建物を建てるためのルールを定めた建築基準法という法律がありますが、この中に地震のゆれに耐えるための耐震基準という項目があります。
この耐震基準は過去に大きな地震がおきるたびに見直されてきたため、建物が建てられた時期によって耐えられるゆれの強さが違います。時期によって異なる耐震基準を「旧耐震基準」「新耐震基準」「2000年基準」の3つに分け、それぞれどれくらいの地震に耐えられるかを確認してみましょう。
旧耐震基準(~1981年5月)
1981年5月以前の旧耐震基準と呼ばれる基準では、震度5程度の中規模地震でも倒壊しないことを目安とされています。
裏を返せば震度6弱以上ゆれによって倒壊する恐れがあり、とくに木造家屋では老朽化によって建物の強度が弱くなっている可能性もあります。
ここ10年におきた地震を平均すると、震度6弱以上のゆれが年に1回以上おきており(2021年5月現在)、東日本大震災では宮城県、福島県、茨城県、栃木県など広い範囲で震度6強のゆれが観測されています。
今後、予測されている南海トラフ地震でも、伊豆から九州の広い範囲で震度6弱以上のゆれがおきる可能性もありますので、できる限り1981年5月以前の場合は耐震診断を受け、耐震補強をしておくことをおすすめします。
建物を建てる前に、設計や建築工程などをチェックする「建築確認」が行われます。この「建築確認」の申請日が1981年5月以前ならば旧耐震基準、1981年6月以降ならば新耐震基準の建物となります。
建物の完成した日とは異なり、1戸建てでは3~6ヶ月、マンションであれば1~2年の差がありますので気をつけましょう。
新耐震基準(1981年6月~)
1978年におきた宮城沖地震では仙台市で最大震度5となり、家屋への被害は全壊1,183棟、半壊5,574棟となりました。
この地震をきっかけとしてより強いゆれに耐えられるよう耐震基準の見直しがされ、1981年6月から施行された新耐震基準では、震度5強程度のゆれに対してはほとんど損傷をせず、震度6強~7程度の大規模地震のゆれでは命にかかわる倒壊などの被害がおきないことを目安とされています。
2000年基準(2000年8月~)
新耐震基準が施行されて以降、1995年に最大震度7となる阪神・淡路大震災がおきました。この地震での調査結果を見ると、旧耐震基準では倒壊・崩壊が14%/大破が15%、新耐震基準では倒壊・崩壊が3%/大破が5%となり大きな開きがありました。
新耐震基準にもかかわらず倒壊してしまった建物については詳細な調査が行われ、その結果をもとに耐震基準は再度見直されることになります。
「2000年基準」では、地盤調査、地盤の強さに応じた基礎構造、耐震壁のバランスの考慮、筋かい金物や、柱の接合部の金物使用などの規定が義務づけられ、新耐震基準からさらに厳格化されました。
なお、2000年基準は“木造の建物”を対象とした見直しとなり、木造以外の建物は新耐震基準と同じ基準となっています。
そのため、建物が木造で2000年7月までに建てられた場合と、木造以外では1981年5月までに建てられた場合を目安に、建物の強度に問題ないか確認をしたほうがよいでしょう。
なお、2階建て以上の建物が倒壊する場合、1階部分が押し潰されて2階はそのまま残ることが多くあります。
耐震化の済んでいない家に住んでいる場合、できる限り寝室など長い時間すごす部屋を2階におくことをおすすめします。
耐震基準の別にみる地震の被害
「2000年基準」が施行された後の2016年におきた熊本地震での被害状況を見てみましょう。
なお、この地震では最大震度7のゆれが2回おきたほか、14日から16日までの間に最大震度6弱を超えるゆれが5回もおきています。
耐震基準別に被害状況を見ると、旧耐震基準では倒壊・崩壊 28.2%/大破 17.5%、新耐震基準では倒壊・崩壊 8.7%/大破 9.7%、2000年基準では倒壊・崩壊 2.2%/大破 3.8%となっています。
それぞれの被害を見ると、旧耐震基準の被害が圧倒的に多く、2000年基準の被害は新耐震基準よりさらに少なくなっていることが見られます。