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震災に思う...語り継ぐ➁ 防災教育と災害伝承の日

防災の日

日本にはいろいろな記念日があります。国が定めたものあれば、誕生日や結婚記念日といった個人の大切な記念日もあります。記念日を認定する任意の団体もいくつかあるようです。
大災害が発生した日を記念日に制定している場合もあります。国が制定しているものは「防災の日」と「防災とボランティアの日」です。
関東大震災(1923年)が発生した9月1日は「防災の日」です。この日を含む1週間は「防災週間」となっており、学校で避難訓練を行った経験のある方は多いのではないでしょうか。
地震だけではなく、「台風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波等の災害」など様々な災害を対象に、訓練や備えに力を入れようと、国や行政機関、国民一人ひとりに呼びかけています(※1)。風水害も対象となっているのは、9月1日が立春から210日目で台風の上陸が多いため、台風への備えを怠らないようにという意味も込められているようです。

※1 内閣府ホームページ

防災とボランティアの日

1月17日は「防災とボランティアの日」と定められています。阪神・淡路大震災(1995年)を記念して制定されました。1月15日から21日までの1週間は「防災とボランティア週間」になっています。
私は神戸に住んでいますから、秋が深まりどんどん寒くなってくると震災関係の行事が増えてくるのを実感しています。学校でもこの日が近づくと防災の授業を取り入れたり、1月17日には追悼集会で震災の講話をしたりします。

津波防災の日

関東大震災と阪神・淡路大震災が発生した日は国が制定した記念日になっていますが、もう一つの大震災はどうでしょうか。東日本大震災が発生した3月11日です。いろいろ探してみましたが、国として何らかの記念日に制定しているわけではなさそうです。しかも、11月5日が「津波防災の日」と定められています。一瞬、「なぜこの日に」という疑問がわいてきませんか。
実は、津波対策の推進に関する法律が成立したのは2011年6月24日ですが、法案が国会に提出されたのは東日本大震災の前年でした。11月5日は安政南海地震が発生した日です(嘉永7年11月5日です。ややこしいのですがこの年は安政元年でもあるようです。西暦では1854年12月24日です)。国会への提案後に東日本大震災が発生し、それから法案が審議・可決されたので、もともと予定していた11月5日をそのまま採用したのだと思います。

忘れないためには

国が記念日に制定しようがしまいが、被災の事実は厳然としてあり、遺族の悲しみも続いています。追悼や教訓の継承には、一人ひとりが心の中で祈り記憶し続ければ良いのであって、記念日の有無は関係ないという考えもあるでしょう。
一方、被災した県や市町村では独自に鎮魂の日や行事を設けて(例えば「みやぎ鎮魂の日」)、犠牲者へ哀悼を送り、記憶の継承・発信に努力しています。国という大きな単位ではなく、地方行政、地域、個人といった小さな単位で記憶し続ける活動も大切です。
でもやはり、人間は、自分が当事者でなければ忘れていく生き物です。新しい出来事に関心が向いていきます。記念日がやってきて、ああそうだ、そんな出来事があったんだと当時を振り返るのです。3月11日はまだ血を流し続ける傷口のように、当事者の心を抉ります。しかし、普段は意識の中に311を思い浮かべない人がいるのも事実です。忘れかけている周囲の人々、震災後に生まれて直接知らない子どもたちが、あの震災体験と向き合い、教訓を再確認することは大切です。

それを可能にする方法は2つあると私は考えています。ひとつは記念日の制定です。そしてもうひとつが防災教育の充実です。
「防災の日」「防災とボランティアの日」が存在する事実を考えると、あれだけの犠牲を出した311を日本に住むすべての人々が記念する日を国として制定する時期が、そろそろ来ているのではないでしょうか。

災害伝承と防災教育の日

防災教育に関しては、もう15年以上前から、「防災教育チャレンジプラン」(※2)と「1.17防災未来賞『ぼうさい甲子園』」(※3)というふたつの支援・顕彰制度があります。日本の防災教育を育ててきたプロジェクトと言えるでしょう。私はその両方に最初から関わってきて、防災教育の発展や面白さをずっと実感してきました。
そのひとつ、「防災教育チャレンジプラン」の実行委員の話し合いを通して生まれた一般社団法人防災教育普及協会は、防災教育の発展のために様々なとりくみを進めています。そして、東日本大震災から10年が経過しようとしているいま、3月11日を「災害伝承と防災教育の日」にしようという運動を始めました(※4)。東日本大震災の教訓をはじめ、これまでに私たちが体験してきた災害での多様は教訓を引き継ぎ、防災教育に活かして、災害に強い市民社会をつくろうというのが、その目的です。

東日本大震災から10年目の今年、新型コロナウイルス感染症によって、教訓の継承・発信の活動は大きな制限を受けました。それでも、関わってきた方々が遠隔でのセミナーやオンデマンドでの発信に力を入れています。東日本大震災10年を契機に、もっと多くの人が災害に向き合い、教訓を継承・発信し、学校や地域が防災の学びに力を入れて、社会全体の防災力が向上させていくことが大切だと、私は考えています。

※2 防災教育チャレンジプランホームページ
※3 1.17防災未来賞「ぼうさい甲子園」ホームページ
※3 一班社団法人防災教育普及協会ホームページには「災害伝承と防災教育の日」の特設ページがあります。

この記事を書いた人

諏訪 清二

全国初の防災専門学科 兵庫県立舞子高校環境防災科の開設時より科長を務め、東日本大震災をはじめとする国内外の被災地でも生徒とともにボランティアや被災者との交流に従事。
防災教育の第一人者として文部科学省「東日本大震災を受けた防災教育・防災管理等に関する有識者会議」など、防災教育関連の委員を務める。

2017年4月から防災学習アドバイザー・コラボラレーターとして活動開始。
学校での防災学習の支援活動を中心に、防災学習、災害、ボランティア、語り継ぎなどのテーマで講演活動も。
中国四川省、ネパール、スリランカ、モンゴル、エルサルバドルをはじめ、海外各地でも防災教育のプロジェクトに関わってきた。

2017年度~
神戸学院大学現代社会学部 非常勤講師
兵庫県立大学 特任教授
(大学院減災復興政策研究科)

2018年度~
関西国際大学セーフティマネジメント研究科 客員研究員

【著書】
防災教育のテッパン――本気で防災教育を始めよう

防災教育の不思議な力――子ども・学校・地域を変える

高校生、災害と向き合う――舞子高等学校環境防災科の10年
※こちらの書籍は、現在電子書籍での販売となります。

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