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「温かくておいしい! スープからはじめる防災クッキング入門」参加レポート (3/3) - 辻直美さんに教わる、避難時でもおいしく食べられる料理

災害時でも日常と近いかたちで「心が元気になる食事」がとれるよう、どのような用意をしておけばよいのか?「温かくておいしい! スープからはじめる防災クッキング入門」に参加した様子をレポートしています。

前回は有賀薫さんに被災したときに手軽につくれるスープを教えていただきました。


今回は辻直美さんに避難所で出される救援物資の様子や、避難時でもおいしく食べられる料理について教えていただきます。

実際の避難所について

島影:ここからは災害レスキューナースの辻さんに、災害現場について教えてもらいます。緊張した雰囲気に変わりますね!

辻:避難所では公民館や学校となることが多く屋内では火を使えないので、屋外で調理をすることになります。カセットコンロなどを持ち込んだ場合でも、屋外であっても使うことが出来ないことが多いのです。なので、しばらくは自分がもってきたものをそのまま食べるしかないんです。

私は大阪府北部地震で実際被災したのですが、そのとき避難所で生活をしていた友人は救援物資が5日後にしかこなかったそうです。
もらえたものも家族4人で、ポリ袋に2/3の白米と、なぜかアスパラが1本。それとペットボトル500mlの水が1本。家族4人でですよ?そんなものしか来ないんです。

写真をお見せしますが、避難所では1人1畳のスペースがあればいいほう。そこに自分の荷物を置いて寝るのです。もっと人があふれたときには廊下で生活することもあります。そんな中で料理をすることはできないですよね。
しかも避難所では行政の人が運営するのではなく、集まった住民が自分たちで運営をするんです。なので避難所はファーストチョイスではなく、できるなら自宅避難。家が危ないときに避難所に行きましょう。と伝えています。

こういった避難所での食事なのですが、支援物資が届かないことも多く、被災者の方は心が疲れてしまっているので、調理をしようという意欲がないことが多い。
そこでやっぱり調理が手軽なスープジャーはいいなと思いました。

災害時の現状ってどんな感じ?

辻:自衛隊はやボランティアなどの炊き出しはすぐ来ません。だいたい自衛隊の方が大丈夫?ってきてくれるのは、流されているときか、埋まっているときか、死にかけてるときくらい。
実際に、いわき市の水害のとき、アパートに2階に住んでいる生徒さんから「足首から水が来てるんですけど、まだ大丈夫ですよね?」ってLINEが来たんです。
「大丈夫じゃないので、子供と荷物を身体にシーツでしばりつけて、すぐ逃げて!」って伝えて逃げてもらったのですが、避難先の実家も流されてしまい、お隣の屋根に14時間…
救急に電話をして2回つながったそうなのですが、「電話をかけられるなら安全なので、他にもっと危険で助けたい人がいるのでそちらを優先します。」と切られてしまったそう。これが被災地の現状です。

実際の避難所の食事って?

辻:西日本豪雨の岡山県真備地区で配られたものをお見せしますが、朝ごはんはおにぎり1個だけ、昼はメロンパン1個、夜はコンビニ弁当。これでももらえてラッキーなんですが…これ明日もおんなじメニューがくるんです。メロンパンがコロネに変わることもない。
まとめて送られてきたものを食べるので、毎回毎回こんな感じのメニューを食べています。

味のバリエーションを変えて食べないと、飽きるししんどい…
被災地はライフラインが切れてしまうと寒くて、お弁当もすぐ冷えてしまって、パンもおにぎりもカチカチになってしまいます。
私は「レスキューナースが教える プチプラ防災」の中で、幕の内弁当を解体してちらし寿司に変えて食べる方法を載せています。

島影:私、この本の撮影の時に食べさせてもらったんですが、冷蔵庫で冷やしてあるお弁当をそのまま食べるのは辛いものでした。避難所で食べられないっていう状況がリアルに頭に浮かびました…
でも、ちらし寿司につくり変えたものを食べたら本当に美味しかった。このレシピは必見!ぜひやってみてください。

辻:火を使わないでアレンジして食べるのであれば避難所のスペースでも出来るのでおすすめです。

実際に辻さんが自宅での避難で食べた食事

辻:それでは、私が大阪府北部地震で実際被災したときの、自宅で食事を紹介します。
メスティンというアウトドア用の鍋に、100円ショップで売っている固形燃料をつかってご飯を炊きました。お店でお鍋炊くときに出てくる青いやつですね。

有賀:あれでご飯炊けちゃうの?

辻:炊けちゃいます!
25分くらい火がついていて、メスティンのようにアルミで薄いものだと熱伝導がいいので炊けるんです。
普通のお鍋だと、お鍋が温まるまでに固形燃料を使ってしまいます。特にライフラインが切れているときは暖まりにくいので、山用のアウトドアグッズがすごく使えます。

あと、メスティンは熱伝導がいいので、ご飯を炊くときに缶詰を上においておくとあったまるんです。この日はサバ缶の他に、金属製のプリンカップの中に人参をきざんで入れてメスティンの上にのせて炊きました。
あと、ちょうどふるさと納税のイクラがちょうど自然解凍されていたので、御飯の上に乗せて食べました。

有賀:これ、災害時のご飯じゃないですよね、贅沢!

辻:贅沢ですよね!こういった食事は備えているからできるんです。
私が思う備えは、ものを買っておくだけでなくて、ちゃんと使ってみる。使うために知識をつけておくことです。
みなさん失敗を恐れることがありますが、自分の好きな味付けに変えたり、入れるものをアレンジして、どんどんトライアンドエラーを繰り返してほしい。
そうやって、自分の味を作っていただきたいです。それが災害時に心の支えになると思います。

有賀:自分が決めるということがすごく重要になってくると思います。
今は色々なラインの上にのって、毎日の生活が流れていることが多いけれど、災害時ってそうではないですよね?

辻:一個一個自分で決めていって前に進んでいかないと、どんどん振り落とされてしまうのが災害なんです。
誰も「こっちにおいで」と連れてってくれないので、そのためには普段から楽しみながら練習しておくことが大切です。

有賀:料理もメニュー、材料、調理の仕方など、色々決めていく頃が多いので億劫に思う人がいるかと思いますが、こういうことはトライアンドエラーでしか解決していくことが出来ないですよね。

辻:さっきのスープでいうと、塩昆布でだしをとってみたり色々試しておくと、実際災害時には量の調整だけでできたりしますよね。
日頃から色々試しておいて、それが母の味であったりとかあなたの味になると、災害のときに食べられるというのはすごい心強くなります。
先程の避難所の食事のように、与えられたものをそのまま食べるというのはすごいしんどいんです。自分で決めた、温かいものを、自分のペースで食べるのことがいいんです。

パッククッキング(ポリ袋調理)

有賀:パッククッキングはポリ袋に食材をいれて、お湯を張った鍋で加熱調理をする方法です。
こないだ初めてやってみたのですが、お聞きしたいことがあって。パッククッキングってお湯が沸いたら火を止めておいていいんですか?それとも火はつけていおいた方が良い?

辻:材料によって温度も下がりますので、火はつけ続けてください。
パッククッキングのいいところは、少ない燃料で複数の料理が作れること、食べるときに同じタイミングでたくさんの料理が並ぶことです。

有賀:たしかに私が調べたときにも、ご飯の入った袋とか、菜っ葉の入った袋など、1つの鍋で同時に調理をしていました。

辻:火を通りにくいものから順にいれて同時に料理をする感じです。
あまり厚手の鍋を使うとお湯が沸かないので、薄めのアルミの鍋がおすすめです。

有賀:パッククッキングは鍋を洗わなくていいのも良いですね。

辻:料理を器によそうときは端をハサミで切って入れるときれいによそえます。お湯は洗い物に使えるので残しておいてくださいね。
規模な災害が起きると、ライフラインの停止はずっと続きます。大阪府北部地震のときはガスの復旧まで1ヶ月かかりました。水もガスボンベの燃料も無駄のないように大切に使いましょう。

日頃からいろいろ試してみることが大事。
こういうと「いきなりすごい料理を作ろう!」と思ってしまうかもしれませんが…今日はお粥からでいいと思うので挑戦してみてくださいね。

有賀:温かいお粥があれば1食しのいだ感じになりますし、熱湯に大さじ2杯のお米を入れるだけで作れることを覚えておくだけでも良いですしね。

辻:明日の土曜のブランチは鶏粥にしてみるとかね!

moshimo ストック 編集部の感想

私も防災について調べてから知ったのですが、テレビでよくみる炊き出しは避難所にいってもすぐにはでないんです。
始めの1-2日は水さえ来ないことが多い。なので、自分で持ち込んだ水や食料をしばらくは食べることになります。
でも、こんなことって教えてもらって初めて気づきますよね?

辻直美さんがおっしゃっていたのは、予め何が起きるかと対応方法を知っておくこと。そして、それを日々試しながら実践してしておくこと。
きちんとトライアンドエラーを繰り返して自分のものにできると、もしも被災してしまったときに、十分に満足できる食事をとり、よりよい避難生活をおくることが出来ます。

レスキューナースが教えるプチプラ防災」は、レスキューの現場での過酷な経験をもとに、実際にできる、被災前の備えから、被災してしまったときの生活をよりよくするためのノウハウがつまっていますので、こちらもぜひご覧になってください。


さて、イベントのレポートも今回で終了です。

イベントに参加では本当に楽しい雰囲気の中でお話を聞かせていただきました。
このような「防災×食事」といった切り口をもった親しみやすいイベントから、「防災のはじめの一歩」を踏み出してくれる人がふえてくれたら、とても嬉しいと思いました。

せっかく学んだ知識、みなさんぜひ明日から試してみましょう。

この記事を書いた人

moshimo ストック 編集部

防災をしたいけど情報がたくさんあって、何から始めればいいの…?
私たち moshimo ストックも始めは知ることが幅広くて、防災ってちょっと難しいな…と思いました。
そんな "元初心者" の編集部が、初めての方にもわかりやすいよう防災・備蓄・災害についての情報をお届けいたします。
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