地震や台風、大雨など自然災害の多い日本。生活を再建するのに大きな課題となるのが、お金です。被災したときには、税金の申告や納付などの期限を延長したり、 減税できる制度があります。今回は、知っておきたい災害と税金についてお伝えします。
申告・納付などの期限の延長
災害により、交通手段・通信手段の遮断や停電(計画停電を含む)などライフラインの遮断などの理由で申告・納付などを期限までにできないときは、災害がやんだ日から2か月以内の範囲でその期限を延長することができます。地域や対象者が指定されている場合は、国税庁長官が延長する範囲と期日を決めて官報に掲載します。
また、期限延長の申請は、期限が経過した後でも行うことができますので、被災の状況が落ち着いてから、最寄りの税務署に相談してみてください。
※届出書や申請書等の提出期限も同様に延長することができます。
税金の負担が軽くなる二つの制度
自然災害によって被災した場合、確定申告をすると、税金の軽減や免除を受けることができます。
税金の救済制度には「災害減免法による所得税の軽減免除」と「雑損控除」の二つがあります。救済の対象となる金額は、受けた損害(被害)から、火災保険や地震保険などで受け取った保険金を差し引いた後の最終的な損害額です。この最終的な実際の損害額をもとに確定申告を行いますが、その際は「災害減免法による所得税の軽減免除」、または「雑損控除」のどちらかを自分で選択しなければなりません。
下に2つの違いを説明しますので、 正しい知識を得ることで、有利なほうを選べるようになっておきましょう。
災害減免法による所得税の軽減免除
災害によって住宅や家財の損害金額(保険金等で補てんされた金額を除く)がその時価の2分の1以上の損害を受け、かつ、災害にあった年の所得金額の合計が1,000万円以下であれば、災害減免法により所得税を免除したり軽減できる制度です。損失額は、翌年以降に繰り越すことはできませんので気をつけましょう。
<災害減免法により軽減または免除される所得税の額>
所得金額の合計額
500万円以下
500万円を超え750万円以下
750万円を超え1,000万円以下
軽減又は免除される
所得税の額
所得税の額の全額
所得税の額の2分の1
所得税の額の4分の1
災害減免法による所得税の軽減免除を詳しくみる
雑損控除
災害によって、本人や家族が日常生活に必要な住宅、家具、衣類、現金など生活財産の損害額や、災害に関連する、後片付けや住宅などの被害の拡大や防止に必要な措置をするためなどの費用を所得控除する制度のことを雑損控除といいます。
「災害減免法による所得税の軽減免除」の適用は、時価の2分の1以上の損害にはならなかった場合は受けることができません。そこで、次の二つのうち、いずれか多いほうの額を「雑損控除」として確定申告をすることができます。
※30万円を超える貴金属や書画、骨とう品などのぜいたく品や、別荘など趣味、娯楽目的などで保有する不動産は対象になりません。
控除される額は以下のどちらか多い方となります。
(1)(差引損害額)-(総所得金額等)×10%
(2)家や家財の取り壊しや除去にかかった費用など-5万円
※差引損害額とは「損害金額+災害関連費-損失を補てんする保険金など」です。
※損失額が大きくてその年の所得金額から控除しきれない場合は、翌年以後(3年間が限度)に繰り越して、各年の所得金額から控除することができます。
損害額は、家や家財をいくらで買ったのか、被害に遭った時直前におけるその資産の価額(減価償却費)はいくらなのかなど計算することになっていますが、損害を受けた資産価値について個々に計算するのは難しく大変です。国税庁は「損失額の合理的な計算方法」で、家や家財などの損失額を計算する際の評価額を公表しています。
<評価額事例>
世帯主の年齢
~29歳
30~39歳
40~49歳
50~歳
夫婦
500万円
800万円
1,100万円
1,150万円
独身
300万円
300万円
300万円
300万円
※大人(年齢18歳以上)1名につき130万円加算、子供(年齢18歳未満)1名につき80万円を加算。
申告をする際には、こちらを確認しながら計算をしてみてください。
損失額の合理的な計算方法を詳しくみる
納税の猶予
災害により財産のおおむね20%以上の損失を受けた場合には、所得税や法人税などの納税を損失の程度により、納期限から1年以内の期間で猶予されます。また、災害その他やむをえない理由に基づき国税を一時に納付することができない場合には、税務署長に申請をすることにより、最長2年間納税の猶予を受けることができます。したがって、両制度で最長3年間の猶予を受けることができます。
災害を受けたときの納税の猶予について詳しくみる
固定資産税の減免
各市区町村で定めている制度になります。災害における固定資産税の減免には、「土地」「家屋」「償却資産」の種別があり、適用基準と減免割合については、種別により要件が異なりますので各市町村のホームページをご確認ください。また、被害の程度によっては、減免の対象とならないこともあるので、詳しくは各市町村にお問合せください。
この記事を書いた人
moshimo ストック 編集部
防災をしたいけど情報がたくさんあって、何から始めればいいの…?
私たち moshimo ストックも始めは知ることが幅広くて、防災ってちょっと難しいな…と思いました。
そんな "元初心者" の編集部が、初めての方にもわかりやすいよう防災・備蓄・災害についての情報をお届けいたします。