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災害経験を、風化させず、記録し、伝えていく。防災リーダー育成の取り組み

(提供:長岡市役所)

長岡市は2004年、7.13水害(平成16年7月新潟・福島豪雨)と新潟県中越地震という2つの大きな災害に見舞われました。新潟県中越地震では、長岡市の旧川口町で、最大震度7を観測。

犠牲者は28人、避難者は5万人にも上り、全壊した住家の数は2,197棟、大規模半壊、半壊、一部損壊の住家を含むと約7万棟となり、甚大な被害となってしまいました。こうした災害経験を受け、長岡市では防災・減災対策の強化に取り組んでいます。

今回、長岡市役所に、防災リーダーを育成する取り組みについてお話をお聞きすることができましたのでご紹介させていただきます。

災害経験を、風化させず、記録し、伝えていく

災害が起きる前から、町内会や自主防災会などは、住民主体の地域活動や防災訓練等の活発なコミュニティ活動を行っていました。新潟県中越地震の発災直後は、拡声器で避難を促し、地域の防災委員が被災状況などの確認を行ったり、避難所の運営をサポートしたりするなど、いろいろな活動が行われ、地域の助け合いが大きな力を発揮しました。

このことから、長岡市では、地域コミュニティを基本とし、隣近所の日常の結びつきが災害時にも生かせる仕組みづくりを進めています。

その取り組みのひとつとして、これまでの災害経験を踏まえながら、「安全」や「防災」をテーマに、家庭や地域の防災に役立つ知識、災害時に役立つ実技・備えを学ぶ「中越市民防災安全大学」(以下、安全大学)を開校しました。

(提供:長岡市役所)

地域の防災リーダー育成の取り組み

安全大学は、防災に関わる人材の裾野を広げ、地域の防災活動や災害時に活躍できる人材、災害や防災の知識・教訓を語り継げる人材を育成することを目的としています。

防災について学びたい、知識を増やしたい、地域の防災リーダーになりたいなど、大学のように、多様なニーズに対応することが可能です。修了者には防災士の受験資格も付与され、希望者は最終日に防災士試験を受けることができます。

現在、第14期までの修了者は680人に上ります。修了者の多くの人は「中越市民防災安全士会」(以下、安全士会)のメンバーとなり、地元での活動のほか、被災地支援なども含め、各地で活躍しています。

(提供:長岡市役所)

○ 安全大学の学習のポイント
「安全」や「防災」をテーマに、専門的な知識や災害時に役立つノウハウや実技を学ぶことができます。実際の学習の内容についてご紹介します。

・中越大震災の経験や教訓
・災害のメカニズムなどの基礎知識
・災害時の対応や平時からの防災対策について
・災害時における様々な防災関連団体の活動について 等
※参考:令和元年度中越市民防災安全大学の学習内容

○ 修了後の活動
安全士会では、「日本一安全・安心な長岡」を合言葉に、地域の防災訓練などでの防災啓発活動、応急手当やAEDの講習、市民、会員に向けた情報発信、研修・イベント、防災よろず相談などの活動を行っています。
このような安全士会の活動により、平成18年に33%だった自主防災会結成率が令和2年4月には、91%と大きく増え、自主防災活動が活性化しています。

このように長岡市では、安全大学という学びの場と安全士会というネットワークを形成し、防災知識の維持向上・活躍の場をセットにすることで、地域防災力の向上・強化を行っています。

(提供: 長岡市役所)

安全大学の修了者「安全士会の活動」紹介

○ 女性目線で防災力アップ「シュークリーム」
「シュークリーム」は、地域防災力の向上を目的として、女性の目線を活かした防災啓発活動を行う団体です。女性ならではの「寄り添う防災」をモットーに、主に女性や子ども、親子に向けた防災に対する知識や技術の向上を目指し、防災に関する相談や防災講座などを実施しています。

(提供:な!ナガオカ)

中越市民防災安全士会 女性部(シュークリーム)
[住所]長岡市千歳1-3-85(ながおか市民防災センター2F)
[電話]0258-77-3918

○ 防災よろず相談
市民が防災を身近にとらえ、主体的に活動を行うよう促すことを目的とし、同じ市民目線で、地域の実情にあったアドバイスを行う相談窓口を開設。平成26年度から、事務所にて週4日実施しています。
「防災よろず相談」の利用者の約9割が防災講話や応急手当の指導等の講師派遣を希望しており、相談に留まらず防災活動の実施のサポートも行っています。

○ 地域防災活動への講師派遣
長岡市や長岡市消防本部と連携し、地域が行う自主防災訓練等において指導(救急訓練指導や講話など)を行う講師派遣を実施。平成20年度から本格的に活動し、これまでに延べ600回(約1,900人)を超える講師派遣を行っています。

地域でさまざまな講座を行うことで、一人ひとりが災害への危機感と防災意識を持つこと。また、災害が起きた時にスムーズに助け合いができるように、地域の人たちと関わり合いのある日々を過ごすことへと繋がっていきます。

自主防災会活動報償金

自主防災会の主体的な取組みにより、地域防災力の向上に貢献した活動に対し、市が報償金を交付する制度があります。自主防災会から、本制度や安全士会の防災活動支援等を活用いただくことで、いざという時に、住民の皆さんが具体的に行動を取れるような防災活動を平時から取り組むことを支援します。

災害発生時は、住民一人ひとりが正しく防災情報を理解し適切に行動することに加え、住民同士が相互に助け合うことが必要となります。
自主防災会を結成することで、住民の防災意識を高められ、地域の状況に合わせた防災活動を組織的、計画的に実行することができ、活動の継続的な実施は地域のコミュニティ維持にも繋がります。
長岡市では、犠牲者への追悼と支援の感謝を忘れず、地域のつながり、コミュニティを大切に、「産・官・学・民」が協働することにより、市民一人一人の防災力を高め、「災害に強いまちづくり」を実践しています。

災害時に落ち着いて適切に行動するためには、日ごろからの心構えや備えが欠かせません。そして、円滑に助け合いができるように、日常から地域で備えをすることも大切だと学ぶことができたのではないでしょうか?

この記事を書いた人

moshimo ストック 編集部

防災をしたいけど情報がたくさんあって、何から始めればいいの…?
私たち moshimo ストックも始めは知ることが幅広くて、防災ってちょっと難しいな…と思いました。
そんな "元初心者" の編集部が、初めての方にもわかりやすいよう防災・備蓄・災害についての情報をお届けいたします。
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