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大切な思い出を残す写真。台風や大雨、津波で濡れた写真を消さないための保存方法

災害による被害によって、家や思い出の場所を失ってしまうことがあります。被災された方にとって、写真は家族やふるさとの記憶を残すための大切な存在です。
実際に東日本大震災では、津波によって被害を受けた家に戻ったとき、被災者の多くが写真を探したといいます。

ここで注意したいのが、台風や大雨、津波などで濡れた写真をそのままにしておくと、写された絵が消えてしまうことがあること。今回は、大切な思い出が消えてしまわないよう、濡れた写真を保存する方法をご紹介します。

写真の種類

写真をプリントする方法はいくつかあり、その多くは次の3つのタイプに分かれます。
プリント方式によって対処方法変わってきますので、まずはプリントの種類について説明します。

銀塩プリント

写真店などにフィルムやデジタルカメラのデータを預けてプリントしてもらう場合、多くは銀塩プリントとなりますが、まれにインクジェット方式でプリントされることもあります。

昇華型プリント

店頭に置いてあるセルフ式の機械にUSBメモリーやSDカードなどを差し込んで、自分でプリントする場合は昇華型プリントとなります。

インクジェットプリント

一般的な家庭用プリンターで印刷する場合はインクジェットプリントとなります。このインクジェット方式で使われるインクは染料・顔料2つのタイプに分かれ、染料インクは水に弱くなります。

写真が濡れたらまず乾燥、できれば冷凍して保存

残された写真がどのプリント方式か判断できないこともあるかもしれませんが、まずは写真を乾燥させましょう。

銀塩プリントの表面はゼラチンで出来ており、その下にある色の層を水や傷から守っています。そのため、短時間水につかる場合には色がにじむことはなく丈夫なのですが、長時間水にさらされると、ゼラチンが溶け出したり、カビやバクテリアがゼラチンを分解して、写された絵が消えてしまいます。
また、濡れたまま写真を重ねておくと、溶けたゼラチンが糊のようになって写真どうしがくっついてしまうことがあります。
そのため、濡れた写真は重ねずに乾かすことが重要です。濡れた写真を重ねたり、写真アルバムを閉じたままにしたり、乾かさずにビニール袋に入れたりしないようにしましょう。

まずは写真をしっかり乾燥させた後に、表面についた泥を洗い流す必要があるのですが、被災した直後はそこまではできないかもしれません。そこで、乾燥までを終わらせて写真の劣化をおさえ、時間ができた時に洗浄をおこなうのがおすすめです。
もし可能であれば、洗浄をするまで写真を冷凍しておくと、長期間劣化をおさえることができます。

乾燥作業

まず、乾燥作業をする前に、写真についた泥やカビを吸い込まないよう、マスクと使い捨ての薄いゴム手袋をつけます。

アルバムなどに閉じていない写真でれば、濡れているうちに1枚1枚をわけ、重ならないようにして乾燥させます。
すでに写真がくっついてしまっているようであれば、無理にはがさずにそのまま乾燥させてください。
写真を乾燥させた後、時間ができて写真を洗浄できるようになったタイミングで、水につけてはがすようにします。

アルバムを乾かす場合

  1. アルバムにビニールカバーがついている場合は取り外します。
    ビニールカバーがはがれない場合には無理をせずそのままにしてください。

  2. アルバムを立て、1ページごとに洗濯ばさみをはさみ、ページにすきまをあけて乾かします。
    洗濯ばさみがない場合には、立てたアルバムのページの間に丸めた紙をはさみ、ページが閉じないようにします。
    アルバムの損傷が激しい場合には、表紙と背表紙を切り離し、ページを1枚ごとに分解します。バラバラになったページは洗濯ばさみのついたハンガーなどで干すようにします。

  3. 乾燥する時間は1週間から10日ほど。風の通る日陰で乾燥させてください。
なお、濡れた写真はくっつきやすいため、作業中に写真を重ねたりして触れ合わないよう気をつけてください。
額や台紙に入った写真もくっつきを防ぐため、写真を取り出してから乾燥します。

写真をはがす・洗浄を行う際の注意

ここまで紹介した内容が、災害にあった直後に行う保存方法です。しっかり乾燥をする、また可能であれば冷凍を行えば、カビやバクテリアによる劣化を抑えられます。

その後、作業ができるようになったら、くっついてしまった写真をはがしたり、写真の洗浄を行うのですが、劣化の進んだ銀塩写真は水につけるだけで絵が溶けてしまう場合があります。
また、銀塩プリント、昇華型プリント、インクジェットプリントによって対応方法が違ってきます。どのタイプでプリントされたかもわからない場合もあるかと思いますので、もし専門のボランティアに依頼できるのであれば、写真を渡して洗浄を行ってもらいましょう。

被災写真救済ネットワーク - 写真救済・洗浄活動を行っている団体

こちらのページで、写真洗浄を行っているボランティア団体が紹介されていますので、相談をしてみてください。

もし、自分で行う場合には、万が一にそなえ、写真をスキャナーで取りこんだり、スマートフォンで撮影をして画像を残してから作業をしましょう。

写真をはがしたり洗浄をする前には、泥やカビなどを吸い込まないようマスクをして、使い捨ての薄いゴム手袋をして作業を始めます。

くっついてしまっている写真をはがす

銀塩プリントの場合

写真の隙間に水をすこしづつ浸透させ、ゆっくりとはがしていきます。なかなかはがれない場合には、しばらく水につけて自然に端からはがれるようになるのを待ちます。
全てはがれるまでに30分以上かかるものもあります。

昇華型プリントの場合

水に浸ける必要はなく乾燥させれば、自然とはがすことができます。

インクジェットプリントの場合

水につけて1分程度ではがれるようになります。染料インクのインクジェットプリントは水によって、色がにじんだり薄くなりやすいので、はがれたらすぐに水から取り出しましょう。
また水に弱い紙の場合は破れてしまうことがあるため注意が必要です。

写真がはがれたら、汚れを洗浄して乾燥させます。

写真洗浄をする場合

銀塩プリントの場合

  1. 水を入れた洗面器を2つ用意します。一つは汚れを落とすための洗浄用、もう1つはすすぎ用です。

  2. 写真が乾いた状態で、乾いた柔らかい筆やハケで表面の汚れを落とします。

  3. まずは裏面から洗います。このとき写真全てを水につけず、裏面だけに水をかけてこすり洗いをします。

  4. 写真を返し表面を上にして、写真の端だけを水につけ、筆もしくは指の腹で軽くこすります。絵が流れないことを確認しながら洗ってください。

    作業中に写真が赤色や黄色になったり、さらに白くなったりした場合は、劣化が進んでいます。作業を続けると写真の絵が消えてしまいますので、汚れを落とす作業を中止してください。
    また、薄手のゴム手袋を通してヌメリを感じた場合には、軽くすすぐ程度にとどめてください。

    洗浄前に既に変色していたり、白くなっている部分がある写真、べたつきのある写真は特に注意が必要です。絵が流れるようであれば、かるくウエットティッシュで軽くふくだけにとどめましょう。
    また、ウエットティッシュでふく場合にも、いきなり全体をこすらずに端から少しづつ試すようにしてください。もし絵が流れるようであれば、変色した部分のみをふくだけにとどめます。

  5. 洗っても大丈夫なようであれば、全体を水につけて筆もしくは指の腹で軽くこするように洗います。
    洗面器の水が汚れてきたら、水を交換しながら洗浄を行ってください。

  6. 汚れが落ちたら、すすぎ用の洗面器で軽くすすぎます。

  7. 写真を重ならないようにして乾燥させます。

昇華型プリントの場合

まずは、写真が乾いた状態で、乾いた柔らかい筆やハケで表面の汚れを落とします。
水にはつけず、濡らしたきれいな雑巾などで軽くふきます。

インクジェットプリントの場合

まずは、写真が乾いた状態で、乾いた柔らかい筆やハケで表面の汚れを落とします。
汚れが軽い場合には水につける必要はありませんので、濡らしたきれいな雑巾などで軽くふきます。

汚れがひどい場合には、水につけて洗浄をしますが、染料インクを使用したプリントは水に弱く、色がにじんだり薄くなることがあるため、なるべく短い間で作業を行います。
また水に弱い紙の場合は破れてしまうことがあるため注意が必要です。

昇華型プリント、インクジェットプリントの場合も、インクや紙の種類によって耐久性が異なります。銀塩プリントと同じように少しづつ試しながら、やさしく作業をするようにしましょう。
富士フイルムや被災写真救済ネットワークのサイトでは、写真や動画で写真の保存、洗浄の方法を詳しく見ることができますので、参考にしてみてください。

被害を受けた写真・アルバムに関する対処法 サポート | 富士フイルム [日本]

被災写真救済ネットワーク

何気なく撮った写真でも後になって見返すと、自分にとって大切な想いよみがえることがあります。また、被災直後は見返すのをためらうことがあっても、何年かたった後には大切な宝物となることもあります。
被災によって写真が消えてしまわないよう、しっかりと対処をして保存するようにしましょう。

この記事を書いた人

moshimo ストック 編集部

防災をしたいけど情報がたくさんあって、何から始めればいいの…?
私たち moshimo ストックも始めは知ることが幅広くて、防災ってちょっと難しいな…と思いました。
そんな "元初心者" の編集部が、初めての方にもわかりやすいよう防災・備蓄・災害についての情報をお届けいたします。
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