっかけで、子どもが火遊びをするようになり、火災につながるケースも。花火は、夏の楽しみの一つであるのと同時に、子どもたちに火災防止の教育をするきっかけにもなります。安全な楽しみ方を、確認しておきましょう。

花火による火災・火傷

消防庁の統計によると、2020年には320件の火遊びによる火災が発生したと発表されています。そのうち、花火によるものは、全国で6件。その前年の2019年には全国で9件の花火による火災が発生しています。さらにさかのぼると、2017年には15件、2016年には17件の花火による火災が全国で発生しています。2013年には、和歌山県で花火が原因とみられる、ごみ収集車の火災も発生しています。

火災発生の総数に比べると、わずかに感じるかも知れませんが、「玩具」「おもちゃ」と名のつく花火から、これだけの火災が発生しているというのも、事実です。

また、やけどや着衣への着火などの事故は、国民生活センターのまとめによると、2018年度から2022年度までの5年間で60件以上寄せられていて、その半数以上が1~3歳の幼児に集中しています。
その中には、手持ち花火に点火したところ破裂して2歳の幼児が右足首に火傷を負って重症になったケースや、花火の火を付ける位置を誤ったために異常燃焼が起きて花火の一部が飛散して6歳の子どもが首にやけどを負って重症になったケースもあります。

花火による事故は、幼児ばかりではありません。
26歳の男性が花火を持ち、ライターで火をつけたところ急に燃え上がり、ライターを持った手をやけどしたというケースや、中学3年生の男子が自宅前でロケット花火をしていたところかやぶき屋根の上に落ちて出火したというケース、20歳の女性が打ち上げ花火を導火線に点火後にのぞき込んで左目に吹き出した花火に直撃されて視力が低下したというケースなどがあります。

花火は、危険がともなう玩具なのです。

安全に花火を楽しむための準備

花火は、コンビニや100円ショップなどでも手に入れることができますが、安全性を確認されたものを購入するようにしましょう。その目安の一つとして「S F(Safety Fireworks)マーク」があります。これは、公益社団法人日本煙火協会の検査所で、火薬取締法に適合しているかどうかの基準検査や、花火の構造や燃焼現象や使い方の表示確認テスト、実際に着火して危険の有無を調べる安全検査などをパスしたものに付けられるマークです。

また、使い慣れた花火でも、花火に書いてある「遊び方」をよく読んで、必ず守るようにしましょう。「手に持って楽しむもの」「絶対に手に持って使用してはいけないもの(地上に置くもの、長い棒の先につるして楽しむもの)」など、種類があります。そうした遊び方のルールが、花火には表記されています。花火に合った、安全な遊び方をするために、しっかりと事前に確認して、必要なものがあれば準備しておきましょう。

花火遊びをする日は、気象条件を考えて風のない日に行いましょう。風の強い日は、風向きによっては衣類が燃えて大きなやけどをすることもあります。ロケット花火や打ち上げ花火などは、風に流されて火災につながることもあります。「風の強い日は花火遊びをしないこと」が、やけどや火災から自分たちを守ることになります。弱い風が吹いているときには、風下の人が火の粉や煙をかぶらないように、風の方向に注意しましょう。

花火をする場所は、燃えやすいものが近くにない、広くて安全な場所を選びましょう。浜辺や川原などは、広くて安全だと思っても、条例などで花火が禁止されていることがあります。禁止されている場所での花火はやめましょう。また、住宅街の公園などは、近隣の窓を開けている住宅に煙が入って迷惑をかけることもあります。花火遊びをする時間帯なども含めて、近隣の住民の方への気遣いも忘れないようにしましょう。

「水の入ったバケツ」と「ゴミ袋」、花火に火をつけるための「ローソクと線香」も、準備しましょう。水の入ったバケツは、終わった花火をつけておくために必要です。途中で消えてしまった花火や、残ってしまった花火も水につけなければいけません。また、やけどをしてしまった時にも、バケツに水を用意しておけば、応急処置に役立ちます。

もちろん、花火は大人と一緒に楽しみましょう。中学生や高校生でも、花火は大人と一緒に行わなくてはいけません。

また、花火を持ち歩くときには、ポケットには入れずに、手で持ち運びましょう。転んだり、ぶつかったはずみで発火して、やけどをするなど、思わぬ事故につながります。また、帰省先などで花火を楽しむ場合には、現地で購入するようにしましょう。花火を郵送したり飛行機に持ち込むことは、禁止されています。

花火を楽しんでいる時は、こんなことに注意を!

花火の遊び方をよく読み、水の入ったバケツとゴミ袋とローソクと線香も準備して、安全な場所で風のない日に花火を楽しむといった準備の他にも、花火をしている間にはいくつか注意をしなければいけないことがあります。

絶対にやってはいけないことの一つに、花火を分解して遊ぶことがあります。好奇心旺盛で、様々なことが自分でできるようになっている、小学校高学年から中学生、高校生くらいの年代の子どもたちの中には、「花火がどのような仕組みでできているのか」や「いくつかの花火を組み合わせたら、オリジナルの花火ができるのではないか」などと考えて、花火をほぐして遊ぶことがあります。しかし、これはとても危険なことです。
過去にも、中学3年生の男子が花火を分解して火薬を容器に入れていじっていたところ爆発し、親指の付け根を骨折するという事故が発生しています。
花火を分解して遊ぶことは、絶対にしてはいけません。

開放的な気分の中で、ふざけてやってしまいそうなことに、たくさんの花火に一度に火をつけるということがあります。これも、絶対にやってはいけないことです。花火は1本ずつ火をつけて楽しみましょう。1本では危険の少ないような花火でも、数本まとめて火をつけると大きな炎になって危険です。過去にも、まとめて着火した花火で手にやけどを負った事故が発生しています。

また、花火を人や家屋に向けたり、振り回したりしてはいけません。花火の筒先の方向や場所などに注意しましょう。衣服に花火の火が燃え移るなどの、大きなやけどやケガにつながる危険性があります。家屋に向けることは、住民の方に迷惑をかけるばかりでなく、火災につながることもあります。

このように、花火を分解したり、一度にたくさんの花火に火をつけたり、花火を人や家屋に向けるなどの悪質な遊び方ではなく、普通に楽しむ場合にも、注意は必要です。

例えば、花火に点火する方法などです。花火に点火する時には、ローソクや線香を使いましょう。マッチやライター、花火どうしで点火すると、花火が急激に燃え上がったり破裂するなどして、やけどするおそれがあります。
花火の種類や形によって、点火する位置も違います。点火する位置も花火に書いてある遊び方を確認して、正しい位置に正しい方法で点火するようにしましょう。

点火する時や、途中で火が消えてしまったときに、花火の筒先などを確認したくなるかもしれませんが、花火の筒先を覗き込んだり、筒先に顔や手を出してはいけません。やけどするばかりでなく、視力低下や失明するなどの危険性があります。

手持ちの筒型花火は、握る手の位置にも注意が必要です。筒の中程より少し下を持って、体から離して楽しむようにしましょう。筒底を持つと、何らかの原因で花火の底から火が出た時などに、やけどをする可能性があります。

着衣に着火してしまった時の対処方法と、やけどの応急処置

安全に遊んでいたとしても、万が一ということはあります。もしも着ている服に火が燃え移ってしまった場合には、慌てて走ったり、手ではたいて消そうとしてはいけません。
着衣に着火してしまった時の対処法の基本は「ストップ!ドロップ&ロール」といわれています。これは、アメリカの火災予防に関するプログラムとして、1980年代に考案された方法です。

“ストップ!ドロップ&ロール”の「ストップ」とは、着ている服に火が燃え移ってしまった時には、慌てて走ったりせずに、まずは立ち止まって落ち着きましょうという意味。そして、「ドロップ」は、地面に倒れ込んで、燃えている部分を地面に押し付けて消化するということです。「ロール」は、地面に押し付けただけでは消えない火を、左右に転がって地面に押し付けることで消化しましょうということです。

“ストップ!ドロップ&ロール”を実践しながら、バケツに汲んである水などで、周りの人で協力し合いながら消火しましょう。

やけどをしてしまったら、すぐに水で10分以上冷やしましょう。着衣に着火した場合には、無理に脱ごうとせずに、服の上から水で冷やします。やけどしたところに水道水やシャワーを直接当てないようにし、できれば容器などに溜めた水にやけどしたところを浸して、冷やすようにしましょう。
やけどの範囲が広範囲にわたる場合や、顔面などのやけどの場合には、すぐに救急車を呼びましょう。やけどの範囲が手のひら程度の場合や、水ぶくれになった場合には、水ぶくれを潰さないようにして、病院を受診してください。

使用済み・未使用。花火の処分方法

「楽しんだ後の花火や、古くなった未使用の花火などの処分方法に迷う」という方もいらっしゃるでしょう。花火の処分方法は、自治体ごとにルールがあります。自治体のホームページなどで確認するようにしましょう。専門業者などに依頼する必要がある地域もあります。

おおむね、どこの自治体でも使い終わった花火は一晩~数日ほど水に漬けておくことで、家庭ゴミに出すことができます。花火を水につけた上で、濡らした新聞紙などに包むなどして、ゴミ袋に入れます。未使用の花火も同じように、一晩~数日ほど水につけて、濡らした新聞紙に包むなどした上で、ゴミ袋に入れることで、多くの自治体では可燃ゴミとして出すことができます。

花火が原因でゴミ収集車の火災が発生したケースもあります。こうした事故が発生しないように、最後まで安全に配慮して処分するようにしましょう。

安全に夏の風物詩・花火を楽しみましょう

花火による様々な事故などもご紹介しましたが、こうした事故や火災の多くは、花火に書いてある「遊び方」をよく読んで、ルールを守って遊ぶことで、防ぐことができます。こわがる必要はありません。
基本的な遊び方やルールをしっかりと守って、花火を楽しみましょう!

もしも花火で事故が起きてしまったら、事故の原因になった花火は保存しておき、花火を購入したお店や、公益社団法人日本煙火協会、公益社団法人日本煙火協会検査所まで連絡するようにしましょう。正しく使用していて、花火の欠陥で事故が発生した場合には、賠償してもらえる可能性もあります。

もちろん、火災やケガ(やけど)などが発生してしまった場合には、「消防署・救急車119」にも通報するようにしましょう。


<参考資料>

総務省消防庁防災情報室 消防統計(火災統計)令和4年(1月~12月)における火災の概要(概数)について

消防庁予防課 火遊び・花火による火災の防止

政府広報オンライン バーベキューや花火などでは「火」に注意!

独立行政法人国民生活センター 花火による子どものやけどに注意しましょう

消費者庁 Vol.560 花火のやけど-消えた後の花火や、消毒液やスプレーの可燃性ガスへの引火にも注意-

公益社団法人 日本煙火協会 おもちゃ花火

公益社団法人 日本煙火協会 重大製品事故

青葉環境保全 知っていますか?~花火の捨て方~

産廃メディア 家庭用花火の使用期限は?使用済み、未使用の花火の処分方法をそれぞれ解説

この記事を書いた人

瀬尾 さちこ

防災士。住宅建築コーディネーター。整理収納コンサルタント。

愛知県東海市のコミュニティエフエム、メディアスエフエムにて防災特別番組「くらしと防災チャンネル(不定期)」、「ほっと一息おひるまメディアス(毎週水曜日12時〜)」を担当。
以前の担当番組:みんなで学ぶ地域防災(2021年~2021年)、防災豆知識(2019年~2021年)
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