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災害時に行政、ボランティア、NPO・NGO、企業からの支援をつなぐ。全国災害ボランティア支援団体ネットワーク JVOAD

大きな災害がおきた時には、国、都道府県、市町村などの行政からの支援だけでなく、ボランティア、NPO・NGOなどの非営利団体、企業といったさまざまな組織からの支援が行われます。
阪神・淡路大震災がおきた1995年はボランティア元年と呼ばれ、多くの人が災害ボランティアに参加するきっかけとなりました。その後、多くのボランティア団体が発足し、災害がおきる度に被災地でさまざまな支援を行っています。

一方で、支援を行うときの課題として、混乱する被災地ではどこでどんな問題がおきているかが把握されず、必要な場所に支援が届かないこともあります。
このような問題を解決するため、被災地でおきている問題を把握し、行政や支援団体がよりよい支援を行えるようにコーディネーションをする組織として、全国災害ボランティア支援団体ネットワーク (通称 JVOAD ジェイボアード)があります。

今回はJVOADにお話を聞いた内容をとりまとめて、過去の災害でおきた問題や、JVOADが行う支援団体同士の関係づくりについて紹介します。

西日本豪雨災害 現地支援団体との合同調査の様子(提供:JVOAD)

災害時における、さまざまな支援活動

災害がおきたときの支援として、避難所での炊き出しや食料・衣料品などの物資の支援、家の片づけなどを思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、災害によって自宅や多くのものを失った人が必要とするのは、最低限の栄養や、避難所のような一時的な生活空間だけではありません。生きがいを持って生活し、自分の力で生活再建できる環境を用意するために、多方面からの支援が必要になります。避難所を出た後には、仮設住宅や公営住宅に入られた人が、もともと住んでいた地域の人と離れて暮らすこともありますので、地域のコミュニティづくりや、まちづくりなどの町の再建も必要になってきます。また、子どもの学習のサポートや、高齢者や障がい者などの要配慮者、ペット、外国人、ジェンダーへの配慮など人によって必要となる支援もさまざまです。
このようなニーズにこたえるためには、それぞれの専門性を持った複数の支援団体や企業が、行政と協力しながら支援をしていく必要があります。

また、新型コロナウイルスの流行下では、避難所以外の自宅や車中泊で避難をする人も多くなることから、そういった人々の声ももらさずに支援が行き届くようにする必要があります。
被災した人の声が埋もれないよう、被害状況やニーズを“もれ”なく集めて把握すること。そして、被災地で活動するそれぞれの組織の得意分野を活かし、“むら”なく支援が行き届くよう、被災者のニーズと支援のコーディネーションを行うことがJVOADの主な活動になっています。

JVOAD発足のきっかけとなった東日本大震災

2011年の東日本大震災は、広い地域で甚大な被害をおこしました。
それ以前の災害では全国から個人のボランティアが集まり、災害ボランティアセンターがボランティアを取りまとめて、支援が必要な場所に届けるといった形が主となっていました。
しかし、東日本大震災ではその被害の大きさから、NPOや海外で活動をしていたNGOなどの組織化されたボランティア団体も支援にかけつけました。しかし、行政自体も被災して混乱をしている中で、いままで全く関わりのなかったNPO・NGOを、行政が受け入れできなかった地域が多くありました。

また、NPO・NGO同士のつながりも無かったことから、どこにニーズがあり、どこに支援が届いているかの情報も共有されず、それぞれの支援団体の目についた問題にとりあえず手をつけたり、ゆかりのある地域での支援をおこなったりする状況になっていました。そのため、ニュースなどで報道された地域に支援が集中し、他の地域には支援が行き届かないといった偏りも多くおきました。

東日本大震災では全体で被害状況を把握している組織が無く、それぞれの支援団体が個別で支援を行っていたため、当時どのような活動が行われていたかもわからなくなっています。
このような反省点をもとに、東日本大震災で活動をしていた民間の組織がJVOAD構想を立ち上げ、2013年から準備会を作りました。準備会では国連のOCHAやアメリカのNVOADなどの組織を参考にしながら、 2016年にJVOADが設立されました。
JVOADは民間のNPO法人として運営されています。内閣府防災ともタイアップ宣言を行っており、国と情報の共有をすることで、行政の手の届かない領域を民間でカバーをするための体制が整えられています。

災害発生時の活動

災害発生時には、JVOADが先遣隊として入り、情報収集を行う、もしくは地域に災害支援のネットワークがある場合、現地から情報提供を受け、支援の見立てを行います。
こうして集めた情報をもとに、避難が長期化するかどうか、建物の片づけなどに個人ボランティア以外の専門性を持った団体による支援が必要かどうかを判断します。
また、今年(2022年)からは東京海上との協業により、東京海上と提携する衛星会社からのデータもとに、浸水の予測や水害の情報提供が行われるようになり、より早く正確な判断が行えるような体制を整えています。

西日本豪雨 ひろしま情報共有会議の様子(提供:JVOAD)

被災地の調査から多くの支援関係者が必要となった場合には、災害支援のネットワークやJVOADなどが中心となり、現地で行政と支援団体を集めた情報共有会議を開き、災害の状況や支援ニーズの把握を行うことで、“もれ”や“むら”なく支援が行き届くよう調整を行っています。

情報共有会議が本格的に行われたのは、JVOAD正式設立前の準備会のときにおきた2016年熊本地震でした。約300団体が参加し、行政と民間の支援団体からの情報提供による支援ニーズの把握や、それぞれの支援団体の得意分野を活かした支援ができるよう調整を行いました。
JVOAD設立から5年目となった現在では、支援の調整をするという考えが支援関係者の間では浸透しつつあります。例えば、2019年の台風の被害では、瓦屋根の破損に対し、自衛隊と技術的な支援ができる団体が協力しブルーシートで瓦を覆ったり、大量に発生した災害廃棄物を市民とNPO、行政が協力して撤去したりしました。そうした過去の積み上げがあり、今年(2022年)の台風15号による静岡の断水でも、水が十分にある地域、不足している地域の情報が共有され、それにもとづいた支援がされるようになっています。また、高齢者などは水の配給があっても重くて運べないことがありますが、行政が用意した水を民間の支援団体が車で配布をするといった連携もされています。

2019年台風15号 NPOによる自衛隊への瓦屋根ブルーシート講習会(提供:JVOAD)

災害がおきて時間がたってからの活動として、仮設住宅や公営住宅で使う家電、設備を物資支援するために調整を行うこともあります。
避難所から仮設住宅に移るとき、テレビは娯楽品とされ行政からは支給できないことがあります。また、熊本地震では公営住宅に移る場合、部屋に風呂釜がついておらず、入居者が自分で購入・設置をしなければいけないことがありました。
金銭的余裕のない被災者の負担を軽くするため、支援団体が助成金を受けて資金を作り、商工会議所などを通じて被災地に還元できる形で購入することもありました。このような時にJVOADが関係する組織をつなぐ手伝いをすることもあります。

平時の活動

JVOADが初めて訪れる地域では、現地の組織の関係性がわかりにくいことがあります。そのため、災害がおきる前から、行政、災害時に災害ボランティアセンターを設置する社会福祉協議会、民間の支援団体が話しあえる関係性をつくることが大切になります。また、都道府県をまたがるような広い範囲で災害がおきたときにはJVOADだけでは対応することはできません。

そのため、都道府県に行政と各団体との調整を行う災害中間支援組織(災害支援のネットワーク)を作る取り組みを行っています。すでに18都道府県でネットワーク化が進んでいますが、NPOの数が少なかったり、地場企業を巻き込んでもなかなか実現できなかったりする地域もあり、空白となっている地域にどのように組織をつくっていくかが課題となっています。

また、今では情報共有会議をするという認識が支援関係者の間で定着してきており、地域で自発的に会議を開くこともあります。その反面、会議で何を決めればいいかがわからず、行った支援の報告で終わってしまうこともあり課題となっています。
そのため、日本国内における災害時のコーディネーションについてガイドラインをまとめ、コーディネーションが行える人材をつくる取り組みも進めています。

災害中間支援組織の活動を続けるために

災害中間支援組織や人材、地域のネットワークづくりをするために、天皇陛下からのご下賜金をもとに「災害支援そなえ令和基金」を立ち上げました。
現在ある18の災害中間支援組織も、日頃から活動を続けるための組織基盤や、教育や訓練を行うための資金が無いと活動を続けることができません。地域だけで資金を作ることは難しいため、全国から資金的なサポートができるよう寄付を募っています。

JVOADへのご寄付・ご支援

災害は誰にでもおこる可能性があります。まずは家族を守るため、自分の力で備えておくことが必要になります。しかし、自宅や仕事を失うなど、個人の力を超えるような被害を受けることがあります。そのような状況におかれた時には、行政やたくさんの支援団体、そしてJVOADが生活再建をするための大きな力となってくれます。
災害による被害を受けないことが一番ですが、災害大国の日本ではどこにいても自然災害がおきる可能性があります。自分が支援を受ける状況になったときのために、JVOADの活動を知ってもらえればと思います。

全国災害ボランティア支援団体ネットワーク JVOAD

防災アクションガイド

JVOADとFUKKO DESIGNが協同し、一般の方へ向けて、地震や津波、台風、大雨などの災害にどのように備え、行動をすればよいかがわかる「防災アクションガイド」を制作しています。
実際に被災した方々からの声や、災害支援の現場でのノウハウをもとに監修されており、とても分かりやすくまとまっていますので、ぜひご覧になってみてください。

JVOAD 防災アクションガイド


この記事を書いた人

moshimo ストック 編集部

防災をしたいけど情報がたくさんあって、何から始めればいいの…?
私たち moshimo ストックも始めは知ることが幅広くて、防災ってちょっと難しいな…と思いました。
そんな "元初心者" の編集部が、初めての方にもわかりやすいよう防災・備蓄・災害についての情報をお届けいたします。
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