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防犯と美容・衛生も考えて。女性の非常用持ち出し袋
B!
防犯と美容・衛生も考えて。女性の非常用持ち出し袋
公開日: 2022/12/12
自宅をどれだけ安全な場所にしておいたとしても、大きな災害が発生した時には、必ず自宅に留まれるとは限りません。どれだけ対策していても、「絶対に安全」ということは言い切れませんし、実際に災害が起きてみるまではわからないのです。また、ライフラインが止まってしまって生活がままならなくなってしまった場合や、自宅に留まることで精神的につらくなるような時には、避難することも選択肢の一つです。
避難する時に必要なものをまとめておく非常用持ち出し袋は、大人も子どもも、男性も女性も、すべての人に個別のものが必要です。
非常用持ち出し袋に入れておくものは、すべての人に共通して「必要なもの、あったほうがいいもの」もありますが、一人ひとり違います。すでにセットされたものが市販されていますが、そのセットは完成されているものではなく、そこに「自分自身が必要だと思うもの」を足していき、自分でカスタマイズしていくものです。
一人ひとり必要なものが違うとはいえ、非常用持ち出し袋をカスタマイズするときには、年齢や性差などで考慮すべきこともあります。
ジェンダーレスな考え方が広まってきてはいますが、女性だからこそ必要なケアや、避難所で発生する可能性のある問題を防御することも考えて備えておく必要があります。
女性の避難所での問題は、男性が考えるべき問題でもあります。女性の非常用持ち出し袋を通して、女性も男性も、避難所での問題についても考えてみましょう。
もくじ
いつどこで被災するか、わからないから。災害時に必要なものをコンパクトにまとめた「防災ポーチ」を持ち歩きましょう
避難所でも「自分の身は自分で守れる」ように
女性が避難所で最も注意すべきことは「犯罪被害者にならない」こと
男性も考えることで、女性の備えも違ってくるかもしれない
いつどこで被災するか、わからないから。災害時に必要なものをコンパクトにまとめた「防災ポーチ」を持ち歩きましょう
非常用持ち出し袋は、自宅の寝室やリビングなどの過ごす時間の長く持ち出しやすい場所に備えておくものという印象が強いかも知れません。もちろん、そうした「自宅に備えておく非常用持ち出し袋」も必要です。しかし、大きな地震などの災害は、自宅にいるときに起こるとは限りません。実際に、2011年3月11日に発生した東日本大震災は、午後2時24分に発生していて、職場などで被災し、帰宅困難者となった人も多くいました。
いつどこで被災するか、わからないのです。
そうした、「いつ・どこで起こるかわからない災害」に対応できるように、家に備えておく非常用持ち出し袋の他に、災害時に最低限必要なものをまとめた、「防災ポーチ」を持ち歩くようにしましょう。
基本的な防災ポーチの中身は
スマホ用予備バッテリー、スマホ用充電器
飲料水
携帯食(ゼリーやシリアルバーなどの栄養補助食品)
絆創膏、常備薬
大判のハンカチ、ウエットティッシュ
現金、健康保険証などの身分証明書
防犯ブザーや笛
小型ライト、携帯用ラジオ
予備のマスク
歯磨きシートやマウスウォッシュ
など。
現金や身分証明書は、防災ポーチではなく、お財布の中でももちろん大丈夫です。小型ライトや携帯ラジオは、スマートフォンでも兼ねられますが、連絡手段としてのスマホの充電は災害時には貴重です。スマホ用の予備バッテリーや充電器を持つことはもちろんですが、できれば小型ライトや携帯ラジオは別にして持っていた方が安心できます。いざという時に必要な連絡先を覚えていない人は、スマホの充電が切れてしまった時のことも考えて、メモしたものを防災ポーチに入れておきましょう。防犯ブザーや笛は、女性やお子さんなどが犯罪から身を守るためだけでなく、あらゆる人にとっても、閉じ込められてしまった時に助けを呼ぶために、常に身につけていた方がいいものです。
女性は、こうした基本的なものに加えて、
生理用品
中身が見えないポリ袋
メイク落とし、スキンケア
携帯トイレ
など。
女性のからだはデリケートです。被災したストレスから、急に生理が来てしまうこともあります。生理用品は、少し多めに常に持ち歩いておきましょう。生理用品が捨てにくい場合もあるので、中身が見えないポリ袋も防災ポーチに入れておくとよいでしょう。また、災害時にはトイレが混雑したり、汚れていて使うことに抵抗を感じる事態になることもあります。女性は特に、災害時にはトイレを我慢してしまう傾向にあります。しかし、トイレを我慢するために水分を摂ることも控えるなどすると、重大な体調不良につながります。トイレを我慢せずに済むように、使いやすい形状の携帯トイレも防災ポーチに入れておきましょう。
避難所でも「自分の身は自分で守れる」ように
大規模な災害が発生し、自宅に留まることができなくなった時に身を寄せる、避難所。多くの場合、避難所では不特定多数の人と数日間ともに過ごすことになります。そんな時のために、自宅に備えておく、非常用持ち出し袋。ベッドやリビングなど、持ち出しやすい場所に普段は備えておき、避難するときには、いつも持ち歩いている防災ポーチとともに持っていきます。
非常用持ち出し袋は、中身を入れた状態で、自分の体重の20〜30%の重量におさえるのが目安です。
避難所で過ごす時にも、「自分身は自分で守る」自助が基本。自分の命は自分で守れるように、逃げるときに「これだけは持っていたい」という、最低限のモノを入れておくようにしましょう。
例えば、防災ポーチに加えて
アルミシート・ポンチョなど(防寒や着替え時の目隠しに)
衣類(過ごしやすく、動きやすい服。女性は、スカートよりもパンツ。温度調整がしやすいように、重ね着できるもの)
歯磨きセット
ティッシュペーパー
薬、救急用品
ドライシャンプー
スリッパ
ヘルメット
乾電池
タオル
使い捨てカイロ(季節によっては、保冷剤)
軍手
洗濯ロープ
筆記用具
ライター類
飲料水、非常食、缶切り
使い捨ての食器、食品ラップ、割り箸
など。
マスクとアルコール消毒液、体温計も、新型コロナウイルス感染防止対策のためには、必需品です。
女性は他に、
生理用品、おりものシート、下着
携帯用ビデ、デリケートゾーン用ウエットティッシュ
汗拭きシート
メイク落とし、スキンケア用品、メイク道具
髪留め、ヘアゴム、帽子
小型ライト(ヘッドライト)
使いやすい小型トイレ、中身が見えないポリ袋(大・小)
などがあると便利です。
衛生が保たれないことは、心身ともに大きな負担となります。避難所では、トイレまで遠いということや、汚れていて、トイレに行くのを躊躇してしまうこともあるかもしれません。また、数日間、お風呂に入れないことや洗濯できないことも考えられます。こうしたことが、ストレスにつながります。
トイレを我慢するために、水分の摂取や食事をとることを控えることは、エコノミークラス症候群などにつながることはよく言われますが、女性は加えて、膣炎や膀胱炎などの病気のリスクも高いと言われています。小型の携帯トイレと、用を足す時にもプライバシーを守れるように目隠しとなるポンチョなどを活用して避難所でもトイレを我慢せずに過ごすことはもちろん、携帯用ビデやデリケートゾーン用のウエットティッシュなどを活用して、できるだけデリケートゾーンを清潔に保つようにしましょう。
下着を毎日交換できない場合には、おりものシートを活用しましょう。おりものシートを取り替えるだけでも、清潔を保つことができます。
お風呂に入れず、身体のにおいがきになるときには、汗拭きシートやドライシャンプーが役に立ちます。身体を拭くだけでも、気分的にもリフレッシュできます。
女性が避難所で最も注意すべきことは「犯罪被害者にならない」こと
大きな災害が発生した時には、本来なら避難所が一番安全な場所でなくてはなりません。災害からは身を守れたとしても、残念ながら避難所には別のリスクもあります。避難所では、性犯罪を含めた犯罪が発生している現実があります。
東日本大震災などのこれまでの大規模災害時でも、同意のない性交の強要やわいせつ行為、性的ないやがらせや暴力などが発生していたと、報告されています。子どもや高齢者などが被害者となるケースもありますが、女性がターゲットになりやすいということも、事実です。
避難所では、できるだけ単独行動を避け、まわりの女性と声を掛け合い、複数人で行動するようにしましょう。複数人で行動する際にも、防犯ブザーや笛を身につけるようにしましょう。防犯ブザーは、災害時だけでなく、日常的に持ち歩くようにすることも、もちろん大切なことです。電池が切れていないか、日頃からチェックしておきましょう。
避難所では、性別関係なく、運営に参加することが必要ですが、男性だけの場に、女性が一人や少人数で加わらないようにすることも、必要なことではあるのです。
服装や持ち物なども、“女性らしくない”ものを備えておくようにしましょう。
ジェンダーレスな社会についての考え方が広まりつつある昨今、「女性は赤、男性は青」などといった、古くからあるイメージは変わりつつあります。しかし、市販されている女性用の非常用持ち出し袋などは、ピンクや赤色のものもあります。性犯罪から身を守るためには、こうした女性のイメージが一目でわかるようなものは、あまりお勧めできません。
服装も、避難所ではオシャレさよりも、動きやすさや過ごしやすさを重視しましょう。スカートよりもパンツ。長時間履いても疲れない靴やスリッパ、重ね着しやすい服を備えておきましょう。
服装は、地味に、シンプルに、動きやすさを重視して。おしゃれをしたい時には、薄くメイクをすると、良い気分転換になるかも知れません。
しっかりと備えていたとしても、性犯罪にあってしまう可能性はゼロにはなりません。もしも被害に遭ってしまったとしても、非があるのは加害者の方です。避難所相談窓口や自治体、警察の窓口などに知らせましょう。「性犯罪被害相談番号 #8103(全国共通)」に、電話で相談することもできます。
男性も考えることで、女性の備えも違ってくるかもしれない
ジェンダーレスな考え方が浸透してきたとしても、男性と女性の身体には大きな違いがあります。「男性だけ」「女性だけ」に配慮を求めるわけではありませんが、女性の身体のデリケートさや、女性だからこそ抱えるリスクや不安があることを、男性にも知っておいてもらうことで、女性の非常用持ち出し袋の中身も、もしかしたら少し違ってくるかもしれません。
少なくとも犯罪被害に遭わないための備えは、変わってくるのではないでしょうか。
避難所の運営は、男性が主体になりやすいという現実もあります。女性は、高齢者や子どものケアをする役割を担うことになりがちで、避難所の運営に関連したことは我慢をしてしまうこともあります。
性差に関わらず、それぞれがプライバシーに配慮しながら伝え合い、運営にいかしていくことで、避難所もより過ごしやすい場所にできるかも知れません。
<参考資料>
板橋区立男女平等推進センター スクエアー・I No.11
FUKKO DESIGNコロナ禍でもすぐできる防災アクションガイド
日経電子版 くらし&ハウス安心・安全
男女共同参画会議 監視専門調査会 防災・復興ワーキンググループ(第3回)
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この記事を書いた人
瀬尾 さちこ
防災士。住宅建築コーディネーター。整理収納コンサルタント。
愛知県東海市のコミュニティエフエム、メディアスエフエムにて防災特別番組「くらしと防災チャンネル(不定期)」、「ほっと一息おひるまメディアス(毎週水曜日12時〜)」を担当。
以前の担当番組:みんなで学ぶ地域防災(2021年~2021年)、防災豆知識(2019年~2021年)
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