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平時のリスクは災害時にも(2) - 女性を狙った性犯罪にあわないための自己防衛のポイント

災害時には、平時のリスクや問題、危険性がより大きくなったり、顕在化すると言われています。犯罪もその一つ。


被災地ではない地域から犯罪を実行するために被災地までやってくるという悪質なケースから、長期化する避難生活からストレスが溜まり犯罪に及んでしまうケースまで、様々なタイプの犯罪者がいます。特に深刻なのは、女性を狙ったのぞきや強制わいせつ、強制性交(強姦)といった、性犯罪です。災害時には避難所などの閉鎖的なコミュニティでも発生しており、告発することで避難所にいられなくなる心配や、命の危険と隣り合わせであることから、被害が表面化するのはごく一部のみだとも言われています。
こうした女性を狙った犯罪も、災害時に限ったことではなく、平時から発生しています。
平時にはどのようなところで、どのような女性を狙った犯罪が発生しているのか。また、どのように対策をしたらいいのか、被害にあった場合にはどう行動したらいいのかなど、日頃の安全対策をもとに、考えておきましょう。

強制わいせつの多くは暗い夜道で起きている

「暴行又は脅迫を用いて、相手の意思に反してわいせつな行為を行う」犯罪、強制わいせつ。警視庁の調査によると、昨年(2020年)1年間で、東京都内だけでも約550件発生しています。このうち、約36%が道路上や公園で起こっています。時間別発生状況を見ると、一番多いのは深夜11時〜12時で、朝方、午前3時頃〜日中の午後3時ごろまでは発生件数が減りますが、午後5時前後で急激に発生件数が増えています。帰宅者の多い午後6時ごろにはいったん発生件数が減りますが、午後7時にはまた増え始め、深夜の最多時間まで発生件数が増え続けます。
こうした統計からも、強制わいせつの多くは、夕暮れ時から深夜にかけて、外出時に発生していることがよくわかります。性別や年齢に関わらず、強制わいせつの被害者にはなる可能性はありますが、やはり、被害者の多くは女性です。女性は特に注意する必要があります。

こんな場所では特に注意

性犯罪の多くは、女性が一人でいるときに、道路上や公園などで発生しています。さらに、道路や公園の中でも犯罪が多く発生している危険な場所があります。
例えば、道路なら、人通りが少ない住宅街や、片側が田畑やビルなどの駐車場になっているなど、歩道の片側に人目が少ない場所がある路上で事件が発生しています。
人通りの少ない公園では、ベンチやトイレ、木陰などの外から見えにくい場所を通る時には、特に注意が必要です。自宅への近道だとしても、人通りの少ない公園を歩くときには気をつけましょう。平日の昼間でも被害が発生しています。

もちろん、被害は道路上や公園だけでなく、駐車場・駐輪場などでも被害は発生しています。帰宅途中に駐車場まで追跡された事例や、駅周辺の駐輪場から自転車に乗って帰宅しようとした際に駐輪場の出口付近で被害にあったなどの事例もあります。
さらに、意外な場所で女性を狙った多くの犯罪が発生しています。集合住宅などの、住宅です。特に、4階建以上の中高層の住宅で多く発生しており、強制わいせつの発生件数のうちの約1/6が、強制性交では発生件数のうちの約1/4がこうした場所で発生しています。集合住宅の中高層階の共用部分は外からも見えにくく、人目につきにくい場所が少なくありません。

夜道では自分の身は自分で守る

犯罪者は「光」と「音」「人の目」を嫌います。これは、女性を狙った犯罪に限らず、屋内に侵入しての窃盗など他の犯罪にも共通します。しかし、人通りの少ない夜道では、このどれも期待できず、逃げ込める場所や助けを求められる人もない場合もあります。
だからこそ、自分の身は自分で守れるように、夜道や、日中でも人通りのない場所を一人で歩くときなどは、しっかりと対策をしたうえで、常に警戒心を持って行動することが大切です。
防犯ブザーやホイッスルなどの防犯グッズを持ち歩くことは、子どもだけでなく、大人の女性にとっても効果的です。できる限り常に身に付けるようにしましょう。身につけていると犯罪者に知らせることも犯罪の抑止に繋がります。防犯グッズも、店頭には様々な種類のものが出ていて、アクセサリーのようなものもあります。また、ホイッスルなどは大規模災害が発生して倒壊した建物や家具の下敷きになった時にも、助けを呼ぶのに効果的です。防犯ブザーは、いざという時に電池切れなどがないように、定期的に作動チェックしておきましょう。

犯罪者の多くは、あらかじめターゲットを定めてから、犯行に及びます。多くの場合には、前兆となることが起こっているはずです。帰宅ルート上でコンビニエンスストアなどの店舗や交番の位置などを確認しておき、後をつけられていると感じたら、ためらわずに最寄りのお店や交番に逃げ込みましょう。

一人で徒歩で帰宅するときには、イヤホンで音楽を聴いたり、携帯電話で人と話したりしながら歩いた方が寂しさを紛らわせたり、安心できると考えている人もいるかも知れません。しかし、防犯上では逆効果です。携帯電話で話している人が万が一の時にすぐに助けに来てくれるとは限りません。携帯電話の操作に夢中になったり、イヤホンで耳を塞いでいることで後ろから近づいてきている不審者に気がつくのが遅れるということもあります。
ながら歩きは控えましょう。夜道では、時折後ろを振り返ったり、周囲を警戒しながら歩くくらいの緊張感を持って歩いた方が効果的です。自分の身に危険が迫った時には、いち早く気づき、対応できるように、気を抜かないようにしましょう。

なるべく明るい道や人通りの多い道を歩いたり、危険な夜道で一人になりそうな時には、できれば家族などに迎えに来てもらったり、タクシーを利用するなど、自分の身は自分で守るという意識を持っておくことが大切です。

また、人通りの少ない時間には外から見えにくい場所が多い公園には近づかないようにしましょう。
駐車場では他の車から突然不審者が降りてきて近づいてくるようなことも発生しています。そんな時には、すぐに自分の車に乗ってロックするようにしましょう。

自宅やマンションなどでも

自宅マンションに到着すると、安心して気を抜きがちです。しかし、自宅マンションのエレベーターだからと油断はできません。二人きりになるタイミングができるエレベーターは、犯罪者にとっては犯行に及ぶことができる場所でもあります。
エレベーターに乗る前には、周りを確認して、不審な人が近くにいないか確認することが大切です。知らない男性と二人きりになりそうな場合には、できるだけ乗らないようにした方が安心です。二人きりになってしまった時には、壁を背にしてすぐに非常ボタンが押せる位置に立ちましょう。不安を感じたら、目的階まで我慢せずに、できるだけ早くエレベーターから降りるようにしましょう。

マンション、一戸建てに関わらず、玄関のドアを開けるときには、まわりに不審な人がいないか注意しましょう。玄関ドアを開けると同時に、背後から押し入ってくることもあります。また、玄関前で鍵を探すなどの隙を作らないようにしましょう。一人暮らしの方は、帰宅時には家の中に誰もいなくても、インターフォンを鳴らしてから鍵を開けたり、「ただいま」と言いながら家に入るなどして、家に家族がいるように振る舞うことも身を守ることにつながります。下着などの洗濯物も、室内に干すなど、外から見えないように心がけましょう。

家に入ったら、すぐに鍵をかけるようにしましょう。玄関ドアなどは2ロックともに、窓はクレセントとクレセントの背についているロック、そして補助錠と3ロックを心がけましょう。あらかじめ住宅に備わっているものは、あなたの身を守るためにあります。効果的に活用しましょう。

危険を感じたら迷わず回避する行動を。もしも被害にあったら、躊躇せずに警察に相談を!

犯罪被害に遭っている女性の中には、犯罪者に対して萎縮してしまうなどして、抵抗できないというケースも多く見られます。しかし、「危険を感じる」「嫌な感じがする」といったことを感じたら、できるだけ早く回避する行動をとることが大切です。
それが、声掛けの段階であっても、「危険だ」と感じたら、大声を出したり防犯ブザーを鳴らすなどして、できるだけ早くその場から逃げ出すようにしましょう。それでも執拗に近づいて来られたら、傘でついたりバッグを振り回すなど、所持品などを使って抵抗することも効果的です。
いざという時にこうした行動を取るためには、日頃から防犯意識を持って、危険な状況をイメージしておくことが大切です。日常での意識は、災害時の行動にもまた繋がっていきます。

それでも被害に遭ってしまったら・・・。
被害に遭ってしまった人には、何も非はありません。悪いのは、犯罪を犯した人です。
勇気を持って、警察に届け出をし、サポートを求めましょう。全国の警察では、犯罪の被害にあった方へのサポートを行なっています。
各都道府県警察では、匿名でも相談に応じてもらえる、性犯罪被害者相談電話窓口をフリーダイヤルで設けています。また、全国共通の短縮ダイヤル「#8103」でも最寄りの相談窓口につながるようになっています。

平時からのリスクを下げる行動が、きっと災害時にも活きてくるはずです。

この記事を書いた人

瀬尾 さちこ

防災士。住宅建築コーディネーター。整理収納コンサルタント。

愛知県東海市のコミュニティエフエム、メディアスエフエムにて防災特別番組「くらしと防災チャンネル(不定期)」、「ほっと一息おひるまメディアス(毎週水曜日12時〜)」を担当。
以前の担当番組:みんなで学ぶ地域防災(2021年~2021年)、防災豆知識(2019年~2021年)
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