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住宅用火災警報器、正しく設置&メンテナンスできていますか?

火災が発生する可能性は年間を通してありますが、中でも年間で最も火災発生件数が多くなるのは、2月から4月にかけての春の季節です。空気も乾燥していて石油ストーブやファンヒーターなどを使う冬の季節から、火災の発生件数は増えてきます。
消防庁のデータによると、日々全国で、1日あたり4人の火災による死者が出ているといいます。その多くは、建物火災によって亡くなっています。特に、深夜0時〜4時までの就寝時間の火災によって命を落とす人が多く、全時間帯の平均の約1.5倍にもなっています。65歳以上のご高齢の方が犠牲になるケースが多く、寝ている時の火災による逃げ遅れを減らそうと、消防法が改正され、平成23年(2011年)6月1日から、すべての住宅の寝室や階段に、住宅用火災警報器の設置が義務付けられました。新築の住宅はもちろん、消防法が改正される前から建っている既存住宅にも設置が必要です。

住宅用火災警報器の設置がすべての住宅に義務付けられて、10年以上がたちましたが、全国の住宅用火災報知器の設置率のデータを見てみると、2021年6月1日時点で、設置率は83.1%にとどまっています。

あなたのお宅ではいかがでしょうか?住宅用火災警報機は、正しく設置されていますか?
そして、住宅用火災警報機は、一度設置しておしまいではありません。点検やメンテナンスもできていますか?
住宅用火災警報器の設置や点検・メンテナンスは、専門の業者でなくてもできます。

火災を出さないようにすることがなによりも大切なのは言うまでもありませんが、どれだけ気をつけていたとしても、火災のリスクをなくすことはできません。火災のリスクがさらに高まる時期に備えて、また、大掃除の作業をするついでに、住宅用火災警報器の設置や、点検・メンテナンスをしておきましょう。

住宅用火災警報器は、なぜ必要?

住宅火災が発生した時は、炎や煙を実際に見て、消火活動にあたったり、119番(消防)に通報したり、避難したりという行動に移ることが多いのではと思います。しかし、寝ている時間帯や、扉を閉めている時に他の部屋などで火災が発生した時には、火災に気づくのが遅くなり、すでに初期消火も避難も難しい状況になってしまっているというケースも少なくありません。

住宅用火災警報器は、住宅内で発生した火災による煙や熱を感知し、音や光などで知らせてくれる機器です。

日本に先立って、住宅用火災警報器の設置を義務化したアメリカでは、住宅用火災警報器の普及が進むにつれて建物火災によって亡くなる人が減少し、普及率が90%を超えた近年では、死者数がピークの時から半減したという効果が現れています。
また、日本でも、住宅用火災警報器が設置されている場合は、設置されていない場合に比べて、亡くなった人の数と焼損床面積は半減し、損害額も約4割減少したと、消防庁による住宅火災における被害状況の分析から報告されています。

住宅用火災警報器は、平成23年(2011年)6月1日からすべての住宅への設置を義務化されていますが、もしも設置していなくても、今のところ罰則はありません。
しかし、自分自身と家族の命、住まいなどの財産を守るためにも、住宅用火災警報器の設置をし、火災が発生した時には必ず作動するようにメンテナンスをしておくことは大切なのです。

住宅用火災警報器の選び方

住宅用火災警報器は、ホームセンターや防災設備などの取扱店、インターネット通販などでも購入することができます。価格は、メーカや種類、機能などによっても違いますが、数千円ほど。
購入するときの一つの目安は、国の基準に適合し、日本消防検定協会の検査に合格した製品に付けられる「鑑定」マークがつけられていることです。

住宅用火災警報機には、火災を感知する仕組みとして、「煙式」と「熱式」があります。
煙式は、火災によって発生した煙を住宅用火災警報器が感知することで、音や音声、光などで火災の発生を知らせます。
熱式は、住宅用火災報知器の周辺の温度が一定以上に達すると、音や音声、光などで火災の発生を知らせます。

消防法ですべての住宅の寝室や階段に設置が義務付けられているのは、煙を感知して火災の発生を知らせる「煙式」の住宅用火災警報器です。
熱式は、キッチンなどに設置します。キッチンは、調理によって煙や蒸気が発生するため、煙式だと誤作動を起こしやすいためです。キッチンへの住宅用火災警報器の設置は、自治体によって対象になっているかどうかは異なりますが、義務付けられていなくても設置しておくことで安心感は高まるはずです。

また、煙式も熱式も、天井に取り付けるタイプと壁に取り付けるタイプがあります。電源は、電池式のものと、コンセントに差し込むタイプのものがあります。電池式のものも、ドライバーで簡単に取り付けることができます。電池の寿命は、約2年のものと10年のものがあります。また住宅用火災警報器本体も、概ね10年で寿命となり、交換が必要になります。設置環境や点検・メンテナンスのしやすさなども考慮して選びましょう。

火災発生を知らせる方式は、ブザーで知らせるものや、「火事です」と声で知らせるもの、光で知らせてくれるものがあります。ご高齢の方や、お子さんがいらっしゃるご家庭では、「火事です」と言葉で知らせるタイプがわかりやすいかも知れません。聴覚に不自由のある方や、音に対して過敏な方がいらっしゃるご家庭では、光で知らせてくれるタイプがおすすめです。

他にも、一酸化炭素が検知できるものや、数台設置することでワイヤレスで連動して複数の部屋に知らせてくれる「連動型」と言われるものなどもあります。こうした機能のあるものは値段も高くなりますが、住まいの大きさや家族構成、予算なども考慮しながら導入を検討されると良いでしょう。

設置は正しい位置に

住宅用火災警報器の設置は、ガス会社などの施工業者に依頼して行ってもらうこともできますが、ホームセンターなどで市販されているものを購入して、自分で取り付けることもできます。取り付けに専門の資格も必要ありません。電池式の住宅用火災警報器のほとんどは、特別な工具は必要なく、一般的なドライバーがあれば取り付けられます。

しかし、住宅用火災警報器の誤作動をなくし、効果的に使うために、設置の基準があります。
住宅用火災警報器は、寝室と、1階以外に寝室がある場合には寝室がある階の階段の上部の、天井か壁に設置します。

天井に取り付ける場合に、注意することは4つです。
  1. 壁または梁(天井の出っ張り)から、住宅用火災警報器の中心まで、煙式は60センチ以上(熱式は40センチ以上)離して取り付けます
  2. 換気扇やエアコンなどの空気吹き出し口から、住宅用火災警報器の中心まで1.5メートル以上離して取り付けます
  3. 照明機器などの熱を発するものからできるだけ離して取り付けます
  4. タンスの真上に取り付けるのは避ける
壁に取り付ける場合は、天井から15〜50センチ以内に住宅用火災警報器の中心が来るように取り付けます。

天井に取り付ける場合も、壁に取り付ける場合も、ホコリや虫の多い場所、常に温度や湿度が高い場所、石油ストーブの近くなどのススや水蒸気が発生する場所の近くや、すきま風の強い場所や扇風機の近くなどの空気の流れが早い場所に取り付けることは避けましょう。

お手入れや点検もしっかりと

いざという時にしっかりと火災を感知して警報がなるように、またホコリなどによる誤作動を防ぐために、年に1回程度はお手入れをしておくことも必要です。
汚れなどが目立ってきたら、中性洗剤を加えた水に浸した布をしっかりと絞り、外側の汚れを拭き取っておきましょう。

1年に一度(できれば1か月に一度)を目安に、定期的に住宅用火災警報器が鳴るかどうかのテストもしておきましょう。点検方法は、機種によって本体のヒモを引くものや、ボタンを押して点検するタイプのものがあります。点検は、どんな音が鳴るのかを知っておくためにも、できればご家族一緒に行いましょう。

また、電池式のものは、電池の交換が必要です。電池が切れそうになったら音やランプで交換時期を知らせてくれるものもありますが、早めに電池交換しておくようにしましょう。
住宅用火災警報器本体の寿命も、おおむね10年とされています。本体に交換時期を明記したシールが貼られているものや、音などで交換時期を知らせてくれるものもあります。交換時期の設置から10年が近づいてきたら、忘れずに交換するようにしましょう。

住宅用火災警報器の新たな設置や、点検・メンテナンスは、大掃除をする時がいいタイミングとなるかも知れません。


参考資料

総務省消防庁 消防統計 令和3年(1〜12月)における火災の状況(確定値)

都道府県別設置率および条例適合率(令和3年6月1日時点)

東京消防庁 「住宅用火災警報器を設置しましょう。」「定期的に点検を行いましょう。」

東京消防庁 住宅用火災警報器Q&A

北海道 住宅用火災警報器設置義務化

総務省消防庁 平成30年版 消防白書

消防庁国民保護・防災部防災課防災情報室 令和3年(1〜12月)における火災の概要

この記事を書いた人

瀬尾 さちこ

防災士。住宅建築コーディネーター。整理収納コンサルタント。

愛知県東海市のコミュニティエフエム、メディアスエフエムにて防災特別番組「くらしと防災チャンネル(不定期)」、「ほっと一息おひるまメディアス(毎週水曜日12時〜)」を担当。
以前の担当番組:みんなで学ぶ地域防災(2021年~2021年)、防災豆知識(2019年~2021年)
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