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災害で被災した大切なペットを助ける!災害派遣獣医療チームVMATとは?

大きな災害がおきたとき、すぐに被災地に医師や看護師がかけつけ、被災地の医療を支えるDMATという組織があります。

しかし、大きな災害がおきれば動物も被災します。動物のためにはVMAT(Veterinary Medical Assistance Team:獣医療支援チーム)という組織が、いち早くかけつけ活躍します。VMATは動物の保護・救出、治療のほかに、避難所やシェルター(動物収容施設)での健康管理、避難している人と動物の関係を円滑に保つといった役割も担います。

災害によっておきる動物の問題

避難所や車での避難生活が続くと、ペットはストレスから下痢や嘔吐、食欲不振などをおこし体調を崩すことがあります。
東日本大震災では、原子力災害による緊急避難のため、多くの動物が取り残されて飼い主とはぐれることとなりました。また、家畜などの動物が逃げ出して野生動物と交雑することで、自然環境に影響を及ぼします。
2004年の新潟県中越地震では、犬を連れていた避難者が避難所に入ることができず、車の中で避難をしていたため、エコノミー症候群で死亡したケースがありました。ペットがいることで避難をためらい、危険のある自宅にとどまる飼い主がいることも考えられますので、動物の保護は人の安全を守ることにもつながるのです。

VMATの活動内容

VMATは各都道府県の獣医師会(地方獣医師会)が自治体と協定を結び、都道府県ごとに作られます。初めは福岡で結成され、群馬、大阪と続き、2022年時点では17都道府県の獣医師会でVMATや類似の動物救護部隊が結成されています。
VMATは獣医師、動物看護師、動物トレーナー、トリマーなどが4~5名で1つのチームとなって活動を行うのですが、このとき人の救護活動を行うDMATや消防、警察、自衛隊などと連携して意思疎通ができることが必要となります。そのため講習を受け、認められた人のみが隊員として登録されることとなります。

活動内容は都道府県や市区町村ごとに変わってくるのですが、主となる活動内容について紹介しましょう。
VMATは災害がおきてから48時間以内に被災地にかけつけ、以下のような活動を行います。
  • 動物の治療
  • 動物病院への搬送指示
  • はぐれた動物の保護
  • 動物を預かるためのシェルターの開設、運用
  • 避難所やシェルターの見回り
などを行います。

避難所やシェルターの見回りでは、動物がストレスを抱えていないかの確認や、体調の悪い動物がいれば治療や投薬を行います。
その他にも、避難所でトラブルがあれば、ペットを飼っていない人、飼っている人それぞれがストレスを抱えないような住み分けを行うなどの改善をすることや、さまざまなペットに関する相談をうけることもあります。

動物を保護するVMAT以外の組織

大きな災害がおきた時には、VMAT以外の組織も立ち上げられることとなります。地方獣医師会や自治体などによる「現地動物救護本部」では以下のような活動を行います。
  • 物資の調達、配布
  • ボランティアの確保・配置・管理
  • 義援金の募集・活用
  • 避難所・仮設住宅におけるペットの受け入れに関わる市区町村への要請
  • 避難所・仮設住宅におけるペットの飼育支援
  • 保護が必要な動物への対応
  • 動物救護施設の設置・運営
  • 動物病院への、治療・一時預かり・譲渡等に係る協力要請
  • 情報収集・広報活動
  • 相談窓口の設置
また、日本獣医師会、日本動物愛護協会、日本動物福祉協会、日本動物愛玩動物協会による「緊急災害時動物救援本部」では以下のような活動を行います。
  • 被災地の都道府県等から、被災状況、動物救護に係る必要な支援等に関する情報を収集
  • ボランティアを募集し、現地動物救護本部等とボランティア派遣に係る連絡調整
  • ペット用品等の救援物資を募集し、被災地の自治体、現地動物救護本部等、地方獣医師会等へ配布
  • 義援金を募集し、被災地の自治体、現地動物救護本部等、地方獣医師会等へ配分・供与
  • 避難所、動物救護施設等におけるペットの飼育管理等に関する助言
このように災害が大きくなれば、仮設住宅でのペットの飼育や、飼い主の見つからないペットの里親をみつけるなどの活動が必要となってきます。

飼い主も災害に備えよう

ペットをめぐるトラブル

東日本大震災の調査によると、避難所でペットをめぐる様々なトラブルがおき、
  • 犬の鳴き声、臭い
  • 避難所で犬が放し飼いにされ、寝ている避難者の周りを動き回っていた
  • ペットによる子供への危害が心配
  • ノミが発生した
といった問題がありました。
また、「アレルギー体質の方がいることから、避難所内で人と同じスペースで飼育することが難しい状況があった」「他の避難者とのバランスを考慮して貰えず、自分のペットへの過度の要望を通そうとする避難者がいた」という意見も見られました。

避難所ではマナーを守るとともに、平常時からペットのしつけ、マイクロチップの埋め込みなどの迷子対策、ワクチン接種、寄生虫の予防などを行いましょう。

平時から備えること

犬猫共通

  • 人やほかの動物を怖がらないようにする
  • 決められた場所での排泄
  • ケージやキャリーバッグに入ることを嫌がらないように、日頃から慣らしておく
  • 各種ワクチン接種(犬の場合には狂犬病予防接種)
  • ノミや他の寄生虫の予防、駆除(犬の場合には犬フィラリア症)
  • 不妊、去勢手術
  • マイクロチップなどによる迷子対策
  • ペット用の避難用品や備蓄品の用意
  • 避難所や避難ルートの確認

犬の場合

  • 「待て」「おいで」「お座り」「伏せ」などの基本的なしつけ
  • 不必要に吠えない、攻撃的にならないようなしつけ
災害がおきた時にはペットがパニックになり普段通りの行動がとれないことがありますので、避難のためキャリーバックに慣らしておくことが必要となります。
また、避難所やシェルターでは、他の動物との接触が増え、免疫が下がることも多いため、ワクチンの接種、寄生虫の駆除、不妊・去勢手術もしておきましょう。

動物は環境の変化に弱く、ストレスで体調を崩すことがあります。自宅が安全な場合には、なるべく自宅で過ごせるよう、家の耐震対策、家具の転倒防止、窓に飛散防止シートを貼る(飛散防止シートを貼ると、窓に多少のひびが入ったとしても雨風がしのげます)などの対策も大切です。

その他、ペットのために必要な備蓄品、避難方法などはこちらのページで紹介しています。

動物保護団体を装った詐欺に気をつけて!

災害が発生した時、動物保護団体が「無料で預かります」といって預かった後、なかなか返してくれなかったり、経費を請求されたりすることがあります。また、取り残された動物を飼い主の同意なく捕獲して転売をしていた疑いもありますので、その団体が信用できるものか十分に注意をしましょう。


今回は、家族と同様に大切なペットを守るVMATについて紹介をしました。
ペットと一緒にVMATや避難所にお世話になるときのために、日ごろから十分な準備をしておきましょう。


参考資料


日本獣医師会 緊急災害時の動物救護等
災害時動物救護の地域活動ガイドライン

環境省 災害時におけるペットの救護対策ガイドライン

RISTEX 社会技術研究開発センター
【プロジェクト訪問】被災した動物を救う「VMAT」(災害派遣獣医療チーム)が、DMATと合同訓練。群馬県の災害拠点病院に、ボランティアのワンちゃんも集合!

ペピイ(PEPPY) 第7回福岡VMAT(ブイマット)の活動と想い

いきもののわ ペットと災害を乗り越えるために

この記事を書いた人

moshimo ストック 編集部

防災をしたいけど情報がたくさんあって、何から始めればいいの…?
私たち moshimo ストックも始めは知ることが幅広くて、防災ってちょっと難しいな…と思いました。
そんな "元初心者" の編集部が、初めての方にもわかりやすいよう防災・備蓄・災害についての情報をお届けいたします。
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