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秋雨は「しとしと」降るだけではない?台風と重なると記録的な大雨になることも

夏から秋となる季節の変わり目に、秋雨前線が発生して秋の長雨を降らせます。この秋雨前線が終わると気温が下がり、季節は秋へと変わります。
梅雨前線は皆さんよく耳にするかと思いますが、秋雨前線については聞きなれない方も多いかもしれません。また、秋雨はしとしとと穏やかに降るイメージがあるかもしれませんが、台風が日本に近づいた時には互いが離れていても、秋雨前線が活発になり激しい雨を降らせることがあります。

秋雨とは

秋雨は秋の長雨とも呼ばれることがあり、数日間にわたり雨が降り続くことがあります。また、秋雨は俳句の季語になるなど風物詩にもなっています。俳句では秋の静けさを表すように穏やかな雨として表現されることが多いのですが、実際の秋雨も激しい雨ではなく、しとしとと降る傾向にあります。
しかし、秋雨前線が停滞することで長期間にわたり大雨を降らせるほか、台風が近づくことで秋雨前線が活発になったり、台風が日本に接近した場合には互いの雨量が合わさったりして、記録的な大雨となり大きな被害をおこす場合もあります。

秋雨前線のできるしくみ

秋雨前線は、夏の終わりから秋にかけて日本付近にとどまる前線のことをいいます。
前線とは冷たい空気と暖かい空気がぶつかった境目のことをいい、冷たい空気が暖かい空気を押し上げ上昇気流がおこります。そして、高く冷たい場所に運ばれた水蒸気が冷やされ、雲が発生することで雨を降らせます。
梅雨前線や秋雨前線では、北からの冷たい空気と南からの暖かい空気の勢力が同じくらい強く、互いに押しあって同じ場所にとどまるため長期間雨が降り続けることになります。これが梅雨や秋の長雨の原因となるのです。

秋雨前線は、夏の終わりとともに小笠原気団という暖かい空気が南に下がり、北から勢力を増したシベリア気団やオホーツク海気団といった冷たい空気と日本の上でぶつかることで発生します。そして、夏から秋の変わり目となる8月末から10月にかけて、ゆっくりと北から南へと移動していきます

梅雨よりも、秋雨が多く降る地域も

梅雨前線と秋雨前線はどちらも日本に停滞して雨を降らせる前線となりますが、それぞれ違いがあります。

まずは、前線の移動する方角ですが、梅雨前線は夏の到来とともに南から勢力を強める高気圧と、北の高気圧がぶつかることによって発生し、南から北へと北上していきます。秋雨前線は秋の訪れとともに北から勢力を増す冷たい空気と、南へ後退する夏の暖かい空気がぶつかることで発生するため、北から南へと南下していきます。

また、一年で一番多くの雨が降るのは梅雨の6、7月をイメージする方が多いかと思いますが、意外にも秋雨の9、10月の降雨量の方が多い地域もあります。
一般的に梅雨は西日本の降水量が多く、秋雨は東日本の降水量が多くなります。また、秋雨前線は日本の南岸に停滞するため、北海道、東北の太平洋側、関東甲信越では梅雨よりも秋雨の降水量が多くなるのです。

台風と秋雨前線による災害

秋雨前線の発生する9、10月は台風も多い時期となりますが、秋雨前線と台風が組み合わさることによって大きな被害がおきることがあります。
理由の1つは、長期間秋雨が降っている場所にさらに台風が通過すれば、それぞれの雨量が合わさり大量の雨が降ることとなります。
また、台風と秋雨前線の距離が遠い場合でも、台風が南から暖かく湿った空気を送ることで、秋雨前線が活発になり大雨を降らせることがあります。そのため、台風が遠くにあるから安全と思わずに、水害への準備を心がけるようにしましょう。

勢力の強い秋の台風

また、秋の台風は強い勢力のまま日本に接近することが多くなります。
秋は上空に強い偏西風が吹いているため、台風が偏西風に乗って加速し、勢力が衰える間もなく接近します。そのため、強い暴風となり、雨量も多い台風となることがあります。また、台風の進路も日本列島に沿って進みやすくなりますので、より一層の注意が必要です。

秋雨による被害

遠くの台風が秋雨前線を活発化させおきた被害

2000年 東海豪雨

日本付近に停滞していた台風14号から暖かく湿った気流が流れ込み、秋雨前線の活動が活発になったため、東海地方は愛知県を中心に記録的な大雨となりました。
この豪雨による愛知県内の被害は、一級河川 新川で堤防が決壊したのをはじめとして、河川の45か所で堤防が破壊され、浸水した家屋は約68,000棟を超えました。また、300か所を超えるがけ崩れが発生し、6名が犠牲となっています。その他、冠水により野菜・水稲などに大きな被害が出ることとなりました。
この大雨では、1時間降水量は最大97.0 mm、24時間降水量は最大534.5 mmとなっています。

その他の事例

2006年の9月16日には、台湾付近にある台風が1,000kmほど離れた九州や中国地方の秋雨前線を活発化させ、佐賀県の伊万里で1時間に99mm、1日に285mmの大雨を降らせたことがありました。
その他にも、2024年8月27日には九州の南にある奄美諸島の台風が、北海道の秋雨前線を活性化させて道路を冠水させるといった被害もおきています。

秋雨前線と台風が重なった災害

令和元年東日本台風

記憶に新しい2019年の令和元年東日本台風では、東日本から東北地方を中心に広い範囲で記録的な大雨となり、河川が相次いで氾濫するなど甚大な被害が多くおきました。
この台風での大雨には秋雨前線も大きく影響しており、台風による多量の水蒸気が停滞する秋雨前線に流れ込み、気流により上昇して冷やされることで大量の雨を降らせたと気象庁によって分析されています。

10月10~13日までの総降水量は、神奈川県箱根町で1,000mmに達し、東日本を中心に17地点で500mmを超えました。特に静岡県や新潟県、関東甲信地方、東北地方の多くの地点で3、6、12、24時間降水量の観測史上1位の値を更新するなど記録的な大雨となっています。
この大雨により河川の氾濫が相次いだほか、浸水害、土砂災害などがおき、死者91名、行方不明者3名、重傷者42名、軽傷者334名の甚大な被害となりました。また、住宅被害は、全壊が3,273棟、半壊・一部損壊が63,743棟、浸水が29,556棟となっています。


このように、秋雨前線は長く同じ場所にとどまり長期間にわたり大雨を降らせ、水害や土砂災害などの被害につながります。
また、台風と組み合わさることで活発になり記録的な大雨をおこすこともあります。特に秋は勢力の強いまま台風が接近し、日本列島をなぞるように進むこともありますので、秋の雨には十分注意しましょう。


参考資料

気象庁 気圧配置 気団・前線・気圧配置・天気図・気圧系の発達、移動に関する用語

気象庁 関東甲信地方の天候の特性

気象庁 季節ごとの平年の天候についてのコラム 「秋の降水」

気象庁 東北地方の気候

気象庁 東北地方の気候 ~四季の天気~

気象庁 北海道地方の天候の特徴

気象庁 【コラム3】秋雨前線と台風による大雨―2006年9月の事例―

気象庁 秋雨前線による大雨 平成19年(2007年)9月15日~9月18日

ウェザーニュース 秋台風はなぜ怖い?進路や速さの特徴だけでなく、上陸時の勢力も強い傾向

内閣府 防災情報のページ 2000年(平成12年) 東海豪雨

内閣府 防災情報のページ 令和2年版 防災白書|特集 第1章 第1節 1-3 令和元年東日本台風による災害

気象庁 令和元年台風第19号に伴う大雨の要因について

FNNプライムオンライン 【台風情報】まるで川を車が走っているよう…台風が秋雨前線を刺激 北海道各地で冠水相次ぐ 南西部で非常に激しい雨 苫小牧の小中学校では休校も 北海道

この記事を書いた人

moshimo ストック 編集部

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