実際の現場では、どのようなことが起こっていたのでしょうか。
最も震源に近く、東日本大震災において最大の被災地となってしまった石巻市。その被災体験を振り返ることで、災害が起きたときの課題や、どのような対応が必要となるかが見えてくると思います。
これから、いくつか当時の状況をピックアップして、今後も起きうる課題を考えてみたいと思います。
○ 避難行動
地震直後、市では、大津波警報を受け、防災無線・広報車などで避難を呼びかけましたが、すぐに避難を始めた人は約15%にすぎませんでした。避難しなかった理由や避難が遅れた理由として、「家の方が安全だと思った」「津波がくるとは思わなかった」「家族が揃っていなかった」などが挙げられています。
市街地に大きな津波が来たのは、地震から1時間近く経ってからとなり、十分に避難が可能な状況でしたが、停電・余震・油断・渋滞など様々な要因が重なり避難が間に合わず、津波によって多くの方が犠牲となってしまいました。
大地震イコール津波と考え、まず第一に避難を行うための準備や必要性を常日頃から知識としてしっかりと理解し、整理しておくことは私たちの命を守る上で最も大切なことなのです。
○ 防災拠点の被災
防災拠点の中核である本庁舎が浸水し、ライフラインが停止したため通信手段や移動手段が失われ、救出救助の要請、情報収集が困難となり応急活動の障害が発生。このため、防災拠点の機能、立地条件の再検討が必要となりました。
また、災害の規模が大きく、市職員は救急救命や被災者の支援など不眠不休で活動が行われました。しかし、応急活動フェーズに合わせた人員配置も不十分だったために、職員が肉体的・精神的極限状態になってしまいました。
○ 避難所運営
避難所運営は原則として市職員が行うことになっていましたが、庁舎が被災し、市職員が駆けつけることができませんでした。そのため、施設の管理者や学校の先生方が運営を代行。しかし、訓練経験もないことから避難所運営に必要なことがわからず、毛布や食料の手配、避難所名簿作成、安否確認、要配慮者支援など混乱を極めることとなりました。
応急期の災害本部では、1次被害を最小限に食い止めること、2次災害を防止すること、復旧の準備をすることでしたが、大きな災害が起きたとき、限られた人材の中では優先順位の判断が非常に難しかったと振り返られています。
(参考:平成27年度四国防災トップセミナー東日本大震災からの復興~災害時の初動体制と備え~)