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熊本地震から3年にわたる、益城町の震災・復興の記録と、防災・減災の取り組み

2016年4月に大きな被害を起こした熊本地震。その中でも、最も大きな揺れに見舞われ、被害が大きかった熊本県益城町(ましきまち)では、震災直後の対応から復旧期とよばれる3年間にわたる足跡を、ありのままに「平成28年熊本地震 益城町震災記録誌」として残しています。
益城町でおきた震災の詳細な記録を、全国の自治体などへ向け伝えることで、今後の災害への備えや復旧・復興に役立てるための、貴重な資料となっています。

今回は、一般の方々にも関わりの深い、震災直後の状況や、避難所の様子といった内容について取り上げて紹介いたします。
益城町の復興計画は、住民の声を積極的に取り入れたり、戦略や方針を考える策定委員会のメンバーとして、地元の大学の若い先生方が参加して作成されました。復興にはとても長い時間がかかりますが、その道のりを若い世代を中心として支える、特徴ある取り組みとなっています。
また、熊本地震の教訓を元とした、再び災害が起きたときに被害を最小限にとどめるための「日本の防災・減災をけん引するまちづくり復興プロジェクト」など、益城町の様々な取り組みについて紹介いたします。

平成28年熊本地震 益城町震災記録誌

熊本地震での被害について

熊本地震では、2016年4月14日21時26分にマグニチュード6.5、最大震度7の前震が発生。そして、4月16日1時25分にさらに大きなマグニチュード7.3、最大震度7となる本震が発生しました。
上の2つの地震のほかにも、14日から16日までの間に、最大震度6弱を超える大きな地震が5回も発生しています。

この大震災によって、益城町では45名(直接死20名、関連死25名)の方が亡くなったほか、重傷者135名、軽症者31名となる甚大な被害となりました。
家屋への被害は、全壊 3,026棟、半壊 2,442棟となり、一部損壊を含めると、益城町内のほぼ全ての家屋が何らかの被害を受けています。

インフラの被害としては、町道では全長212kmのうち、35kmにわたり損壊が確認されました。
また、町内全域で停電し、仮復旧にまで5日間程度かかっています。上下水道も断水し、約10日後の4月25日から上水道が復旧し始め、発災から3週間後には全体の約90%以上が復旧するといった状況となり、ほぼ全域が復旧するまでに1か月以上の期間がかかることとなりました。

このよう町全体に甚大な被害をうけた益城町が、どのように災害に対応し、復興への道のりを歩んできたかについて紹介いたします。



建物の被害の様子(提供:益城町)

災害直後の益城町の対応状況

町内のほぼ全ての家屋が被害にあい、町内全域の停電などインフラが大きく停止するなど、想定を大きく超える災害による混乱に対処するため、益城町はどのように災害対応をしていったのか、また、住民の避難はどのような状況だったのでしょうか。当時の様子を紹介いたします。

災害対策本部

4月14日の前震により町本庁舎が被災したことにより、商用電源と非常用電源がともに停止、通信回線も使用できず、事務機器なども破損してしまいます。そのため、代わりとなる施設の調査を行い、電源や通信施設が被災していなかった町保健福祉センターに災害対策本部を設置しました。
また、被害が甚大な町中心部への対応を迅速に行うため、町本庁舎の駐車場に現地対策本部を設置し対応に当たりました。

被災直後には、職員が避難所業務などに追われたため、災害対策本部では人員不足となってしまいます。そのため、全ての判断が災害対策本部長(町長)に集中し、庁内部署間や外部機関との調整や、情報分析に十分な時間を割くことができず、本部の機能が麻痺してしまいました。

このような状況を受けて、4月25日から下の図の通り、各課等長、各班長およびプロジェクトチーム代表者による新たな災害対策本部組織を整備し、担当業務の見直しを行います。
この体制の変更が功を奏し、災害対策の業務のスピードが大幅に改善することとなりました。


(引用:平成28年熊本地震 益城町震災記録誌)

応援の受け入れ調整

熊本地震当時は、応援要請計画、受援計画が未整備であったため、当初は他自治体からの応援職員の受け入れ調整は、関西広域連合※に依頼を行いました。
その後5月からは、都道府県職員については関西広域連合、市町村職員については県職員に依頼し、分担をして対応を進めました。

しかし、市町村の災害業務に卓越した専門知識のある職員を、交通整理や清掃業務に従事させるなどの問題が発生しています。
各方面からのプッシュ型支援に対して、適切な人員配置が出来ておらず、「事前に応援職員の履歴票や職歴等を把握した上で、人員配置を実施すべき」との意見がありました。

※関西広域連合(かんさいこういきれんごう)とは、府県を超えて協力が必要な事務を共同で行ったり、救急医療の連携や防災などのための課題に取り組むために、関西の8府県により設立された団体のこと。

町の業務継続のための環境整備

熊本地震当時は、事業継続計画が策定されておらず、場当たり的に代替庁舎や、災害時における優先業務を決定することとなったため、通常業務が停滞していました。
また発災当初、避難所となっていた町保健福祉センターに災害対策本部を設置せざるを得ない状況となり混乱をしたため、今後の課題として業務継続のための環境整備を行う必要性がありました。

避難所の状況

4月14日 前震発生直後

9カ所の指定避難所を開設し、約2,000人の方が指定避難所に避難をしました。
また、余震が続いていたため、自宅に留まることを恐れた人たちが、車内や自宅庭先、畑のビニールハウス、近所の公園など、屋外に避難する人が多数発生していたことが確認されています。


社内に避難する人の様子(提供:益城町)

4月16日 本震発生後

本震発生に伴い避難者が急増。4月16日夜から17日朝にかけて、10カ所の指定避難所施設内および指定避難所駐車場に避難した人は約16,050人となりました。
これは、益城町地域防災計画の想定(7,200人)を遥かに超える避難者数となったため、避難所に入れない避難者も多く、大混乱をきたしました。
特に、町保健福祉センターには、町内全域から避難者が集まり、会議室等だけでなく、ロビーや通路、屋外の軒下、階段の踊り場まで、避難者で溢れかえることとなりました。

また、一般の避難所に加えて、特に高齢者、障害者、乳幼児、その他の配慮が必要な方のための、福祉避難所の数が足りなくなりました。
地震前から福祉避難所として指定されていた施設はありましたが、地震による被害でほとんどが使用できない状況となります。そのため、益城町周辺の地図から避難所として利用できる施設を探し、所有する企業などに連絡、お願いをしながら、新たに避難所を増やすこととなりました。

復興計画の策定

震災によって新たに発生した課題や、改めて見直すべき課題を踏まえ、「住み続けたいまち、次世代に継承したいまち」を復興将来像として掲げ、「益城町復興計画」を平成28年12月に策定しました。
この復興計画の特徴として、復興を行う長い期間、この計画を策定したメンバーに携わってもらえるよう、若い人の意見を取り入れ、次世代のための計画となるよう取り組まれました。

策定委員会や部会のメンバーは、地元大学の先生方や住民代表である区長、地域の団体の代表の方々としました。
そして、復興計画が「作って終わり」とならず、確実に実行していけるよう、大学の先生方は40代の若手を中心にメンバーに加わってもらい、復興にかかる長い時間を支えてもらえるようにしています。

また、「住民の意見に丁寧に耳を傾ける」という町長の意向を踏まえ、住民意見交換会を開催してアンケート調査を行ったほか、若者からの意見を聞くため15~30歳を対象として益城町の未来について意見交換するワークショップ「益城町未来トーーク」のなども開催されました。

このように、益城町の復興計画は、「町の現状と理想像を整理して、そのギャップを埋めるための施策を考える」ように作られています。
一般論として、行政が作る計画は、将来像や目標を明確にしておらず、問題点の羅列で終わっているものも少なくありませんが、益城町の復興計画は将来像をとことん考え抜いて、その実現に向けて動くことができるものとなりました。

総合計画の策定

平成28年度から平成32年度を計画期間とする第5次益城町総合計画後期計画と、益城町復興計画を元に、震災からの復旧・復興に向けた取組を進めてきました。そして、復興計画の復旧期の検証に合わせて、復興計画を組み込むかたちで「第6次総合計画」を策定しています。

この第6次総合計画では、防災・減災に関して「日本の防災・減災をけん引するまちづくり復興プロジェクト」を掲げています。
益城町では、熊本地震の教訓を踏まえ、再び災害が起きたとしても被害を最小限に抑えることが出来るよう、住民、関係機関と連携して災害に強いまちづくりを推進し、プロジェクトでは次のような項目を元に活動を行っています。
  • 全町を挙げた防災意識の向上
  • 全員参加の防災・減災活動
  • 災害に対する備え
  • 記憶の継承
  • 防災・減災を通じた日本全国との交流
  • 災害に強く、安全・安心の拠点となる庁舎の建設
また先述のとおり、熊本地震の時には次のような課題がありました。
  • 自然災害の発生を日頃から意識していなかったため、震災時の対応に課題が残った。
  • 災害が発生した場合の「自助」「共助」「公助」の役割が町内全体に浸透していなかったため、震災時において避難所運営等が上手くできなかった。
こうした課題や、総合計画に掲げるプロジェクトを踏まえ、一例として次のような取り組みを行っています。
  • 自主防災組織のカバー率 目標値の設定 ※
  • 自主防災、各種関係機関を巻き込んだ総合防災訓練の実施
  • 避難地・避難路の整備(防災倉庫の設置)
  • 防災士養成講座の実施(令和元年度)
  • 受援計画、BCPの策定
  • 自治体・民間などと災害時における協定の締結
  • 防災教育の推進
  • 震災の記憶を次世代に継承するために、記録の整理や震災遺構の保存・活用
※カバー率とは、全世帯数のうち、自主防災組織の活動範囲に含まれている地域の世帯数の割合のこと。

このように、災害に強いまちづくりを作り上げるため、多くの防災・減災事業を展開しています。

新型コロナウイルス感染症への対応

熊本県でも新型コロナウイルス感染症が発生し、益城町でも感染症対策が急務となりました。
町では、新型コロナウイルス感染症に係る本部を設置し、感染症対応事業継続計画や災害対策本部運営マニュアルなどの策定を行いました。

また、令和2年5月24日には、策定した「新型コロナウイルス感染症対応避難所運営マニュアル」に基づき、感染症対応避難所運営訓練を実施しました。
この訓練では、PPE着脱、受付対応、居住区対応、生活空間対応、体調不良者対応、車中避難者対応訓練を行いました。
こちらについては、町WEBサイトに訓練の報告書を掲載していますので、ご参照ください。

新型コロナウイルス感染症対応避難所運営訓練結果報告書
実際に大きな震災が起きた時、どのような状況になるのか。また、自治体によりどのような救援、復旧、復興活動がされるのかについて紹介いたしました。

また、現在、新型コロナウイルス感染症への対応も急務となっており、防災・減災にある課題は日々急速、突発的に変化することが予想されます。
防災・減災の取組を進めていくうえでは、行政のみならず、住民、また各種団体との連携・協働が必ず必要になります。
益城町における熊本地震時の課題、それに対する取り組み、また感染症に対する取り組みなどを知ることで、皆様の災害の備えの一助になればと思います。

平成28年熊本地震 益城町震災記録誌

この記事を書いた人

moshimo ストック 編集部

防災をしたいけど情報がたくさんあって、何から始めればいいの…?
私たち moshimo ストックも始めは知ることが幅広くて、防災ってちょっと難しいな…と思いました。
そんな "元初心者" の編集部が、初めての方にもわかりやすいよう防災・備蓄・災害についての情報をお届けいたします。
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