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実際の避難所での生活。食事はどうする?避難時の持ち物は?

ニュースなどで見る避難所の様子。避難所がどのような場所なのか、詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。
よく、炊き出しが行われている映像を目にすることがあるかと思います。しかし、実際には避難所へ着いても、水や食料がしばらく届かないことも多くあります。そのため、非常用持ち出し袋(防災リュック)を用意しておき、生活に必要なものを持ち込む必要があるのです。
実際の避難所について知らないと準備不足になることもありますので、まずは避難所ではどのような生活を送るのかを知りながら、必要となるものをそろえましょう。

避難場所と避難所の違い

単語が似ていて少しわかりにくいのですが、避難先には「避難場所」と「避難所」の2つあります。始めにこの2つの違いについて説明をしましょう。

まずは、避難場所。地震や津波、大規模火災、洪水などが起きたとき、緊急で命を守るための避難先です。
周りに倒壊するものが無い広い公園や、津波が押し寄せることのない高台を想像すると、わかりやすいと思います。緊急時に危険を避けるため「緊急避難場所」とも呼ばれます。

次に、避難所。災害が引き起こす直接の危険を避けた後に、倒壊や浸水などで自宅に戻れない場合などに滞在をする避難先です。学校や公民館などの、しばらく住むことのできる建物を想像してみてください。

倒壊の危険がない広い校庭のある学校や、津波の届かない高台に公民館がある場合には、避難場所と避難所の両方をかねる場合もあります。
また、避難場所、避難所ともに、地震や洪水など災害の種類によって使用できない場合がありますので、自宅や会社の近くの避難先について調べておきましょう。

今回は自宅に戻れなくなったときに滞在をする「避難所」について、詳しく説明をしていきます。

避難所に行くタイミングは?

避難所は“自宅などに危険がある場合に滞在をする所”と考えましょう。少しわかりやすくケース別に説明をしていきます。

地震

建物の倒壊の可能性がある場合や、自宅に住めない場合のみ避難所に移ります。
大きな地震が起きた場合には、一見被害がないように見えても、その後の余震で建物が倒壊する可能性があります。そのため、自治体から派遣される判定士が建物の倒壊の判断をしてくれます。
判定士の調査で問題ないとされた場合や、地域の被害が少なく倒壊の心配がない場合には、避難所ではなく自宅での在宅避難を行います。

災害の直後はたくさんの人が集まるため、避難所は人であふれかえり、廊下などで生活することもあります。
始めのうちは広い場所にそのまま寝泊まりをするだけで、しばらくした後も仕切りで区切られるのみ。プライバシーは完全な配慮とまではいかず、被災者の間でトラブルが発生することも多くあります。
また、家で過ごす在宅避難でも食料がなくなってしまった時には、避難所で食事を受け取ることが出来ます。そのため、できる限り自宅で過ごすほうが安心できるのです。
まずは自宅の安全確保を最優先に、きちんと自宅で過ごせるよう在宅避難の準備をしておきましょう。


津波

津波の場合は一刻を争うため「避難場所」へ向かうことになりますが、津波警報を聞いたらできる限り早い避難をしましょう。
東日本大震災で津波の被害にあった、岩手県釜石市では「100回逃げて空振りでも、101回目も必ず逃げろ。」と言われています。また、津波警報で発表される「予想される波の高さ」よりも高い標高に波が到達することがあります。津波にあった人の経験を活かし、できる限り早く、できる限り高い場所へと避難をしてください。


地震と同じように直接の脅威が去った後、自宅で過ごせなくなってしまった場合や、余震などで危険が残る場合に避難所で生活を送ることとなります。

台風や大雨などの風水害

台風や大雨などの場合、市町村から避難情報、気象庁から防災気象情報が発表されます。
市町村から「避難指示」、気象庁から「◯◯警戒情報」と発表があった場合には、地域にいる全員の避難が必要となります。もし、高齢者など避難に時間がかかる人がいる場合には、市町村の「高齢者等避難」、気象庁の「◯◯警報」の段階で避難を行いましょう。
また、浸水や土砂災害が起こり、道が通れなくなっていると避難に時間がかかります。土砂崩れの危険がある地域、河川の近く、アンダーパスと呼ばれる掘り下げられた道路を通る場合には、なるべく早めの避難をおすすめします。

避難のタイミングを知る避難情報について、もっと詳しい情報はこちらのページにまとめています。


避難所ってどんなところ?

避難所はどんな人が主体となり運営をしているのでしょうか?市区町村の職員?
いいえ、消防団のような市民の防災組織や、町内会、自治会を中心として、集まった避難者で自主的に運営します。

避難所に求められる「生活の質」とは何でしょう?おいしい食事を取れるようにすること?
いいえ、健康が維持できることです。まずはトイレや寝る場所が用意され、避難当日から2-3日は食事の配給がないこともあります。

これから、少しショックに感じるかもしれませんが、避難所で起きる現実をお伝えしますね。

食事

まず、食事。災害が起きた当日、長ければ2-3日は食料だけでなく飲料水もないと思っておきましょう。
避難所に備蓄品を置いていない場合があり、道路がふさがれ交通が麻痺してしまうと、しばらく輸送することも出来ません。また、わずかな備蓄品が手に入ったとしても、避難者全員で分け合える量がない場合もあります。
備蓄品が届いても、初めはパンや粥を含む缶詰、レトルト食品。調理する水があれば、アルファ米、フリーズドライ食品などが支給されます。しかも1日3食は配給されず、水は1家族で500mlペットボトルで1本といったこともあります。
しばらくして、備蓄品以外の食料が配給されるようになっても、菓子パンや冷えきったお弁当といったことがあります。よく映像で見る炊き出しをもらえるのは、ずっと後のこと。避難者にとっては本当にありがたいものなのです。

居住

寝具は、当日から数日はダンボールがあれば良いほうかもしれません。毛布があっても全員に行き渡るかはわかりません。学校の体育館を想像してもらえればと思いますが、暖房も完全ではなく、冷房設備自体がなかったり、停電で使えないことが多くあります。
また、避難所に来た順に場所取りが始まってしまうため、部屋に入りきれない人は廊下で生活することもあります。高齢者など配慮が必要な人に良い場所を優先できればよいのですが、平常時にルールを決めて準備をした人が避難所にきていないと、それもままなりません。
このような状況ですので、とても狭いスペースで生活をすることになります。

トイレ

そして、トイレの問題です。災害発生当初は避難者数も多く、人数に対してトイレが足りない場合もあります。また、仮設トイレが設置されるまでに早くて3日、長い場合には2週間とかなりの日数がかかります。
トイレに列ができなかなか使えないため、なるべく飲食をしないよう我慢をしてしまい、体調を崩すケースもあるようです。

避難所の現実を知って、不安になってしまった方も多いかもしれません。
しかし、これは実際に起きたこと。全ての避難所で起こるわけではありませんが、災害の規模や避難所によっても違いがあります。
避難所でどのようなことが起きるかを知った上で、前もってしっかりと準備をしておきましょう。

避難所で必要となるもの

避難所へ向かうときには何を持っていく必要があるのでしょうか?必要となるものを考えていきましょう。

水・食料

まずは、飲料水と食べ物。初めの1-2日間で飲食するものは自分で持ち込むものと考えましょう。
飲み物については、カフェインが含まれるお茶や、ビタミンCが含まれる飲料には利尿作用があります。トイレは並ばないと使えないこともありますので、ミネラルウォーターをおすすめします。食べ物に含まれる水分を含め、1日2Lとれることを目安としましょう。

食べ物について注意が必要なのは、自分でカセットコンロやアウトドア用の火器を持ち込んでも、使うことが出来ない避難所もあります。水で戻せるアルファ米や、温めのいらない缶詰、レトルト食品を用意しましょう。なお、カップラーメンは水でも30分(うどんなど麺の太いものは60分)ほど戻すと食べることが出来ます。ただし、豚骨ラーメンなど油の多いものは避けた方がよいようですので、備蓄の参考にしてみてください。
その他、避けたほうが良いものは、匂いが強かったり、音が大きく鳴るせんべいのようなもの。食べ物を持っていない方もいますので、そういった状況で食べようとするとかなりのストレスを感じてしまいます。

寝具・衣類

徒歩で避難をする場合に布団を持っていくのは、難しいと思います。暖を取るのにビニールにアルミ箔を貼った、エマージェンシーブランケット(サバイバルシート)が携帯できるので便利です。しかし、ガサガサと大きい音がするものは、他の人の迷惑となりトラブルのもとになることもあるようです。静音タイプのものがありますので、なるべくこちらを用意することをおすすめします。

エマージェンシーブランケットだけでは限界がありますので、なるべく重ね着できるよう衣服を多めに持っていきましょう。厚手の洋服の上に、ウインドブレーカーや雨具のような風を通さないものを羽織ると、保温性が一層高まります。
雨の中避難を行う場合、避難所で体を冷やさないように衣服が濡れないようにすることが重要です。着替えなど濡れては困るものをビニール袋の中に入れ、さらにゴミ袋などをバックの中に入れてから荷物を詰め、2重の対策をすれば安心です。

また、床に直接寝ようとすると固く、寒い時期では体温も奪われるため辛いもの。できれば、防災用のエアーマットなど敷くものがあるとよいでしょう。
それでも寒い場合には、ゴミ袋に穴を開けてかぶりましょう。新聞紙をクシャクシャにして間に入れるとより効果的です。

衛生

健康と保つために、歯磨きセットを持っていきましょう。きちんと歯磨きをしないと、口の中の菌が肺に入り、肺炎になってしまうことがあります。
また、人が密集しており、泥やガレキなどもあるため、チリやホコリが多くなります。マスクをしてなるべく喉をいたわり、風邪などの感染症にかからないようにしましょう。使い捨てのマスクだとずっと使えないため、洗って使える布マスクを使ったり、手ぬぐいや大きなハンカチを口の周りに巻いて代用することもできます。

その他に避難所に持っていったほうが良いものについては、こちらのページで詳しく解説していますので、必要なものをチェックしてみてください。


想定外のことが起きるのが災害

避難所ではいろいろなことが起きることを知り、持っていったほうが良いものをお伝えしました。
しかし、「災害時には想定外のことが起きるので、正解がない」と、被災地で活躍してきた専門家の方はみなさんおっしゃいます。

最後に、避難所で思い出して欲しいことをお伝えします。
実際に生活をしてみると色々なことが起き、家族構成や状況によってさまざまな選択肢があることに気づくと思います。
その時は、自分の家族にとって何がベストかを自分の頭でしっかり判断し、自分自身を守れるようにしましょう。

また、周りに困っている人がいた場合や、何か変だな?と思った場合。自分に少しでも余裕があれば、その人に声をかけてあげてください。
例えば、家族に赤ちゃんがいる場合には、自分が周りに迷惑をかけていると思ってしまい、必要なことを言い出せないこともあります。

避難所ではつらい状況の中で共同生活と行うため、過度に周りと協調しなければいけないという空気が生まれます。
ただ、全てをひとくくりで考えずに、自分の家族や周りの人にとってどうするのが良いか、一呼吸おいて考えるようにしてみてください。

この記事を書いた人

moshimo ストック 編集部

防災をしたいけど情報がたくさんあって、何から始めればいいの…?
私たち moshimo ストックも始めは知ることが幅広くて、防災ってちょっと難しいな…と思いました。
そんな "元初心者" の編集部が、初めての方にもわかりやすいよう防災・備蓄・災害についての情報をお届けいたします。
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