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未来の防災に活かす自治体の取り組み!東日本大震災が教えてくれること。

2011年の東日本大震災から9年という月日が経ちました。
震災当時は日本全国で防災への高い意識が持たれていましたが、被災地から離れた地域の方は、年月の経過とともに普段の仕事や生活に追われ、当初の意識からは薄らいでいるかもしれません。 
震災・災害の記憶を風化させず、震災・災害での経験を、残し、被災地域だからこその対策を共有し、未来の防災に活かしていくことが大切であると思います。

今回、東日本大震災の最大の被災地である石巻市では、大震災直後の課題や、教訓を基にしてどのような対策がされているか、石巻市のあゆみや防災計画をもとにまとめてみました。

東日本大震災の被害状況

石巻の牡鹿半島から先端130kmの距離で発生した巨大地震による津波は、地震発生の40分後に最大の波が石巻に到達しました。
海岸での津波の高さは7.7m。さらに波は陸を駆け上り、海抜16mの高さまで到達したことがわかっています。

石巻市で全壊した家の数は約2万棟にも上り、犠牲者の数も死者・行方不明者あわせて3,977人という、甚大な被害となってしまいました。

(参考: 石巻市のあゆみ 石巻市の被害)

東日本大震災の課題

実際の現場では、どのようなことが起こっていたのでしょうか。
最も震源に近く、東日本大震災において最大の被災地となってしまった石巻市。その被災体験を振り返ることで、災害が起きたときの課題や、どのような対応が必要となるかが見えてくると思います。
これから、いくつか当時の状況をピックアップして、今後も起きうる課題を考えてみたいと思います。

○ 避難行動
地震直後、市では、大津波警報を受け、防災無線・広報車などで避難を呼びかけましたが、すぐに避難を始めた人は約15%にすぎませんでした。避難しなかった理由や避難が遅れた理由として、「家の方が安全だと思った」「津波がくるとは思わなかった」「家族が揃っていなかった」などが挙げられています。

市街地に大きな津波が来たのは、地震から1時間近く経ってからとなり、十分に避難が可能な状況でしたが、停電・余震・油断・渋滞など様々な要因が重なり避難が間に合わず、津波によって多くの方が犠牲となってしまいました。

大地震イコール津波と考え、まず第一に避難を行うための準備や必要性を常日頃から知識としてしっかりと理解し、整理しておくことは私たちの命を守る上で最も大切なことなのです。



○ 防災拠点の被災
防災拠点の中核である本庁舎が浸水し、ライフラインが停止したため通信手段や移動手段が失われ、救出救助の要請、情報収集が困難となり応急活動の障害が発生。このため、防災拠点の機能、立地条件の再検討が必要となりました。

また、災害の規模が大きく、市職員は救急救命や被災者の支援など不眠不休で活動が行われました。しかし、応急活動フェーズに合わせた人員配置も不十分だったために、職員が肉体的・精神的極限状態になってしまいました。

○ 避難所運営
避難所運営は原則として市職員が行うことになっていましたが、庁舎が被災し、市職員が駆けつけることができませんでした。そのため、施設の管理者や学校の先生方が運営を代行。しかし、訓練経験もないことから避難所運営に必要なことがわからず、毛布や食料の手配、避難所名簿作成、安否確認、要配慮者支援など混乱を極めることとなりました。


応急期の災害本部では、1次被害を最小限に食い止めること、2次災害を防止すること、復旧の準備をすることでしたが、大きな災害が起きたとき、限られた人材の中では優先順位の判断が非常に難しかったと振り返られています。

(参考:平成27年度四国防災トップセミナー東日本大震災からの復興~災害時の初動体制と備え~)

震災後の取り組み

石巻市では、「災害に強いまちづくり」の実現のため、様々な取り組みを行っています。
堤防や防災緑地の整備と共に、避難ビルの確保、避難タワーの建設を行い、津波からの被害を多重に防御する仕組みを整えました。また、災害用備蓄配備などの整備を行っています。

(引用元: 石巻市公式サイト津波避難ビル・津波避難タワー)

○ 危機管理体制
災害時の職員の動員計画を定め、交通の途絶、職員やその家族の被災等により、職員の動員が困難な場合を想定した、参集訓練を実施するなど非常時の参集体制を明確化。

災害時の応急対策を各部各課で役割に応じた活動マニュアルを作成し、部署ごとに防災体制の充実を図ることで、応急活動フェーズに合わせた人員配置が早急に対応できるように整備。

また、災害の規模や被災地のニーズに応じた柔軟な支援ができるよう、多種多様な団体と災害時の応援協定を結び、必要に応じて防災訓練や災害時の応援体制について情報交換を行っています。

(引用元: 石巻市公式サイト 平成29年度 石巻市総合防災訓練)

○ 災害情報伝達手段の多層化
東日本大震災のときには、防災無線が聞こえない・聞こえずらい地域があるなど、必要な情報が届かないといった課題が発生しました。

現在は、災害発生時に必要な情報をいち早く配信できるよう、災害メール(すぐメールプラス)」「ツイッター」「フェイスブック」などを活用し、必要な災害情報を配信。また、防災無線が聞こえない地域のために、衛星電話での連絡や各戸にラジオを配布するなど災害情報伝達手段の多層化を行っています。

宮城県石巻市役所【災害・防災・減災情報】(Facebook)
宮城県石巻市役所【災害・防災・減災情報】(Twitter)

○ 避難所の運営
東日本大震災の課題をもとに、災害発生直後から迅速に対応ができるように仕組化。洪水、土砂災害(崖崩れ、土石流、地滑りを総称)、高潮、地震、津波及び内水氾濫の種別に応じ、災害緊急時の状況、避難すべき区域等、具体的な判断基準を定めた避難勧告等の判断・伝達マニュアルの作成を行いました。また、応急活動フェーズには、市職員、施設管理者および避難者の代表によって避難所運営組織をつくり、自主的で円滑な避難所の運営ができるよう対策をしています。

(引用元: 石巻市公式サイト 石巻市総合防災訓練)

復興に向けて

石巻市は、東日本大震災から3年後の平成26年に災害の瓦礫の焼却処理が完了し廃棄物対策が全て終了しました。そこから再生期を迎え、生活再建の基礎となる住まいの再建を最優先として、官民一体となって復興に向けて進んでいます。

実際に被災をしていない人にとって、自然災害に対する意識を高く持ち続けることは難しいかもしれません。だからこそ、普段から行動できるような習慣・仕組みづくりをする必要があります。
東日本大震災で得た教訓や学びをもとに、次の災害に備えた地域づくりの参考にしてみてはいかがでしょうか。


(参考情報)
石巻市公式サイト
石巻市地域防災計画
石巻のあゆみ

この記事を書いた人

moshimo ストック 編集部

防災をしたいけど情報がたくさんあって、何から始めればいいの…?
私たち moshimo ストックも始めは知ることが幅広くて、防災ってちょっと難しいな…と思いました。
そんな "元初心者" の編集部が、初めての方にもわかりやすいよう防災・備蓄・災害についての情報をお届けいたします。
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