中央防災会議のとりまとめでは南海トラフに備え、食料や飲料水、乾電池、携帯電話の電池充電器、カセットコンロ、簡易トイレ等の家庭備蓄を1週間分以上備蓄することが必要とされています。
実際におきるライフラインへの被害を見ながら、備蓄の必要性を考えてみましょう。
上水道
被災直後には最大約3570万人、東海三県の約6~8割、近畿三府県の約4~6割、山陽三県の約2~5割、四国の約7~9割、九州二県の約9割で断水すると想定されています。
災害発生から1週間後の復旧率は約51%、1ヶ月後には約87%の断水が解消されるとされています。
このように、南海トラフ沿いのほとんどの地域で断水がおき、数日後に給水車がくるようになっても十分な量の飲料水が配給されないことも予測されています。
また、断水の影響を受けて、災害がおきてから1週間後に避難者の数がもっとも増加する予測もありますので、十分な水の備蓄をしておきましょう。
1人が1日生活するのに最低限必要となる水は、飲食用に2リットルと衛生のために1リットルの合計3リットルとされており、推奨される一週間分では1人21リットルの水が必要となります。
下水道
被災直後には最大約3,460万人、東海三県の約9割、近畿三府県の約9割、山陽三県の約3~7割、四国の約9割、九州二県の約9割で下水道が利用できなくなると想定されています。
災害発生から1週間後の復旧率は約90%、1ヶ月後には殆どの地域で下水道が使えない状況が解消されるとされています。
災害時に見落としがちなのがトイレの備蓄。排泄物の匂いが大きなストレスとなるほかに、不衛生な環境は感染症なども引きおこします。また、災害時にはゴミ回収もきませんので、しっかりとした対策が必要となります。
人がトイレに行く回数は平均1日5回となりますので、1週間分では1人35個の非常用トイレの用意が必要となります。
災害時のトイレ事情。臭いを通さない「BOS 非常用臭わないトイレセット」で携帯トイレを備えよう。
電力
被災直後には最大約2,930万軒、東海三県の約9割、近畿三府県の約9割、山陽三県の約3~7割、四国の約9割、九州二県の約9割で停電すると想定されています。
災害発生から1日後の復旧率は約56%、4日後に約95%、1週間後に約97%の割合で停電が解消するとされています。
都市ガス
被災直後には最大180 万戸、東海三県の約2~6割、近畿三府県の最大約1割、山陽三県の最大約1割、四国の約2~9割、九州二県の約3~4割で都市ガスが止まると想定されています。
災害発生から1週間後の復旧率は約22%、1ヶ月後には78%の割合で都市ガスの停止が解消されるとされています。
停電にそなえてLEDライトやランタンを準備することも必要ですが、ガスが止まったりオール電化の家では食事を作ることができなくなります。お米やパスタ、冷蔵庫の食材などを1週間分の食料に含めて活用するためにも、カセットコンロとカセットボンベ(ガス缶)の用意をしておきましょう。カセットコンロで調理をするのであれば、カセットボンベは1週間で1人あたり6本くらいの量があるとよいでしょう。
また、電気と比べて都市ガスが復旧するまでの期間は長くかかります。復旧が長期化したときに備えて電気で調理するためカセットコンロのほかに、IH調理器(IHコンロ)などがあると、長期のガス停止にも備えることができます。
固定電話
被災直後には最大580万回線、東海三県で約9割、近畿三府県で約9割、山陽三県で約3~6割、四国で約9割、九州二県の約9割で通話ができなくなる想定されています。
災害発生から1週間後の復旧率は約94%、1ヶ月後には98%の割合で電話の不通が解消されるとされています。
携帯電話・インターネット
被災直後には大勢の人が同時に携帯電話を使うため混み合い、大部分で通話できなくなります。また、1日後には非常用電源からの電力がなくなるため基地局が停止し利用ができなくなります。
インターネットへの接続は、固定電話回線の被災や基地局の停止に影響され、利用できないエリアが発生します。
災害がおきた直後は沢山の人が電話を使うため、電話回線が混み合い繋がりにくくなります。公衆電話は優先的につながるようになりますので、常に小銭を用意しておくことがおすすめです。
また、相手が電話に出ないときには、災害用伝言ダイヤルを使うと連絡が取りやすくなりますので、日頃から家族で使い方を練習しておきましょう。
災害用伝言ダイヤル171の使い方と意外なポイント。身近な人と使い方を決めておこう
スマートフォンや携帯電話は連絡や情報収集にとても役立ちますので、モバイルバッテリーの備蓄をしておきましょう。
携帯電話やインターネット回線が使えないときに、気にしすぎて何度も画面を見てバッテリーを消費しすぎないように。1時間に1回、もしくは2時間に1回などチェックする時間を決めておくことをおすすめします。
また、災害時にはインターネットは使えないことも想定しておくこと。スマートフォンにたよらず、避難用の地図ハザードマップや家族の連絡先などは、印刷されたものを手元におくようにしましょう。
今回紹介した南海トラフ地震の被害は、1000年に1回またはそれより低い頻度でおきる地震を想定し、考えられる最大の被害を予測したものになります。そのため、この規模の被害になるかはわかりませんが、今後30年の間に約70%の高い確率で地震がおきることはわかっています。
災害の被害は想定を大きく超えることもありますので、どのような地震がおきても大丈夫なようにしっかりと備えておきましょう。