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例年出火原因の上位に入っている「放火火災」。狙われない環境づくりを

冬から春にかけては、火災が増える季節です。火災は災害の中でも唯一、自分自身で発生そのものをなくすことができるもの。しかし、その中でも放火による火災は、無差別に狙われることから、被害を負ってしまうことが避けられないかもしれません。だからこそ、現状を知るとともに、日頃からリスクを避ける環境づくりや対策が必要です。

実は出火原因として一番多い「放火火災」

消防庁から令和2年(2020年)1〜12月の火災状況の統計が出されています。
令和2年(1~12 月)における火災の状況(確定値)について

全国での総出火件数は34,691件。出火原因として最も多いのは「たばこ」で3,104件(8.9%)、次いで「たき火」2,824件(8.1%)、「こんろ」2,792件(8.0%)、「放火」2,497件(7.2%)となっています。例年、同じような出火原因が上位に上がってきています。


放火として明確になっているものは7.2%ですが、「放火の疑い」があるものと合わせると、4,052件。たばこによる出火を超え、総出火件数の11.7%にも及びます。
件数の多い主な都道府県は、東京都(19.5%)、神奈川県(19.5%)、埼玉県(19.0%)、愛知県(15.2%)、大阪府(13.0%)の順となっていて、都市部ほど放火火災のリスクが高いことがうかがえます。

放火犯には、ストレス解消の愉快犯や、保険金目当てや恨みが動機の凶悪犯など、いろいろなタイプがいます。放火を犯す人の心の問題まで立ち入ったり、事前に見つけて放火をやめさせることは難しいかもしれませんが、私たち一人一人が住宅の周りの環境や生活習慣を見直して対策をしておくことで、放火犯が行動に移しにくくすることはできます。
統計上では、都市部の方が放火の発生件数は多く認知されていますが、どの地域でも、誰にでも放火されるリスクはあります。
放火犯の標的にならないように、また、もしも放火されても大事に至らないように、日頃からしっかりと対策しておきましょう。

「人の目」と「明かり」と「音」と、「犯行に時間がかかること」は、どんな犯罪を犯す人も共通で避けたがること

放火犯に限ったことではありませんが、犯罪者は「人の目」と「明るい場所」を嫌います。また、犯行を行う際に、よほどのことがない限りは、時間をかけてまでは行いません。
犯行に及ぼうとした時に、もしもそこに明かりがついていたり、近づいたときに音が鳴って、誰かが駆けつけたとしたら、燃やせるものがその場にないとしたら、放火犯のターゲットにされずにすむかもしれません。
こうしたポイントを意識しながら、住まいの周りを再チェックし、狙われにくい環境を作りましょう。

1.家の周りに燃えやすいものはないか確認しましょう

基本的なことですが、まずは、火をつけられるようなものを家の周りに置いていないか、確認しましょう。例えば、庭木の剪定をした時のゴミや落ち葉、新聞紙や雑誌・ダンボールなどを束ねたもの、紙くずや廃材などが、建物の周りや敷地内に置かれていないでしょうか。面倒に思っても、ごみ収集の時まで玄関や物置の中などに入れて、鍵をかけて保管するようにしましょう。また、しばらく乗っていない自転車やバイクのカゴや荷台に、燃えるものが置いたままになっていないかも確認し、撤去しておきましょう。

2.ゴミは指定された場所に、指定された日時に出すようにしましょう

朝早くゴミの収集があるところでは、前日の夜にゴミを出したくなるかも知れません。しかし、夜間にゴミ出しをすることで、収集場所の周辺を放火されるリスクにさらすことになります。指定された日時以外にゴミを出されてしまう地区では、ご近所で話し合い、ゴミ用のコンテナを置くなどの工夫が必要です。

3.自動車やオートバイのボディーカバーは防炎品を使いましょう

雪や雨やほこり、日焼けなどから守るために、自動車やオートバイにボディーカバーを使っていらっしゃる方は、どのようなものをお使いでしょうか。
放火による被害を最小限に留めるためには、「防炎品(防炎製品)」のボディーカバーを選びましょう。防炎品(防炎製品)とは、一定の基準以上の防炎性能を有するものとして、公益財団法人日本防炎協会が認定したものです。製品には、防炎マークが付けられています。防炎加工がされていないボディーカバーがライターの火などを近づけられると溶けながら燃え広がるのに対して、防炎品はライターなどの火を近づけても火を離すと燃え広がらずに消えます。

4.物置や車庫などは必ず鍵をかけておきましょう

放火犯に敷地内に侵入されることを防ぐことも、大切な対策です。門扉のある住宅では、扉を閉める習慣をつけましょう。門扉と同様に、車庫の扉もしっかりと閉めるようにしましょう。倉庫を庭先に設置している場合にも、日頃から扉を閉めて、鍵をかけるようにすることが必要です。
空き家を所有している方は、誰も住んでいなくても、空き家にも鍵をかけておきましょう。
物置や車庫、空き家などにも日頃から鍵をかけることで、放火火災のリスクを下げることはもちろん、泥棒などの被害にあうリスクを下げることにもつながります。

5.ライト・防犯カメラなどを設置し、放火犯が潜みやすい場所を無くしましょう

多くの犯罪者は、事前に下見をすると言われています。潜みやすい場所があるかどうかや、見つかりにくいかどうか、留守にしている時間などを下見して確認しています。灯りのない薄暗い場所や、道路から見えにくいような場所、勝手口やお隣との敷地と接するような敷地内の通路などが、犯罪者にとっては潜みやすい場所です。「光」と「人の目」がない場所。
こういう場所には、暗くなったら自動で明かりのつく明暗センサーライトを取り付けたり、早めに外灯を点けるようにしましょう。また、放火犯が潜みやすいと思われる場所に、目立つように外用の防犯カメラを設置することも効果的です。
ガレージのある住宅では、ガレージ内に熱式の住宅用火災報知器を設置しましょう。

6.ご近所さんとのコミュニケーションは防火・防災対策にも効果的

人の目は、犯罪者の最も嫌うことです。放火犯に限らず、多くの犯罪者は下見をしているときに声をかけられると、犯行に及ぶことを断念すると言います。
日頃から近所ですれ違う人などには、知っている人・知らない人にこだわらず挨拶をすることを習慣にしましょう。不審な路上駐車が家の近くで見かけられた時には、下見をされている可能性もあります。そういう時にこそ、さりげなく挨拶するようにしましょう。
また、旅行など、長時間にわたって外出するときには、隣人に一声かけて出かけることで、ご自宅の安全を守ることはもちろん、ご近所の方たちも守ることにつながります。
地域ぐるみ、街ぐるみで放火防止に取り組むことが理想です。

放火火災の被害に遭う可能性はゼロにはできない

放火火災の被害に遭うリスクを下げるための対策のポイントをご紹介してきましたが、これらをすべてしっかりと行ったとしても、リスクをゼロにすることは、残念ながらできません。どれだけ対策を講じていたとしても、犯行に及ぶ放火犯はまったくないとは言い切れないのです。
だからこそ、もしも放火されたとしても、できるだけ早く消し止められるように、住宅用消化器は必ず備えておくようにしましょう。

この記事を書いた人

瀬尾 さちこ

防災士。住宅建築コーディネーター。整理収納コンサルタント。

愛知県東海市のコミュニティエフエム、メディアスエフエムにて防災特別番組「くらしと防災チャンネル(不定期)」、「ほっと一息おひるまメディアス(毎週水曜日12時〜)」を担当。
以前の担当番組:みんなで学ぶ地域防災(2021年~2021年)、防災豆知識(2019年~2021年)
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