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SDGsと防災教育①

SDGsって、何?

学校教育でSDGsが流行っています。SDGsはSustainable Development Goalsの頭文字をとったもので、最後の‟s”は複数形を表しています。「エスディージーズ」と読むようです。2015年9月に開催された国連サミットで17の「持続可能な開発目標」が決められました。2016年から2030年までの15年間を活動期間とし、国連加盟193か国の努力・協働でその達成を目指しています。
17の目標には「1.貧困をなくそう」「2.飢餓をゼロに」といった開発途上国の課題(もちろん先進国にも貧困問題は存在します)や、「3.すべての人に健康と福祉を」「4.質の高い教育をみんなに」「5.ジェンダー平等を実現しよう」のような福祉・教育・人権にかかわる課題、「7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに」「13.気候変動に具体的な対策を」「14.海の豊かさを守ろう」「15.陸の豊かさも守ろう」などの環境にかかわる課題、「16.平和と公正をすべての人に」「8.働きがいも経済成長も」といった社会・経済の課題などが掲げられています。17の目標をざっと眺めるだけでも、達成に向けて世界が協働で向き合わなければならない必要性が理解できます。
17のGoals(目標)の下には、それらをより具体的に説明する169のTargets(ターゲット)があり、その下さらに232のGlobal Indicator(グローバル指標)があります。

枠にとらわれないで

さて、時々こんな話を耳にします。
「SDGsは17もゴールがあって覚えられない。169のターゲットや232の指標となるともう覚える気にもならない。」「いっそのこと、『人権』と『環境』だけにすればすっきりするのに。」
なるほど、記憶することが教育の目的になってしまうと数の多さは厄介ですね。
日本の教育はどうも枠から入るのが好きみたいです。例えば、「6.安全な水とトイレを世界中に」というゴールとそのターゲットを読んで、ではどんなとりくみができるかを考えよう、といった授業方法です。
その逆を考えると面白いと思いませんか。トイレで用を済ませて水を流すときに、この水はどこからやってきてどこに流れて行くんだろうとか、もしそのまま溝に流したらどうなるんだろうとか(多くの開発途上国がそうですが)、そうやって身近なところから考えていき、SDGsの関連する目標につなげていく考え方です。大きな「目標」といった形で示されても解決法はなかなか思いつきませんが、身近なトイレを念頭に置くと、案外実践可能な面白いアイデアが浮かぶかもしれません。
スーパーでマグロの刺身を買う。トレーは回収してどうなる?そもそもマグロはどこで捕れているだろう?その船の燃料は?漁師さんの労働条件は?海の資源は有限?無限?
こんな風にどんどん発想が膨らんできます。このように考えると、一つの事象にいくつものSDGsが絡み合っていることがよく理解できます。

SDGsと防災

さて、SDGsには「防災」という表現がある目標はありません。でも、この発想で考えると、いろいろと関連づけることができそうです。
その前に、学校で防災を学ぶ三つの場、つまり「教科」と「総合的な学習の時間」(※1) 、「特別活動」と防災の関係はどうなっているのでしょうか。図では、防災教育が各教科、各領域を横断しています。筆者は自分が防災教育にとりくみ始めたころ、この図を作りました(※2)。総合的な学習の時間が導入された時期(※3)と重なります。20年ほど前のことです。総合的な学習の時間は、当時、教科の壁を取り払い、社会の課題を総合的に学ばそうという目的で設置されました。ただ、学習内容の例示として「国際理解、情報、環境、福祉・健康」があげられると、各学校はこぞってその課題にとりくみましたが、その結果、全国的に見れば課題の多様性を欠き、課題ごとに新たな壁を作ってしまったともいえます。図は、防災教育が教科と領域の壁をもう一度壊してより総合的な学びの創造につながるという提案です。
同じ発想で考えると、SDGsの17の目標すべてが防災(防災教育)と関わっていると言えるのではないでしょうか。
例えば、避難所の生活を考えてみましょう。日本の避難所はとても劣悪です。阪神・淡路大震災のような都市部での巨大災害では、まず、水や食料、トイレの問題が発生します。風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症、ノロウイルスなどの病気も心配です。男女別のトイレや更衣室も当面は設置されない恐れもあります。子供たちが周代や予習・復習をする場もありません。「2.飢餓をなくそう」や「6.安全な水とトイレを世界中に」「3.すべての人に健康と福祉を」「5.ジェンダー平等を実現しよう」「4.質の高い教育をみんなに」などへと避難所の課題がどんどんとつながっていきます。
そして、防災教育の担い手は、学習者にそのつながりを探す楽しさをこどもたちに味わわせてあげてください。
次回からは、SDGsと防災教育の実践方法を紹介します。

※1 現行の学習指導要領では小中学校は「総合的な学習の時間」、高校は『総合的な探究の時間』となっています。
※2 全国で初めての防災専門学科である「環境防災科」が筆者の勤めていた兵庫県立舞子高等学校に設置されることが決まったのが2000年で、2年間の準備期間を経て2002年にスタートしました。
※3 1998年に公示された小学校・中学校学習指導要領、1999年公示の高等学校学習指導要領で導入され、学校での全面実施はそれぞれ2002年と2003年です。

この記事を書いた人

諏訪 清二

全国初の防災専門学科 兵庫県立舞子高校環境防災科の開設時より科長を務め、東日本大震災をはじめとする国内外の被災地でも生徒とともにボランティアや被災者との交流に従事。
防災教育の第一人者として文部科学省「東日本大震災を受けた防災教育・防災管理等に関する有識者会議」など、防災教育関連の委員を務める。

2017年4月から防災学習アドバイザー・コラボラレーターとして活動開始。
学校での防災学習の支援活動を中心に、防災学習、災害、ボランティア、語り継ぎなどのテーマで講演活動も。
中国四川省、ネパール、スリランカ、モンゴル、エルサルバドルをはじめ、海外各地でも防災教育のプロジェクトに関わってきた。

2017年度~ 神戸学院大学現代社会学部 非常勤講師 / 兵庫県立大学 特任教授(大学院減災復興政策研究科)
2018年度~ 関西国際大学セーフティマネジメント研究科 客員研究員
2020年度~ 大阪国際大学短期大学部 非常勤講師
2021年度~ 神戸女子大学 非常勤講師 / 桃山学院教育大学 非常勤講師

【著書】
図解でわかる 14歳からの自然災害と防災 (著者:社会応援ネットワーク 監修:諏訪清二)
防災教育のテッパン――本気で防災教育を始めよう
防災教育の不思議な力――子ども・学校・地域を変える
高校生、災害と向き合う――舞子高等学校環境防災科の10年
※こちらの書籍は、現在電子書籍での販売となります。

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