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山でのハイキングなどでの遭難や事故を避けるために
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山でのハイキングなどでの遭難や事故を避けるために
公開日: 2022/06/27
梅雨があけて、清々しい陽気が戻ってくると、気温も少し低くて過ごしやすく感じられる山にお出かけになる方もいらっしゃると思います。
また、ウイルス感染防止のためのマスクの着用に関して、政府から、屋外では他人との距離が十分に取れない場合でも周囲で会話がほとんどない時には、熱中症を防ぐ観点からマスクの着用は不要との新しい指針が出されています。登山やハイキングをする際にも、会話をしなければマスクの着用をしなくても大丈夫ということが、山へのお出かけの後押しとなり、今年はますます登山やハイキングなどへお出かけになる方が増えることも予想されます。
登山やハイキングをする機会が増える一方で、山岳遭難や事故に対して、警察などが捜索救助活動を行う件数は毎年、一定数以上発生しています。
「以前はよく登山をしていたから、私は大丈夫」だという方も、安全に登山やハイキングを楽しむために、リスクや注意すべきことを再確認しておきましょう。
もくじ
実は夏に多く発生している山岳遭難
夏の遭難の特徴や原因は
もしも遭難したら。捜索・救助費用は高額に。
捜索・救助活動にかかる費用もまかなえる保険の加入を
遭難を防ぐためには準備が大切!登山計画書(登山届)は必ず提出を
季節や天候なども考慮して、装備は万全に
実は夏に多く発生している山岳遭難
山での遭難というと、雪山で発生するイメージが強いかもしれません。しかし、実際の山岳遭難の発生状況を見てみると、7月から8月の夏の期間でも、多くの山岳遭難が発生しています。また、年末年始よりも春のゴールデンウイークの方が山岳遭難は数多く発生しているのです。
警視庁が発表している統計によると、年末年始(2021年12月29日〜2022年1月3日)には、34件の山岳遭難が発生しています。遭難者は48人。うち、2人がなくなり、1人が行方不明、負傷者は16人でした。
一方、ゴールデンウイーク中(2022年4月29日〜5月8日)には、155件の山岳遭難が発生し、遭難者180人。うち、10人がなくなり、7人が行方不明、80人が負傷しています。
年末年始とゴールデンウイークでは日数が違いますが、単純計算で日数を揃えたとしても、ゴールデンウイーク中の方が多く山岳遭難が発生していることは一目瞭然です。
2021年7月から8月の夏期2ヶ月間での発生状況を見てみると、たった2ヶ月の間で533件の山岳遭難が発生し、597人もが遭難しています。このうち、46人は亡くなったり、行方不明になっています。
発生件数と遭難者数から見て取れるように、単独で山に入り、遭難している人が大部分を占めています。
夏の遭難の特徴や原因は
夏の季節の山岳遭難も、多くは登山をする人(76.0%)です。ついで、ハイキング(7.7%)。他に、渓流釣りや、山菜・きのこ採りなどを目的に山に入る人たちにも、遭難するケースが見られます。
遭難者の年齢別では、50歳代と60歳代が最も多く(それぞれ約20%)、ついで70歳代(約18%)、40歳代も約14%。年齢の高い層に遭難者が多く見られます。こうした人たちの中には、登山歴の長い人も含まれます。
また、どのような状態で遭難するのかというと、一番多いのは、道迷い(30.0%)です。道しるべや迂回路、急角度の曲がり道を見落としたり、倒木や落ち葉、雨、霧などで見つけにくくなった道を見落としたりして、どんどん進んでいくうちに、いつの間にか他の登山者たちとは違う、間違ったルートに迷い込んでしまったというようなケースです。
次いで、転倒(約20%)、滑落(約17%)となっています。
足を踏み外したりして急斜面を滑り落ちてしまう滑落や転倒は、道に迷ってしまったがために起こっているケースもあります。病気や疲労から、普段ならばできるはずの判断を誤ったり、とっさの時の行動が取れなかったために遭難につながってしまったというケースもあります。
3千メートル級の山での事故ではなく、中級山岳や低山で、こうした傾向が見られます。
こうした山岳遭難の多くは、天候に関して適切な判断ができないことや、不十分な装備で入山してしまうこと、さらに体力的に無理な計画を立てるなど、知識・体力・経験などの準備不足が原因で発生しています。
「標高が低く、ハイキング程度だから大丈夫」などと山を甘く見ていると、遭難に繋がります。
気象条件や自分の体力、技術、経験、体調などに見合った山を選び、余裕を持った登山日程を組んだり、携行する装備品や食料などの準備を整え、安全な登山計画を立てることが、遭難のリスクを下げることにつながります。
天気予報などで「大気が不安定」というキーワードが出てきたら、突然の雷雨などが発生しやすい気象条件になっているということです。そんな時には、無理に入山せずに、登山やハイキングを行うことを取りやめる決断をすることも、時には必要かも知れません。
もしも遭難したら。捜索・救助費用は高額に。
もしも山で遭難したら、いる場所が不明で捜索を必要とする場合は警察へ、いる場所がわかっている場合の救助は消防へ要請します。多くの山岳遭難事故は警察が指揮をとるため、どこに連絡をすべきか迷った時には110番(警察へ)通報するのが良いでしょう。
日本の山で遭難事故が発生した時には、警察から出動する「山岳警備隊」、消防から出動する「山岳救助隊」、地元の山岳会や消防団などで結成されている「民間の救助隊」のいずれかが捜索・救助にあたります。
また、大規模な事故の場合には、専門知識と高度な救助技術を備え、人命救助を主な任務とする、消防の専門部隊「特別救助隊(レスキュー隊)」や自衛隊が救助にあたることもあります。
救助にも費用がかかります。
警察や消防のみが捜索・救助活動にあたった場合には、基本的には請求されることはありませんが、民間の救助隊や山岳ガイドが捜索・救助にあたった場合には、遭難者に費用を請求されることになります。
おおよその目安は、救助にあたった人数分の日当(一人2万〜5万円)のほか、救助隊の食費や宿泊費、交通費、通信費、さらに装備や消耗品の費用の実費、保険料など。
人命救助を第一に考え、一刻も早く遭難者の居場所をつきとめて救助するために、ヘリコプターでの空からの捜索が行われることも少なくありません。
ヘリコプターでの捜索・救助にも費用が発生します。
この目安は、ヘリコプターの飛行1時間あたり50万円〜80万円が相場です。
「費用を払いたくない(払えない)から、ヘリコプターは飛ばさなくてもいいし、警察と消防の捜索・救助活動だけで良い!」などということを、遭難している中で自ら選ぶことはできません。
捜索・救助活動にかかる費用もまかなえる保険の加入を
登山やハイキングなどをしているときにもしも遭難したら、高額な費用がかかる可能性があることは、救助にかかる費用の目安からイメージすることができるのではないでしょうか。もしも遭難したら、こうした費用の支払いが、大きな負担となってくるはずです。
こうした、遭難した場合の捜索・救助費用をまかなえる保険があります。
「山岳保険」と言われる、登山やハイキングなどに特化した保険や、一般的な海外旅行・国内旅行傷害保険に特約としてつけられる「救援者費用等補償特約」です。
契約方法には、1〜5年などの年単位で契約する「年間契約タイプ」や、1泊2日など日にち単位で契約する「単発契約タイプ」の2つがあります。
保険料は保険会社によって様々ですが、単発契約タイプには数百円で利用できるものもあります。
免責事項や補償範囲、保険金額などは保険会社により違ってくるため確認が必要ですが、年に数回しか登山やハイキングなどをしない人は「単発契約タイプ」を、年に何度も山に出かける方は「年契約タイプ」を選択するのが良いのではないでしょうか。
山の遭難事故の多くは、標高3千メートル級の山ではなく、中級山岳や標高数百メートル程度の低山で発生しています。
山に出かける時には、「自分は慣れているから大丈夫」や「標高の低い山でハイキングだから大丈夫」などとは思わずに、もしものことを考えて保険に加入しておくことが大切です。
遭難を防ぐためには準備が大切!登山計画書(登山届)は必ず提出を
保険に入っていたとしても、山で遭難した時にかかるリスクは大きなものです。
標高のあまり高くない山に入るときには気軽に考えてしまいがちですが、油断をすればそれだけ遭難のリスクも高くなります。リスクを少しでも減らすために、事前の計画・準備はとても重要です。
自治体によっては条例により「登山計画書(登山届)の作成と提出」が義務化されているところがあります。しかし、義務化されていない地域でも、遭難したときのために登山計画書を提出するようにしましょう。
登山計画書の提出は、一部の地域では登山センターなどに提出することになっていますが、ほとんどの地域においては県警本部に提出します。多くの山の登山口には登山計画書を提出するポストが設けられていて、ポストに投函すると県警などへの提出が完了します。
県警などに提出するだけでなく、家族や友人など身近な人にも、登山計画書のコピーを渡しておくようにしましょう。
県警などに提出された登山計画書は、遭難事故がおきたときに、迅速な救助活動をするために利用されますが、登山する人自身のために作成することで責任感を持って山に入ることにつながり、提出することは昔から登山者のマナーとも考えられています。
登山計画書には、登山者の氏名、年齢、連絡先、登山の予定と携行する装備、食料等の量などを記入します。
そうしたことを記入するために、登山地域などの情報を収集し、気象条件や体力、技術、経験、体調などに見合った山を選び、日程や携行する装備、食糧などの量を決め、無理のない安全な登山計画を立てましょう。
また、登山計画を立てるときには、滑落などの危険箇所や、トラブルなどが発生した時に途中から下山できるルート(エスケープルート)なども事前に把握するようにしましょう。
季節や天候なども考慮して、装備は万全に
登山計画をしっかり立てて登山計画書を作成することは、どのような装備が必要なのかを考え、万全な装備をすることにもつながります。
7月〜8月は、大気の状態が不安定となることが比較的多く、市街地でも突然、災害につながるような大雨が降ることがあります。山の天候は市街地以上に変わりやすいので、レインウエアや気温や気候などに合わせて脱ぎ着のできる服装、トレッキングシューズ(登山靴)などの歩きやすい靴は必須です。
雨風に当たれば体が冷えて体温を奪われ、低体温症になることがあることも考慮に入れましょう。山では標高が1,000m上がるごとに約6度気温が下がります。標高の高い山に登る時には、真夏でも防寒着は欠かせません。
道迷いなどによる山岳遭難を防ぐためにコンパスと地図を持参することも大切です。もしも遭難した場合に助けを呼べるように、携帯電話と予備バッテリーなどの通信手段は必ず必要です。
雨や雪などは、私たちの日常生活の中でも時おり大きな災害をもたらします。
山岳遭難でも、雨や雪、霧(ガス)などで視界不良になり、そこに疲労や病気などで体調不良が重なると、道迷いや滑落のリスクが高まります。
落雷も、年間を通して発生します。こうした天候の悪化は、冷静さを失うなどして遭難のリスクを高めてしまいます。
急激な天候の悪化による「気象遭難」を避けるためにも、事前に天気予報など気象情報をしっかりと確認し、入山を取りやめたり、すでに山に入ってしまっている時には早い段階で下山の決断をすることも、必要なことです。
<参考資料>
警視庁生活安全局生活安全企画課 令和2年における山岳遭難の概況
警視庁生活安全局生活安全企画課 令和3年夏期における山岳遭難の概況
警視庁生活安全局生活安全企画課広報資料 令和4年1月18日 年末年始における山岳遭難に係る警察措置について
警視庁生活安全局生活安全企画課広報資料 令和4年5月17日 春の連休期間中における山岳遭難に係る警察措置について
日本山岳救助機構合同会社
JACCS 海や山で遭難したら?知っておきたい救助費用とレジャー保険
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山と渓谷社 都道府県別・各自治体の登山届提出先
山と渓谷社 山岳遭難の危険はどこに? 知っておきたい山岳気象遭難の事例
日本山岳・スポーツクライミング協会 登山と計画
愛知県警察 登山計画書
この記事を書いた人
瀬尾 さちこ
防災士。住宅建築コーディネーター。整理収納コンサルタント。
愛知県東海市のコミュニティエフエム、メディアスエフエムにて防災特別番組「くらしと防災チャンネル(不定期)」、「ほっと一息おひるまメディアス(毎週水曜日12時〜)」を担当。
以前の担当番組:みんなで学ぶ地域防災(2021年~2021年)、防災豆知識(2019年~2021年)
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