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河川の氾濫や土砂災害を防ぐ自治体の対策。那須塩原市の防災担当課に聞いてみました。

栃木県那須塩原市では過去に大きな水害にあっています。最も大きかった被害は、1998年の北関東・南東北豪雨災害。山間部から大量の土砂を含んだ水が流れ込んだ河川が氾濫、栃木県内で死者5名、行方不明者2名、家屋の損壊129棟、床上浸水486棟、床下浸水2,362棟 という、とても大きな被害をもたらしました。このような災害の経験から、市は河川の氾濫や土砂災害などの災害に備えて、様々な対策を行っています。

近年、巨大台風や集中豪雨などが増え、身近な災害となった風水害。しかし、どのように河川や土砂災害のおそれのある地域が管理され、住民の安全が守られているかについては、あまり知られていないと思います。
自治体では日々どの様な対策がされているか、那須塩原市の防災担当課にお聞きしました。

(提供:那須塩原市役所)

市役所ではどんな仕事をされているのでしょうか?

那須塩原市の防災は、総務課危機対策班が担当しています。私たちは、市民の皆さまを災害から守り、安心して生活していただくことを目的として仕事をしています。地域の安全を守るための取り組みや、河川の氾濫や土砂災害のおそれのある地域の危機管理として、主に次の業務を行っています。

○ 平常時
災害時に備え、栃木県が作成している浸水想定区域図や、土砂災害警戒区域等の情報をもとに、河川の氾濫や土砂災害の恐れのある地域を示すハザードマップを作成して市民に配布をしたり、災害時の避難所等の対策や市内の状況を確認するためのパトロールの計画を立てています。
また、防災無線や防災設備、備蓄品などの維持管理を行い、災害発生時に備えて市民の皆さまの安全を守れるよう準備を行っています。

(提供:那須塩原市役所)

また、市民一人ひとりが常に防災に関心を持ち、自分自身の問題として受け止めていただくとともに、防災に対する正しい知識と技術を身につけられるよう、防災訓練、防災講座や講演会などの防災知識を広めるための啓発活動もしています。

(提供:那須塩原市役所)

○ 土砂災害への対策
栃木県の事業などで、地盤を安定させる土留め工事、山地斜面の植林、土砂が堆積(たいせき)する渓流の治山ダム工事などを行い、がけ崩れや、地すべり、土石流が起きないよう対策をしています。
河川に土砂が堆積してしまうと、川底が上がって通れる水の量が少なくなったり、流れが塞がれることにより氾濫が起きやすくなってしまうため、定期的に堆積した土砂を取り除いています。

(提供:那須塩原市役所)

また、これらの整備を進めるとともに、住民へ危険箇所の周知や、パトロールをして危険度が高い場所があれば、対策工事を行い土砂災害の未然防止に努めています。


※治山ダムとは、森林法に基づき設置されるダム様構造物のこと。過剰な土砂流出により荒廃した渓流、地すべりをはじめとした斜面崩壊箇所下流に設置される。

○ 出水期(川が増水しやすい時期)に行われている対策
川が増水しやすい時期には、事前に、栃木県と合同で、洪水時に危険が予想される箇所の点検を行い、危険な箇所があれば、施設の修繕や対策工事をしています。

(提供:那須塩原市役所)

また、大雨など気象状況の伝達を受けたときや、自ら必要と判断したときに、職員がパトロールをして、河川水位の状況などの確認を行います。異常や危険と認められる箇所を発見した場合には、関係機関に連絡を行い、被害の未然防止に努めています。

(提供:那須塩原市役所)

災害発生時にはどのような対応をされているのでしょうか?

大雨や台風などの際は、過去に決壊した河川や、浸水したことがある場所、土砂崩れの危険がある場所などを、重点的にパトロールしています。台風は進行ルートや到達までの時間がある程度分かるため、雨風が強くなる前にもパトロールを行います。

パトロールや通報により、倒木や道路の冠水などの異常が発見された場合には、倒木の撤去や、冠水した道路の通行止めなどの措置を行います。住宅地の冠水、浸水などの場合は、消防団と連携し、土のう積みや消防ポンプによる排水作業などを行っています。

土のうは市で使用する他にも、希望する市民への配布なども行っています。土のうの作成は、建設担当課の他、消防団などの協力も得て実施しています。

(提供:那須塩原市役所)

また、災害時には消防・警察とも連携を図り、被害状況の把握に努めています。栃木県防災行政ネットワークや市独自の雨量監視システムなどで、現在の降雨量や累積雨量などの情報を集めたり、気象庁のホームページや、宇都宮気象台の観測データなども参考に、今後想定される被害の予測をしています。

気象警報や、土砂災害警戒情報などをもとに、災害が発生する危険があると思われる地区に、指定避難所を開設し、避難勧告や避難指示を出し、該当区域の住民に周知します。

災害発生時、住民へどのように情報提供されていますか?

災害の発生、危険が予測された場合には、那須塩原市メール配信サービス(みるメール)、緊急速報メール(エリアメール)、ケーブルテレビによって周知を行います。また、市ホームページで避難所開設状況や道路の通行止めなど、最新の情報を得られるようにしています。 その他、電波などが届かず情報の届きにくい地域には、広報車や消防団車両などでの周知も実施しています。

住民の方にお願いしたいこと

那須塩原市以外にお住まいの方も下記の内容を参考に、お住まいの地域のハザードマップや、避難場所などの確認をしておきましょう。

○ みるメールの登録
「みるメール」とは、那須塩原市メール配信サービスです。那須塩原市では、「みるメール」を活用し、災害時に身を守るために必要となる情報を発信していますので、多くの皆さんの配信登録をお願いします。
登録方法はこちら

○ ハザードマップの確認
洪水・防災・土砂災害・雪崩危険個所・ため池のハザードマップを作成しております。ご家庭・地域で、災害の危険のある箇所を確認しておきましょう。
ハザードマップの確認はこちら

○ 指定避難場所の確認
災害発生時や発生が予想されるとき、その危険が及ぶ区域(危険区域)にいる住民のほか、旅館やホテルの利用者について、混乱せず安全な地域へ避難させるために、あらかじめ避難場所を指定しています。
指定避難所の確認はこちら

○ 非常用持ち出し袋の用意
災害発生時に速やかに避難できるように、非常用持ち出し袋を準備しておきましょう。
※非常用持ち出し袋で用意するものについては、こちらの記事で紹介してます。

那須塩原市の新たな取り組みについて

現在、避難所の感染症対策を進めております。感染の疑いがある人は、通常の避難所での受け入れができないため、隔離した避難所を用意して災害時に備えています。それに併せて、避難所職員の安全対策の徹底も行っています。

自宅に災害の危険が少ないにも関わらず、避難所に行くことで感染症のリスクを負ってしまうことがあります。ハザードマップで自宅の危険度を確認したり、親戚や知人の家で避難ができないかなど、避難所へ向かう前に判断していただきたいと思います。

こちらの情報を参考に避難を行ってください。
http://www.city.nasushiobara.lg.jp/05/8218.html

また、暗くなってからの移動は、水路があふれて見えなくなっていたり、強風によって飛ばされた物に当たったりするなどの危険があります。 外の移動が困難な場合は、自宅の2階に移動する「垂直避難」による危険回避の方法もあります。必ず避難所に移動しなければならないと思い込まずに、冷静な対応をお願いしたいと思います。
(画像:乙女の滝 提供:那須塩原市板室)

自治体によって行われている水被害の対策を知っていかがでしたでしょうか?思ったよりもたくさんの対策がされていたと感じる方も多いかも知れません。このような様々な対策によって、地域住民の命や生活が守られてます。
巨大台風や集中豪雨の増加によって、身近となった風水害。近年の状況に合わせて自治体の対策も毎年変化しています。被災してしまった時のため、自宅での備えも十分にしておきましょう。

この記事を書いた人

moshimo ストック 編集部

防災をしたいけど情報がたくさんあって、何から始めればいいの…?
私たち moshimo ストックも始めは知ることが幅広くて、防災ってちょっと難しいな…と思いました。
そんな "元初心者" の編集部が、初めての方にもわかりやすいよう防災・備蓄・災害についての情報をお届けいたします。
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