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<冬に向けて>非常用持ち出し袋の中身も、衣替えしましょう!
B!
<冬に向けて>非常用持ち出し袋の中身も、衣替えしましょう!
公開日: 2023/10/02
今年(2023年)は残暑が厳しく、なかなか冬のことは想像しにくいかも知れません。しかし、冬は必ずきます。そして、寒い冬の季節に、避難が必要となるような災害が起きる可能性もゼロではありません。今年の冬はエルニーニョ現象の影響で暖冬傾向という予報が出されていますが、一時的な寒気の流入で例年はあまり雪の降らない地域で大雪になる可能性もあるとも予測されています。
本格的な冬を迎える前に、非常用持ち出し袋の中身も、再チェックしながら冬用に衣替えしておきましょう。
もくじ
冬の非常用持ち出し袋は、「寒さ対策」「乾燥対策」「感染症防止対策」を考えて
寒さを防ぐもの、暖をとるもの、トイレの対策も
お肌と喉の乾燥対策に
風邪や新型コロナウイルス、インフルエンザのほかに、ノロウイルスの感染防止にも備えて
「濡れないこと」も重要
注意と配慮が必要なエマージェンシーシートと雨カッパ
車の中にも非常用持ち出し袋を
冬の非常用持ち出し袋は、「寒さ対策」「乾燥対策」「感染症防止対策」を考えて
寒い冬は、空気も乾燥しています。平時でも、風邪やインフルエンザなどの感染症も流行しやすい季節です。
大きな災害が発生した時には、体育館などの避難所に多くの人がつめかけることになります。多くの人が集まれば、衛生環境も最善に保つことは難しくなります。暖房が使えたとしても、広い場所ではすべての空間に暖かさがゆきわたらない可能性もありますし、多くの人が避難してきていれば暖房のない廊下などで避難生活を送らなければいけなくなるかもしれません。また、自治体などが備蓄している毛布なども、足りなくなるかも知れません。自治体によっては、ダンボールベッドなどが備蓄されていることもありますが、多くの場合は、床に毛布などを敷いて過ごすことになります。床から伝わる寒さは、身体の熱を奪います。「冬の避難所は、とても寒い」ことを、念頭において備えておく必要があります。
また、冬の乾燥で肌が痒くなってしまったり、唇や手の皮膚が割れてしまうと、長期にわたる避難生活で皮膚炎が悪化してしまったり、大きなストレスにもつながります。喉の乾燥は、風邪などに感染しやすくなったり、体調不良につながります。肌と喉を乾燥から守る備えも必要です。
感染症からは、「自分の身は自分で守る」備えをすることも大切です。たくさんの人が集まる場所では、「感染しない、させない」対策をしておかなければいけません。
冬の非常用持ち出し袋は、
基本の備え
に加えて、「寒さ対策」「乾燥対策」「感染症防止対策」を考えて、必要なものを加えておきましょう。
寒さを防ぐもの、暖をとるもの、トイレの対策も
冬の寒さは、体力を奪います。体力を温存するためにも安全のためにも、避難時には、肌の露出を控え、暖かな服装で向かうようにしましょう。もしも日中に災害が発生したとしても、できれば朝晩の寒さを想定した服装で避難しましょう。暖かいものを1枚着るよりも、肌触りの良いものの上に暖かいものと風を防ぐものを羽織るなど、重ね着をした方が、服の間にできる空気層で温かく感じます。ズボンの下には、スパッツやタイツなどを履いて。ダウンジャケットやニット帽、手袋なども身に付けて避難すると良いでしょう。
また、避難所での防寒具は、自分で用意していくことが基本です。避難所で毛布などが配布されることもありますが、必ずしも避難者全員にゆきわたるとは限りませんし、そもそも毛布だけでは寒い避難所で眠ることさえできないと考えておいた方がいいでしょう。冬用の非常用持ち出し袋には、キャンプ用品の寝袋とブランケットを備えておくのが理想的です。床から伝わる寒さは、身体の熱を奪います。寝袋に加えて、テントで使う銀マットや、折りたためるエアマット、ヨガマットなどのいずれかを備えておくとベストです。マットを敷いたところで、ブランケットに包まって寝袋に入る使い方をします。
カイロも、多めに備えておきましょう。貼るタイプと貼らないタイプのカイロがありますが、それぞれのタイプを備えておくと良いかも知れません。ただし、貼るタイプのカイロは、ずっと同じ場所に貼ったままにすると、低温火傷を起こすことがあります。使用する際には、同じ場所に貼りっぱなしにしないように、注意しましょう。
また、寒冷地では、カセットコンロ用のカセットボンベで使える、ポータブルストーブを個人で備えて避難所に持参することを推奨している自治体もあります。
他に、厚手の靴下と上履きも、冬の備えの必須です。避難所となる体育館などの床は、とても冷えます。裸足で歩くことはもちろんできませんし、体育館などに備えられているスリッパでも足の裏からの冷えは避けられません。足から体温を奪われていくこともあります。温かく脱げにくい上履きを備えておきましょう。
寒さの中で、トイレの回数も増えます。自分自身に起こる生理現象は、他の人も同様です。避難所のトイレも混み合います。携帯用トイレを、多めに備えておきましょう。15回分程度、非常用持ち出し袋に備えておけると、避難所でも焦らずにすむかもしれません。
お肌と喉の乾燥対策に
秋から冬にかけては、空気の乾燥している季節。避難所も、例外ではありません。乾燥は、健康状態にも影響を与えますし、乾燥による肌の痒みなどはストレスにもつながります。
化粧水や乳液、保湿クリーム(ハンドクリーム)など、肌を保湿するためのものを備えておきましょう。化粧水や乳液は、女性だけのものではありません。肌が乾燥するのは、女性も男性も同じです。男性も、備えておきましょう。また、小さなお子さんも、大人と同様に肌は乾燥します。お子さんの非常用持ち出し袋には、ベビーローションなどを備えておき、平時から保湿する習慣をつけておくと良いかもしれません。
喉の乾燥をやわらげるために、水分補給をすることはもちろん大切です。のど飴なども、あわせて備えておきましょう。羊羹やチョコレートなどの、カロリーも高く水分が多めで喉を通りやすい甘い物も、あわせて備えておきたいところです。
口の中を潤しつつ、気分転換などにも役立ちますし、カロリーの高い甘いものは、寒い中で体温を保つためにも必要です。
風邪や新型コロナウイルス、インフルエンザのほかに、ノロウイルスの感染防止にも備えて
季節を問わず、新型コロナウイルスの感染防止対策が必要だというのは、多くの人がもう当然のこととして考えていらっしゃるのではないかと思います。また、インフルエンザや風邪にも注意していらっしゃる方も多いでしょう。加えて、冬の季節には、ノロウイルスによる感染性胃腸炎にも注意が必要です。
ノロウイルスによる感染性胃腸炎(食中毒)の発生は、年々減少している傾向にはありますが、多くの人が集まれば、短期間で感染が広まる可能性もあります。食中毒は1年中発生しますが、ノロウイルスによる胃腸炎は、12月から3月の、冬の季節に特に流行する傾向は続いています。
ノロウイルスは、腹痛や下痢、嘔吐などを引き起こすウイルスです。ワクチンもなく、治療も対処療法しかありません。ウイルスが含まれる排泄物などから、人の手などを介して二次感染するほか、飛沫感染などもあると考えられています。
こうした、様々な感染症から身を守るために、避難所には衛生用品を持参することがとても大切です。
・マスク
・体温計
・ウエットティッシュ
・アルコール消毒液
・ハンドソープ
こうした衛生用品は必ず非常用持ち出し袋に備えておいて、避難した際には、避難所でもこまめに手指消毒するなど、感染症からも自分の身は自分で守れるようにしましょう。
「濡れないこと」も重要
災害は、どんな天候の時に発生するかわかりません。冬の冷たい雨が降るなか、大きな地震が発生し自宅が損壊するなどして、避難しなければならない事態になることも考えられます。風がなくても傘をさして避難することはできません。避難するときには、両手をあけることが鉄則です。
雨の中を避難するときには、雨ガッパ(レインコート)を着用しましょう。雨ガッパにも様々なタイプのものがありますが、災害時にはズボンと上着に分かれている、上下別々で着用するタイプが適しています。
ポンチョタイプなどは、足下や袖口などから濡れてくる可能性があるためです。
身体や衣服が濡れると体温が奪われ、最悪の場合、死にいたる「低体温症」になるリスクが高まります。低体温症とは、身体の奥の温度(深部体温)が35度以下になった状態のことを言います。人の身体は体温が下がると、筋肉を震わせて熱をつくろうとするようになっていますが、低体温症は気づかないうちに進行する場合もあります。低体温症になると、筋肉が硬直したり、脳の活動が低下します。さらに、脈拍や呼吸が減少し、血圧の低下なども引き起こして、昏睡状態になります。
南海トラフ巨大地震の被害想定では、冬の深夜に最も被害が大きくなると想定されていますが、低体温症のリスクが高まることも一因でしょう。
寒い環境の中に長時間いることも低体温症を引き起こすことにつながりますが、濡れることを防ぐこともとても大切なのです。
避難するときに自分自身が濡れないことはもちろんですが、荷物も濡らさないようにしましょう。
非常用持ち出し袋に入れる衣類などは、小分けしてビニール袋に入れた上で、リュックサックの中にもゴミ袋などの大きめな袋を入れて、その中に荷物を詰めるようにします。最後にまた、袋の口を縛ってリュックサックの蓋をしましょう。二重で水濡れ対策をしておくとよいでしょう。
注意と配慮が必要なエマージェンシーシートと雨カッパ
風や雨を通さず、体温の低下を防ぐことのできる雨カッパ。エマージェンシーシートと言われるアルミシートも、雨カッパのように移動時には使えませんが、避難所などで包まっていることで、体温の低下を防ぐことができます。
しかし、雨ガッパもエマージェンシーシートも、使用するときには注意が必要です。寒い時には雨ガッパを着て寝ると身体を保温することができますが、雨ガッパもエマージェンシーシートも、汗をかいても水分を蒸発させることができません。雨を通さないからこそ、汗を逃すことができないのです。
そのため、汗で服が濡れてしまい、逆に体温を下げてしまうことがあります。
就寝時にエマージェンシーシートや雨ガッパを使う際は、暑くなりすぎないように気をつけましょう。
また、薄いアルミシートでできているエマージェンシーシートは、擦れ合うときにカサカサと音が鳴ってしまうことが難点です。避難所のようなストレスの多い環境の元では、こうした音も過度に気になってしまうことがあります。エマージェンシーシートの音が原因で、周りの人とのトラブルに発展してしまうこともあります。これからエマージェンシーシートを購入しようと考えている方は、音が出にくいタイプを探してみましょう。
車の中にも非常用持ち出し袋を
年末年始の帰省など、車でお出かけの機会がある方は、車の中にも非常用持ち出し袋を備えておきましょう。お住まいの地域では雪が降っていなくても、お出かけ先で雪による立ち往生に巻き込まれてしまうこともあります。
雪で車が立ち往生しているときには、ガソリンを節約するためにも、エンジンを切って、エアコンを使わずに暖をとることが必要になります。カイロや毛布、寝袋などは、車の中でも必要です。
携帯トイレも、多めに車に積んでおきましょう。
雪かき用のスコップや長靴も、車の中に備えておきたいものです。
長時間にわたって、多くの車が立ち往生した時には、配給を受けられる場合もありますが、それをあてにするのではなく、飲み物や食べ物も、自分で備えておくことで冷静さも保てます。
どんな季節も、どんな場合にも、「自分の身は自分で守る(自助)」が基本です。
これから来る冬に向けて、しっかりと備えておきましょう。
<参考資料>
厚生労働省 ノロウイルスに関するQ&A
朝日新聞DIGITAL 冬の災害は「低体温症」に注意 マフラー、カイロ、濡れたら着替えて
この記事を書いた人
瀬尾 さちこ
防災士。住宅建築コーディネーター。整理収納コンサルタント。
愛知県東海市のコミュニティエフエム、メディアスエフエムにて防災特別番組「くらしと防災チャンネル(不定期)」、「ほっと一息おひるまメディアス(毎週水曜日12時〜)」を担当。
以前の担当番組:みんなで学ぶ地域防災(2021年~2021年)、防災豆知識(2019年~2021年)
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